99:思わぬ仕掛け
誤字脱字報告ありがとうございます。
お姉ちゃんが護衛付きで携帯を買いに出かけました。
佳奈お姉ちゃんのみならず、レッドさん達と一緒に出掛けているので安全だと思います。
「学校で態々アイテム販売何かしなくても、他でいくらでも稼げると思うのにね」
そんな事を言いながら、私は新たな攻撃に対する防御反撃手段を模索しています。
「そちらは準備できましたか?」
今、机の上に置かれた携帯から聞こえて来たのは神主さんの声です。
今回の攻撃方法をお爺ちゃんと相談したところ、お爺ちゃんより神主さんの方が適任という事で協力してもらう事になりました。
「はい、準備は出来てます。お願いします」
今回の主題は携帯電話の通話機能を使った呪の特性確認です。この為、神主さんから此方へと呪を送ってもらって検証します。
「いと、とうときみたまにおんいのりそうじょう・・・・・・」
神主さんの声が携帯から聞こえてきます。
これは寿ぎの一つで、相手の身体能力向上の呪だそうです。
「う~~~ん、駄目ですね。上手く神力が乗りませんね。対象を指定しているのですが空ぶっている感覚がします」
神主さんはそう言って、祝詞を唱えるのを止めました。
「やっぱり電波に魔力って載せられないですよね?」
実はこの実験前に私から神主さんの方に魔法を飛ばそうとしたのですが、そもそも電波と言う物が何かを運んでいるような感覚が無いのです。その為、声はあちらに届いても、実際の魔法は発動しませんでした。
「そうですね、電波と言う物はそもそも振動のようなものですから、それに魔力を乗せれたとしても距離による減衰などもありそうですから実用的ではありませんね」
どうやら神主さんも否定的なご様子ですね。
「でも、そうするとあの攻撃って何なのでしょう?」
「さて、そこが問題ですね」
リビングの扉を開けて、部屋へと入ってきた神主さんが眉間に皺を寄せているのです。普段はあまり表情を出さない神主さんです、珍しいです。
あ、ちなみに、神主さんとは2階の客間を利用して遣り取りをしていました。実際に離れた神社とですと何かと手間がかかりますからね。
「一つには、あくまでも通話はカモフラージュという事もありえますが、そもそも結界に阻まれるため難しいですね。で、私なりに色々と考えたのですが、これは一種の召喚ではないかと」
「召喚ですか?」
「電話で行われたものはあくまでも呪文のみ、魔力はこの家にある物を利用します。幸いにして、伊藤家の敷地は魔力が豊富ですから」
神主さんは話しながら視線を我が家の家庭菜園へと向けますが、うん、確かに魔力が豊富ですよね。
庭で良く判らない植物とかが思いっきり魔力を放出していますもんね。
「でも、魔法や魔術を行う際には切っ掛けとなる魔力を作らないといけないんですよね? それは魔術師本人が行わなければいけないって聞いてますよ?」
この部分は前世でも同様だったので良く知っています。ちなみに、魔女のお婆さんやお爺ちゃん、神主さん達も同様の方法を使います。これは全能力者共通だと思っていました。
「そうですね、わたしもそう思っていたのですが、一つ此処で大きな勘違いを私達はしていたのかもしれません」
そう言って神主さんが差し出したのは神主さんの携帯電話です。
「携帯電話ですよね?」
私が首を傾げていると、神主さんがその携帯電話を持って考えてもみなかった事を私に尋ねてきました。
「ええ、携帯電話です。そこでひよりさんに質問です。この携帯電話、本当に科学の力だけで作られていると思いますか?」
「え? えええ? 科学じゃないんですか?」
あまりの発言に、私は思わず携帯に探知魔法をかけちゃいました。
「脅かさないでください、全然魔力とか感じられませんよ?!」
思わず語気が強くなるのは仕方がないですよね、それくらい私は驚いたのですから。
ただ、こちらにいつもの何かを含んだような笑みを浮かべる神主さん。これって何かに気が付いたんだと思います。
「う~~~、ちょっと待ってください。考えます」
そう思って色々考えているのですが、神主さんは何を言いたいのでしょうか?
携帯に魔法が関与している? でも、していないですよ? 魔力の欠片もありませんでしたよ?
「判りません、何に気が付いたのですか?」
「まだ検証してみないと判りませんが、恐らく今回の方法は科学と魔法の融合とでも言いましょうか。周囲の魔力を使う場合、起動させるために必要な魔力はそれ程必要ではありません。ここは良いですよね?」
私は素直に頷きます。すると、神主さんがポケットから小さな袋を取り出しました。
「これは、私達も使うのですが魔力触媒と呼ばれるものです。物質自体に多少の魔力を含んでいます」
そう言って袋から取り出したのは、恐らくは水晶の欠片かな? ただ、確かに僅かな魔力を感じます。
「この触媒に、何らかの刺激を与えることで魔力が発動するとしたら、例えば携帯に付けるアクセサリーなどに?」
「あ、魔法アイテム? そっか、きっかけは携帯電話から聞こえる呪文?」
「さて、そこまでは何とも言えませんが、お姉さんは携帯電話に何か付けていませんでしたか?」
そう言われて思い出してみると、何かのキャラクターが付いたストラップをぶら下げていた気がする。
「何か付けてたと思う」
「それは今どこに?」
「お姉ちゃんの携帯にまだ付いていると思う。そっか、あれってマジックアイテムだったんだ」
そもそも、今回の相手はアイテム系を使用しています。
「マジックアイテムを作る事に優れた相手の可能性が高いですし、呪術を警戒するよりもアイテムを警戒しないといけなかったんだ」
今更ながらにちょっと油断しすぎていたかもしれません。
攻撃 = 魔法合戦みたいなイメージが強すぎました。
「しまったなあ、お姉ちゃん達の電話番号が判んない。連絡が来るまで待つしかないのかな?」
「いえ、それならこちらで連絡しましょう」
そう言って神主さんが護衛に付いている人に連絡を入れました。
「ええ、小春嬢に代わってもらえますか? はい、ああ、そうですね。よろしくお願いします」
神主さんが電話を切る様子を私は不思議そうに見ていると、私の携帯が鳴り始めました。
「およ? しらない電話番号だ」
「ああ、小春さんの新しい電話です。丁度受け取ったところなのでひよりさんに電話をするとの事でした」
神主さんの言葉に、私が電話に出るとお姉ちゃんの声が聞こえてきました。
「あ、ひより、聞こえる?」
「うん、聞こえるよ。あ、その前にお姉ちゃん急ぎで確認なんだけど、前の携帯に付けてたストラップってまだ持ってる?」
「ん? ストラップ? うん、貰い物だから持ってるわよ、でもどうして?」
「そのストラップが今回の攻撃の鍵かもしれないの、だからそれを持ってきてほしいの」
私の言葉にお姉ちゃんが息を呑む気配がしました。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「え? あ、そうね、それって本当なの?」
「それが判らないから調べたいの」
「そう、判ったわ。急いで帰る事にするわ」
何となくお姉ちゃんの様子がおかしいのは、もしかして仲の良い人から貰ったのかな?
「お姉ちゃん、ちなみに、そのストラップって誰に貰ったの?」
「・・・・・・伊集院さん」
お姉ちゃんから思わぬ答えが返ってきたのでした。
今回はちょっと時間が無くて短いです><
あと、みなさん感想ありがとうございます。
お返事が出来ず、申し訳ありません。
ストーリーを描く方で時間が費やされていて、でも感想はきちんと読んでます!