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98:敵の姿が見えません

誤字脱字報告ありがとうございます。

 路上でピクピクして倒れている男達を、その後に駆けつけて来たお爺ちゃんの所の人達が連れて行きました。パトカーでやって来た警察官の人達は、その様子を思いっきり不服そうに見ていましたが、それはそれですよね。


「で、お姉ちゃん、佳奈お姉ちゃんとは連絡がついた?」


「うん、レッドさんへと連絡したらお婆ちゃんの所にいた。携帯は知らない間に紛失してたみたいで、慌てて電話会社で番号停止して貰ったみたいだけど思いっきり泣いてたわ」


 なんと迷惑な。まあ何らかの方法で携帯は盗まれたのだろうけど、とにかく敵に捕らわれているとかではなくって良かったです。


「・・・・・・あの佳奈お姉ちゃんが泣いてたの?」


「うん、だって写真とか、その他諸々のデータは携帯の中にしかないわよ?」


「あ~~~」


 ある意味そう言う所はお姉ちゃんと同じだ。

 まあ私でも結構落ち込むかもしれないから、先程さっそく自分の中の写真データはお姉ちゃんのノートパソコンへと入れさせてもらいました。


 その、諸悪の根源である携帯は、電波が切れて無事に悪意の流出は止まったんだけど、お姉ちゃんは入念に携帯を浄化して、消毒液で拭き取った後にパソコンに繋いでデータを移してました。


「ううう、明日、佳奈と一緒に携帯買いに行く事にした。電話番号も新しくする」


 まあ敵に知られてしまってるし、電話を介して呪を送る事が出来るならそうなっちゃうよね。ただ、お母さんに援助の交渉をするそうですが、今年の誕生日プレゼント前倒しで携帯に成りそうな予感がします。


「あ、お爺ちゃんが来た」


 防犯カメラのモニターに、お爺ちゃんの姿が写りました。

 パタパタと玄関へ走って行って鍵を開けてお出迎えをします。


「おお、すまんの。無事じゃったようで何よりじゃ」


 私達の無事な姿を見て、お爺ちゃんは安堵の溜息を吐きます。

 お爺ちゃんはリビングで一息つくと、今回の状況で判っている事を説明してくれました。


「今の所、相手が誰かは不明なのです? あの捕まった人達は?」


「携帯電話から呪いを掛けれるなんて普通は出来ないですよね?」


 矢継ぎ早の質問に、お爺ちゃんは少し考えるような所作をして、それから話し始めました。


「捕まったのは簡単に言えば暴力団じゃな。警察にもチェックされている連中じゃが、どうやら依頼されたようじゃの。まあ、こちらよりも問題となるのは呪いのほうなのじゃが、携帯を介して呪いを送り込むなど初めて聞いたの」


 理論的には有り得る方法らしいです。ただ、今までそれを思いついた人がお爺ちゃんの周りには居なかったというだけみたいですね。


「今、色々と検証させておるが、そもそも携帯電話自体が今どきの物じゃでの。どうも爺には発想が付いていけんの」


 呪いは別に携帯電話を使わなくても行えますが、基本的には相手の体の一部、髪の毛とかを使用して行うそうです。で、今回のケースでは、電話を使った新たな呪法となるみたいですね。


「相手の携帯電話を中心にした無差別な呪じゃ、いやはや厄介な時代になったのう」


 溜息を吐くお爺ちゃんですが、さらに厄介なのは術者の特定が今の段階では非常に難しいと言う事らしいです。


「一流の術者でなくても出来てしまうという事です?」


「うむ、要は相手側に声を送り込めば良いのじゃ、二流の者でも容易いでの。市井におる半端者の術者でも可能じゃ。勝手な推測じゃが、まだ年の若い者の可能性が高い気がするの」


 お爺ちゃん達の見解では、お爺ちゃん達から見ればまだ未熟な術者が、お金目当てに依頼を受けたという可能性が一番高いそうです。ただ、今どきの術者であるが故に、能力不足を他の物で工夫し、補っている可能性がある?


「なんか小説の主人公とかでありそうな設定ですね。知恵と工夫で能力を補って、自分より強い敵に勝つとかって」


 説明を聞きながら思ったのです。ただ、そもそも呪いを使う段階で主人公は無いかな?


「ひより、今の流行は無敵系な主人公よ? 普段は平凡、でも、実はすっごい力を隠してましたが主流かな?」


 お姉ちゃんはそう言いますが、それはお姉ちゃんが好きなジャンルですね。

 私はどちらかというと内政系のお話が好きなのですが、内政成功しちゃった後の出世街道まっしぐらも結構好きです。


「私はお姉ちゃんと違って順々に出世していくのとかが好きかな? 授爵とかして貴族になって、どんどん爵位が上がっていくのとか憧れるかな」


 私とお姉ちゃんの話を興味深そうに聞いていたお爺ちゃんが、私の言葉を聞いてちょっと首を傾げました。


「ふむ、そうじゃのう。ひよりちゃんが良ければ僧籍なら上げれるがの? どうじゃ、僧階なら上がっていく楽しみとかもあるがの?」


「・・・・・・お爺ちゃん、僧階と爵位は似てもいない非なる物だよ?」


 煌びやかな貴族の雰囲気と、白と黒の墨に彩られた仏教の世界、うん、ないわぁ。


「ふむ、ふむふむ」


 何かお爺ちゃんが考え始めているけどとりあえずそれは置いといて、今回の問題について話し合います。


「そうね、恐らくだけど今学院で発生しているアイテムの件が最有力よね。何と言ってもお金、それも大金が絡むわ」


 そう言い切るお姉ちゃん。まあ私もその見解に異論はありませんよ。


「アイテムを浄化して使えなくしているのが私とお姉ちゃんって気が付かれたかな」


「まあ疑問を持たれて、その術者が探りを入れればすぐに断定できると思うよ?」


 何せ、我が家に近づけば近づくほどに悪意の濃度は減少するし、我が家を取り巻く結界だって強度はともかくとして気が付く事は出来ると思います。


「この付近の防犯カメラの映像を当たらせてみるかの。上手くすれば映像に残っておるだろう」


 まあ我が家の確認に来ていれば映っている可能性は高いですよね。


「お爺ちゃん、あのね、呪を相手に返す方法を覚えたい。さっきも防げたけど、此方からの攻撃手段がないから一方的にやられたの。すっごく悔しい!」


「私もひよりと一緒です。一方的に攻撃されるのは気分の良い物ではありませんから。もっとも、私には浄化や治癒以外の魔法が使えそうにないのですが、出来れば相手の場所を逆に探知できる魔法とか、道具が有ればと思います」


 だよね、お姉ちゃんですら今回の件は色々と思う所が有るんだと思う。ましてや、本当に佳奈お姉ちゃんが人質に取られたりしていたら助けに行かないとだもんね。


「ふむふむ、そうじゃのう。そこら辺は榊の方が得意分野かのう。もっとも、すぐに出来るかもじゃが、教えてくれるかも判らんがの。そもそも術とは秘術のことじゃからのう」


 そういえば、そもそも祝詞も真言も同じように唱えても駄目だったよね。

 まあ信じている神様が違うと言えばそれで終わってしまうんだけど、それ以前に魔法の法則が理解できないんだよね。


「まずは電話とかの法則を理解しないと駄目なのかな? でも、声が届いても魔力が無ければ・・・・・・あれ? 何で呪の効果が出たの?」


 そもそも、魔法にしろ何にしろ、呪文と魔力がセットなのです。電波に魔力が乗るなんて聞いたこともないですよね? まあ試したことも無いのですが。


「そうじゃのう、一度しっかりと研究せんとならんかのう」


「遠隔から魔法が使えたら安全性が爆上がりだよね?」


「そうじゃのう」


 そもそも、アルバイトの浄化にしろ現地に行かなくても良くなるんだよね?

 それってすっごく楽だし、効率的な発見だと思う。


「それはそれとしてじゃな、明日からの学院での警護も考えねばならんの」


 なんと、我が家の周りを警護していた人達は4人いたそうですが、全員が眠らされていたそうです。

 幸いにして命に別状は無いそうなのですが、今は隔離して状態を調べているとの事でした。


「生かしておくメリットが少ないでの、わざわざ生かしておいたという事は何かしらの仕込みを気にせねばならんでの」


 うん、まあそうだろうなと私は納得しているんだけど、お姉ちゃんにはちょっとショックな話なのでこの会話はお姉ちゃんが一時的に席を外していた時にされました。


「それなりの者を配置しておったのじゃが、術師との戦いも経験しておったのじゃ。そう考えると中々の手練れかのう」


 お爺ちゃんが首を傾げますが、敵が判らないのは実に厄介です。


「学院で広まっている例のアイテム、あれの邪魔を思いっきりしないとだよね。そうすれば自ずと敵は出てくると思う」


 ただ、残念ながら私のこの発言は却下されました。


「まずは守りを固めないと危険よ?」


「うう、でも、結界はそうそう破れないと思うんだけど」


 ただ、相手の実力が判らないだけに、お姉ちゃんもお爺ちゃんも異様に慎重でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ケータイというかスマホをダイヤでデコって強力な 浄化の御守りにしてしまったら電話呪はどうなるんだろう? まあ呪術は音声機動みたいだから設定した番号以外は 着信拒否、スマホはセキュリティ掛ける…
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