95:推理と推測、そして?
誤字脱字報告ありがとうございます。
鳳凰会の呪いのアイテムがどうなったかは別として、日常は特に問題なく過ぎていきます。
お爺ちゃんから情報は入るのは入るのですが、進捗が今一つなのか情報を制限しているのか、真新しい情報は今ひとつです。
「高等部の方は特に問題とか起きてない?」
「これと言った騒動は無いかな?」
お姉ちゃんに尋ねてみるけど、今の所は何も起きていないみたいです。
ここでふと思い出したのは、先日一緒に雑談していた時に玲子ちゃんが言った一言。
「小春先輩って乙女ゲームの世界にいるみたい。そうすると、高等部からがメインストーリーになるのかな?」
「そうなると、高等部から編入して来た人がヒロインというか主人公?」
梨花ちゃんが話に載って来て、結構盛り上がった覚えがあります。
ただ、中等部から入学しているお姉ちゃんは主人公たる資格が無いそうです。ちょっと残念ですね。
「って話をみんなでしてたんだけど、高等部から入学してきた子でヒロインっぽい人はいない?」
「う~ん、私のクラスではそこまで特徴のある人はいないかしら? でも他のクラスまでは判らないわね」
まあ、この先に噂になるような行動を繰り返せば自然と発覚するだろうけどね。
ただお姉ちゃんに持たせているお守りの消費が結構早いので、高等部は要注意ではあるのかな。
「何か首筋とかがピリピリ来たら浄化魔法を発動するようにしてるわよ? 中等部に入学した初めの頃も結構こんな感じだったし、大丈夫じゃないかしら?」
そもそも、学校という物はこういった悪意が溜まりやすい環境だけど、それを浄化する機能が無いからね。余程ひどくなるとお爺ちゃん達みたいな人が内々に呼ばれるみたいだけどね。
「ところで、ひよりが先日気にしていたアイテムあるよね? 何か呪いのアイテムみたいなのがあって、鳳凰会に出回ってるんじゃないかって言ってたの」
「え? あ、うん」
異常が無いって言ってたお姉ちゃんから突然そんな話をされて私は戸惑うのだけど、お姉ちゃんはそんな事お構いなしに話を進めていく。
「呪いって所が気になったから、高等部の鳳凰会サロンと生徒会室に浄化魔法を掛けてみたの」
「おおお、思い切ったねお姉ちゃん」
「放置していて大事になるのも嫌だったからね」
そう言って笑うお姉ちゃんだけど、多分被害者が出るのが嫌なんだろうね。
「で、生徒会室は何ともなかったけど、鳳凰会の方を浄化した時に何かを浄化した手応えが複数あったわ。ひよりの時みたいに叫び声とか救急車騒ぎは無かったから、もしかすると中等部が出始めかもしれないわ」
成程、お姉ちゃんの推論だけど、高等部が始まりであれば中等部と同様の生徒がいてもおかしくないし、大学部が始まりであれば中等部も高等部も同様に影響が出ていてもいいもんね。
「でもそこが不思議なの、中学生より高校生の方が普通は自由になるお金は大きいわよね? なのに中等部から始めたって事は供給源も中等部なのかしら?」
「そうすると、中等部で病院に入院した人が原因なの? でも、流行ってるんだよね?」
「高等部でも反応があったから、所持してる人はそれなりにいるのは確かかしら?」
結局の所、良く判らないねで終わったんだけど、実は舞台は中等部が中心になっている可能性があるのかとお姉ちゃんから思わぬ視点を貰う事が出来ました。
で、さっそく中等部の探索を再開しようとしていたところ、最近になって漸く親しくなったクラスメイトの明菜ちゃんから思わぬお誘いを受けます。
「ほうほう、部活見学ですか」
「うん、中等部は部活参加が半強制みたいだから、先日の部活紹介で気になった所を回ろうかってみんなで話してるの」
そもそも、部活に参加するつもりは欠片も無かった為に思いっきりスルーしていました。
まだ部活を決めかねているクラスメイト達と改めて一緒に部活見学をしようとのお誘いでした。
「なるほど、今出ている候補をお聞きしても良いですか?」
「うん、そんなに数は回れないから、今日見て回る予定はテニス部、ダンス部、茶道部かな」
ある意味定番と言われる部活ですね。
「良いですよ、私も一緒にお供させて貰うね」
校内探索ついでと言えますし、一人より多数の人がいる方が埋没して良いでしょう。
という事で、放課後の部活見学が確定しました。
部室の有る場所は関係者ではない人が入ると非常に目立つ、それも部活見学の集団であれば左程問題は無いかと私、明菜ちゃん、他2名の計4名で回るのです。
「ところで、三者三葉で希望が違うなら別々でも良いのではないのです?」
「そうなんだけど、まだ入るって決めてないのに一人で行くの怖いじゃん」
如何にも運動が好きですといった感じのクラスメート、能勢さんがそう言います。
「そんなものですか、という事は別に3人が連れ立って同じ部活に入る訳じゃ無いのですね」
「うん、私は運動部は勘弁してほしいから」
「私はダンス部って普通聞かないから興味があるって感じかな? そもそも、友人関係ってコロコロ変わるものでしょ?」
うん、中々にドライな反応を示すのは170cmはあるかという長身のクラスメートの多胡さん。この子も明菜ちゃんと違って運動が得意そうだね。
「伊藤さんも万能っぽいけどさ、運動部狙いじゃないの?」
「私は思いっきり帰宅部希望です」
私の言葉にみんなから、それならなぜ参加したと追及が来るのです。まあ興味があったからという事で納まりましたが。
「で、ここが運動部の部室棟だけど、雰囲気が違うね。こういう所ってプレハブとかで出来てるって偏見があった」
明菜ちゃんの言葉に、残りの二人もうんうんと頷いています。
「でも、見学ならテニスコートとか、体育館の方に行った方が良くない?」
「あ、そっか、そうだよね」
「だね、何でこっちに来るのかと思った」
「テニスコートはあっちだね」
私の言葉に納得する3人だけど、私はその間にも部室棟の浄化を済ませてしまう。
ただ、今部室棟にいる部員がいないのか、特に何の反応も無く浄化は終了しました。
「あ、あそこだね。うわぁ流石お金持ち学校。テニスコートが6面もある」
「でも、何か大きな人もいない? 人の数も多いし、もしかして高等部の人も一緒なのかな?」
うん、明らかに中学生じゃない人達が混じってるね。そうなると、6面でも多い訳じゃないのかな? 良く判らないですね。
「あ、あっちで如何にも新人ですって感じの集団がいる。あれが一年生かな?」
目ざとく能勢さんがコートに入らずに一塊になっている集団を発見する。
「未経験者ばかりを集めて指導している感じだね」
多胡さんが少し考え込みながら、その様子を眺めています。
まあ皆さん真剣な表情でラケットを振っていますね。
私たち以外にも1年生と思しき人達が数人、練習風景を眺めています。恐らくは同じ部活見学者なのかな? ただ、上級生と思われる人達は、私達に気がついても特に行動する様子が無いのは新入生をある程度確保出来たからなのかな?
「うん、次行ってみようか」
能勢さんがそう言って、私達は移動を開始します。
「能勢さん、先輩とかに話を聞いてみたりしなくても良かったの? 簡単に見ただけで終わっちゃったけど?」
明菜ちゃんが不思議そうに能勢さんを見るけど、能勢さんは能勢さんで何かさっぱりした表情です。
「うん、何かみんなしっかり部活してたね」
「うん、まあ部活だし」
「ちょっとイメージしてたのと違ったから、改めて興味が出たらもう一度自分だけで見に行ってみるから」
そっか、まあ能勢さんが納得できたのだから良いのかな? そこは個人の感覚だしね。
「次は第三体育館だね」
「どこだっけ?」
「確かあっちだったと思う」
この学校は体育館だけで3つ、武道館が一つあるので判り辛いんだよね。
で、ダンス部は第三体育館で練習をしているらしいのだけど、ダンスって体育館でするものなのかな? これも良く判らないですね。
その後、ダンス部を見て、校舎に戻って茶道部を見学した。
実際にお茶を飲ませてくれた茶道部に一番時間を使ったのはそういう物なのかな?
「私はやっぱり茶道部にする」
明菜ちゃんがそう言うのは、実際の練習が月水金の週3回しか無いのも理由の一つみたい。
「平日は火曜日と木曜日に塾を入れれば何とかなりそうだし、まあ部費がちょっと高いけどね」
「そうだよね、せっかく成績が良いのだから、出来れば落としたくないよね」
「中等部の間は塾は良いかなって思てたんだけど、甘いかな?」
3人とも塾との兼ね合いで悩みだしたので尋ねると、3人とも50番以内に入っていたそうです。
「3人とも頭が良かったんだね。私は50番以内じゃなかったからそこまで気にしてないんだけどね」
「伊藤さんは科目の偏りが凄かったのですよね」
一応、全員に順位表が配られ、その際に各科目ごとの順位も出ている。
で、私はその中で算数5位、理科は18位、社会は143位などばらつきが思いっきりあったんですよね。
「総合順位で65番でしたから、そんな物だと思いますよ?」
数学の授業で先生がポロっと私の順位を零しちゃって、それでクラスのみんなが知る事になったんだけど、あとで先生に思いっきり謝られましたね。
それは兎も角、運動部の部室棟のみならず、文科系の部室の集まっている校舎も順調に浄化を掛けて行きましたが、この文科系の浄化でちょっと問題が発生していたんですよね。幸いにして、他の3人は気が付かなかったみたいですが、明らかに浄化時に抵抗があった場所が複数あったのです。
「一番反応が大きかったのがねぇ・・・・・・」
みんなと別れて帰宅途中の私ですが、今日の出来事を振り返って顔を顰めました。
「吹奏楽部、ESA部、科学部、そして・・・茶道部」
明菜ちゃんが入部を決めた茶道部、ここでもしっかりと浄化時に反応が複数あったんだよね。
本編が進まない病が・・・・・・
ただ、段々と問題となる部分の姿が見えてきた・・・・・・かな?