90:小春佳奈騒動で生徒会は大変だった?
誤字脱字報告ありがとうございます。
思いもせず中等部現生徒会メンバーと面識を得てしまった私ですが、そもそもの問題点がまったく解決できていないのですよね。さっきから私のお守りが凄い勢いで悪意を吸い上げています。
「あの、所で藤堂さんは体調が悪くないですか?」
え? もっと遠回りに探りを入れろですか? そんな事私に出来る訳ないじゃないですか。
昔から私は直球一本ですよ?
「え? 体調ですか? 特に悪いという事は無いですけど」
まあぱっと見で見る限りには確かに体調が悪い用意は見えないのですが、これだけ悪意の塊の様になっているのに不具合無しはあり得ない気がします。
此処まで濃い悪意を発生させているのならば、その人特有の兆候も見られるのですがそれも有りません。
不思議な状態ですね。
「ちょっと失礼しますね」
偶々横に座っていたのでそのまま藤堂さんの手を取って今の状態を確認します。すると驚いたことに悪意が藤堂さんの手前で防がれているのが判りました。
ん? 胸元に何かある様に感じるので、何かのアミュレットを身につけているのかな?
「すみませんでした。ちょっと気になったので」
「え? あ、うん」
藤堂さんは突然の行動に思いっきり戸惑ってますね。
一応状況は判りましたし、ついでに藤堂さんに集う悪意を一掃しておいたけど、う~ん、こんなアミュレットを持ってるって事はそこそこの家じゃないのかな?
そんな私達を吃驚眼で見ていた先輩達ですが、気を取り直したのか会話が再開します。
「伊藤さんの行動が良く判らないけど、藤堂さんって凄いのよ! 一般受験なのに学年順位が8位なんだから! 特進へ入れるレベルだよ!」
雲雀先輩が自慢げに教えてくれます。
「うわ! それは真面目に凄いですよ! あ、一組って結構成績で選ばれてるって本当ですか?」
東君が興味深そうに尋ねます。ただ、そうすると東君はそこまで上位じゃないのかな?
「うん、一組は準特進みたいな扱いだからね。それ以降は各クラス順番に割り振ってるみたいだけどね」
成程、そうすると成績による嫉妬とかでしょうか? 先程浄化した感じではこれも悪意の核となる物が感じられなかったのです。
「会長だって凄いんだぞ、学年一桁の常連だし、最高順位は2位、あと少しで学年トップだったんだ」
「おおお!」
「素直に凄いです」
「うん、凄いですね」
私を含め一年生は驚きの声を上げます。
伊達に鳳凰学院で生徒会長をしていないという事でしょうか?
「あの、ところで雲雀先輩も藤堂さんもちょっと庶民っぽくないんですけど、何か事情があったらすいません」
私の言葉に生徒会室の空気が一気に凍り付きましたけど、やっぱり何かあるのかあ。
「伊藤さんはどうしてそう思ったのかな?」
「単純に言うと庶民っぽくない苗字だなと」
私の言葉に先輩達は声を揃えて「ああ~~~」って声を上げましたけど、普通は雲雀なんて苗字いませんよね?
「庶民とそうじゃない区分けって何だろうという問題は置いといて、まあ簡単に言うと雲雀家は没落貴族みたいなものかな?」
「なるほど」
私は頷きながら藤堂さんへと視線を向けると、藤堂さんは何か思いっきりフリーズしています。
「えっと、藤堂さん? ありゃ、固まっちゃった。やっぱり聞いちゃ駄目な事を聞いちゃった?」
藤堂さんの顔の前で手をヒラヒラさせると、藤堂さんは漸く再起動しました。
「え? あ、えっと、私は庶民です」
「生徒会は別に庶民じゃ無いと駄目って訳じゃないわよ?」
雲雀先輩も心配そうに藤堂さんを見ますが、藤堂さんの動揺は結構激しいみたいで耳に入っている様子は無いですね。
「ちょっと落ち着くためにお茶にしましょうか」
藤巻先輩がそう言って立ち上がると、棚からカップを人数分取り出して紅茶を入れ始めます。
「ティーパックしかないからね」
そう言ってポットのお湯を注いで慣れた手つきで紅茶をいれてくれます。
「あ、手伝います」
「大丈夫、気にしないで」
この中で手伝うなら一般人の私かなと名乗りを上げますが、藤巻先輩は笑顔で断ってくれます。
「まあ飲み物は副会長に任せるとして、お茶請けはチョコしかないからね」
雲雀さんが手早く棚の下から袋入りのチョコを取り出して、机の上にお皿を置いてドバーっと入れますが、うん、結構雑いですね。
「さて、副会長がお茶を準備している間に簡単に生徒会の役割を説明しようか」
そう言って雲雀先輩が鳳凰学院における生徒会の役割を説明しはじめましたが、これ結構裏の説明もありますよね?
「これって私が聞いても良いのですか?」
「まあ知られて困る内容でもないから」
困惑する私に対して物凄く軽い感じで返事をくれる雲雀先輩ですが、何か面倒事に巻き込まれそうな嫌な予感がビシバシするのは気のせいです?
「という感じで、まあ一番厄介なのが鳳凰会との仲裁だね」
「なるほど」
「昨年まではついでに小春先輩の親衛隊が暴走した時の対処とかもあったけどねえ」
「申し訳ありませんって、これ私が謝らないといけない内容なのでしょうか?」
私が不服そうに頬を膨らませると、雲雀先輩は先程とは違う人の悪い笑みを浮かべて此方を見る。
「鳳凰会メンバーのファンクラブへの切り崩し問題。あれは本当に大変だったわ。鳳凰会内部での対立まで起きて、それに学内での小春先輩のプロマイド違法販売及び転売事件、これは購入者が最後まで口を割らなかったので結局黒幕は捕まえられなかったわ。まあ転売者はその後に謎の制裁を受けたみたいだけど」
「真っ黒なのに証拠がね。ちなみにコスプレ系のプロマイドには万単位のお金が動いたらしいよ。あと、補足するなら残念ながら水着とかそう言う系統の物は無かったね」
「あったら黒幕さんも終わってたと思う」
私の言葉に2,3年生の先輩達はうんうんと大きく頷きます。
「その他、大小合わせて数十件の騒動を起こしているわ」
「その、一応の確認ですが黒幕の最有力は、もしかして文芸部とか?」
「流石に身内ね、良く判っているわね」
「あぅ・・・・・・お手数をお掛けしましたです」
何か理不尽な謝罪を要求された気がしますが、佳奈おねえちゃん自重して。
そんな会話がされている内に、紅茶も行き渡って一息つきます。
「それで、藤堂さんは何をそんなに動揺したの? 良ければ教えて欲しいかな」
「守るにしても情報があると無いとでは違うからね」
「その前に、私は此処にいて良いのでしょうか?」
何か自然とメンバーみたいに参加していますが、私ってもろ部外者ですよね? 確かに切っ掛けは私かもしれませんが。
「そうねえ、藤堂さんが気にするなら私と副会長だけで聞くけど、どう?」
「あ、あの、私は・・・・・・」
藤堂さんは中々踏ん切りがつかない感じです。
「藤堂さんごめんね、私が変な事を聞いちゃったから。良く知らない人にそんなに簡単に話せない事ってあるよね。という事で、何か余計な事をしちゃってすみませんでした」
藤堂さんのみならず、先輩達にも頭を下げて謝罪します。
「うん、私達も焦りすぎたかな? 確かに信頼関係なんてまだ全然無い段階で言えない事とかあるよね。藤堂さんごめんね」
雲雀先輩に続いて先輩達が謝ります。
「あ、あの、私こそごめんなさい」
藤堂さんが謝罪を受け入れてくれた所で私は御暇しましょうか。
「それでは、関係ない私は帰りますね。お邪魔しまし・・・・・・え?」
私が謝辞を述べて生徒会室を後にしようとした時、会長たちの後ろに悪意が沸き上がるのが見えました。
「ふぇ? あ、まさかの上ですか!」
沸き上がると言いましたが、まさかの悪意は何と天井から染み出る様に降りてきています。
「浄化!」
「ぎゃあああああ~~~~~」
予想外の驚きに思わず声を出して浄化を唱えちゃいました。ただ、先程とは違い確かな手応えと、思いっきり誰かの悲鳴が響き渡りました。
「何? 何事!」
「悲鳴?!」
一気に生徒会室は大騒ぎになり、声の聞こえて来た上へとみんなが視線を向けます。
「なんか判んないけど上に行くわよ!」
雲雀先輩を先頭に、なぜか私も加わってみんなで生徒会室を飛び出し上の階へと向かいました。
「先輩、聞きたくないんですが、生徒会室の、上の部屋って、何の部屋ですか?」
走りながら誰へという事無く尋ねると、藤巻先輩が端的に答えてくれます。
「鳳凰会サロン」
うわぁ、思いっきり地雷じゃないですか、やだあ。
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