表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/135

88:追加情報と追加の厄介ごと

誤字脱字報告ありがとうございます。

 声で誰かは判ったんだけど、振り返るとそこに橋本君が相変わらずの笑顔を浮かべて立っていました。


「女の子の会話を盗み聞きするのはどうなのかな? 大きくマイナスポイントだね」


 そんな私の返事にも、如何にも失敗したといった表情を浮かべるんだけど、これも確実に演技なんだろうな。中学一年生でこんな技術を身につけているのは結構怖いね。


 私がそんな感想を抱きながら、ちょっと睨みつけていると梨花ちゃん達が誰か判らなくて戸惑っているみたいだ。


「同じクラスの鳳凰会所属の橋本君。はっきり言って胡散臭いから注意してね」


「うわ! 酷いなあ。伊藤さんの小学校からのお友達かな? 橋本真一って言います。よろしくね」


 うん、思いっきり胡散臭い。鳳凰会が二人を勧誘したし、梨花ちゃんは勧誘しないように注意が出ているはずだから恐らく二人の名前は知っているはず。


「わざとらしい。二人の事くらい調べてるんでしょ?」


「う~ん、布田梨花さんは名前だけね。そちらの玲子さんは判らないかな? 鳳凰会で勧誘のリストアップされた人は基本そのクラスの担当任せだから。布田さんは勧誘対象から外れたから知ってるくらいかな」


 まあそんなものかも? 恐らく私達の会話から名前を特定したと言いたいのだと思う。


「えっと、2組の布田梨花です。ひよりとは小学校が一緒ですね」


「山内玲子です。同じくひよりとは小学校が一緒です」


 一応二人は挨拶をするけど、思いっきり警戒しているね。鳳凰会っていうだけで警戒対象だしね。


「そんなに警戒しなくていいのに。鳳凰会って言ってもペーペーだよ」


 橋本君はそう言って笑うけど、私が警戒しているのが二人には判るからね。私が警戒する相手が平凡であった事が無いのは経験からしっているもんね。


「で? 菊園さんの事、何か知ってるの?」


 勝手に私の横に座る図々しさを発揮した橋本君。まあそんな事より情報ですね。信用出来るかは別として、それでも情報は多いに越したことはないからね。


「ああ、菊園さんね。あの子も悪い子じゃないんだよ? 小等部の頃はどちらかと言うと大人しい感じだったから僕もちょっと吃驚している。今取り巻きみたいにしている子達も多分だけど中等部からの付き合いじゃないかな?」


「え? 最初からあんな感じじゃないの?」


「菊園家ってそこまで上位じゃないし、今年の一年生には彼女より上位の家柄の子もいるからね。あんな態度で不快に思われたら自分の地位すら危うくなるよ?」


「ふ~ん、例えばあなたみたいに?」


 私の言葉に、ニッコリと笑うだけで答えないけど、橋本君は菊園さんよりも家格が上みたいだね。


「それなら今の態度自体が変だよね? そもそも中等部からの付き合いってまだ一月も経ってないのに」


「だね、私もまだクラスで仲が良いって言えるほどの友達いないわ」


 梨花ちゃんと玲子ちゃんは社交的だけど、さすがに鳳凰学院では苦戦しているみたいだね。その二人と比べるのは変なのかもしれないけど、大人しかった子が突然豹変するものだろうか?


「何か変だね。で、物知りの橋本君は予想はついているの?」


「予想かあ、可能性はいくつかあるけど想像で話をするのは違う気がするからね」


 ふむ、となるとやっぱり本人が原因じゃなくて外的要因になるのかな。


「誰かに命令されているとか、でも何となく誘導されているのかなって気はするね。あの取り巻き3人の情報はあるの?」


 誘導するとしたら怪しいのはあの取り巻き達の可能性が高いよね。ただ、そうそう簡単に誘導できるのかな? 良く判らない所が問題、やっぱりもっと情報が欲しい。


「あの3人も同じようなものかな? ただ菊園さんの取り巻きをするほど下位の家ではないかな。だから余計に不思議なんだよね」


「で、貴方は何をしたいの?」


「ん? 僕? 特に何も? 伊藤さんが何か菊園さんの話をしてたから答えただけだよ?」


「ふ~ん、そっか、ありがとう、大体判ったからもう良いわ」


 私はそう言うと、橋本君を追い払うように手を振る。


「酷いなあ、何を考えてるのか教えてくれても良いのに」


「あら、あなたの情報がすべて正しいとは限らないし、私も自分に火の粉が降りかからなければ何もしないわよ」


 そう言って再度追い払う動作をすると、橋本君は苦笑を浮かべながら立ち去る。ただ、その姿すら疑わしいのが難点だね。


「で? ひよりちゃん、何か判ったの? 私は全然判んないんだけど」


「私も、ただやっぱり鳳凰会に入らなくて良かったと思ったくらい」


 梨花ちゃんと玲子ちゃんは苦笑を浮かべているけど、まあ確かに面倒な人とか多そうだからね。


「まあ普通じゃないって事が判ったくらいかな? 数日で突然性格が変わるなんて余程の事がないとあり得ないし、それが少なくとも4人だよ?」


「そうだね、中学デビューと言うには内部組だとすると違和感あるし」


 梨花ちゃんの言葉に私も玲子ちゃんも頷く。


「でもさ、そうなると虐められてた内部組の子も気にならない? そもそも、その子を虐めるメリットも考えないと変だと思うよ」


 そっか、虐められてた理由や、以前の関係とかも問題になるんだね。


「うちのクラスも外部と内部で壁があるしなあ。まあ最初は仕方が無いんだと思うんだけど、もうじき行われる遠足で騒動が起きなきゃいいけど」


「あ、そっか、そんなイベントもあったね」


「一応はクラスの交流イベント的な位置づけだと思うんだけど、班編成とかどうするのかな? 内部と外部を強制的に混ぜるとかしそうで気が重い」


 確かに学校側としてはそんな事を考えそう。

 お姉ちゃんに聞いておかないとかな。


「部活も真面目に考えないと、梨花ちゃんはさっき言ってた文芸部に入るの? ちょっと心配なんだけど」


 玲子ちゃんはお母さんに警告されている為か、文芸部には反対みたいだね。


「先輩達は良い人っぽいよ? あと高等部や大学部の先輩達とも交流があるから人脈広げるのにも良さそうだし」


「でも、一貫校だとどのクラブも似た感じじゃない?」


「それもそうだね。う~ん、他も一応見てみようかな?」


 その後は3人で部活の話で盛り上がったけど、玲子ちゃんは何方かと言えば運動系の部活に入りたいみたいだから梨花ちゃんとは別になりそう。


 私は帰宅部一択だけどね!


 その後、中等部を私一人でぶらぶらと歩いて悪意の濃い場所を浄化して回る。

 これも入学してから毎日行っているけど、何となく誰かに見られている気配が感じられる。


「悪意は感じないんだけど、わざわざ見張るというからにはお爺ちゃん達関連かな?」


 私に誰と特定させないくらいには気配を埋没させるのが上手なので、素人ではないのは確定している。


「それにしても、悪意が溜まるのが早すぎないかな? 中学生ってこんなに悪意を生むの?」


 小学校の時と比較にならないくらいに一日で発生している悪意の量が多い。思春期由来の何かなのかもしれないけど、これを放置していたとしたらと思うと背筋が寒くなるね。


「むぅ、そしてこれもお約束的な何かなんでしょうか?」


 たまたま進んだ先に広がるあり得ない光景、何かしらの部室から滲み出て行く手を遮る悪意に思わず顔を顰める。

 しかも、私がそこへ差し掛かったのを待ち構えていたように、背後のドアからも悪意が滲み出てきて退路を断たれる形になりました。


「計画的なら凄いけど、これの意図するところが判んない」


 悪意を見る事が出来ない人ならそのまま絡め捕られてもおかしくない。でも見る事の出来る私をターゲットとするなら稚拙な罠。そもそも、浄化できますからね。


「とりあえず、浄化!」


 滲み出てきている先も含めて浄化するために、ポーチから小さめの真ん丸ダイヤさんを取り出して浄化を掛ける。


「まあ、これくらいだったら一気にいけるけど、ただ手ごたえがない?」


 悪意を生み出している人なり物なりを浄化したような手ごたえが感じられない為、思わず首を傾げる。

 そして、目の前にある部室の扉に書かれている文字を見て、思わずぽか~んと口を開けました。


「・・・・・・生徒会室?」


 ちょっとまって、この悪意は仕掛けたの? 仕掛けられたの? 自然発生だけは止めてね!

高橋君となっていた橋本君の名前を訂正させていただきました。

ご指摘ありがとうございます><

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ