87:梨花ちゃんと玲子ちゃん
誤字脱字報告ありがとうございます。
佳奈お姉ちゃんの話は話半分で聞いておきましょう。
その後、小学校で一緒だった梨花ちゃんや玲子ちゃんに入学してからの状況を聞き取ります。
「う~ん、同じクラスの鳳凰会の子がちょっと煩わしいかな? でも、どっかの部活に入部すると途端に静かになるって言ってたから」
「ん? ちなみにそれは誰情報?」
「文芸部3年生の先輩」
「え? 梨花ちゃん文芸部に入るの?」
驚きです。小学校時代も特別本が好きといった様子も無かったと思います。
「あ、勧誘受けた時に鳳凰会の話が出て、その時そんな事を言ってたの。あと、文芸部はこの春卒業した前部長が強くて、結構発言力が有るから大丈夫だよって言ってた」
成程、ただ前部長って言うと佳奈お姉ちゃんだよね? そっか、まあお腹が真っ黒そうだしね。
「で、文芸部に入るの?」
「う~ん、まだ悩み中かな? 特に何がしたいっていう訳じゃ無いけど、ただ早く決めないと大変っぽいよ?」
梨花ちゃんの話では、ある程度人数が必要な部活はそれこそ必死に部員勧誘をするみたい。中でも吹奏楽部とか合唱部、運動系はスポーツ推薦とかあるからそれ程ノルマは厳しくないみたい。
「ふ~ん、でも小学生からスポーツ推薦なんてあるんだね、ある意味びっくりな世界だね」
「まあ私達からしたらそんなもんだよね」
梨花ちゃんとそんな話をした後、今度は玲子ちゃんの所へと行きます。
玲子ちゃんも良い所の子だから色々大変かも? たしか順位は32番と梨花ちゃんより上だったし、受験勉強頑張ってたもんね。
「おお、玲子ちゃん大人気?」
「うん、あれ鳳凰会の子だ。私の所にも来た子だよ」
「ふむ、鳳凰会の勧誘かな? 部活でもないのに勧誘が凄いね」
梨花ちゃんと一緒に玲子ちゃんに近づいていくと、玲子ちゃんを取り巻いていた一人が私へと視線を向けて思いっきりギョっとした表情を浮かべるのが判った。
何か思いっきり失礼なんだけど、なんだろう?
そんな思いを抱きながら、玲子ちゃんへと声を掛ける。
「玲子ちゃん、ちょっといい? 今忙しいかな?」
「あ、ひよりちゃん、大丈夫、大丈夫!」
おおう、思いっきり食い気に私に返事をする玲子ちゃんは、そのまま周りにいた人達に友達が来たからと言って此方へとやってくる。
「おお、ひよりちゃん印の魔除けは良く効くわ」
「梨花ちゃん、それ止めて」
玲子ちゃんの周りにいた人達は、私を見ると何か苦虫を噛み潰したみたいな表情で移動していったけど、何だろう? 猶更に胸の中にモヤモヤしたものが残るよね。
「はあ、ひよりちゃん、梨花ちゃん助かった!」
「それは良いけど、鳳凰会の勧誘でしょ?」
「うん、梨花ちゃんに気をつける様に言われてたけど、ここ最近は結構グイグイ来るんだよね」
「今年の一年生は鳳凰会に入る子少なそうだからね」
何か二人の間で会話が成り立っているけど、思いっきり私は置いて行かれてるよね。
その後、中等部にあるカフェテラスへと移動するんだけど、カフェテラスなんてものがある段階ですごいけどね。
「出来れば中等部にもミセスドーナッツが入って欲しい」
「ひよりちゃん、それは無理だよ。高等部にもないじゃん」
玲子ちゃんが笑いながら言うけど、噂では鳳凰会とかは独自のサロンを持ってるとか言われてるし、生徒会は生徒会室でと何か生徒間格差が凄い?
「まあどこの部活も部室では飲食出来る様にしているみたいだけどね、ただ運動部の部室では飲食したくないけど」
「うん、匂いや埃が凄そう」
勝手なイメージでそんな事を話しているけど、ここも一応自動販売機で飲み物を買えるから十分ではあるんだけどね。流石は私立のお金持ち学校だよね。
「でもさ、玲子ちゃんは鳳凰会に入るんだと思ってた」
割と玲子ちゃんのお母さんがそういうの好きなんだよね。だから鳳凰学院への受験も結構過酷だったみたい。確かにブランドではあるんだろうし、その中で鳳凰会へ所属しているとなると思いっきり自慢しそう。
「お母さんも最初は入って欲しいみたいだったけど、私が合格した事を知り合いに自慢してたら色んな人から鳳凰会に入って苦労した話とか聞いちゃって」
玲子ちゃんのお母さん情報によると、鳳凰会内部でのお付き合いではとても子供の毎月のお小遣いとは思えないお金が必要になるみたいです。それこそ、桁が一個違うみたいな?
学費も決して安くないし、塾などの習い事の費用も掛かる中で、新たな出費は出来るだけ抑えたいと思うのは普通かな。
「何かお母さん顔真っ青になってたから、奥様達の集まりも結構お金かかるし、うちはまだ妹がいるからね。流石に妹だけ公立中学って訳には行かないし、妹も鳳凰学院に入る気満々だから」
上流階級のお付き合いとかお金かかりそうだしね。
「余程に裕福じゃないとなかなか厳しいという事なんだ。我が家が上流階級でなくてよかったよ」
「ひよりちゃんの家も十分裕福だと思うよ? 二人も鳳凰学院に入学してるんだもん。学費だって馬鹿にならないでしょ」
「だよね、入学金とか、あと寄付金! これも結構するよね、強制じゃなくてもしないと入学後にとか考えるもんね」
梨花ちゃんと玲子ちゃんが口々に問題点を口にしますが、実は私の場合ちょっと反則な所があるんだけよね。二人には言えないけど。
「でも、玲子ちゃんもこれで鳳凰会からの勧誘は無くなると思うよ? 入りたいなら別だけど、入りたくないみたい何で良かったね」
梨花ちゃんの言葉に、玲子ちゃんは不思議そうな顔をする。梨花ちゃんは思いっきり悪い顔をしているけどね。
「多分それは私と言うかお姉ちゃん絡み? 梨花ちゃん思いっきり悪い顔してる」
「悪い顔は止めて! まあひよりちゃんのお姉ちゃんで間違いは無いけど、何か凄い人みたいで、そのおかげでひよりちゃんと親しい人には鳳凰会も生徒会も声を掛けるのに二の足踏んでるって」
「うそ! すごいねそれ。ひよりちゃんのお姉さんってあの優しそうな人だよね? ひよりちゃんの家で何度か会ってるけど、そんなに凄い人なの? こんなお姉さんいたらいいなあって憧れてたんだけど」
玲子ちゃんも梨花ちゃんも、何度か我が家に遊びに来ている。その際にお姉ちゃんには会ってるし、お姉ちゃんとお話もしているからね。
「うん、何かね、鳳凰学院の中にファンクラブがあるって、中等部だけじゃなくて高等部にも、大学部にもファンがいるって言ってた」
「あ、何となく判る気がする! ほっこりした感じの美少女って感じでお話してても優しいし、ファンクラブあるなら私も入りたいかも」
「ごめん、そこで私を見られても困る。お姉ちゃんのファンクラブと私は関係ないし・・・たぶん」
何となく頭の上にお父さんの顔が浮かんだけど、流石に鳳凰学院の中にあるファンクラブは関係ないと思う。ただ、主催者不明と言うのはそれはそれで怖いけど。
「鳳凰会が静かになっても静かにならないのは生徒会だけどね。私達は対象から離れてるから平気だけど、うちのクラスの成績順位が高い子達は結構大変だよ」
「特別進学クラスは除外されるんだよね? そうしたら玲子ちゃんも危ないんじゃないの?」
特別進学クラスは大体が成績上位20名の少数先鋭クラス。そこに高等部での入学組が入るから結構熾烈な成績争いがある? 一般入試組でもお姉ちゃんみたいに上位へと食い込む人がいるしね。
「私は鳳凰会が動いたから対象外。生徒会とはやっぱり対立しているから、あの対立も良く判んないんだけどね」
「どっちも面倒だよね。こないだまで小学生だったのに、何でこんなにドロドロしてるのよ」
玲子ちゃんも梨花ちゃんも溜息を吐いているけど、そう考えると私は成績が悪くて助かったのかな?
「生徒会はともかく、鳳凰会とは何かゴタゴタしそうなんだよね。うちのクラスに菊園さんって子がいて、思いっきり鳳凰会の悪い部分を抽出したみたいな子っぽいの」
「悪役令嬢系? 何か先輩達が喜びそうだね」
「先輩って鳳凰に梨花ちゃん知り合いいたっけ?」
「何かね、文芸部の先輩と親しくなったらしいよ」
「うわ! 真面目に? 文芸部と被服部はヤバいって言われてるのに!」
玲子ちゃんが聞き捨てならない発言です。
どちらもすっごく聞きなれた名前です。
「え? ヤバいって? 初耳なんだけど!」
「お母さんから近づいちゃ駄目って言われたのがその二つの部活。なんか裏の女帝が仕切ってるとか、癒しの女神がいるとか、訳わかんないから気をつけてって言われた」
「・・・・・・裏の女帝?」
お姉ちゃんからは連想できないので、恐らく佳奈お姉ちゃんっぽい気がする。そうすると癒しの女神がお姉ちゃん? 女神・・・・・・何かイメージが違う?
「お姉ちゃんがその被服部だったのと、お姉ちゃんと仲の良い人が去年の文芸部の部長さんだった。逆にそのせいで絶対に入部したくない部活トップ3に入ってるけど」
「え? ひよりのお姉さん被服部だったんだ。そっか、文芸部は判んないけど、被服部って何か家庭的で似合うかな?」
「文芸部の前部長ってそのまんま裏の女帝だよ! うわ、ひよりのお姉ちゃん凄い人と知り合いなんだね」
何か良く判らない二人の評価だけど、そもそも被服部かあれ? って部活だからなあ。絶対にコスプレ部とかにした方が正しい気がするけど、そうしたら学校側に廃部にさせられそうだけど。
「そんな事より、二人は菊園さんって知ってるの? 私あんまりそういうお金持ちの家とか、名家とか知らないから知ってたら教えて欲しいかも」
私の問いかけに二人して顔を見合わせるけど、どうやら二人とも良く判っていないみたい。
「鳳凰会に入ってるくらいだから、たぶんお母さんに聞けば判ると思う。今日帰ったら聞いとくから判ったら電話するね」
そっか、玲子ちゃんのお母さんなら判るかな?
「うん、宜しく~、お姉ちゃんに聞いても多分判らないしね」
「伊藤さんも水臭いなぁ、菊園さんの事を知りたいなら僕が教えてあげるのに」
私がそうお願いしていたら、突然私の背後から声が聞こえて来た。
ひより:「佳奈お姉ちゃんが裏の女帝って呼ばれてるの知ってる?」
小 春:「え? ほんと? 腐の女帝じゃなくて?」
ひより:「うん、今日友達が言ってた。でも、何で腐の女帝なの?」
小 春:「えっと・・・・・・色々と腐ってるから」
佳 奈:「色々って何よ!」