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86:手近の人にまずは聞いてみましょう

誤字脱字報告ありがとうございます。

 鳳凰学院における情報収集の必要性を感じた私は、帰宅してきたお姉ちゃんを捕まえて、お姉ちゃんが入学時から中等部卒業に至るまでの出来事を事細かに聞き取る事にしました。


「という事で、お姉ちゃんが入学したときはどうだった?」


 リビングでお姉ちゃんを前にしてノートを開く私、そんな私を苦笑を浮かべて見るお姉ちゃん。

 その様子からしてお姉ちゃんが入学した時も何かしらの騒動があった感じです。


「う~ん、そうね、まず最初に声を掛けて来たのは生徒会かな? やっぱり順位表が貼り出された日のお昼休憩にやって来たわね。それこそ、生徒会に入ってほしいと言われたけど、即決で断ったわ」


「おお! お姉ちゃんらしからぬ即決? 何かあったの?」


 お姉ちゃんは割と周りの空気を読むし、あまり即断せずに色々考えてから決めるタイプなんだよね。ましてや、相手がどういう人か判らない場合はちゃんと調べてから行動する。

 そんなお姉ちゃんが即決で辞退って割と珍しい。


「最初は良かったんだけど、何か話しているうちに差別的発言が結構あって、勉強出来るからってすべてが優れている訳じゃないでしょ? 何かそういう所が合わないと感じたから、鳳凰会とは別の意味でエリート意識が強かったわ」


「なるほど、お姉ちゃん上から目線とかの発言嫌いだもんね」


「やっぱり価値観が違う集団には入りたくないわね。鳳凰会は簡単よ? そもそものお誘いが無かったわ」


 まあそうかな、我が家ってもろ庶民だもんね。

 良くて中流家庭、お父さんとお母さんはいっつもお金の遣り繰りで苦労してるし、それを私達に隠さないからね。


「これでも小遣いを自分で稼げるようになったのは大きいわね。学費とかもそうだけど、子供の付き合いでも掛かる費用って馬鹿にならないもの。ましてや二人だしね」


「うん、よく鳳凰学院に入れてくれたね」


「うん、今更だけど思いっきり迷惑かけたと思う」


 学校の費用の事とか一応は考えてたみたいだけど、行きたければ頑張りなさいとしか言われなかったもんね。そういう所はお父さんもお母さんも無理してくれている。お父さんのお小遣いが日々減って行ってるのも知ってる。今は私もお姉ちゃんも例のアルバイトでお小遣いと言うには大きな金額が入ってくるけど、基本そのお金には手を付けないのが暗黙の了解です。


 使っていいのはお姉ちゃんが月に1万円、私は5千円までです。ちなみに携帯代金は別だよ?


「お姉ちゃんは高等部で授業料半額免除なら行けたんでしょ?」


「まあね。でも年間通して学年順位10位以内を最低2回は結構ハードル高いから断った。お母さんも無理しなくて良いって言ってくれたし」


 う~む、50位以内すら入らなかった私とは別次元ですね。


「ひよりは何番だったの?」


「全体で83番。一部の教科が思いっきり足引っ張った」


 そう言って笑顔で答えると、失礼な事にお姉ちゃんは思いっきり溜息を吐いてくれます。


「もう少し真面目にやれば50番以内は簡単にいくでしょうに」


 まあ問題はやる気の部分なんだよね。それはともかくとして、話がズレて行ったので軌道修正をします。


「それで、その後の生徒会とか鳳凰会は絡んでこなかったの?」


「う~~~、まあいずれ判るだろうから言っとくけど、思いっきり絡まれたわね」


 ここで出てくるのが以前面識の出来た伊集院さん。


「綺麗な人だなあって思っていたんだけど、偶々伊集院さんがハンカチを落として私がそれを拾ってあげたの。それで少しお話をしたら、すっごく良くしてくれるようになって」


「なんとベタな展開!」


 そっから鳳凰会の伊集院さんの取り巻きが暴走、鳳凰会を目の敵にしている生徒会も暴走、うん、なんってラノベ? もしかして百合系? まあ私は理解はある方ですよ?


「ともかく、あの呪い騒動とかもあったし、御蔭で高等部に進学しても伊集院さんとは仲良くさせていただいているわ」


「なるほど、鳳凰会ではなくって伊集院さんとはなんですね」


 苦笑するお姉ちゃんだけど、まあお姉ちゃん自体にも取り巻きがいるっぽいですからね。


「それでも浄化の御蔭でずいぶん変わったみたいよ? 先生から聞いた話だと、以前はもっと根深い対立や、それこそ虐めもあったみたい。たぶんだけど半年もすると毒っけが抜けて穏やかになるわ。経験上だけどね」


 ふむふむ、半年もすればその人に溜まった悪意が浄化されて行って、普通に戻るといった感じなんでしょうか?


「そういえば、高等部はどうなのです? 中等部の校舎ではそうでも、高等部ではまたやり直しでなのす?」


「最初ほどでは無いけど、それでもギスギスはしているかな。特に進学組の3年生なんかは殺気立ってるって聞くけどね。でも3年生の教室に行くことは無いからまだ良く判らないわね」


 お姉ちゃんの話を聞いているとそれ程問題にならないように思うのだけど、次は魔女さんの所に行ったついでに佳奈お姉ちゃんに話を聞いてみましょう。


「という訳でお話を聞きに来ました!」


「はあ、まあひよりだし、私も休憩できるし良いけどね」


 魔女さんの所に行ったら何故か自転車漕ぎをさせられていた佳奈お姉ちゃん。

 まずは体力づくりというには時間が経過していると思うのです?


「先日、山に薬草取りに連れて行かれたの、そしたら思いっきりバテて動けなくなったわ」


「うん、まあ山歩きに慣れていないあるあるですね」


 平地を歩くのとは明らかに使う筋力も、消費される体力も違いますからね。


「なるほど、魔女さん達のスタイルが良い理由はそこら辺なのですね」


 納得です。3人ともスタイルは良いですもんね。ただ、ある一部位は個人差がありますが。


「で? 鳳凰学院の事だっけ? そうねぇ、最初は酷かったわね。それこそ特権意識の塊や、変なプライドを持った馬鹿が多すぎて、その最たるものが生徒会と鳳凰会だったわね」


「やっぱり最初はなのです? お姉ちゃんから半年もしたら落ち着いたって聞いたのです」


 私の言葉に佳奈お姉ちゃんは思いっきり怪しい笑いを口元に浮かべますが、うん、魔女っぽいですね。


「そうね、半年もしたら第三勢力の日溜りの会が力を付けて来たからねぇ」


「佳奈お姉ちゃん思いっきりニヤニヤ笑いです。それって前にお姉ちゃんのファンクラブって言いませんでしたっけ?」


 朧げな記憶ですが、佳奈お姉ちゃんから聞いた覚えがあります。


「うん、まあ実態はそうなんだけど、そもそもの発足理由は小春に告ろうとした男への牽制から始まったんだよね。傍にいると癒されるとか何とかってさあ、私にはそんなのなかったのに!」


 佳奈お姉ちゃんの説明に、だんだんと私情が混じり始めましたよ。


 まあ確かに佳奈お姉ちゃんもお守りを持っていたから、佳奈お姉ちゃんの周囲でも浄化はされていたと思うんだけど、佳奈お姉ちゃんは何方かと言えば「触るな危険」って感じだもんね。


「それでさ、あの当時の馬鹿生徒会長が小春の周りを付きまとい始めてさ、伊集院さんが牽制してくれたんだけど、今度は鳳凰会の馬鹿連中が平民が何たらって、いやもうね、いつからこの国は貴族社会に戻ったのよ」


 うん、まあ成程、あの当時を思い出すと、確かにお姉ちゃんが生徒会の事を良く言ってなかったよね。ちゃんと仕事をしないとか、クラス委員の子達が泣きついて来てとか。


「鳳凰会の人はクラス委員とか、生徒会メンバーとかにはならないんだよね?」


「そうね、以前に慣習みたいな物って言ってたけど、そもそもパワーバランスが鳳凰会の方が圧倒的に上だから。両親の勤め先の偉いさんの子供、そんなのに面と向かって逆らえる子供って結構いないよ?」


「あれ? そうすると生徒会の人達は?」


「あっちは官僚の子とかが多いわね。そもそも勉強できるから進路もだいたい官僚目指している子が殆どだしね」


 うん、世知辛い世の中の縮図をここに見ちゃったね。


「でも、それでも鳳凰会の方が立場は強いの? 民間企業とかより官僚の方が強い気がするよ?」


「そこはね、政治家は票が集められないければただの人だし、官僚の人事権が絡んだり?」


 うわぁ、見ちゃいけない世界だね。だからこんなにドロドロしているんだね。


「まあ、そんなドロドロしたのを綺麗にしたのが小春だから、自然と人望は集まるわね」


「・・・・・・私との違いは何なのでしょう?」


 私だって小学校で同じように浄化をしているし、悪意が見える分お姉ちゃん以上に有能なはずなのです。


「ひより、それはね、私の疑問と一緒だと思うよ?」


「・・・・・・がっくし」


 私が床に両膝をついて絶望を体現していると、佳奈お姉ちゃんは何か騒ぎ始めました。

 ただ、この佳奈お姉ちゃんと同じというか、下手したらそれ以上に問題があるってことですよね?


「佳奈お姉ちゃんはお守りだけ、でも私はお姉ちゃんと同じ浄化があるのですよ? それで同じって」


「あ、あ~~~~、成程。そ、そうだよね、・・・・・・どんまい!」


 くぅ、さっきと声のテンションが明らかに違うのです!

小 春:「ん? ひよりはひよりで濃いファンがいそうよね?」

佳 奈:「あ、そうだね。でも、それを喜ぶかは微妙だけど」

小 春:「そもそも、あの子が恋愛とかに興味があるとは思えないんだけど?」

佳 奈:「それって小春もじゃない? まあ私は別に小春が百合っても相手が私じゃ無ければ許容するけど」

小 春:「佳奈? ごめん、意味が判らないんだけど? 突然言い出すのよ!」

佳 奈:「え? 伊集院先輩と百合百合しいって噂だけど?」

小 春:「はあ? 誰よそんなデマ流してるの! 親しい先輩ってだけでしょ!」

佳 奈:「・・・まあ、それならそれでいいんだけど・・・」

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