83:入学式はブッチしちゃいました。
誤字脱字報告ありがとうございます。
お爺ちゃんや神主さん、魔女のお婆ちゃんから聞いたところでは、敵の拠点を強襲し術者を捕らえた事で状況が更に一気に進んだみたいです。
「今回捕えた者が強硬派のリーダー的な存在だったようでの、穏健派としても更なる捕縛者が出る事は望んでおらんようなんじゃ」
「それ以前に、これ以上こちらと敵対するだけの術者が居ないという事もありそうです」
そもそも、強硬派に名前を連ねているような者は、術者としても力の強い者が多い傾向が聖女教に限らずあるそうです。その中で、すでに5人の術者が逮捕されているのですから、聖女教としてもこれ以上の被害が出れば存続の危機もあり得る・・・・・・のかな?
「でもまだ潜伏している強硬派もいるのですよね?」
「はっきりとは判りませんが、まだ油断は出来ないと思いますね」
「うむ、穏健派と名乗っておるが、強硬派と裏で繋がっておってもおかしくはないでの」
襲撃後、慌てて欧州にある聖女教指導者の一人が日ノ本へとやって来るみたいです。ただ、その際にお姉ちゃんに面会したいというのは思いっきり拒絶させていただきました。
「この度、お姉ちゃんは無事にユーステリア神教の司祭に成りました。だから他宗教の聖女なんてとんでもないのです」
私の宣言に、お姉ちゃんはうんうんと頷いていますが、お爺ちゃんは思いっきり首を傾げています。
「聞いたことの無い宗教じゃが、何かの分派かの?」
この世界で広まっている宗派では無いですからお爺ちゃんが首を傾げるのは致し方ないのです。
「私やお姉ちゃんの魔法はユーステリア様のお力なの。もっと小さい時に神託を受けたんだよ」
私の言葉にお爺ちゃんはちょっと不思議そうな表情を浮かべます。
「ふむ、ただそれで聖女教が納得するとは思えんのじゃが」
「うん、だから会いたくない」
「そうね、会っても意味は無いわね」
私達が面会を拒否する事は想定していたみたいなお爺ちゃん、だけどその後のユーステリア神教がどうも気になるみたいです。聖女教の事よりも、そちらの情報が欲しいみたい。
「別に今後布教したりする予定は無いです。ひよりのみならず、私にも加護を賜りましたから、これで信仰しないなんて有り得ないだけです」
実際に目に見えてご利益はありますし、もっともそのせいで今があるとも言えるんだけどね。
「ふむ、その話は後日改めて聞かせて欲しい物じゃのう」
そう言って、今日の所はお爺ちゃんは帰って行きました。
お爺ちゃんが帰って行って、漸くゴタゴタした騒動も一応の落ち着きを取り戻しそうな気配に二人でのんびりとお茶を飲んでいる。
そんな私達に思いっきり爆弾を落とす電話が掛かって来るとは私達は思いもしませんでした。
トゥルルルルル
みんな携帯を持っているから滅多にならない家の電話が突然鳴り響きます。
「う、何か嫌な予感がする」
「そうね、家の電話が鳴るなんて、お父さん達に何かあったかも?」
恐る恐る受話器を持ち上げるお姉ちゃん。その横で私は耳を澄ませて会話を聞き取ろうとする。
「はい、伊藤ですけど」
思いっきり硬い声でお姉ちゃんが名前を言うと、電話の相手が名乗り声を上げる。
「あ、伊藤さんのお宅ですね、わたくし鳳凰学院中等部で一年生を担任しています小西と申します。お母さまでしょうか?」
「え? あ、小西先生ですか? 伊藤小春です」
「あ、伊藤さんね、よかったわ。ひよりさんと連絡はつくかしら?」
「ひよりですか? あの、横にいますが何かありました?」
「え? 横に? 体調が悪いとか? 今日は入学式だったのだけど欠席なのにご連絡がなかったからお電話させてもらったのだけど」
「え? 入学式?」
「えええ! 今日って何日だっけ!?」
私とお姉ちゃんの様子に、どうやら先生はこちらの状況を察したようで思いっきり溜息を吐かれました。
「ちなみに、明日は高等部の入学式ですが、小春さんは準備できていますか?」
「えっと・・・え、えへへ」
お姉ちゃんの誤魔化し笑いは通じなかったようだけど、私の記念すべき入学式! おかしいよ? 何でお父さんもお母さんも忘れてるの!
その後電話を替わってもらって先生に謝罪して、明日は必ず行きますと言うと明日は2、3年生の始業式でお休みだと言われちゃいました。
「う~~~ん、お姉ちゃん、もう4月だったんだね。すっかり忘れてた」
「私も真面目に忘れてたわ。宿題をさっさと終わらせた弊害がこんな所にあったなんて」
中高一貫校の為にお姉ちゃんは春休みの宿題があったんだよね。
でも、それはさっさと終わらせちゃうあたりが私と頭の出来が違う気がする。
「私だったら絶対にお休み最終日にウンウン唸ってると思う」
これまでの小学校時代でもそうだったもんね。
それでも小学校はまだ理解が及ぶ範囲だけど、前にお姉ちゃんの宿題見てたら知恵熱が出そうだった。
まったく判んなかったよ、この世界って訳わかんないよね。
そんなこんなでお姉ちゃんは慌てて明日の準備に、私は明後日の準備を始める。
「お姉ちゃん、不味いよ、名前とか全然書いてなかった」
新しい靴やら何やらと名前を書かないといけないのも、思いっきり忘れてて名前用のマジックペンで書き書きし始める。
そんな私を余所に、お姉ちゃんは明日提出の書類だ何だの再確認をしている。
「何か春休みがバタバタしたせいで休んだ気がしない」
「うん、卒業式は3月初めだったのにね」
その休みが長かったのも良くないんだと思うけど、よく春休みで問題が一段落したなあと感慨深いです。
「でもまだ聖女教の人が来るし、完全に解決してないんだから油断しないでね」
「うん、でもこうなるとお姉ちゃんと同じ敷地内なのは結果的に良かったんだね」
何かあっても察知できるし、駆けつけるにも距離が近い事は良い事だね。
「でもさ、お父さん達も帰って来てからひよりの入学式忘れてたの知ったら絶対に絶叫すると思う」
「う~ん、でも珍しいよね? お父さんはともかく、お母さんってそう言う所は結構しっかりしてるのに」
家の大きなイベントごとには前向きなお母さん。クリスマスは当たり前として、お父さんとの結婚記念日だってしっかりとお祝いするのにね。
「そう考えると何かおかしい? お母さんに何か起きてるとか?」
「ありえるかもしれない、バタバタしてお母さんの変化を見落としたかも」
これは拙いです。最近はお母さんの周囲にもカラスさんとかが居て、逆にそれで安心しちゃってたかもしれません。
「今日お母さんが帰ってきたら確認する。でも悪意とか異常は無かったし、お守りもちゃんとしてたよ?」
昨日のお母さんの様子を思い出してみる。
ただ、特に何か日頃と大きく違う所なんかは思い出せません。
「お父さんもだし、お母さん大好きなお父さんがお母さんの異常に気が付かない訳無いんだけど」
お姉ちゃんも同様に首を傾げる。
結局の所、明確な回答どころか推測すら建てる事が出来ずにお母さんの帰宅を迎えました。
じ~~~~~~、じ~~~~~~~
「お姉ちゃん、どう? 何か変な所ある?」
「う~~~ん、特にないわ。でも、強いて言えば服装?」
「服装?」
お姉ちゃんに言われてお母さんを見るけど、普通の服だよね。
そんな私達の怪しい挙動にお母さんが気が付かない訳は無く、逆に質問を受けちゃいました。
「貴方達どうしたの? 珍しくお母さんの後を着いて回ってるわね」
首を傾げるお母さん。
そのお母さんにとりあえず今日の事を伝えてみます。
「あのね、うっかりしてたんだけど、今日は鳳凰学院中等部の入学式だったんだって。先生から電話があった」
「え!? うそ! あ、本当だわ! 3日が入学式だったのよね!」
うん、安定のお母さん大パニックです。思わずほっとする私です。
「そうすると明日は小春の入学式? あ、でも有休申請が、あああああ、何で忘れてたの!」
「私は中等部からの繰り上がりだから、それに高等部の入学式は保護者は不参加よ?」
お姉ちゃんの言葉がとどめの一撃になったのか、お母さんはガックリと椅子へ座りこんじゃいました。
「ひより、ごめんなさい。お母さん思いっきりうっかりしてて。ああ、なんで忘れてたの」
思いっきり嘆くお母さんを慰めながら、ちょっと疑問に感じたので思わず尋ねます。
「でも、お母さん前に3日は有休取ったって言ってたよね? 今日会社で何か言われなかったの?」
普通はお休みの日に出社してきたら周りの人が何か言いそうですよね?
「お母さん、今日は会社をお休みしてたの。だから全然気が付かなかったの」
「え? お休み? なんで?」
お母さんは話そうか話すまいか悩んだようでしたが、結局話す事に決めたのか鞄から何かの封筒を取り出しました。
「・・・・・・、ええっと」
「お母さん、もしかしたら転職するの?」
「ええ、色々とあったから今のままの会社だとどうなのかって悩んでたの。それでね、思い切って転職する事にしたの」
お母さんの取り出した封筒、その封筒に書かれていたのは文字は”宮内庁”でした。
昨日見たら、久しぶりにローファンタジー日間で80位にいました><
久しぶりのランキング入りでした。皆さんありがとうございますm(_ _)m
そして、まさかのお母さんの転職活動が発覚! でも、そもそもどんなお仕事してたのでしょう?
まさかの宮内庁の封筒ですがはたしてどうなるのでしょう?
勢いで書いているので作者すら判っていない怖さがありますよ(ぇ