表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/135

78:前世の掟

誤字脱字報告ありがとうございます。

 お姉ちゃんと連れ立って家を出て、駅へと向かって歩いているのですが時間と共に嫌な予感が強くなっていきます。これだったら意地でもお姉ちゃんを引き留めるべきだったかも。


 お姉ちゃんと一緒に魔女さんの家に向かって家を出た私ですが、そもそも移動のための手段が歩きと電車しかないので駅へと歩いて向かいます。お姉ちゃんが自宅へと帰ってきた段階で恐らくですが安心して人数が減ったのかな? 残念なことに親衛隊の人が慌てて着いて来てくれますが、普段の半分くらいの人数です。


「お姉ちゃん、一応だけど手をつないで、何があるか判らないから。それと、今から家に帰ろ」


「ん? え? 何か起きそうなの?」


 お姉ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んで手を繋いでくれます。


「わかんないけど、何となく嫌な予感がするの」


「ひよりごめんね、家に帰ろ! あたし考えなしだった。明日でも問題ないのについ行動しちゃった。ひよりが嫌な予感がするっていうなら絶対に何か起きるよ、急いで帰ろう」


 お姉ちゃんは私の手を握って慌てて家に引き返そうとしますが、私は私で携帯からお爺ちゃんに連絡を入れようとしました。でも、携帯はまたもや電波が不通です。


「お姉ちゃん、たぶん結界に閉じ込められた」


 周りを見ても停電をしているようには見えない為、またもや何らかの結界の仕業だと思うのです。


「え? あ、ほんとだ、さっきまでいた人が見えなくなった」


「お姉ちゃん、この国なのか世界なのか判らないけど、何か結界魔術だけ突出して進歩してる気がしない?」


 恐らく事前に私達が通りやすい所に仕掛けられていたんだと思う。何時ぐらいからの仕掛けか判らないけど、そもそも他者と隔離する結界って技術的にすごいんだよね。


 そんな事を思っていると、案の定目の前の空間に突然見た事のない50歳くらいの男が現れた。


「ようやくお目に掛れましたな」


 そう言ってすっごく怪しいというか嫌悪感すら感じる眼差しでお姉ちゃんを見る中年オヤジ。お姉ちゃんが思わず身震いするくらいだから結構ヤバいよあの視線。


「人攫い~~~!」


 私はそう叫ぶとポーチから取り出しておいた魔道具を男の足元へと叩きつける。


 パリーーン!


 硝子の砕けるような音が響くと同時に魔道具から物凄い勢いで魔力が魔道具周辺に広がるけど、魔力を見る事の出来ないお姉ちゃんはキョトンとした顔で壊れた魔道具を見ているね。


「ひより、何も起きないんだけど?」


「くぅはっ・・・・・・、う、うげ、うげ」」


 お姉ちゃんの感想とは裏腹に、目の前に現れた中年オヤジは地面へと四つん這いになって嘔吐を繰り返しているけど見てて気持ちの良い物じゃない。ただ、ついでにだけど周囲に貼られていた結界はものの見事に破られたみたい。


「う~~~しぶといですね、もういっちょいっときましょう」


 私はポーチからもう一個同じ魔道具を取り出して中年オヤジの足元へと叩きつけます。


 パリーーン!


 先程と同様に魔道具を中心に中年オヤジを巻き込むように魔力が周囲へと噴出し、それに耐えられなかった中年オヤジはそのまま気絶したようです。


「うわ、自分が吐いたものの上に倒れてる。私駄目、絶対に触れないわ」


「うん、それでこそお姉ちゃんですね」


 相変わらずこういう時にもピントがズレた反応をするのはお母さんの血でしょうか? 併せて結構図太い神経してますよね。

 ただ、そんな間にも結界が解けたために慌てて親衛隊の人達が此方に気が付いて駆けつけてきました。


「お嬢さんたち無事でしたか! よかった!」


「甲2号、乙3号、お前達はあそこで倒れている者を拘束せよ!」


 こちらに来た親衛隊のおじさんがそう言って他の人に指示を出していますが、私は取り急ぎお爺ちゃんへと報告です。


「あ、お爺ちゃん、うん、あのね、また変なのに絡まれて、うん、うん、結界は壊したよ。うん、倒れてる。今親衛隊さんが拘束してる。・・・・・・あ、それはね、魔女さんのお店に行こうと思って、あ、うん、うん、判った」


 この短時間でお爺ちゃんに私達姉妹が消えた事は連絡が行ってたようで、お爺ちゃんに現状を説明します。


「あ、うん、は~い」


 私は電話を切った後、親衛隊のおじさんに声を掛けました。


「お爺ちゃんが親衛隊さんの車で一旦家に帰りなさいって言うんだけど、車あるの?」


「あ、はい、今此方に回しますので少々お待ちください」


 そう言うと親衛隊のおじさんも慌ててどっかに電話を掛けました。


 そんな中でお姉ちゃんだけが静かに中年オヤジの捕縛される姿を見ていますが、外傷は無いと思うので見ていてもあまり勉強にはならないと思います。


「お姉ちゃん、車が来たらお家に帰るよ。お爺ちゃんが魔女のお祖母ちゃんを連れて来てくれるって」


「え? あ、お爺ちゃんね。ありがとう。ところでさ、ひより、あれって命に別状は無いの?」


 完全に昏倒しているのだろう中年オヤジは結構手荒に拘束されているけど起きる気配は感じられない。

 もっとも、そんなに簡単に復帰されても困るんだけどね。


「うん、あれは体内に作られてる魔力回路を一時的にマヒさせたの。魔力が高い人ほど影響は受けるんだよ。あの人は結構魔力が高かったからダメージも大きかっただけ」


「何か言いかけてたけど、この結界とかから推測すると例の聖女教の人達だと思う」


 私の言葉に落ち込むお姉ちゃん。


 ただ私は実はさっきからまだ自分とお姉ちゃんを包む結界を展開させていた。


「ひより、まだ何か警戒しているよね? まだ何かあるの?」


 私がさっきから周囲へ魔力探知を行っているのにどうやらお姉ちゃんも気が付いていたみたいだった。


「うん、いやな予感の割には簡単すぎるから」


 私とお姉ちゃんがそんな事を話していると、一台の黒塗りの高級車がこっちへと近づいてきた。


「まずは車にお乗りください、そうすれば・・・・・・ん?」


 親衛隊のおじさんが訝しそうに近づいてくる車へと視線を向けるけど、私達には何が変なのか判らない。


「おじさんどうしたの? ナンバーもいつも見ている車だよ?」


 一応だけど親衛隊の人達が使う車のナンバーは覚えている。というか、すっごく覚えやすいナンバーだからというのもあるんだけど。

 そんな車を凝視していたおじさんが、突然私達に手を伸ばして来た。


「運転手が違います! こちら、イテッ!」


 今張り巡らせているのは対物理もついた結界だから、おじさんの手は思いっきり弾かれちゃった。ただ、おじさんの言葉を聞く前から嫌な気配だったので、私はお姉ちゃんの手を掴んでいた。


「お姉ちゃんこっち! 下手したら突っ込んでくるかも、おじさんも逃げて!」


 車からは魔力の魔の字も感じられないから、恐らくは先日の襲撃犯のような人達なんだろう。

 ただ、その車は私達を視認したのか一気に速度を上げて此方へと向かってきた。


「うわ! ちょっと、誘拐から暗殺に切り替えたの!?」


 明らかにあの速度で突っ込まれたら死ねるよ? もっとも、何もしなければだけど今張っている結界にダメージが入るのは確かだよ。恐らくだけど相手は結界の事を知らないのだろうし、更に何かを企んでいる気がするので私はお姉ちゃんの手を引いて車を避けるために前方に走り出した。


「ちょ、ちょっと! ひより、向かってってどうするの!」


 慌てるお姉ちゃんだけど、少し前には頼りないながらも車避けのポールがある。あのポールを利用して近づいてきたら左右どちらかに逃げるしかないよね。ただ、これだけでなくもう一手打っておくけどね。


 私はポーチから真ん丸ダイヤさんを取り出して、それを自分達が走っていく方向の道路へと投げる。


「フェアリー召喚!」


 その言葉と共に前に転がった真ん丸ダイヤさんが発光し、その後に3メートルくらいの大きさの某人気ゲームのイラストを模倣したフェアリーが現れる。


 キィキィキィキキ~~~~~


 迫っていた車は突然目の前に現れた何か判らないものを咄嗟に避けようとしたのか、思いっきりハンドルを切り路上で急停車した。こうなると、当初の予定を変更して今度は今来た方向へと逃走を開始する。


「うわ、すごい! ひよりいつのまに召喚魔法なんて覚えたの!」


「あれはただの映像なのです!」


 逃げてるさ中にもお姉ちゃんは後ろを振り返りながらフェアリーを見ている。

 

「お姉ちゃん、前を向いて走って! 転んじゃうよ!」


「あ、うん、わかった!」


 私達がバタバタしている間に、周囲にいた親衛隊の人達は停車した車へと殺到する。ただ、背後から聞こえて来た音に私は思わず立ち止まって振り返った。


 パンッ! パンッ! パンッ!


「え? 嘘、マジ!」


 想像していたより甲高い、それが人の命を奪う道具とは思えないほど軽い音だった。それが連続して聞こえ、私が振り返った先では親衛隊の人数人が倒れるのが見えた。


「銃、銃もってるよあの人!」


 恐らく車から出てきたのだろう黒尽くめの男が、手に持った銃らしい物を親衛隊の人に向けていたのが見える。そして、その視線が此方を向いたけど、私はそんな事はどうでも良い。問題はおじさん達が死んだかもしれない。その事が頭の中を占めていた。 


「ふざけんな! 魔導士を舐めるのもいい加減にしろ! サンダーアロー!」


 私が付きだした手から、光の輝きが一気に飛び出し黒尽くめの男を貫き、男はそのまま数メーターも吹っ飛ぶ。前世で私が最も多用した速度重視の魔法だ。ただ、この世界で対魔法装備も無い者が受ければひとたまりもない。前世で幾度も幾度もくどい様に師匠から教わり、自分も弟子達へと伝えて来た言葉が今更ながらによみがえってきた。


 生きるためには躊躇うな。躊躇えば何かを失っていくぞ。


 あの世界はそういう世界だった。魔物の脅威に立ち向かい、人の悪意に立ち向かい、その中で自分の大切な物を必死で守り続けて来た。


「あああ、大事なことを私は忘れていたのかもしれない」


 それがこの世界でどう受け取られるか。ただ、それでも守るために躊躇ってはいけないんだ。前世も、この世界だって本質は変わらないのだから。


 ただ、この世界の偽善ともいうべき平穏を、信じたかったんだけどなぁ。


 私はポーチから魔石を取り出す。なぜなら、周囲から悪意の気配が次々と沸き上がり此方へと向かってくるのを感じたから。

コメディー何処行っちゃったの?

何か突然シリアスさんが顔を出してきたんだけど?

おかしいです、何でこんな展開になっちゃったんだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >>コメディー何処行っちゃったの? まあまあ。 たまにはシリアスさんにもお仕事をさせてあげてくださいな。 でないと、本来のコメディさんが仕事疲れで、グレてシリアスさんになってしまいますよ?…
[一言] FC版の伝説のオウガバトルのフェアリーの絵が好きです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ