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75:化粧水は作れますか?

誤字脱字報告ありがとうございます。

 お姉ちゃんのお友達から始まった化粧品問題? 薬品と言ったら魔女かなという事で、今は佳奈お姉ちゃんも一緒に魔女のお婆ちゃんの家に来ているんですが・・・・・・。


「ぜんぜん魔女のお家っぽくないね」


 何となく山に近いところにある蔦に覆われた古びた一軒家をイメージしていました。

 でも実際に来てみたら、一階が薬局になっている4階建てのビルとは誰が想像するでしょうか?


「今どきの魔女はこんなもんさね」


 本来の魔女としての仕事なんて年に数回あるかないかくらいで、生活の基盤は思いっきり薬局での収入と聞いて思い切り驚いちゃいました。


「あたしらに回って来る前に賢徳達が何とかしちゃうさね。まあ得意分野的に薬局は魔女の領域と言うのも間違いないさね」


 そう言ってコロコロと笑う姿はとても魔女とは思えないです。思いっきり白衣着てるしね。


「化粧水の事で相談があるって聞いたけど、お姉さんすっごい興味があるわ」


 お婆さんの横に座っているお婆さんの娘さんのサルースさん。お婆さんの娘さんって聞いたけど、見た感じ30歳前後にしか見えないけど本当は何歳なんだろう?


「あ、サルースお姉さんが前に気にしていた私の使ってる化粧水、あれを欲しいって人が増えてるらしくて、でも一個人で生産なんかしてられないからお願いできればという事です」


 佳奈お姉ちゃんは夏休み中もここで修業をさせられてたらしく、お婆さんの所の人達とすでに顔なじみです。知り合いの方が話しやすいかと簡単な状況説明は佳奈お姉ちゃんが行ってくれます。


「ああ、あれは私もすっごく興味があったんだよね。出来れば成分検査とかもしたかったし」


 サールスさんの反応は悪くなさそうだけど、お婆ちゃんはちょっと首を傾げています。


「あの化粧水を広く販売するのかい?」


「何か色んな所から売って欲しいって言われているので、ただ我が家では難しくて何処かにお願いできないかと」


「お婆ちゃんの所なら作れるかなと思ったの」


 お願いしたとしても、そもそも作れなければ意味が無いですしね。


「ふむ、その化粧水を見せて貰っても良いかね」


 鞄からお姉ちゃんが取り出した化粧水を置くと、お婆ちゃんもサルースさんも真剣な表情で見る。


「使ってみても良い?」


「はい」


 サルースさんが手の甲に化粧水を数滴落とし、柔らかく肌に馴染ませるようにしていく。


「おお、すごいねこれ。真面目に肌が蘇っていくわ」


「どれ、ふむ、成程これは化粧水じゃないさね。強いて言えば魔法薬さね」


 お婆ちゃんも自分の手の甲へと馴染ませながら、驚きの表情を浮かべている。


「でも、何の材料を使用しているのか全然想像がつかないわ」


 手の甲の匂いを嗅ぎながら首を傾げるサルースさん。そこで私は薬草と真ん丸ダイヤの粉を取り出しました。


「一応これが材料なのですけど、特にこちらの薬草が何なのか判ります?」


 そもそもこの薬草がこの世界にあるかどうか、薬草の知識が多そうなお婆ちゃんに尋ねてみる。これがまず第一の目的だからね。


「ふむ、見た目はほうれん草っぽいが、魔力を含んでるさね。魔力を含む植物は幾つかあるが、この草に関しては見た事が無いさね。実に興味深いさね」


「師匠、この粉の方が思いっきり拙いですって。魔力の粉末って言っても可笑しくないくらい魔力含んでるわ。魔力を浸透させたもの何だろうけど、何の粉だろう?」


 サルースさんも素材に興味津々ですね。ただ、どっちも初見となると材料供給の面で厳しいかな。


「ふむ、成程、この植物を育てる土壌にこの粉を撒いて植物に魔力を含ませる。良く考えてるさね」


「え? 何で判ったの?」


 あ、お姉ちゃんが思いっきり素直に反応しちゃったけど、多分だけど想定はしてても確定はしてなかったと思う。思いっきり引掛けられたね、まあ真ん丸ダイヤさんの粉を作るなんて出来ないだろうし構わないけどね。


 そんな事を考えていたら、想定を思いっきり引っ繰り返す回答がサルースさんから飛び出てきました。


「そっか、魔力を溶け込ませた上で治癒促進効果を付与できればいけるかな? うちで販売している化粧水でちょっと試してみてもいいなあ。問題は化粧水内に治癒促進の魔力を宿らせる事か」


 おお、そうですよね、魔女さんの所でも普通に化粧水を作ってますよね。でもそちらで同等の効果が出るのであればそれはそれで私達も問題ないですよね。


「えっと、同等の効果が出る化粧水があるなら、それを紹介して頂けるだけで良いのですが」


 そもそも化粧水で大儲けなんて考えてないです。だから丸投げが出来そうな雰囲気に思わず笑みが零れそうになるのですが、そうは問屋が卸しませんだそうです。


「よし、これから試してみよう! 小春ちゃんとひよりちゃんも一緒に来て。うん、楽しくなってきたね!」


「え? あの? 私達もですか?」


 お姉ちゃんも困惑していますが、なぜかお姉ちゃんの手を佳奈お姉ちゃんがさっさと握って引っ張っていきます。


「ここの地下に色んな設備があるの。そこで薬とか作ってるから」


「自作の薬ですか、思いっきり薬事法に引っかかりそうなんですが良いのでしょうか?」


「別に毒を処方している訳じゃないし、それで病気が治るなら患者だって文句言わないって」


 サルースさんにも聞こえていたようで、思いっきり笑い声を上げながら階段を下りていきました。


「どう? 凄いよね」


 佳奈お姉ちゃんについて地下の部屋へと入っていくと、どこの研究室かというように色んな見た事も無い機械が設置されていて、テーブルの上にはフラスコ、ビーカーといった見慣れた物が並んでいました。


「おおお、てっきり大きな窯でぐつぐつとかやってるイメージがありました」


 逆に我が家の私の部屋の方が本に出てくる魔女の部屋みたいかもしれないですね。何気にショックです。


「成分分析機や遠心分離機とか最新式の機械も揃ってるよ。小型のものだけどね」


 心持自慢げに聞こえてくるのですが、反論する余地がありません。ただ、羨ましいかと言われると、何をする機械なのか判らないので別にどうでも良かったりするのです。


「ちょっと待ってね。この化粧水の成分を見てみるから」


「なんかすごい機械なんだろうなって思うけど、良く判んないね。機械と言うか、これが使える人が凄いと思う」


 部屋の椅子に3人で並んで座っていると、化粧水を持って大きな機械へと歩いて行ったサルースさんが戻って来ました。後で聞いたんですがサルースさんは薬剤師の資格も持っているそうです。


「う~ん、これといった成分が出ないんだけど、ただこの化粧水に未だ未発見っぽい何かとかは含まれていないのが判った」


「言っている意味が解りません」


 私の言葉にお姉ちゃん達もうんうんと頷いてくれますが、要は未発見の神秘な成分などは見つからなかったという事です。


「一般的な化粧水と大きな差はないね。ただアロエと同じ成分とかが含まれてて驚いたけどアロエは使ってないよね?」


「うん、アロエはヨーグルトに入ったのしか見た事が無いです」


「そうすると、あの薬草ね。でもあれがアロエと同じ成分を含むって・・・・・・」


 また何か悩み始めましたけど、さっきから部屋の隅でその薬草を薄く切って顕微鏡で見たりと思いっきり薬草を調べてるお婆ちゃんがいます。


「おかしな植物じゃな。自己回復能力が高すぎるの」


「葉っぱを切っても翌日には切ったところから葉っぱが生えて来てるもんね」


 そういう意味では実に強い生き物です。


「これは面白いさね。一見植物、されど未知のせいぶつだねこりゃ。いやあ長生きするもんだね」


 お婆ちゃんはお婆ちゃんで植物を切ったり削ったりと大忙し。それを顕微鏡で見たり、何かの機械に入れたりと大騒ぎしてる。


「これ、私達忘れられてない? 化粧水の加工の話はどうなったんだろう?」


「そうね、すっかり忘れられてるわね」


 お姉ちゃんと二人で椅子に座りながらお婆ちゃんたちが動くのを見ている。


「こういうのってまるで独楽鼠の様っていうんだっけ?」


「そうなの?」


 で、私達の横にいる佳奈お姉ちゃんが静かだなと思ったら・・・・・・思いっきり寝てました。


「あ、寝かせておいてあげて。何か覚えなきゃいけない事を宿題にされるから寝不足って言ってたから」


「なるほどです」


 そう言って佳奈お姉ちゃんを見ると、まだ弟子入りしてそんなに時間が経ってないのに魔力回路の卵が出来始めている。


「おお、すごいなあ、何か秘訣があるのかな?」


 私が佳奈お姉ちゃんの変化に驚いていると、お姉ちゃんがぼそりと呟いた。


「強制的に魔女っ娘にされて、歌って踊らされているらしいわ」


「・・・・・・それって何の虐めですか? ところでその映像が欲しいのですが、お婆さんに言えば貰えないでしょうか?」


「そうねぇ、言われてみれば、後で頼んでみようか」


 後々に楽しみが出来たのでした。

小 春:「ねぇ、化粧水の話はすぐ終わるんじゃなかった?」

ひより:「うん、ある意味もう終わったともいえるよ?」

小 春:「え? 謎が増えただけなんじゃないの?」

ひより:「でも、私には関係ないから問題ないよ? それより佳奈お姉ちゃんの弱みが手に入るかが問題だよ?」

小 春:「う~~~ん、それでいいのかな?」

ひより:「うん、ところで、お父さんとお母さんに魔女っ娘の恰好をさせたら魔法使えるようになるかな?」

小 春:「・・・・・・ごめん、それだけはやめて」

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