70:無事にお家に帰れました。でも・・・・・・
誤字脱字報告ありがとうございます。
佳奈お姉ちゃんが魔女へと弟子入りが決まったりと何かとバタバタした中、スーパートレインは無事に奈古屋駅へと到着した。
「相手の目的が小春ちゃんだからスーパートレインで何か仕掛けてくるとは思ってなかったけどね」
「そうじゃのう、ただ此処からは気をつけんとの」
「改札を出たら全員が一度集合するから、人質とか考えれば狙われるのはその時とか?」
こっちに予め仲間がいれば仕込みも出来るかな? そう考えれば間違いではないように思う。
「さて、このメンバーを前に仕掛けて来るとは思わんがのう」
お爺ちゃんが笑いホームへと視線を向けると、魔女のお婆さんやグリーンさん、ブルーさんまでいる。
それだけでなく、見た事のあるお爺ちゃんの所のお弟子さん達も数名いるから確かに襲撃するには厳しい?
「狙われておるのが判っていて対策しないのは馬鹿さね。駅構内に散ってる者達もおるから早々手は出せんさね」
お婆ちゃんがそう言って歩いて来ると、桜花さんとルビーさんが慌てた様子で佳奈を引っ張っていく。
「師匠! この子が弟子になりたいって!」
「師匠! 私の後継者見つけました!」
桜花さんとルビーさんの発言でのポイントが違う気がするんだけど、グリーンさんの表情を見るとルビーさんは恐らく一歩リードしたのかな?
「ほう、この子がかね?」
「あ、えっと、はい。宜しくお願いします」
目の前に立つお婆ちゃんの迫力に若干尻込みしつつ佳奈お姉ちゃんは挨拶をしている。
「色んな意味で佳奈お姉ちゃんも場数は踏んでるもんね。結構お姉ちゃんが一緒に巻き込んでるし」
「ひより、それは絶対に違う! 佳奈は嬉々として飛び込んでるの!」
お姉ちゃんは私の意見には反対みたいだけど、佳奈お姉ちゃんの御蔭でお姉ちゃんが孤立しなかったのは確かなんだけどなあ。
「え! ずるい! ルビー、あれ程抜け駆け禁止って自分が言ってたくせに!」
「抜け駆けじゃないです~~~、チャンスをしっかりものにしただけです~~~」
うん、何かルビーさんの印象が瓦解していく? 思いっきり子供の喧嘩になってるね。
「みんな移動するよ~」
先輩達の掛け声で私達は移動を開始します。
ただ、このちょっとした時間の中でも親衛隊の人達や、警護の人達が周囲を固めたのが判ります。
「何か慣れちゃいましたね」
「うん、ただ親衛隊の人達もう少し何とかならないの? もろお祭りの帰りですって叫んでるのと同じだよ」
うん、確かにTシャツのみならずアニメの紙袋は自己主張が強いですよね。
「前にお父さんが言ってたんだけど、あれだけ濃い人がいるのに私達に注目する人が居たら注意しなさいって。だからあれはわざとなんだよ?」
「う、それは私も知ってるけど、あの人達絶対に注目されるのを喜んでるよね?」
「うん、それは否定しないよ」
可笑しな性癖に走っていないといいけど、そこまで私が心配する事も無いような有るような? もしそうなったら責任の一端は我が家にもあるのでしょうか?
私が思いっきり悩みながらも改札を通過して、目の前にある金の鯱像の所にみんなが集まりました。
「これ見ると帰って来たって気になるな」
「奈古屋は鯱だもんね」
うん、そんな感想を持つほどにスーパートレインで何処かに行ったことの無い私は首を傾げます。
「何にしろ無事に帰って来れて良かったわ」
お姉ちゃんの言葉に凄く同意するのでが、今回はある意味すっごく際どかった気はしますよね。
事前に男達が来ていなかったら連絡は来なかっただろうし、魔女さん達と仲良くなっていなかったら・・・・・・あ、これはルビーさんがいたから大丈夫かな? それでも、相手がもっと多くの人数を出してたら判らなかったし。
「今後の事も含めて考えないといけない事が増えたのです。まずは敵を見つける方法を考えないとですよね」
魔力では無く暴力を使って来るなら不意を突かれなければ何とかなります。ただ身内ではない人質などを取られた際の行動は私と違ってお姉ちゃん達には効果的かもしれません。
「お爺ちゃんはこういった事も想定していたの?」
「ほ、ほ、ほ、人質の事かの? そうじゃのう、一般的に良くある事じゃからの」
多分お爺ちゃんは我が家の弱点がお姉ちゃんである事を理解しているんだと思う。お父さんやお母さんはいざとなれば家族を優先するし、自分達に何かあった時の家族の事をキチンと理解しているから無茶はしない。あと私は良くも悪くも優先順位があるし、いざとなったら切り捨てる事を厭わない事も多分判ってると思う。
「ひよりちゃんや、そうならんように儂らはおるんじゃよ」
私の表情から何を考えているのか察したんだろうな。お爺ちゃんがそう言って頭を撫でてくれた。
「さてさて、では帰ろうかの。車は廻してあるからの」
解散の合図でみんなそれぞれに帰路につく。
私とお姉ちゃんはお爺ちゃんの車で家まで送ってもらうんだけど、なぜか佳奈お姉ちゃんは魔女さん達に連行されていっちゃった。
「・・・・・・佳奈がさ、運ばれていく子牛のような眼でこっちを見た」
「お姉ちゃん、気のせいだよ。きっと魔女になれるかもって希望でキラキラした目だと思うよ?」
「そうかなあ? 何か漸く自分がやってしまった事を自覚して絶望している人みたいに見えたけど」
「お姉ちゃんはきっと佳奈お姉ちゃんが離れて行くみたいで寂しいからそう見えたんだよ」
「そうかなあ? 違う気がするんだけど」
お姉ちゃんはちょっと納得がいかないみたいだけど、今は佳奈お姉ちゃんの事は魔女さん達に丸投げしちゃた方が良いと思う。
お爺ちゃんの如何にも堅気じゃありませんよな車に乗って無事に家に帰って来ました。
「ほんとに何もなかったね」
「そうじゃの、計画練り直しでもしておるのかのう」
「でも、諦めないのでしょうね。不安だな」
お姉ちゃんは本当に不安そうな表情なのです。
「お姉ちゃん、何か考えるよ」
「うん、ありがとう」
お爺ちゃんと一緒に車を降りるとお爺ちゃんの所の人達が先行して我が家に入っていきます。
「ここまで警戒しないといけないのかあ」
お姉ちゃんはショックを受けているみたいですが、一応ですよ?
「結界が維持されてるから大丈夫だけど一応だよ? 悪意がある人は入れないからね」
「うん、でも悪意が無い人に何か頼んだらどうなるの?」
「・・・・・・それは拙いのです」
確かに危険物を持ち込ませる事は可能な気がします。ただ、危険物の判別は非常に難しいですし、なるほど用心は必要なのです。
「どれ、大丈夫そうじゃの」
お爺さんと我が家の中へと入ります。
「家に帰ってくるとホッとするよね」
「うん、帰って来たって気になる」
お父さん達はまだお仕事でいないけどね。とりあえずお爺ちゃん達に冷やした麦茶をお姉ちゃんが出してあげている。
「お爺ちゃん、今回は本当に助かりました。ありがとうございます」
お姉ちゃんが深々と頭を下げる。
うん、今回は結構際どいと言えば際どかったからね。相手の戦力次第では危なかったかもしれないです。
「なんのなんの、無事に大事にならず良かったわいの」
お爺ちゃんはそう言って笑顔を浮かべる。
改めてお爺ちゃんに助けられているんだなと思う。もっとも、こっちも結構無理難題を押し付けられているからお互い様かもしれないけど。
「お爺ちゃん、これからどうすれば良いと思う?」
私はお爺ちゃんへと尋ねる。
「そうさのう、此度の事で伊藤家の周囲への警戒が必要になったの」
周囲と言っても何処まで警戒すれば良いのか判らないし、無関係の人が巻き込まれる可能性もあるよね。
そう考えると非常に生き辛い状況に陥った事が良く判る。
「むぅ、これは非常にまずいですよ? 場合によっては泥沼になりかねないです」
今回を凌いだとしても、下手な対応をすれば別の組織や団体が同様の事を起こすかもしれません。
その為には、今回の対応は非常に厳しい物になると思うのです。
「そうさのう、はてさて、厄介じゃな」
「敵が二の矢、三の矢を放つ前に此方も反撃の方法を考えないとですよね」
「でもさ、相手がまだ判らないのだよね?」
お姉ちゃんが思いっきり今最大の問題点を突いてきます。
「あんまり嬉しくない方法ならあるけどね。私達がどこかの組織に所属するの。結局の所はフリーでいるから手を出してくるんだと思う」
「そうさのう」
お爺ちゃんは多分早い段階でこの問題点と解決方法には気が付いていたと思う。だから結構私を振り回して自分達の関係を周囲に明らかにして牽制してくれてたのかな。私も気が付いていたからアルバイトをしていたし、これで何とかなると思ってたけど甘かったんだよね。
「え? でも、お爺ちゃんの所は女性はNGなんだよね? そうすると神主さんの所?」
「場合によっては魔女のお婆ちゃんも有りだとは思うよ? 佳奈お姉ちゃんも一緒だし。問題は今回の相手がそれで引き下がるかなんだけどね」
そもそも、国内の組織であれば今の私達に手を出すメリットは非常に少ないと思う。お爺ちゃんを含め、大きな組織が実質的に後ろにいるからね。
「ひよりちゃんや、まあそれは後に考えれば良いでの。まずは今の状況をどう打開するかじゃの」
「お爺ちゃんは何か良い案が有るの?」
その打開案が出なくて悩んでいる所なのですが、お爺ちゃんは何か良い方法があるのでしょうか?
「この手の事は儂の得意分野かもしれんの。ただ準備にちと時間が掛かるでそれまで守りを固めるが良いの」
「準備?」
「ほ、ほ、ほ、この近くの寺に今準備をさせておる。神道でも似たようなことは出来るじゃろうが、まあ儂がやろうかの」
そう言って両目をバチンと閉じるのですが、若しかしてウインクのつもりなのでしょうか?
小 春:「ねえ、佳奈大丈夫なの?」
ひより:「うん、わかんない!」
小 春:「え? で、でも、大丈夫だからあの人達を紹介したんじゃないの!?」
ひより:「う~~~ん、今のような状況じゃなかったら多分紹介しなかったよ?」
小 春:「マジですか・・・・・・」
ひより:「マジです!」
小 春:「佳奈・・・・・・大丈夫かなあ」
ひより:「大丈夫、コスプレは強制されるけど、それさえ耐えれれば?」
小 春:「・・・・・・ふ、ふふふ、そっか、大丈夫ね」
ひより:「お姉ちゃん、ブラックになりかけてる」