67:ホワイトマスクの正体はホワイトタヌキ?
誤字脱字報告ありがとうございます。
周囲がホワイトマスクの登場でフリーズしている。
その間にホワイトマスクの後ろから、まさにチビ魔女と言えるとんがり帽子と黒のローブを纏った中学生くらいの子供がとことこと木村先輩達へと近寄り、どうやっているのか木村先輩達を浮かせて自分達の部屋へと連れ込みました。
「え? ・・・・・・あれって」
「佳奈、言わないで!」
とんがり帽子を深く被っている為にハッキリとは顔が判りませんが、そこは日頃から一緒に暮らしている家族です。今のが誰であるかなど判らないはずがありません。
「く、何が起こっている」
現状においてはスーツ姿の男達は結界によって二人と一人に分断され、一人は恐らくノックダウンされている。そして目の前の3人のリーダーらしき男は前後を私とホワイトタヌキに挟まれている状況だった。
「勝ち目はないわ、降参しなさい。後ろのホワイトタヌキは強いわよ・・・・・・たぶん」
どう見ても強そうには見えないのだけれど、手に持ったあれは確か鈷杵と呼ばれる仏具だったと思いますが、それを持って男の方へとゆったりと歩いてきます。
「ほ、ほ、ほ、ホワイトマスク様はピンチに駆けつける正義の味方なのじゃ!」
鈷杵を手にして刀印を切っているので、まず間違いなくお爺ちゃんだと思うのですが認めたくないですね。ただ、お祭りに参加できない事になったお爺ちゃんが思いっきり嘆いていたのを思い出して、溜息が零れるのは仕方が無いと思います。
「・・・・・・」
私達の背後にいた男が後方へと走り出します。どうやら非常階段へと向かっているようです。
「後ろの男が逃げを打ちました」
「ほ、ほ、ほ、心配いらんよ」
ホワイトタヌキがそう言うと、非常階段への扉からルビーさんや桜花さんが駆け込んできました。
「小春ちゃんは無事!?」
「油断した~~~、お爺ちゃん達が到着してたから余計に気を抜いちゃったわ」
ルビーさんはすでに変身後で、目の前から走って来る男に対し思いっきり顔面にパンチを繰り出してノックアウトしています。
「まさかの力技、魔女っ娘にアイデンティティーが崩壊しそうだよ」
佳奈がその様子を見てそんな事を呟きますが、まだ目の前の男が残っています。
「佳奈、まだ油断しないでね。最後の最後で油断して、相手の暴走に巻き込まれたりが定番だよ」
「小春、そこでさ、フラグを立てるのもどうかと思うよ?」
後ろで佳奈が何かを言っているけど、今は目の前の男に集中するときだと思う。
お爺ちゃんの接近に対し、どうやら戦う事を決めた男が手にしたステッキを振りかぶってお爺ちゃんへ一歩踏み出した。
「ほ、ほ、ほ、その程度の物では儂の鈷杵サーベルは防げぬぞ?」
「鈷杵サーベル・・・・・・うん、でもあれってサーベルになるの? 何となくあそこからビームとかで剣になれば恰好良いのは判らなくも無いけど」
「でもさ、そういうアニメとかもうありそうだよね?」
確かに否定できないけど、今だ鈷杵は短いまま。それでも男は警戒しながらもステッキをホワイトタヌキへと振り下ろし、そのまま結界に叩きつけられます。
「ぐふぅ・・・・・・カハッ」
背中から叩きつけられた強打によって息が上手く吸えないのだろう。男は杖を手放して必死に息をしようとしている。
「ほ、ほ、ほ、まだまだじゃのう。鈷杵ソードの威力はそのような物で防げぬの」
「・・・・・・今のにソード要素あった?」
「見えなかった」
私達には見えない攻撃だったのか、ソードは見えなくても結界に叩きつけられた男は必死に起き上がろうとするも呼吸が整わないみたいだ。
「ほれ、寝ておれ」
何処からか取り出した長い数珠を男の頭に叩きつけると、男はそのまま昏倒したようだった。
「さてさて、携帯が繋がらぬで面倒じゃのう。どこぞに妨害の機械でもあるのじゃろうが、魔女っ娘達で何とかならんかの?」
私達を通り越して結界の向こうにいる桜花さん達へと声を掛ける。
「あ、そっちのエレベータで他のメンバーが来るから。あとお爺ちゃんの所の人達も異変感じたから来るでしょ? そっちに任せてよ」
桜花さんは端的に面倒事を押し付けるなと言ってる気がする。
「それより小春ちゃん、そろそろこの結界解除できない?」
「えっと、私だと無理だけど多分いけると思う。ひより~~~、早く出てきてこれ解除して!」
私は先程木村先輩を回収していたひよりへと大声で声を掛ける。
あの子は絶対に面倒そうだから全部の片が付いてから出ようかなと思っているに違いない。
「さすらいの魔女見参なのです!」
木村先輩達を飲み込んだ後はずっと閉じていた扉がゆっくりと開いた。
そして、その扉から先程のとんがり帽子の小さな魔女が出て来て、いかにも昔ながらの魔女といった先が捻じれた長い杖を手に、良く判らないポーズをとっている。
「それはいいから、ひより、ちょっとこの結界を解いて欲しいんだけど。そうしないと桜花さん達が動けないでしょ?」
私がそう告げるのですが、ひよりは思いっきり頬を膨らませて不満顔です。
「お姉ちゃん、こういう時に本名を名乗るのは厳禁なんですよ? そもそも、狙われている警戒感が全然ないのです!」
「え、あ、そっか、ごめん。でも、そうしたら何って呼べば良いのよ?」
「だ・か・ら、さすらいの魔女なんです!」
胸を張ってそう告げるひよりを見て、私はまた別の意味で溜息を吐きたくなります。
ただ、それはそうとまずはこの結界を何とかしないとと思うのですが、ひよりは今はまだ結界を解いたら駄目だと言います。
「この人達を連行して、周囲の安全が確認されるまで駄目なんですよ? 現在の状況で結界を解くなんて危機感がまったく無いのです」
「でも邪魔でしょ?」
「それでもダメなのです。というか結界を解かなくてもお姉ちゃん達がそこから退けばいいんですよ。だからこっちの部屋に入ってください」
「あ、そっか」
「なるほどの、確かにそうじゃの」
佳奈とホワイトタヌキが納得します。
「だからお爺ちゃんはその倒れてる人をエレベータの前まで移動して欲しいのです」
「ひより、お爺ちゃん呼びはは良いの?」
「お爺ちゃんは個人名じゃないので良いのです!」
何か納得いかないのですが、そうこうしている間にエレベータからお爺ちゃんの所の人が下りて来て、そのまま倒れている二人を拘束し、そのままエレベータで降りていきました。
「さて、まずは儂らの部屋に入ろうかの」
「うん、お爺ちゃん開けて」
木村先輩達の様子も気になるし、ひより達に尋ねたいことも色々あります。そもそも、何でこのホテルにひよりが居るのかとか、本来は大帝都ホテルに泊まるはずでは無かったのかな? 夜はそこのレストランでフルコースだってひよりがはしゃいでいたのを覚えています。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ん? どうしたの? 早く開けて」
ひよりとお爺ちゃんが無言で見つめあっていますが、一向にドアを開けてくれる様子がありません。
「その、なんじゃな。インロックしてしまったようじゃ」
「えっとね、鍵は中にあるの」
そう言ってひよりは部屋の中を指さす。
その後、木村先輩達の本来の部屋もインロックしてしまったようで、ホテルの係の人を呼んでドアを開けてもらいました。
「でも、インロックする人多いの? エレベータの所の電話ってこういう用途だったんだね」
エレベータでフロントまで行かないとと思っていたら、エレベータの横にちゃんとフロント呼び出し用の電話があったのです。
その後、結界をひよりに解いて貰って無事残りの一名も拘束、運ばれていきました。
私、佳奈、ひより、お爺ちゃん、桜花さん、ルビーさん、良く知らないオジサンの7名で、ひより達の部屋へと入って状況確認及び情報交換を行おうとしたんだけど、思いっきり狭いです。
あ、一応だけど木村先輩達は自分の部屋で寝かせておきました。
「先輩達にさっきの記憶が無いといいけど、厳しそうだなぁ」
「大丈夫だって、何にも証拠ないし、私と小春がしらを切れば押し切れるよ」
佳奈はそう言うけど、どうなんだろうか? ただそれしか方法は無さそうなんだけどね。
「で、ひよりは何でこのホテルにいるの? あ、でも助かったけど、助けてくれてありがとう」
私はそう告げて、ひよりを抱きしめます。そして、頭を撫でます。ひよりにはちゃんと感謝を態度で示してあげるのが我が家の方針です。今後、思春期に突入するであろうひよりに対し愛情表現を誤魔化してはならないというのが以前に行った家族会議の結論でした。
だってねぇ、あの子の反抗期なんて怖すぎる。
「だって、お姉ちゃん達の所に変なのが来たんでしょ? それ聞いて放置なんて考えられないよ?」
「じゃのう、まあ幸いにしてひよりちゃんのアルバイトも早く終わったでの」
「でもね、レストランのフルコースがコンビニのおにぎりになっちゃったの!」
うん、思いっきり目に涙を溜めています。フルコース楽しみにしていたからね。
「そっか、ひよりありがとう。フルコース食べれなくしちゃってごめんね」
私がそう謝ると、慌ててひよりが抱き着いてきました。
「違うよ、お姉ちゃんが悪いんじゃないよ。あの男達が悪いんだよ!」
ひよりが言う事は間違ってはいないんだけど、それでも責任を感じてしまうなあ。
ホワイトマスクさんはホワイトタヌキに二段変身をしました!
お爺ちゃんの後ろでとんがり帽子の魔女っ娘を無意味にウロウロさせようかと思いましたが、意外に難しくて断念しました><
さて、怪しい男達の正体は! そして、この後ひより達は!
うん、絶対にシリアスにはならない気がするけどねぇ。