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60:聖女教からの刺客?

誤字脱字報告ありがとうございます。

「こちらの魔法って結界関連に関しては本当に優秀ですね」


 この不思議な時空にしても結界の発展形だと思いますが、残念な事にどうやって展開しているのかが直ぐには判りません。もっとも、だからと言ってこの結界を破る事が出来ないかと言えば、多分そこまで苦労はしないと思いますが。


「反応があるのは6人ですか、少々厄介ではあります」


 ただこの結界の御蔭で周囲を気にしなくて良いのは助かります。恐らくですが、相手の人達は私の魔法を自分達の常識の範囲で判断しています。この世界の能力者にとっては範囲攻撃など物語の中やゲームの中の存在なのでしょう。


「随分と余裕を持たれているのですが、その理由が良く判りませんね」


 相手の意図は判りませんが、この時間を有効に使わせてもらいましょう。


「スイートエンジェル、トランスフォーム!」


 私の体を中心に光の柱が立ち上がります。その柱の中で私は両手をクロスにするように右手を左肩に、左手を右肩に置き、両目を瞑ります。すると、背中へと光の粒子が集まり、大きな白鳥の羽を形作るのです。


「天界からの使者、スイートエンジェル見参!」


 背中の羽が大きく羽ばたき、私の体が中空に浮かび上がります。体を覆うのはギリシャ神話の天使のように白い薄絹です。炉の人垂涎の衣装ですね。ただ、ちゃんと中に白色のレオタードは身につけてますよ?


 ふふふ、見るからに天使です。聖女教と謳うからには天使を敵に回すなど言語道断の所業! どうですか、完璧な作戦です。相手の事を聞いてから考え出した鉄壁のディフェンスなのです。攻撃されない事こそ最大の防御なのです!


「悪しき心を持つ者達よ、日頃の行いを懺悔するのです!」


 決まりました! 完璧です。練習した甲斐が有るのです。私を取り囲もうとしていた者達からも、明らかに動揺が感じられ・・・・・・あれ? まったく動揺が感じられませんね?


「むぅ、そもそも姿が見えないとはこれ如何に?」


 悪意は感じられても肝心の敵の姿が見えません。本来であれば既に攻撃範囲に入っていなければならない敵が見えないのです。


「結界外からの攻撃でしょうか?」


 結界はその種類によっては相手の攻撃を遮断しながら自身の攻撃を透過させる事も出来ます。これ程までに結界術の進歩した世界においてそれが出来ないとは思えません。


ギシャシャン!!!


 目の前の何もない空間から突然に剣先が生え、私の体を貫こうとしました。ただ、その攻撃は私が展開する結界によって弾かれます。


「ファイアーアロー」


 剣の生えた空間の歪を逆利用して魔法を放ちました。もっとも相手は空間の向こう側で現出しているであろう攻撃魔法を至近距離で受けるのです。致命傷にならなければ御の字だと思いますよ?


ギシャシャン!!!


「ファイアーアロー」


 正面の悪意が消えるのを確認。その最中にも背後から剣先が突きだされます。しかし先程とまったく同様に魔法を叩き込めば背後にあった悪意は消滅しました。


「馬鹿じゃないの? そもそも剣で私の結界を貫けるなど慢心も著しい」


 恐らく彼らにとって自信の有る攻撃方法なのだろう。幾度もこの攻撃で相手を屠って来たのだろう。ただ、圧倒的に攻撃力が不足している。もし私の結界を貫けるほどの何かであれば成功していたかもしれない。


「あとね、こんな結界は何とでも対処できるの、サンダーレイン」


 この世界の結界における最大の欠点は結界の外が認識出来る事。私の魔法というのは自身の魔力を使用し、周囲にある魔力を刺激して望む事象を起こさせる。ただ、その為には結界の外に私の魔力を送り出さなければならない。そして、彼らはその為の隙間を作ってくれたに等しいのです。


「せっかくの隙間を固定せずにいるなんて思わない事ですね」


 要は私の魔力さえ外に導くことが出来れば良いのです。そうすれば、この様な事象だって発生させることが出来るのですから。


 能力者が全員倒れた事によって結界が解除されたようです。そして、私の周囲では能力者と思われる者達の死体が転がっていました。


「見えないと手加減が出来ないのですから、自業自得なのですよ?」


 私は倒れている人達の横を通り抜けながら自宅への帰路を急ぐのでした・・・・・・変身を解くことを忘れて天使の恰好のままで。


◆◆◆


 そして、ひよりが路地を離れた頃、倒れた人間が一斉に発火し一瞬で燃え尽きた。

 倒れていた者の痕跡は欠片も無く、人形のような形をした炭がただ転がるのみ、それも6個しかないのは先に燃えた者はその人形すら残さず燃え尽きたのだろう。


「あれはなんだ? まさか8体もの木人兵が一瞬で倒されるとは」


 相手の力量を図るためのテスト的な意味合いも無いではなかったが、それでも結界まで使用した必殺の人形達がこうも容易く倒されるとは欠片も思っていなかった。


「しかもあの恰好は? ともかく、一度皆で話し合わなければ」


 場合によっては死んでも構わないと思ってはいた。依頼を受けた身としては今日は相手の腕試しでもある。聖女教から言われているのは、聖女様を取り込むのに最大の障壁となる可能性がある為の調査。もっとも調査と言えど内容は様子見などではなく荒っぽいが。最終的には誘拐し洗脳を行う。それが難しいようであれば殺しても構わないという意味合いも含まれていた。下手に生き延びられると面倒な者達が出てくる可能性がある為、後々の事も考えその様な判断が為されていた。


「しかし、妹であれか。となると聖女と疑われる姉はもっと油断できないぞ」


 男はそう呟きながら懐から人形を取り出し・・・・・・背後へ一瞬で振り返って手にした人形を叩きつける。男の手から離れた人形は、あっという間に大人のサイズまで大きくなり手にした剣を真上から振り下ろす。もっとも、その剣が振り下ろした先にはただ空間があるのみ。


「・・・・・・気のせいか?」


 確かに背後に何かの存在を感じた気がした。

 油断なく周囲を窺うが、一向に何か気になる気配はない。


「くそ、嫌な予感はビシバシするぞ」


 周囲に錯乱の術を放ち、その隙に隠形の術で己の姿を隠す。そして、ゆっくりと、それでいて可能な限り早くこの場を立ち去ろうとする。


 人ごみに紛れ込めばと駅へと向かおうとして、改めて異常に気が付いた。


「結界だと、馬鹿な、いつの間に」


 自身が先程仕掛けていた階層をずらす結界魔法。その結界と同等のものが自分の周囲に張り巡らされている。そうでなければ自分以外の人がこの場に存在しないなど有り得ないのだ。


「いかがですか? 貴方方の魔法を参考にしてみたのですが。先程の人形、木人兵ですか? あれも実に興味深いです」


 何処からか声が聞こえるが、その気配は一向に感じ取る事が出来ない。自分はそれなりに場数を踏んでいる。裏の仕事も多く、それでも依頼を達成して来た実力と経験がある。それ故に今の状況を打開する為の手段を必死に模索していた。


「姿を見せなくてごめんなさい。私は戦闘職ではないので、このまま行かせてもらうわ。貴方の雇い主への警告になれば良いのだけどね」


 その言葉に込められた明確な意思、そして力が自分の周囲に展開していた防御結界を容易く破り気が付けば体に深々と不可視の何かが突き刺さったのを感じた。


「な、なんだ・・・これは・・・」


 自分の体から今の今まで感じていた魔力、それが突き刺さった何かから吸い出されていく。今まで感じた事も無い脱力感を必死に堪え何とか流出を防ごうと術を放とうとするが発動する手ごたえは感じられない。


「これでいいわね、もう会う事は無いでしょう、頑張って人生をやり直しなさい」


 気が付けば地面へと仰向けに倒れ込んでいた。周囲に張られていた結界は解かれたのか、そこら中に人の声や足音がする。


「うわ! ちょっとあんた大丈夫か! おい、誰か救急車を呼んでくれ! 人が倒れている」


 傍らに誰かが来た事を足音と、体に触れられる感覚でわかる。ただ今まで当たり前に感じていた気配、周囲の魔力、もちろん瘴気も一切感じられない。脱力感と、体の不調、当たり前にあった物を失う事の恐ろしさに、様々なものを味わいながら男はそのまま意識を失うのだった。


「ほ、ほ、ほ、ひよりちゃんは優しいのやら、恐ろしいのやら」


「どうなのかな? そこら辺は良く判んない。でも、安易に人を殺すのは良くないのですよね?」


「さて、答えに困るの。正当防衛は認められるのじゃが、そもそも死因の特定など無理な事が多いしのう。ただ是から更に難しくなりそうじゃな」


 今回の事は、相手の結界に入った時に実はお爺ちゃんもいたのです。相手の結界外の動きはお爺ちゃんから念話という良く判らない方法で伝えられていました。あと、相手の攻撃で綻びた場所を固定してくれたのもお爺ちゃんです。


「術を行う為の仙骨を壊されたようじゃの。あの様な方法もあるのじゃのう」


 その後、駆けつけた救急車で運ばれていく男を見送った後、私はお爺ちゃんの車で家まで送ってもらいました。車の中ではあの不思議な時空系の結界魔法を教えて欲しいとお願いしたけど色好い返事が返ってこなかったのは残念です。

 あの男を閉じ込めた結界魔法って実はお爺ちゃんの術だったんですよね。


「お爺ちゃんありがとう」


「ほ、ほ、ほ、良い良い、じゃが余り無理をしない事じゃ。まだ子供と言う事を忘れるでないぞ」


 そう言ってお爺ちゃんは帰って行きましたが、中々難しい事を言うのです。


「もうじき中学生だけど、何か周りに影響を受けすぎるからなあ」


 体から来る年齢よりも、周囲に溶け込むことを優先した結果ではあるけど、言動もどんどん周りの子供達に感化されていった。


「平和でいられるならそれで良いとおもっていたんだけどなあ」


 精神的に幼くなったからなのか、思いっきり暴れたくなってしまう時がある。


「でも、それやっちゃうと終わるよね」


 仕方がない、お姉ちゃんで遊んでストレスを発散するのです。今日は携帯に佳奈お姉ちゃんから遊ぶためのネタはいっぱい送られてきているんだから。

この後はお姉ちゃんが例のイベントへ?

でも魔女っ娘も、魔女も居るであろう魔境のような場所ですよ?

無事に済むはず無いじゃないですかねぇ


あと感想であったのですが、ひよりの言葉遣いは実は意図して変えていったのです。

今回ちょっと書きましたが、周りの子供達と違和感が無いように合わせていった結果、このような言動になった。ただ、家族に何かあったり、戦闘などで意識が変わると口調も変わるという設定だったんですが・・・そんな場面が無い! むぅ、敵がおかしすぎますね!

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― 新着の感想 ―
[一言] 敵がおかしいも何も…それを出してるのは作者様ご自身ですが?(笑) まぁガチでやばい奴はガチで叩き潰される程度には防衛に力を入れている結果なのでしょうが……w
[一言] >天界からの使者、スイートエンジェル見参! 小学生なのに厨二!? ブラック・ヒストリア!?
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