表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/135

58:魔女っ娘の労働環境はブラックなのです

誤字脱字報告ありがとうございます。

 今目の前には狸のお爺ちゃんからチベットスナギツネのお顔をした狸のお爺ちゃんという不思議なおじいちゃんが座っています。その向かい側の席には私、グリーンさん、魔女っ娘さんが座っていますよ。


「という訳で、魔女っ娘さんやグリーンさんの待遇改善をお爺ちゃんなら出来るかもってお話しちゃったんです。お爺ちゃんなら出来るよね?」


 純粋な疑いの欠片もない眼差しが3対、お爺さんに注がれています。魔女っ娘さんなんて、もうキラッキラですよキラッキラ。お爺さんが来るまでの間、お小遣いの使い道を色々と考えていましたもんね。


「よろしくお願いします! 私、今の今まで騙されて働かされていたなんて思いもしなくって!」


 うん、私もまさか無報酬で魔女っ娘さんが働いているなんて思いもしなかったです。


「私達も良く考えたら報酬は貰ってないんです。辞めたければ後継者を見つけなさいって言われるだけで、でも今どき魔女っ娘やりたいなんて小学校低学年くらいですよね? だから流石にそんな小さな子に押し付けれなくて」


 そうなんですよ。グリーンさん達はどうなんだろうと尋ねたら、やっぱり同じ様な状況だったんです。でもグリーンさん達って結構良い人達みたいで自分達の昔を思うと中々誰かを後継者にする事に抵抗があって今の状況になっているそうなんです。


「むむむ、そうじゃのう。ただのう、他の団体が行っておる組織運営に口を出すのは難しいのじゃ。なんというかのう、協定に反するというかの」


 いつものイケイケお爺ちゃんじゃなく、チベットスナギツネの眼差しになっちゃってからは言葉の言い回しにキレがないのです。


「でも、魔女っ娘をすると何か良い事はあるのでしょうか?」


 グリーンさんがお爺さんに尋ねるのですが、聞く相手が違う気はするのです。ただ、お師匠さんにまともに聞いても教えてくれないそうです。


「そうじゃのう、魔力が上がれば老いる速度は下がるかのう。魔女達の中には更に薬などを調合して若さを保つ者もおるでのう」


「あ、私それ聞いた事あります! 師匠の知り合いで364日掛けて365日若返る薬を作って飲み続けてる人がいるって! その人はすでに200歳近いけど外見年齢はまだ20代後半だって言ってました」


「あの、それって意味あるの? 私は嫌だなぁそんな生活」


 グリーンさんの言葉に、魔女っ娘さんが可愛い顔を顰めています。ただ、私は前世の記憶があるので何となくその魔女さんの気持ちも判らないではないですね。


「女の優越感とかかな?」


「あぁぁ、うん、そんな物かも?」


 グリーンさんは私の意見に同意してくれます。女ならではの意識ではあるのですよね。


「解りたくないのう。ともかくお主たちの師匠を交えねば話は進まんじゃろうし、恐らくそろそろ来るじゃろうて」


「ん? お爺ちゃんいつの間に呼んだの?」


「呼んではおらんのじゃが、まあ自分の弟子達の動向ぐらい把握しておろう。それまではほれ、あんみつでも食うておりなさい」


 そう言うと、お店の人を呼んであんみつセットを4つ頼んでくれました。


 ちなみに、お爺さんは私が不思議な時空に閉じ込められた事で急いで駆けつけてくれたのです。無事に不思議な時空が解除された時、目の前にお爺さん達がいて吃驚したのです。


「そもそも、碌に修行もしていない子供に何かさせるという発想がおかしいと思うのです。お爺ちゃんの所ではそんなことしてないでしょ?」


「そうじゃのう。魔女については儂らも研究してはおるが、良く判らんからのう。先程ひよりちゃんが閉じ込められた結界もじゃが、対象を選別して異次元に閉じ込めるなど修行している者達でも無理じゃ」


「私は子供の持つ純粋な心が魔法の力の元と言われてきました」


「うん、あと悪しきものを浄化するとそれだけ力が強くなるの。あと妖精界は悪しきものを放っておくと汚染されて滅びちゃうんだよ」


 お爺ちゃんの話はともかく、魔女っ娘さんの話は特によく判らないですね。妖精界ってなんでしょう?


「お爺ちゃん、妖精っているのですか? 見たことが無いんですけど」


「そうさのう、居ると言えば居る、居ないと言えば居ないかのう」


「うん、訳が分からないのです。そもそもグリーンさんの所と魔女っ娘さんの所はなぜ対立しているのですか?」


 聞いている限りでは、同系列のような、違うような、良く判らない関係です。ただ妖精界は魔女っ娘さんの所だけですね。グリーンさんの所では特にお師匠さんから言われていないそうです。


「う~ん、たぶんだけど師匠達が原因かも? あの人達って基本的に周りを気にしないし、必要な素材なら他人が大事にしているものでも平気で荒らすから。確か先々代あたりで何か争いがあったみたい」


「私もジュエルの人達は妖精界を荒らす悪い魔女達だからって教わってます。何かしているなら可能な限り邪魔しなさいって」


「・・・・・・服装的には魔女っ娘さんの方が悪い魔女的かな? 何でそんな服装なの?」


「え? あ、これは、こっちの方が人気が出るからって」


「え? 人気って、何の?」


 思わず途方に暮れてお爺ちゃんを見ます。すると、不思議な事にお爺ちゃんが視線を逸らしました。


「お爺ちゃん何か知ってるの?」


「そうさのう、知っておると言えば知っておるのう。じゃが、これは魔女達の組織に係わる話じゃ、儂が話して良い物ではないのう」


 思いっきり視線を逸らしたまま、お爺ちゃんは答えてくれます。むぅ、ただ何となく不穏な物を感じますね。


 お爺ちゃんをじ~~~と見つめていると、お爺ちゃんの額からまるで漫画のように汗が流れます。もしあれをおじいちゃんが故意に出来るとすると、とても恐ろしい事ですね。ただこれ以上は話してくれなさそうなのであんみつを食べることに集中することにしました。


あむあむ、あむあむ・・・・・・。


ピシャーーーン!


 みんなであんみつを食べていると、閉じられていた障子が勢いよく開きます。


「うちの子をどうしようって言うんだい! 場合によっては容赦はしないよ!」


 うみゅ? おお、今まで見た事のない人です。年齢は30歳前後かな? 真っ赤なド派手のスーツを着ているのと、ド派手な濃い目の化粧をしているので恐らく魔女っ娘さんの関係者? ど派手な化粧は伝統だったのでしょうか?


「お爺ちゃん、今までにないくらい胸が大きい人が来ました。あれは敵だと思いますよ?」


 今まで会った様々な関係者は精々がC止まりだったのです。でもあれは、きっと爆が付くのです。間違いなく伊藤家の敵ですね!


「ふむ、まあ何じゃ、今のところは不明としておこうかのう」


 お爺ちゃんの言葉は相変わらず歯切れが悪いです。今日は体調が悪いのでしょうか?


「ガーベラ! はぁ、無事なのね、何でのんきにあんみつ食べてんのか判んないけど無事でよかったわ。ほら、さっさと帰るよ! あんたらも邪魔しないでね」


 小さなステッキをこっちに向けているのです。恐らく戦闘態勢という所でしょうか? でも、背後への警戒が疎かなのです。


ドゲシッ!


「邪魔さね、入るならさっさと入るさね」


 あ、思いっきり後ろから蹴り飛ばしましたねお祖母ちゃん。でも、よくあそこまで足が上がるものですね。元気すぎるのも困りものです。


「痛い! って、ババア! アンタが裏で手引きしてたのね! 自分の所が薹が立ったからってうちの子を引き抜く気!」


「がるるるるって唸り声が聞こえてきそうなのです。あと、魔女っ娘ちゃんが思いっきり委縮していますよ」


 魔女っ娘ちゃんを見ると、さっきから口をパクパクさせてます。でも、声になっていないのですね。これでは待遇改善など夢のまた夢なのです。あと、グリーンさん、部屋の隅に行っても隠れられないですよ?


「相変わらず煩い女さね、賢徳、状況説明はしてくれるんだろうね? あたしゃあんたを信じてるよ?」


 最初っから派手なおばさんそっちのけで、お婆さんはお爺ちゃんを睨みつけています。うん、信じるってなんでしょうか?


「そうさのう、まあまずは落ち着く事じゃ、儂とて巻き込まれた口じゃしの。まあ座りなさい」


 うん、最後の言葉はちょっと力が籠っていましたね。ここで騒がれても迷惑なのです。


 二人は一応この場にいるメンバーを見て、それぞれ自分の弟子の横に強引に座りました。私はお爺ちゃんの横に移動なのです。


「そうさのう、事の発端は儂が保護しとる娘がアマリリスの所の娘っ子に例の空間へ閉じ込められた事かのう。まあ偶々じゃが婆さんのとこの一人が一緒にいた故の結果ではあるが、それでも問題は問題じゃ。一応通達はしておいたはずじゃがのう?」


 そう言うと、お爺ちゃんは真っ赤なスーツのおばさんを流し目で見ます。うん、目が笑っていませんね。


「あ、あ~~~、なんかそんな通達も来てたね、そういえば」


 先程の勢いなど欠片も無く、思いっきり視線を逸らしてます。でも、今回の騒動の原因はどうやら決まりのようです。でも、その後の展開をお爺さんが話してくれるにつれて、おばさんもお婆さんも段々と顔を引き攣らせていきました。


「なんじゃのう、内政干渉と言われかねんので二人を待って居ったところじゃ。しかしのう、ひよりちゃんの話ではないが、ただ働きはどうかと思うがのう」


 お爺ちゃんの言葉に、私も、グリーンさんも、魔女っ娘さんもウンウンと大きく頷いています。


「うるさいね、うちの子達は爺さんの所みたいに心が穢れてないんだよ! 心が綺麗なんだよ! だいたい金なんかに囚われるとあっという間に心が穢れちまうよ!」


「そうさね、金は扱いを気を付けんと恐ろしい事になる。魔女故にこそ気を付けんといかんさね」


 何かこういう時はお二方とも団結するのですね。


「お金は魔物だと言うのは判らなくは無いのですよ? でも、労働に対して相応しい対価は必要なのです! 今の世の中ブラック企業は流行らないのですよ? 淘汰されるのです。それこそ逃がした後では大変なのですよ?」


 最近のネット小説などを見ればその傾向が判るのです。どんな言い訳をしようとも、無報酬は駄目なのです!


「ば、馬鹿言わないで欲しいわね! ちゃんと報酬だって出しているわよ!」


 おばさんの言葉に、魔女っ娘ちゃんを見ると首を傾げています。


「魔女っ娘になって世界を浄化する事によって色々な恩恵があるのよ! 知力や運動能力なども上がるわ、魔力が増える事での恩恵だってあるわ、特に小さい頃の成長率は馬鹿にならないんだから!」


「そうさね、グリーンを見れば解りそうなものじゃな、この子は一番真面目じゃったからその恩恵も他の二人より強いさね」


 顔を赤くしてそう話すおばさんと、同調するお婆さん。ただ、これは意外と目に見える効果が判別し辛いのですよね。


「う~ん、確かにそれは恩恵なのかも? でもそれはそれぞれが頑張ったからですよね? そもそも魔女っ娘にならなかったらとの比較は出来ないわけですし、あと魔女っ娘になった事によるデメリットを考えると微妙な気がするのです。友達と一緒に遊べなくなったり、まともなアルバイトとかも出来ないんですよね? いつ呼び出しがあるか判んないのですし」


 私の言葉におばさん達は口を閉じました。だって、このデメリット結構大きいですよ? 友人関係って場合によっては将来に係わってきますしね。


「金銭的な目に見える対価は必要なんだと思いますよ? 私はお爺ちゃんにちゃんとアルバイト代貰ってるもん」


 私の言葉にお爺ちゃんが同意するかと思ったのですが、そこでお爺ちゃんが困った表情をしている事に気が付きます。


「あれ? お爺ちゃん、なんかおかしいです?」


「そうさのう、何というかの、そうジャンルが違うんじゃよ」


「・・・・・・えっと、ここでまたジャンルが出てくるのです?」


 以前にもあったジャンル問題。それがここで再度復活するとは思いもしなかったのです。


うわ~~ん、書いている傍から話が脱線していくのです!

このお話は実は57話の30歳過ぎたら魔法使い云々を書きたくて始まったのです><

なのに、なぜか魔女っ娘の労働環境改善がテーマに・・・・・・なぜでしょう?


しかも、お爺ちゃんの反応から、魔女っ娘には更なる闇がありそうな・・・・・・(ぇ


ちなみに、全く話は別なんですけど、チベットスナギツネのあの表情大好きなのです><

哀愁が漂うような、すべてを達観したような、何とも言えないあの表情が可愛いですよね!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] かつて「東洋の魔女」を生み出した女子バレーボールの監督さんは、選手ひとりひとりのお見合いの面倒まで見たそうですね。 そこまでやった理由は、若い娘さんたちが婚活や就職などで使うべき大切な時間を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ