55:話し合いは予想の斜め下に
誤字脱字報告ありがとうございます。
その後、お爺さんとお婆さんが中心に会話をしていますが、何やら聖女教という人達の動向確認と対応の擦り合わせがメインでした。私とお姉ちゃんは要らなくない? 思わずそんな思いもありましたが、最後の最後で爆弾が投下されちゃいました。
「鳳凰学院には既に聖女教の者が入り込んでいるさね。残念ながら特定までは至ってはおらんがね。賢徳、あんた達の方では特定できてるかい?」
「ほ、ほ、ほ、儂らも人材不足でのう。先日の騒動を良い隠れ蓑にされておって中々にのう」
なんと! お姉ちゃんの身に危険が迫っているのです。思わずお姉ちゃんを見ると・・・・・・参考書や問題集を取り出して勉強しています! いつの間に。
「あ、そこはね、この公式を使うの、そうすると出来るでしょ?」
「そっか、そこで躓いてたんですね」
いつの間にかグリーンのお姉さんがお姉ちゃんの横で勉強を教えています。
「意外です、てっきりおバカな人達だと思ってたのに」
「酷い! 一応これでも奈古屋大学行ってるんだけど!」
グリーンのお姉さんが文句を言ってきますが、ほかの二人は・・・・・・視線を合わそうとしませんね。
じ~~~~~~~~
視線を二人に思いっきり注ぐと、
「わ、私だって大学卒業したよ! 私立だったけど」
「私もちゃんと大学行ってるよ! 萌絵ちゃんと同じ金鯱女学園だよ、お嬢様学校なんだから!」
慌ててレッドさんとブルーさんが自分の学校を教えてくれます。でも、ブルーさんとグリーンさんにレッドさんが噛みついています。
「あんた達、なんで大学名言ってるのよ、あとサファイア! 勝手に名前言わないでよ、身バレするでしょ!」
「成程、魔法少女の身バレは確かにタブーなのです。でも、コスプレと言い切ればいける?」
「いけないわよ! もっとヤバいでしょ!?」
「ほむ、世間の見方としては魔法少女よりコスプレイヤーの方がヤバいのですか」
私がウンウンと頷いていると、何かお姉ちゃんが机に突っ伏しています。心配そうに声を掛けているグリーンさんは結構良い人の様です。
「コスプレイヤーはヤバくないよ? 誰だって変身願望があるし、私はありだと思う」
ブルーさんが否定しますが、何となくブルーさんはコスプレしていそうですね。
「お姉ちゃん、ブルーさんはお仲間っぽいですよ?」
「言わないで! っていうか、あんたも勉強しなさい、過去問とか持ってきてるでしょ!」
勉強しているからなのか、体勢的に厳しいのか、得意技のアイアンクローは飛んできませんでしたが、お姉ちゃんはお怒りです?
「真実とは、こうも人を傷つけるものなのでしょうか?」
「薄々気が付いていたけど、あなたって結構いい性格してるよね」
「照れるのです」
お爺ちゃんに引き続き、レッドさんにまで褒められてしまいました。なぜか溜息を吐いているレッドさんですが、お姉ちゃんをこれ以上怒らさない為にリュックから問題集を出すことにしました。
私達がおとなしく勉強をしていると、その間にどうやらお爺ちゃん達の話し合いは終了したようです。
時間を見るともう午後の2時になっていました。実質2時間ぐらい勉強していたのかな? 思いの外集中していたようですね。
「お爺ちゃん、お話合いは終わったの?」
「ほ、ほ、ほ、後はひよりちゃん達への補償くらいかのう。何せ迷惑を掛けられたからの」
そう言ってお爺ちゃんが目を細めて見る先には、カラフルトリオがいますね。
「賢徳、その補償じゃが、8月の間は伊藤家の護衛にその3人を加えるというのは。そんな形ではあるが一応は弟子の端くれさね、大抵の能力者なら負けることはない。聖女教もこのままとは思えん」
「ちょ! それだと私達の負担が! アルバイトだってしたいんですが!」
レッドのお姉さんが慌ててお婆さんににじり寄りますが、お婆さんはそんな事まったく気にした様子もなく、ただ一言いいました。
「スカートの長さをロングにしてやっても良い」
「何の事なのでしょう?」
意味がわからない事を言い始めたお婆さん。ただ、意味が判らなかったのは私だけで、どうやらカラフルお姉さん達は大騒ぎを始めました。
「うっそ! スカートがロングよ! 私はやるわよ、この機会を逃したらいつそんな話が出るか!」
「え? でも、あああ、ロングは魅力、だけどアルバイトしないと生活が」
「ロング・・・でも、彼と会う時間が、夏休みなんだし、海でのアバンチュールとかが、どうしよう、でもロング」
あの配色のヒラヒラ服でロングになったからと言って変わらない気がするのは私だけでしょうか? ただ、カラフルお姉さん達はさっきから動揺しまくってます。
「ああ、もちろん変身不可はあたしが解除してやるさね。これ以上よそ様に迷惑を掛けられないからね」
「「「!!!」」」
声にならない声を上げるカラフルお姉さん達です。でも、よく考えたら私達も面倒に巻き込まれそうですね。夏休みの大半を一緒に過ごさないといけないとか、どうなのでしょう?
「あ、そっか、お姉ちゃん、8月の部活のイベントに一緒に行けば丁度いいかも? ひと月ずっと一緒はきついけどイベントの間だけとかなら良い考えかも?」
「「「「えっ?」」」」
お姉ちゃんも、カラフルお姉ちゃん達も何故かタイミング良く言葉が被ります。でも、コスプレするんですよね? 木を隠すなら森の中とも言いますし適材ではないでしょうか?
「ちょ、ちょっと待って、それってなんのイベントなの? 部活って何部なのかな? 先にそこを教えて欲しいかなぁ」
グリーンさんが珍しく率先して尋ねてきます。その表情は非常に真剣ですが、聞いてもたぶん結果は変わらないと思うのは私だけでしょうか?
「え? あ、あの、被服部かな?」
お姉ちゃんの回答に、グリーンお姉さんは思いっきり顔を引き攣らせます。どうやら先程のやり取りで何となく察したようです。うん、さすが国立大学ですね、関係ないかな? ただ、レッドさんは判っていない感じで、ブルーお姉さんはすぐに気が付いたけど問題なさそうな顔をしています。
「被服部のイベントって何かな? 8月に文化祭は無いと思うんだけど」
「それはその、何というか自由に衣装を作って発表する場といいましょうか」
お姉ちゃんが思いっきり目を泳がせて答えています。
「それって帝都で行われる年二回の大きなイベントだったりします?」
うん、もう判っているっぽいので後は放っておきましょう。
「ほう、あれに行くのかや? ならこの娘達の衣装も凝ったものにしてやろうかねぇ」
ああ、やっぱりそうですよね。お婆さんは思いっきりニヤニヤ笑いながら楽しそうにしています。
「何のイベントか判っているのです?」
「ああ、魔女仲間が毎年薄い本を売ってるからねぇ、今年は顔でも覗きに行こうかねぇ、どうせ賢徳も顔を出すんだろうし、まあ楽しけりゃいいさね」
お婆さんの参戦まで決定してしまったようです。あと、カラフルお姉さん達は、顔を真っ青にしていますが、たぶんお婆さんの言う凝った衣装が問題なのですか?
「ご愁傷様なのです」
「ひより! 酷い、こうなったら貴方も今年は参加しなさい!」
お姉ちゃんが顔を真っ赤にしてそう言います。でもたぶん前言は撤回されると思いますよ。何と言っても佳奈お姉ちゃんが頑なに私の参加許可をしないのです。なぜなんでしょうか?
「何にせよ、これで一段落かのう?」
「う~んと、より混乱が深まっただけのように思うのです」
どこか悟りを開いたような表情をするお爺ちゃんですが、きっとまた予想斜め下の事を考えているのです。
「あ、お爺ちゃん、お母さんへのお土産も何か欲しいのです」
料亭でご飯を食べたなんて言ったら絶対にお母さんは僻むのです。だからお土産は必需品ですよ? え? お父さんですか? まあお父さんは気にしなくても良いと思うのです。
当初描いていた時には今回限りのカラフル3人組のつもりでした。
でも、何か書いているうちに丁度良い汚れ役のように思えてきて(ぁ
何となく準レギュラー化しそうな3人です。
あと、師匠さんの凝った衣装の方向性はまだ定まっていないのですよねぇ