54:ロリではないお婆さんの魔女がでました。
誤字脱字報告ありがとうございます。
高級料亭、言葉の響きからして素晴らしいですね。
前世でも街のしがない魔導士でした。研究費や材料費に殆どお金を費やしていた為高級という名前には抗い難い吸引力を感じます。
「高級あんぱんとは違う、本当の高級っぽさがあるのです。凄いですよ!」
日頃の我が家で高級と付く物は、あんぱんくらいのものです。
「高級食材などもっての外、質より量が我が家なのです! お寿司だって回っているのしか行ったことないですよ」
「ひより、悲しくなるから言わないで」
お姉ちゃんが変にダメージを受けていますが、世の中の大半の人はそんな物だと思うのですよ? 格差社会これに極まれりなのです。
着物の女の人に私達は一つの部屋へと案内されます。そこで、何となく私達は奥の席に座らされます。ちなみに、掘りごたつみたいなテーブルでした。
「お姉ちゃん良かったね、正座とかしないとだったら足が痺れて大変だったかも」
「うん、正座じゃなくて良かった」
二人で席に座ってそう話していると、向かいの明らかに引き戸に近い末席にいるお姉さん達もうんうんと頷いていました。
「やれやれ、漸く落ち着けるわい」
お爺ちゃんは私達の横に座って一息吐きますが、格好がね、もう格好が違和感バリバリなんですが。
「やれやれ、まったく愚弟子達がさっさとせんから糞坊主が出てきよった」
私達の前に座った化粧の濃いおばさんが座るや否やそんな事を言い始めました。
「お爺ちゃん、このおばさん誰なのです?」
私が隣に座ったお爺ちゃんへと視線を向けると、目の前から何か険のある視線が届きます。
「ふん、あたしはこの馬鹿達3人の師匠さね。まったく、この馬鹿達がさっさと動いていればこんな事にならなかったってのに、学校だ、仕事だと言い訳しよって結局事後になっちまったよ」
うん、おばさんが何か言い始めましたが意味が判りません。
「この婆さんは日ノ本にある魔女の纏め役みたいなもんじゃ。見た目より歳を経ておるでの。一応じゃが儂より先輩じゃな、別に敬う気はないがのう。ほ、ほ、ほ」
あ、やっぱりそうですか。魔力量と年齢の関係はこっちでも変わらないのかな? でも魔力量では明らかにお爺さんより格上ですね。もちろん現段階の私よりも上です。
「相変わらず煩い小僧だね。女は実際に何歳に見えるかなんだよ、見た目なんだよ!」
そういうお婆さんですが、その言葉に思わず痛いお姉さん達へと視線が向いてしまうのは何故でしょう?
「あの見た目であの格好、そこで見た目と言われても」
お姉ちゃんがド直球で突っ込みました。まあこの場にいれば誰もがそう思う事でしょうけど。
「この馬鹿弟子達は呪い返しに失敗したんだよ。で、変身を解くとヤバいから変身が解けなくなったのさ。まあ死なずに戻れたんだ、その点ではまあ及第点なんだがね」
「・・・・・・呪い返しですか? あれ? もしかすると伊集院さんを呪ってたのってお姉さん達?」
お姉ちゃんの視線が思いっきり冷え切ります。ただ、それだと神主さんの話と食い違うので私は首を傾げました。
「ほ、ほ、ほ、それでは時間が合わんじゃろう、先日の聖女教の連中じゃよ。一応は魔女の系列じゃからと排除に向かって返り討ちにあったんじゃの。ほ、ほ、ほ」
お爺ちゃんはさも愉快そうに笑っていますが、八重垣を突破する実力は有ったのですからそれなりの組織だと思います。うん、このお姉さん達じゃ無理じゃないかな?
「あっちは曲がりなりにも本場を気取っておって、こっちを色物扱いする。ここでぎゃふんと言わせたかったのだが、不意を打ったがあっさりと負けおってからに」
苦々しそうにお姉さん達を見るお婆さんですが、いや思いっきり色物だと思いますよ?
「あの、言いたくないんですがその格好だと色物と言われても仕方が無いかと」
あ、お姉ちゃんまたもや直球ですね。ズバッと行きましたね。お姉さん達涙目ですよ。
「ち、違うの、これでも昔はもっと強かったの!」
「3人いれば行けるはずだったの!」
「風俗嬢かって言われて動揺した隙をつかれたの!」
お姉さん達が涙目で言い訳を始めましたが、うんっと、何と言っていいか判りませんよね。悲痛すぎて。
青色のお姉さんはもう涙目じゃなくって泣いてますし。
「まあこの子達も今回に懲りてこれからは真剣に修行をするだろうよ」
ため息交じりにお婆さんがそう言いますが、お姉さん達は真っ青な顔で土下座しました。
「師匠、勘弁してください、もう普通の女の子に戻りたいの!」
「留年は嫌です! 親から仕送り止められたら生きていけません! お願いしますぅ」
「衣装を、なにとぞ衣装をなんとかしてください」
お姉さん達はこっちそっちのけでお婆さんに懇願していますが、お婆さんは何処吹く風? ただここで新たな疑問が湧いてくるのです。
「青色のお姉さんだけ毛色の違う嘆願のような気がしますが、あの衣装は強制なの?」
「あれは強制だね。ふん、昔は3人とも可愛かったのに、ここ最近はやれ彼氏がどうの、結婚がどうのと増長してからに、魔女は50超えてからさね」
「うわぁ、何か弟子に思いっきり私怨向けてるよこの人。しかも、最後の意味わかんない」
「煩いね小娘が!」
思わず零れた本音に反応して、お婆さんがこっちを睨みつけます。
「でも、そもそも何で私達に会いに来たの? お姉さん達の周りに呪いとか感じないよ?」
そうなんです。このお姉さん達からは最初っから悪意は感じなかったんですよね。ドクダミの臭いはしてましたけど。だからもう変身を解いても良いと思うのですが。
「師匠が解除してくれたんだけど罰だって、悔しかったら自力で解除してみろと」
「そうなの。でもね、そもそも師匠の魔法を解除出来るくらいなら負けてないというか」
「それで、噂の伊藤姉妹に頼んでみて、出来たら私達の代わりに師匠の弟子にならないかなあって。ほら、まだ何処にも正式に所属してないんでしょ?」
あ、なんか前言撤回です。一番質が悪そうなのはブルーさんですね。たぶんこの人裏表あるような気がするのです。ほら、私達だって相手によって演技するよね? それがより計算高そう。
「ブルーのお姉さん、友達少なそうですね」
「え~~~~~、酷い!」
抗議するブルーさんですが、その横ではレッドさんもグリーンさんも大きく頷いています。ついでに、お婆さんも頷いていますよ?
「ところでじゃな、重要な事なんじゃが」
私達の会話に今まで黙っていたお爺さんが突然口を挿んできました。
「ん? なんだね賢徳。まあ所属云々だと黙っとれんか」
「それもそうなんじゃが、今後じゃな、儂がこの格好の時はホワイト仮面様とか呼んでもらえんかの? ひよりちゃんのブルー呼びで閃いたのじゃ」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
全員が絶句します。お爺ちゃんは今の状況でずっとそんな事を考えていたのでしょうか? まあお爺ちゃんならそれはそれで有りそうな話ですが。
「なんじゃ、こんな爺さんとは誰も会話してくれんのかのう。寂しいのう」
「煩いわこの耄碌爺が、とっとといね!」
お婆さんがきつい言葉で言いますが、稲? 意味が判りません。まあ、それより大きな問題があるのですが。
「お爺ちゃん、ご飯のメニューがないよ? まだ何にも頼んでないし、お腹がすいた」
私は悲壮感たっぷりに、目に涙まで浮かべ、お祈りをするかのようにお爺ちゃんを見上げました。声にビブラートを聞かせて更なる同情を煽る作戦です。なぜなら、この部屋に通されてから一向に誰も来ないのです。お茶も来ないし、メニューも来ない、高級料亭はダメダメなんですね。サービスがなっていません。
「おお、そうじゃったの。ほれ、そこの緑のお姉ちゃん、ちと障子を開けて人を呼んでくれんかね」
うん、何かお爺ちゃんの言い方がちょっとな気がしますが、グリーンのお姉さんは素直に障子を開けて外へと顔を出し、どうやら待機していた着物のお姉さんを呼んだみたいです。
「おおお、料理が運ばれて来るのです。天婦羅ですね、高級料亭の定番ですよね!」
おとおしという小さな小鉢の料理が出て、そこからは何も頼んでいないのに料理が運ばれてきます。しゃぶしゃぶとか、すき焼きとか、それこそ回らないお寿司とかでも良かったのですが天婦羅でもやぶさかではないのです。
「お姉ちゃん、美味しいね。今日は来て良かったね」
「うん、スーパー以外の天婦羅って初めて食べるね。天婦羅ってこんなにサクサクして美味しかったんだね」
出てくる料理に感動マックスの私とお姉ちゃんです。でも、仕方がないのですよ、美味しい天婦羅さんがすべて悪いのです。
「ほ、ほ、ほ、今日はそこの婆さんの奢りじゃ、奢りは旨いのう」
「チッ、まあ今回は仕方がないさね。その代わり仲裁は頼むよ、これで収まるなら安い物さね。ほら、お前達も後でちゃんと代わりに働いてもらうから安心して食べな」
「「「えっ!?」」」
どうやらお姉さん達はこの後も色々と大変そうです。でも、私達はお爺さんの言葉を信じて美味しくいただきましょう。
美味しいご飯の時は、人は自然と無言になるようです。で、最後のデザートを食べている時にまた話が始まりました。
「突然発生したとはいえ、この娘っ子達の系統は魔女系統なんだろ? ならうちらに所属するのが筋じゃないのかね?」
「いやなに、この子らはどちらかと言えば巫女のようなものじゃ、伊勢や出雲が譲らんじゃろう。儂が中間に立っておるで争いが激化しておらんのじゃよ」
なんと! 何か意外な発言がお爺ちゃんから出ましたよ。でもそう考えると毎度毎度お爺ちゃんが出てくる理由に納得がいきます。
「暇だからお爺ちゃんが来ているんじゃなかったんですね」
「お姉ちゃん、今日はキレッキレだね」
突っ込みを目指し始めたのでしょうか? ただ、絶対にお姉ちゃんでは力不足だと思いますよ?
「はん! その娘は巫女としても、そっちの子娘はどう見ても魔女さね」
お婆さんがそう言いながら私を見ますが、まあ本当の事ですし反論はしませんよ。でも系統と言われると違いますよ? お婆さんは精霊術系の気配がします。いわゆるシャーマンですよね。
「私はお婆さん達とは違いますよ? 判らないですか?」
「誰が婆さんだよ!」
そう怒鳴りながらも反論しないという事はお婆さんも判っているのでしょう。
「癒しの術は他に獲られるくらいなら欲しかったんだけどねぇ。まあ巫女だと聖女教はそれこそ手を引かないよ、いいのかい?」
今度はお爺さんに向かってお婆さんは問いかけます。まあ聖女ってやっぱり巫女系統なんでしょうか?
「あれはお前さん達の系列じゃろうに、もとは地母神信仰から始まったんじゃろう」
「まあねぇ、ただあたしらも混じりまくってるからね」
むぅ、ところで私がお爺さん達の話に気を取られている隙に、お姉ちゃんに近づこうとしないでください。グリーンのお姉さん、この明らかに電話番号が書かれていると思われる紙をお姉ちゃんに渡してどうするんですか。こっちの番号は教えませんよ、面倒ですから。あ、お姉ちゃん駄目です、ほら離れて離れて、病気がうつりますよ。
感想であまりにアラサー魔女っ娘の反応があったので、思わず出してしまいました。><
彼女たちが今後活躍する時は来るのでしょうか?
ひより:「お姉ちゃん良かったね。色物枠の人が増えたよ」
小 春:「えっと、何でそれで私が喜ぶの?」
ひより:「・・・・・・」