51:どうやら敵は本当の魔女・・・子? のようです?
誤字脱字報告ありがとうございます。
夏休みが近づいてきて、私の周囲もみんなソワソワし始めましたよ。
お姉ちゃんは、佳奈お姉ちゃん達に振り回されてぐったり気味。でも、一応佳奈お姉ちゃん用の魔女っ娘ステッキを作成してからは、時々自分の部屋で魔女っ娘ステッキを見ながらニヤニヤしている危ない人になってます。
そんな私も、塾の夏期講習への参加のみならず、ついでだからと塾へ通う事になっちゃいました。夏期講習だけでは心許ないとの判断だったのですが、入塾試験では算数や理科といった科目は塾でも上位でした。
「社会はともかく国語は何で成績が今ひとつなの? ひより結構本読んでるわよね?」
「でも、国語でのテストで、出題されている意味が判んないのが結構あるの。そもそも、主人公のの意図とか、作者の思いとか、どうでも良いと思うの。読み手が読んで何を思うかだと思うよ?」
漢字とかは点数がとれるんだけど、抽象的な出題に弱いんですよね。だってさ、答えが色々思いつくし、こうだって決めつけるのもどうかと思うのも多いよ。あとね、面白くないの、もっと面白いお話にすれば良いのに。
「社会は暗記だよ? 暗記って結構得意じゃなかった?」
「う~ん、誰が何をしたは重要だけど、年号まで覚える必要性が判んない。あと、地理も苦手、覚える気力が湧かないの」
私のダメダメな回答に、お姉ちゃんが頭を抱えています。
塾へと初めて行った時はお姉ちゃん付き添いで行きました。前に通っていた塾だから先生の事も良く知っているし行きやすいそうですが、安全面で危惧している時に良いのでしょうか? 悩みどころです。
バタバタとしていると、あっと言う間に週末の土曜日で家族みんなでお爺ちゃん達と面談中?
「先日の襲撃事件の概要なんだがのう、端的に言うと金田一族の暴走じゃった」
お爺さんの言葉に、家族揃って首を傾げる。うん、言われている事がピンとこないよね。
「あ~~~、覚えてはみえないですか。前に県警の金田と言う男が暴走してひよりさんに撃退されました。公安の絡んだ事件でしたし、私などが初めて正式にご挨拶をした時の事件です」
そう言われれば、なんかすっごく感じの悪い警察官がいましたね。名前はとっくに記憶の彼方に捨てましたけど。
「言われてみれば、そうね、何かいましたわね。記憶から消していましたわ」
お母さんが代表で頷きます。うん、お母さんも名前を消去していたんですね。
「そこから、伊集院の御嬢さんの事件ですが、皆さんには陰陽師の傍系の更に末端とお伝えしました。その騒動を起こしたのが、あの金田の嫡男でした」
「あ、そういえば、たしか卓球部の部室で金田って先輩が倒れていたって」
お姉ちゃんの言葉にお爺ちゃん達が頷きます。そっか、あの金田って人本人も一応陰陽師だったのかな? だから事件に関われたとか?
「一応、県警の幹部であった金田とその嫡男は一族では期待の存在だったそうです。傍流ですから、何とか主流である本家に近づきたいと。その為に嫡男は術を使い伊集院家と血縁になど色々動いていたみたいでしたが、その希望が見事に伊藤家によって断たれました」
「え? それって逆恨みだよね?」
思いっきりお姉ちゃんが反論します。
「術で伊集院家とって、あの時の呪いの説明は確か碌でもない内容でしたよね?」
「はい、小春さんの言う通り碌でもない内容と遣り方でしたね。もっとも、旧家はなにがしかの防衛方法を持ってますし、我々とも繋がりは深いので成功の見込みは彼らが考えていたほど簡単ではないと思いますが」
神主さんの説明で、何となく全容が見えてきました。
「でも、あそこまで出来たって事は、陰陽師としては結構優秀だったんじゃないの?」
「まあ、時間と犠牲を費やせばという所ですかね。そもそもが、伊集院さんの御嬢さんと初めて同じクラスになったのが中学1年生の時、そこで一目惚れしてから何とかしようとまあ思春期の暴走といいますか、家の古文書から術を調べて自分の所属する運動部を主体に生命力を集め、ただ父親の失脚で焦って術を発動させた。まあ足掛け3年近い術ですから」
溜息を吐く神主さんですが、そうですか運動部の皆さんご愁傷様です。
「あ、それで最近の運動部は成績が悪かったんだね。うわぁ巻き込まれて可哀そう」
お姉ちゃんが言うには、近年の鳳凰学院運動部は全国は無理でも、あと少しで行けるんじゃないかという所まで来ていたそうです。ただ昨年はそれはもう県予選で2回戦突破した所すら殆ど無く、期待されて入学した生徒も成績を出せずに大変な状況だそうです。
「それって、他人の人生思いっきり壊しているよね? 呪い返しも主にその金田って人に行ったと思うけど、生命力を使われたら各自にも返しの影響が出てると思うよ?」
知らない間に勝手に利用されて、ついでに負債まで押し付けられてとひどい話だね。
「あの流れ出ていた悪意ってそういうのもあったのかも」
なるほど、でもそうすると被害者の人達は知らない間に加害者にもなっていそうだね。うん、呪いの厄介さが思いっきり出てる事件なのです。
「ひよりちゃんと小春ちゃんの浄化で綺麗さっぱりじゃがのう、ほんに大事にならんで良かったのう」
「これって、大事じゃないの?」
「この程度であれば対処可能ですから。問題は金田一族が往生際悪く伊藤家を利用しようと動いている事ですね。特に治癒の術は貴重ですので一族に加えれたならば地位は一気に上がりますね」
「あら、加えるってどうするのかしら? また洗脳?」
今まで黙って聞いていたお母さんが、それはもう凄みの有る笑顔で尋ねます。
「オーソドックスで行くと拉致監禁、その後に洗脳、まあ薬物もあるかもしれませんね。もっとも、当主は未だに人事不省、この度そのお仲間に長男が加わりました。その為、親族達が悪い意味で思い思いに勝手に動いていますので行動に予測がつきません」
「あらあら、それは困ったわね」
お母さんの目が笑っていませんね。でも今回の襲撃はそんな中の一つなんでしょうか? それにしては規模が大きかったというか、能力者の数も質も良かったですよね?
「まあ金田一族も厄介なんですが、先日の襲撃を意図したのは別の組織の様なんです。皆さんは聖女信仰というのを知ってますか?」
神主さんの言葉に、家族みんなが首を横に振ります。なんですかその中二病真っ盛りの恥ずかしい名前は。
「元々の起源はヨーロッパらしいのですが、どうも背後には現代にまで残った魔女集団がいるようです」
「現代の魔女ですか? 現代の忍者並みに胡散臭いですね」
「ひより、でも目の前にいる人達もその胡散臭い人達だよ?」
「ほ、ほ、ほ、小春ちゃんは厳しいのう。確かに現代に生き残っている能力者など、まあ似たような物じゃの」
朗らかに笑うお爺ちゃんとは対照的に、神主さんは苦笑を浮かべています。
「今情報を集めている所ですが、どうも我々のように政府と何らかの関りがある人達ではないようで苦戦しています。ただ、唯一の情報では治癒魔法を早急に求めているようだと」
「あそこには100歳を超えた妖怪みたいなのがゴロゴロ居るでなあ。そこら辺の関係じゃと思うが、そもそも血統を重視せんから市井に居る魔女を特定など困難じゃ。代々権力者と敵対してきた歴史が長いのじゃ、おいそれと尻尾は掴ませんじゃろう」
「血統を重視しないとすると、何を重視するのですか?」
「素質と言われていますね」
お姉ちゃんの質問に神主さんはあっさり答えてくれます。でも、素質ですか。お姉ちゃんが魔法を身につけられた事もその素質とかなんでしょうか? 一度じっくり話を聞いてみたいものです。
「ひよりさん、安易に繋がりを持たないでくださいね。あそこは過激な者が多いですし、独自の薬などの調合も得意としています。我々としても一番警戒しないとならない組織の筆頭と言っても過言じゃありません」
普段はおっとりしている神主さんが、何となく余裕が無さそうです。なるほど、それ程の相手なのですね。
「お爺ちゃん、ところでなのですが、魔女と言うからには使い魔で猫とかいるのですか?」
「そうじゃのう、いると言ったらひよりちゃんはどうするのかのう?」
「え? えっと、別にどうもしないよ? えへへ」
誤魔化す私に周囲からすっごく呆れたような、冷たいような視線が・・・・・・
「あ、そういえばお母さん、犬を飼っても良いって話どうなったの? 私もう来年には高校生になるし、ひよりも中学生だよ?」
ナイスですお姉ちゃん! そうですよ! 家にワンちゃんがいれば良いのです。もしそうなら使い魔なんかに浮気はしないですよ!?
お母さんは明らかにシマッタ、藪突っついた! というような表情を浮かべます。
「そ、そうだったわねぇ。ひよりが中学生になったら考えましょうね」
「え~~~、約束と違うよ!」
「貴方達だって忘れていたでしょ?」
「私も中学になるし、犬が欲しい~~~!」
「今年は受験でしょ!?」
「なら公立でいいよ! そこまで受験したくないもん」
その後、家族会議が開催され、紛糾したのは言うまでもないですよね。
気が付けば、20万字を超えていました。
でも、終わりは見えない謎ですね。ただついに伊藤家に強敵が・・・でるのかなあ?
小 春:「終わりが見えないっていうけど、そもそも、何でローファンタジー書き始めたの?」
ひより:「作者がね、ファンタジーな名前を考えるのが大変だから?」
小 春:「・・・・・・まさかそれだけ?」
ひより:「うん、名前無理~~~って騒いでいたの知ってるもん」