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50:もしかしたら中学受験?

誤字脱字報告ありがとうございます。

 お姉ちゃん暗黒堕ちから早くも一か月が過ぎました。気温も段々と上昇してきて、夏休みが待ち遠しい季節となってきました。


「おかしいですね、もうじき夏休みだというのに何でそんなに憂鬱そうなのですか?」


 高校はそのままエスカレーター式に上がるので、受験勉強もない、でもなぜか夏期講習はあるそうなのですが、それでもお休みは待ち遠しいはずなのですが、お姉ちゃんはすっごく憂鬱な雰囲気を漂わせています。


「あのね、夏休みは魔のイベントがあるの。昨年以上に何かみんな気合が入っているの」


「はて? みんなというと、佳奈お姉ちゃん達ですか?」


 そういえば、先週の週末にみんな揃って街に買い物に行っていましたね。その時もお姉ちゃんはこんな表情をしていたような気がします。


「被服部なんだよ、被服部なんだけどね! 私は作った服を着る係なんだって! 変だよね!」


 すっごく不満ですって頬を膨らませて表情で表現をしてるお姉ちゃんです。でも、私は知っています。お姉ちゃんは・・・・・・雑巾も縫えなくてお母さんが縫っていたことを!


「お姉ちゃん、ミシン使えるようになったの?」


 確か、ミシンが怖いと言ってた記憶がありますよ。布を手で押さえて、足踏みスイッチを押すとダダダダダってミシンが動くのですが、布を抑えている手も一緒に縫われちゃいそうで怖いそうです。


「まだ・・・・・・怖くて使えない」


 拗ねたような顔をするお姉ちゃん、むっちゃ可愛いです! 近年、あまりこういう顔をしなくなったので、すごく貴重ですよ!


「携帯は、携帯はどこ・・・・・・肝心な時に手元にないなんて」


 お姉ちゃんの表情を写真に撮るために携帯を探すのですが、あぅ、なんですぐ手に取れる場所に置いていなかったのでしょうか。


「あ、あった、よしって・・・・・・お姉ちゃん、それは拗ねた顔じゃなくて、無表情って言うのです。さっきの拗ねた顔をもう一度お願いします!」


 漸く携帯を手にしてカメラをお姉ちゃんに向けたのですが、お姉ちゃんの表情は既に変わっていました。


グワシッ


「えっと、お姉ちゃん、掴んだ手の音が何か重々しいのです」


「ひより、何をしようとしていたのかしら?」


「お姉ちゃんの貴重で素敵な表情を、永久に留めておきたいと思っただけですよ」


「はあ、良い事、貴方は佳奈に影響を受けすぎだと思うの。もう少しまともな人と付き合った方が良いわよ?」


 溜息を吐きながらそんな事を口にするお姉ちゃんなのですが、何かおかしいですよ?


「お姉ちゃん、差し出がましい事かもなのですが、佳奈お姉ちゃんは、お姉ちゃんの親友なのです。私の友達では無いのですよ?」


「・・・・・・そうだったわね。ごめんなさい、貴方に八つ当たりしちゃったわ。親友・・・・・・親友ってなにかしら?」


 お姉ちゃんはすっごく遠い目というか、チベットスナギツネのような表情を浮かべます。でも、それはそれとして、私の頭を掴んだ手が離れないのは何故なのでしょうか?


「お姉ちゃん、私の頭を掴んでいる手の力が段々強くなっているのですが、出来れば離してほしいなあって」


 可愛く首を傾げたいところなのですが、顔を掴まれていて動かせません。必殺技が封鎖されているのです。


「ねえ、ひよりは映像で衣装を作れるでしょ? お姉ちゃんお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」


 アイアンクローがより強くなっています。お姉ちゃんの握力がいったい幾つなのか知りたいような、知りたくないような気持です。ただ、普通の女子中学生よりは絶対に上だと思います。


「お、お姉ちゃんの衣装を撮り込めばいいの?」


「ふふふ、違うわ、佳奈の衣装をお願いしたいの、ふふふ、あの子ね、自分は売り子だからってコスプレだって既製品で済ますのよ? しかも、チェックのスカートとブレザーなの。これって許されないわよね?」


 以前聞いた組み合わせです。確かお姉ちゃんが着たいと言ってた組み合わせじゃなかったかな? あえてそれを選ぶとは、佳奈お姉ちゃんは本当に歪んだ愛情の持ち主なのです。


「えっと、でも佳奈お姉ちゃんには魔力が無いから変身できないよ?」


「あら、起動は私がすればいいのよ。あとはブレスレットやアンクレットから供給できるのでしょ?」


「あ、うん、そっか、それで変身は出来る・・・・・・あ、駄目。ブレスレットとアンクレットで映像補佐は出来るけど、結局は体内の魔力を軸にするから映像がズレちゃう」


 そうなんですよね、あれってあくまで映像の補助的な役割で、焦点の中心は纏う人の体にある魔力なのです。その魔力が無いと、逆に手足の動きでブレにブレます。


「え~~~、そこ何とかならないの? ほら、服に焦点にするブローチを付けるとか」


「おおお! お姉ちゃん凄いです! その発想は無かったですね」


 出来るでしょうか? 体全体の魔力から中心を出しているので、その位置を体の前後にブローチみたいな物を取り付けて、映像の焦点をその2点の中心とする。うん、出来そうな気がしてきました。


「研究しないと出来るか判らないけど、なんか出来そうな気がしてきた」


「やった! えっとね、お願いしたい映像は用意するからね!」


 先程と一転して、すっごく嬉しそうな笑顔です。これも貴重と言えば貴重なので、パシャリとさせていただきました。



 そして、お部屋で色々と試作品の作成を行っていたら何時もより早くにお母さんが帰宅しました。


「ひよりちゃん、ちょっと降りてきて~」


 お母さんに呼ばれてパタパタと階段を下りて居間へと向かいました。


「お母さん、今日は早いね。何かあった?」


 時計を見ると、時刻は午後5時過ぎです。お母さんが働いている会社は、定時が5時半なので、本来はまだ働いているはずの時間です。


「今日は用事があってお昼からお休みを取ったのよ。それでね、今度の土曜日に神主さん達がお見えになる事になったの、その場でお話が出るんだけど、ひよりちゃんも鳳凰学院中等部に進学する気はない?」


「・・・・・・えっと、何で? 今までそんな事言わなかったよね?」


 そもそも中学受験をする気は欠片も無かったんだよね。お姉ちゃんを見てて、受験をしてまで行きたい学校に思えなかったし、今の友人達と別れるも嫌。それ以上に、今から勉強して、そもそも間に合うとは思えないんだけど。


「今まではそうだったわ、でも日に日に二人を狙って色んな所が接触を図って来てるらしいの。それを皆さんが阻止してくださってるんだけど、二人が出来るだけ近くにいた方が守る側も都合が良いって」


 見るからに困ったわという表情を浮かべるお母さんだけど、実際にお母さんやお父さんの周囲でも大小様々な問題や事件が起きているみたい。だから、神主さん達の言いたいことは判るんだけど、う~ん、そもそも鳳凰学院に行こうなんて欠片も思ってなかったからなあ。


「あれからまだ一か月だけど、あれって結局の所はどうなったの。そもそも原因も聞いてないよ」


「お母さんも教えられてないのよ、あまり詳しく知らない方が良いって。でも、収まっていくならともかく、普段の生活に影響が出てくるのなら聞いておいた方が良いわよね」


 お母さんの言葉に頷くけど、それで何か対処が出来るなら最初から説明を受けているような気もします。


「中等部と高等部だと校舎は違うけど敷地は一緒だね。だから登下校も一緒に出来ると言えば出来るけど、私は塾へ行かないと行けないから、ひよりも通う?」


「塾・・・・・・あの雰囲気が苦手なの。いかにも勉強しますよっていうの」


「だって勉強するために行くんだし、当たり前の雰囲気なんじゃない?」


「そうねえ、それが駄目ってひよりちゃんは小学校でちゃんと授業を受けれているのか心配だわ」


 お母さんがそう言うけど、小学校の成績は悪くないんだよね。あと学校では周りが適度にワイワイしているので雰囲気が塾のようになる事もない為、逆に勉強に集中できたりします。


「学校の成績は悪くないよ? 通知表は見てるよね?」


「小学校の通知表だと学力って良く判らないの。だからひよりちゃんも試しに夏期講習受けてみない?」


「受けてもいいけど、出来たらみんなと同じ学校が良い」


 せっかく6年間を共にした友達だし、何人かは親友と呼べそうなくらい仲が良い友達もいる。もっとも、子供の頃の友人は、大人になれば失われちゃうくらい儚い事もしっているから猶更に大事にしたい。


「そうねえ、ひよりのクラスで受験する子はいないの?」


「え? どうなんだろう? 聞いた事ないよ」


「そうねえ、今は受験することを公にしない事の方が多いから、受験することを言わないかもしれないわね」


 う~ん、塾に行っている子はクラスの半分以上いる。あと、英会話に通っている子は半分よりもっと多いかな。小学生で英語の授業があるからと、大学に進む時に必須だからみたい。


「塾に通ってるって事は、もしかすると受験するのかなあ?」


「志望した所に行けなかったり、受験したけど上手くいかなくて地元の公立へ行ってそれで虐めにあったり、公言してる事で問題が色々あるみたいね。だから今の塾からの指導だと中学受験することは公言しないようにってあるみたいよ」


「それだと、聞いても教えてくれないかもだよね。受かる子と受からない子が出たりで気まずくなったりしそうだし、あ~~~、これだとクラスで聞けないよぉ」


「ひより、参考になるかは判んないけど、私の経験で行くと夏期講習に行く子は受験組だよ」


 お姉ちゃんがそうアドバイスをくれる。


「言われてみるとそうねえ、受験しない子が態々夏期講習は受けないわね」


「何か誘導されてるみたいだけど、夏期講習受けてみる」


 結局のところ、夏休みの間にダラダラするよりは良いかもしれない。ただ、色々と試したいこともあったんだけどなあ。


「お母さん、英語だけど魔法アイテム使っちゃダメ? 翻訳系のアイテムとか作れそうな気がするんだけど」


「「絶対にダメ(よ)!!!」」


 むぅ、理不尽な。アイテム作成だって能力だと思うよ。

小 春 :「ひより、もしかしたらだけど、数学を解くためのアイテムとかも出来る?」

ひより :「式を見て、それを解くとかなら出来ると思うけど、文章問題は難しいかな?」

小 春 :「え! そ、それなら試しに作ってみて欲しいかなあなんて」

ひより :「止めた方が良いよ?」

小 春 :「なんで?」

ひより :「・・・・・・お母さんが見てるから」

小 春 :「え? あ、お、お母さん、べ、別に試験で使おうなんて思ってないよ!」

お母さん:「そうよね、お母さんの子供が、そ~んな悪い事はしないわよねえ?」

小 春 : ぶんぶん(激しく頭を縦に振って頷いています)


ひより :「う~ん、そっか、それが出来るって事は、あれ? アイテムじゃなく頭に直接書き込めれば・・・・・・」

小 春 :「ひより! ごめんなさい! だから怖い事考えないで!」

ひより :「え? う、うん、わかった・・・よ?」


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