47:お留守番は静かにしようね
誤字脱字報告ありがとうございます。
パトカーのサイレンは、明らかに大きくなってきています。それどころか、複数のサイレンが聞こえます。
「あれ? パトカーが来るの? 家ってパトカーはタブーじゃなかった?」
「うん、強盗さんの事件の後、警察の人は今後は関わらないってお爺ちゃんが言ってた」
色々と問題があった警察さん、そもそも我が家は政府の良く判らない部署の管轄になったみたい。簡単に言うと、お爺ちゃんや何やらの普通じゃない人達の所?
「この停電もそうだけど、何かすっごく嫌な予感がするわ」
「う~んと、多分だけど、お姉ちゃんの気のせいで終わると思うよ? だって、昔と違ってこの家に不法侵入とか普通の人には不可能だよ?」
「え? そうなの?」
「うん、私だってここ数年ただ遊んでた訳じゃないもん。安全重視で遊んでたんだよ?」
「・・・・・・逆にすっごく不安になるのは、なぜ?」
お姉ちゃんがこめかみを抑えています。でも、お母さんは間違いなく気が付いてると思う。だって、ちゃんとホウレンソウは守ってるから、だってお小遣い減らされたくないもん。
「あ、でも一応これ渡しておくから、ちゃんと身につけてね」
私は、最近お気に入りの腰に付けたピンクのポーチから、新魔女っ娘ステッキと、魔女っ娘ブレスレット、魔女っ娘アンクレットを取り出して机に並べていく。
「・・・・・・ひより? 今それ、どっから取り出したの?」
「ん? ポーチから」
「普通はその大きさだと、ポーチに収まらないわよね?」
「うん、普通は無理だと思うよ?」
お姉ちゃんは魔女っ娘セットよりポーチが気になるみたい? うん、我ながらピンクのチェックで可愛いデザインになったもんね。この世界だと可愛いデザインが、ネットを検索すればいっぱいあるから嬉しい。
「そんな事より、早く身につけて! これから何が起きるか判んないし、用心しておいた方が良いよ」
「え? でも、これって何? 私は聞いてないんだけど」
戸惑うお姉ちゃんを取り敢えず椅子に座らせて、アンクレットとブレスレットを取り付けていく。
「ほら、ここのピンクダイヤを押して、そうするとお姉ちゃんのサイズになるから」
「え? え? ちょ、ちょっと!」
何でか躊躇うお姉ちゃんの手を持って、強引にピンクダイヤに触れさせる。
「うわ! すごい、ぴったりサイズになった!」
「新しいマジックアイテムなんだよ! ほら、八重垣結界にヒントを貰ったの。魔女っ娘ステッキと連結して、自分に防御結界が展開されるの、すごいでしょ!」
以前に課題となった防御面も、これで問題なくなってより攻撃に集中できる優れもの? 自画自賛ですけど、我ながら凄い物が出来上がりました。
「本当は、ドラゴンとかの素材を使いたいんだけど、無いから仕方がないよね?」
「ごめん、ひよりが何を言ってるか判らないんだけど」
あ、こっちの世界ではドラゴンとかはいないのでした。ただ、魔法と親和性の高い素材が、あまり見つかっていないのが問題なんですよね。このブレスレットとかに結構な金とか銀を使用しているのは内緒です。
「魔女っ娘ステッキで練習した攻撃魔法使えるよね? 打つ時には躊躇しちゃだめだよ? 殺られる前に殺れだよ!」
「ひよりがどっかのガンマンか暗殺者になってる!」
とりあえずお姉ちゃんの準備が出来たので、私も自分の準備を始めます。
「とんがり帽子と、魔法のステッキ、あと魔女のローブと・・・・・・」
ポーチから取り出した自分用装備を身につけていると、何か横からすっごい視線がザクザクと突き刺さって来ます。
「お姉ちゃん如何したの?」
「ひより、お姉ちゃんさ、何か間違ってる気がするの。何でお姉ちゃんが魔女っ娘で、ひよりが魔法学校の学生みたいな格好なの?」
「んっと、時代の違い? ジェネレーションギャップって言うんだっけ?」
「それ違うから! 絶対に違うから! ひより、私もそっちが良い! ほら、チェックのスカートで、ブレザーとか憧れてるの! ピンクのヒラヒラはもう卒業したいの! お姉ちゃんもう来年は高校生なんだよ? もう魔女っ娘は無理だよ?」
お姉ちゃんの必死さに、ちょっと吃驚は・・・・・・しないけど、う~ん、困ったのです。
「えっと、私は別にお姉ちゃんの衣装が変わっても良いと思ってるんだけど・・・・・・佳奈お姉ちゃんがね?」
「え? 佳奈? なんでそこに佳奈の名前が出るの!?」
「・・・・・・えへ」
可愛く上目遣いに首を傾げますが、お姉ちゃんの目が思いっきり座っています。
「あとでちゃんと聞かせてね? 場合によっては佳奈を・・・・・・絞めるわ」
あぅ、流れ的に仕方がないとはいえ、貴重なお菓子の供給源を失うかもしれません。でも、言えないけど、お姉ちゃんの体型がね、魔女っ娘に最適なんだって言ってたんだよ?
「ひより? その眼差しはなあにかな? あとで、O・HA・NA・SI が必要なようね」
「え? え? ひよりは悪くないよ? 悪いのは佳奈お姉ちゃんだよ?」
私は必死に自己弁護するんだけど、それも残念な事にパトカーのサイレンによって途切れました。
「ぬぅぅ、パトカー許すまじ」
「え? 今の流れで悪いのはパトカーじゃなくない?」
お姉ちゃんの呟きはともかく、やっぱりパトカーは我が家の前で停車したみたいです。
「2階に行こ、何がしたいのか良く判んない」
「そうね、停電はまだ続いてるみたいだし、ドアホンだって鳴らないわよね」
そもそも、今この時間は、本来みんな出かけて不在の時間です。それなのに、いったい何が目的なのでしょうか?
「ネットワークが切れて電話も繋がらないと、警備会社が駆けつけて来るはずなんだけど来ないわね」
「あ、そうなの?」
「ええ、普通はそう。でも、停電した契約世帯が多すぎるとそうもいかないか」
お姉ちゃんはどうやら納得したようです。で、二人で二階の窓からコッソリ外を見ると、3台のパトカーが停車して、警察官だと思う人が6人家の前でこちらの様子を窺っています。
「お姉ちゃん、見つからないようにね」
「うん、でも、何か変だよね。そもそも何が目的で来たのかしら?」
私達は学校へ行っているはずの時間だから、私達が直接のターゲットでは無いと思う。近所の人達がサイレンを聞いてだと思うけど、外に出てきている。でも、誰も遠巻きに見ているだけで警察官に声を掛ける様子はないね。
「何か怪しいわね、普通なら誰か声を掛けそうな物じゃない?」
「うん、あ、木戸を開けて入ろうとしてるけど、止めた方が・・・・・・、うん、そうなるよね」
家の敷地に入ろうとした警察官が、まるで昔の漫画のように毛を逆立てて、躰を硬直させ、ビリビリと痺れています。あわせて、時々骸骨の映像が、まるで電気で透けたんですよと言う様に明滅して見えます。
「・・・・・・ひより? あれは何?」
「う~んと、電気っぽい何かでビリビリしてるの。骨が透けて見えるのはお約束でしょ?」
「・・・・・・貴方本当は何歳? お父さん達と同年齢じゃないでしょうね?」
「酷い! こんなにピチピチなのに!」
「ピチピチって、それ多分死語よ?」
なんと! お父さん、貴方の持ってたアニメは今の時代には受け入れられないらしいです。もう少し最近のセンスあるアニメを紹介して欲しいのです。
「それはともかく、躊躇なく家に入ろうとしてきたわね。手に何か持ってるし、あれで家の玄関を壊すつもりだったのかしら?」
「そうかも、でも結界の一層目で撃退されてるね」
まあ普通の人では突破は難しいと思います。見ている人達も、思いっきりドン引きしてますし。
「またネットに動画とかあげられて騒がれそう」
「でも、ある意味絵になるよ?」
「そうね、あまりに酷い映像だからCGとか、画像加工を疑われて何とかなりそうよね。騒動にならないといいなあ」
お姉ちゃんが痺れて倒れた警察官を見ながら、思わずそんな事を口にします。
「あ、痺れた人を助けようとして、骸骨が二人になったね」
「はあ、これが現実なんて・・・・・・認めたくないわ」
お姉ちゃんが現実逃避をしています。ただ、家の裏から侵入しようとした人がいるみたいです。
「およよ? 誰か裏から入ろうとしてる。でも、裏って長谷川さんの家だよね?」
「え? そうなの? でも、あそこも日中は誰もいないから」
うん、確かに長谷川さんの家ですが、不在なら勝手に通り抜けるのも可能ですね。
「あ、この人って警察の人じゃないかも。結界の一層目突破した。ビリビリ結界消えちゃった」
「え? あれって普通の人は突破できないんでしょ?」
外を見ると、先程まで痺れていた警察官2名が引き摺られて行くのが見えました。
「むぅ、ちょっと残念ですね。でも、本命は多分裏から入ろうとしている人だね」
「だ、大丈夫なの?」
「うん、なんかのアイテムを使ったんだろうけど、二層目があるって思ってなかったみたい。思いっきり吹っ飛んでった」
「え?」
「ちゅど~~んって、煩いから実際の音は消して文字で効果音が出る様にしたんだけど、裏からの侵入だから見れないし、見てくれる人もいなかった・・・・・・」
私が悲しそうな表情を浮かべてるのに、お姉ちゃんは何でかまたこめかみを揉んでいます。
「ひより、一応確認するけど、ちゅど~~んの人は生きてるのね」
「うん、ただ髪の毛はアフロになるよ」
「そ、そう、まあ生きてればそれでいいわ」
お姉ちゃんは何かを悟ったような眼をしますが、どうしたのでしょうか?
「そういえば、悪意は? 悪意は感じないの?」
「うん、悪意は全然感知できない、何でだろう? 裏から侵入してきた人なんて絶対に悪意で判りそうなのに」
そうなんですよね。悪意察知が役に立ってないのです。おかしいな、何らかの悪意を誤魔化す方法を見つけたんでしょうか? こっちでも、悪意を見れる人がいてもおかしくないですし、お爺ちゃんとか、神主さんとか。
「そう、これからは悪意に頼るのは気をつけた方が良さそうね」
「う~~ん、何か考える」
敵と成りそうな人を見つけられないのは、今後を考えると結構問題なのです。そう考えると、ちゅど~~んは失敗だったかもしれません。どうやって悪意を誤魔化したのか方法を調べる為にも捕まえるべきだったかも? ただ、直接会うのはそれはそれで危険ですし、仕方がないのかな。
「あ、お姉ちゃん、親衛隊の人が来たっぽいよ?」
「・・・・・・そうね、はあ、とにかく一安心ね」
窓の外に次々と停車するピンクの車体。その車体には、思いっきりアニメ絵の少女が二人書かれています。一応、何となく私達姉妹に似せているみたいです・・・・・・か?
「いつも思うけど、私もお姉ちゃんもあんなにロリロリしてないよね?」
「・・・・・・」
お姉ちゃんからは、返事は返って来ませんでした。
ひより:「お姉ちゃん、ローカルファンタジーの日間ランキングから消えちゃったよ!」
小 春:「うん、大丈夫、今日は載ってたの! 一喜一憂してるのは作者だけよ。それに、作者はふと思いついたギャグを入れ込みたくてお話書いているみたいな所があるし」
ひより:「え? それならコメディーに行けば良いんじゃないの?」
小 春:「うん、普通はそうだけど、コメディーというよりは、本来のジャンルは他の作品の感想で言われたように、ファンタジーじゃなくって不安多事なのよね」
ひより:「不安多事・・・・・・それなら、ローじゃなくてハイの方な様な・・・・・・」
小 春:「そうなんだけど、そこは色々な事情があるのよ」
ひより:「とにかく、皆さん応援よろしくお願いしますなのです!」
佳 奈:「ねえ、不安多事を書きたかっただけじゃないわよね?」
作 者:「・・・・・・」