45:お薬のご利用は、用法、用量を守ってご使用ください。
誤字脱字報告ありがとうございます。
ほうれん草をベースにしたポーションは、無事に効果を発揮したみたいです。でも、一度の投与? では症状が緩和されただけで、継続して飲む必要があるみたい。まあ、一回であっさり完治されたら怖いですよね、もともとの作成した目的がお姉ちゃんのモニョモニョ緩和なんですから。
「でも、追加で渡してあげたんでしょ?」
「うん、症状が緩和されたから、あとは病院の治療でも問題無いかもだけど、中途半端なのは気持ち悪いもん」
神主さんから一応報告は貰っています。最悪はお姉ちゃんが出馬する可能性もあったから。今や私なんかより、治癒に関してはお姉ちゃんの方が圧倒的に上になってます。
「お姉ちゃんの治癒なら、無くなった手とか足も生えてきそうだよね」
「え? それすっごく怖いというか、気持ち悪いよ」
そんな事を呑気に話をしていられたのですが、その日の夜、当初に危惧していた事が起き始めました。
「え? お父さんの会社の人、その人の知人の知り合いの人がひよりに会いたいっていうの? それって、ハッキリ言って赤の他人だよ?」
お姉ちゃんがハッキリ、キッパリ言い切りました。うん、私も聞いてて一瞬は悩んだけど、やっぱりそうだよね。
「お父さんもそう言って断ったんだが、偉くしつこくってな。ただ、そちらはお父さんが対処すれば良いが、家に直接押しかけられないとも限らないから。みんな気をつけてほしい」
「あら、それは困ったわね」
お母さんはあっさりしたものです。ただ、意図が良く判らない事が不安です。
「お守り強化した方がいいかな?」
この一年で、家族全員のお守りがパワーアップしています。それこそ、トラックに突っ込まれても無傷でいられるくらい? それでも、降りかかる物が判らないと不安になります。
「この時期だとやっぱりポーション関係?」
お姉ちゃんの推測は当たっていると思います。どっかから情報が漏れたと考えると、時期的には合っている気がします。
「神主さんに連絡しよ? きちんとホウレンソウだよ、ほうれん草のポーションだけに」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・ひより、寒いわ」
「酷い!」
「うん、ひよりのギャグのセンスがね」
「が~~~ん!」
そんな私の前では、まるで何も無かったかのように、お父さんが神主さんに電話を掛けています。
会社の誰から頼まれて、その際に出た知人の名前と、問題の人は更にその知人だという事も説明しています。
「ひよりちゃん、小春ちゃん、一応確認するけど、もし病気の人を治してほしいと頼まれたらどうする?」
「う、わかんない」
「私も判んない。相手の人次第かも?」
お姉ちゃんは私よりもう少し深く考えているのかな。そうだよね、相手の人かあ、ただ会っちゃうと問題は確実に複雑になるよね。治すにしろ、治さないにしろ。
「ひよりと小春が、なぜ不思議な力を授かったのか。お父さんもそれは判らないが、その不思議な力は広まれば確実に問題になる。かつて超能力もそうだったが、何せ病気の治療だからね」
「自然治癒と言い切る人も出るでしょうし、インチキだ、本物だって騒動にもなると思うわね。ましてや、そこにお金が絡むと大変よ」
前のおじさんの時は、神主さんの所に病気治癒祈願として300万円払われたそうです。多いのか、少ないのかは良く判んないけど、そこから、私とお姉ちゃんにアルバイト代として月に8万円が払われてます。中途半端なのは、何か税金の兼ね合いらしいのですよ?
「お爺ちゃんの所のアルバイトはいいの? あれの方がいっぱいお金貰っているよね?」
「そうね、あれは存在しないお金だから良いのよ?」
「意味が解んないよ?」
「存在しない物を祓い清める報酬だから、あれは存在しないお金なの。お母さんも詳しくは無いけど、それを調べようとすると、それこそ存在しない人になっちゃうらしいわね」
「怖! 何それ、鳥肌がたっちゃったよ!」
話を聞いていたお姉ちゃんが、思いっきり身震いしています。ただ、私は逆になるほどって思っちゃいました。政治って結構そういう物ですよね、前世でもそういうの専門の人達がいましたもんね。
「でも、あのお金って普通に使えるんだよね? 使えないなら私泣くよ?」
「ええ、そこは大丈夫よ。あと、しっかり貯金してあるから安心してね」
うん、そこら辺は信用しています。そもそも、うちの家族ってそれこそ小市民だもんね。一万円超える買い物だと、一週間くらい悩むお父さんと、特売品に目が無いお母さんだもんね。
「でも、お小遣いはもう少し上げてほしいかも」
「ん~~~、ひよりちゃんは何を考えていたのかな?」
危ないです、思いっきり心の声が洩れちゃいましたよ!
「え、えへへ、あ、安心したなあって思ったの」
「あら? 何か違う言葉だったと思ったけど、きっとお母さんの聞き間違いね」
ぶんぶんと頭を縦に振って同意します。お小遣い減額は怖いのです。
「ひよりは良いとして、お母さん、私のお小遣いもう少し上げて欲しい。このままだと破産するよ私、衣装代がやばいの!」
「え? そうねえ、でも部費はあげてるわよね?」
「部費の範囲で収まってないんだって! 佳奈が来たら聞いて貰ってもいいけど、あそこはヤバいの!」
お母さんと私は、顔を見合わせます。まあ、お姉ちゃんのクローゼットが、だんだん浸食されているのを見ていますからね。確かにあれはヤバいですね。
「最近なんて、生地にまで凝るのよ。普段着る事も出来ない服が、トータルで万を超えるのよ! ああ、なんであんな部活に入っちゃったんだろう」
「お姉ちゃん、だから、前から言ってるけど、そこは魔女っ娘ステッキだよ!」
「それは嫌! ステッキ壊れたらどうするの! 映像消えちゃうんだからね!」
むぅ、お姉ちゃんにその話を聞いて、ピンクダイヤを2個使用して変身と魔法使用は別の回路にしたのに。それでも、以前の事がトラウマになって魔女っ娘ステッキを中々使ってくれないんだよね。
「そうねぇ、でもあの魔女っ娘ステッキって元映像がいるんでしょ?」
「大丈夫だよ、そこはお店で映像撮りしてくる! 佳奈お姉ちゃんが魔女っ娘衣装とかいっぱいあるお店に今度連れてってくれるって言ってた」
「駄目! ひより、佳奈と出かけるときは必ず私に許可を取ってね!」
前から親友を取られると思うのか、佳奈お姉ちゃんと二人だけで会おうとすると、お姉ちゃんの強固な壁を感じます。前は誤魔化されましたけど、やっぱりお姉ちゃんの純愛は佳奈お姉ちゃんなのかな?
「ひより、ごめん、何か今思いっきり寒気がしたんだけど、また変な事考えてない?」
「ん? 特に考えてないよ?」
可笑しなお姉ちゃんです。それは兎も角、お父さんと神主さんの電話は漸く終わったみたいです。
「榊さんが調べてくれるそうだ。ただ、どうも病院関係から情報が漏れたのは確実らしい」
なるほど、死にかけていた子供が、数日で全快しちゃえばそれこそ噂になるよね。私はそう思って納得していたら、お母さんがそこで疑問を挟みました。
「でも、病院関係の人で、ひよりの事を特定できる人はいないわよね?」
「あ、そっか、ポーションの事は判っても、ひよりが作った事は判んないよね」
あ、そっか。あのおじさんが話したとしたら別だけど、その可能性は薄いと思うし、そう考えたらおかしいよね。
「ああ、榊さんもそこが腑に落ちてないみたいだったよ。そこで、しばらく我が家全員に警護が付く事になった。明日連れてくるそうだが、それまでは十分気をつけて欲しいそうだ」
「それがフラグにならないといいなあ」
「お姉ちゃん、不吉な事言わないで」
思わず抗議した私は悪くないと思う。ただ、すっごく不安になっちゃったよ。
「明日、みんなお休みしちゃう?」
「そうねえ、ひよりと小春はお休みしなさい。お母さん達はそうはいかないけど、家なら警備の人もいるから安心できるわ。あと、誰かが来ても絶対に出ないのよ? 貴方達は学校に行っているはずなのに、家に来ること自体おかしいのだからね」
「うん、わかった」
素直に頷く私なんだけど、お姉ちゃんはきっと反抗期かもしれない。
「なんか、童話であるパターンよね。ひより、気をつけるのよ?」
「う~~~、お姉ちゃん、なんでそういう事を言うの!」
お姉ちゃんはフラグを建てるのが大好き疑惑発生!
ただ、ひよりと小春は・・・・・・、子ヤギ?
それとも・・・・・・子ブ、あれ?誰か来たかな?
え? あ・・・、ひよ・・・・・・