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40:お姉ちゃんは騒動を引き継ぎます。でも、引き継ぐ人には気をつけましょうね。

誤字脱字報告ありがとうございます。

 壊れた佳奈を引き連れて、部活棟へと入っていきます。運動部特有の独特の匂いがしてくる事を覚悟していましたが、意外な事にあまり変な匂いはしません。


「びっくり、思ったより綺麗にしているんだね」


「一応、お掃除の人が入ってるからね。あと、さっきので何か浄化されたんじゃない?」


 なんとなく、佳奈の推測で間違っていないような気がします。女子更衣室ですら制汗スプレーとか入り混じった独特の匂いで気持ちが悪くなるのだし、お掃除だけでは厳しい物があると思う。


「小春がいると空気清浄機要らずだから良いわよね。3年生でクラスが変わったらと思うと怖いわ」


 何となく判るけど、若干複雑な思いが沸き上がってくるよね。まあ、女の友情なんて打算の部分が大きいもんね!


「小春、拗ねないの、小春の事ちゃんと好きだよ? 打算だけじゃないんだから」


「歩きにくいから離れて」


 思いが表情に出たのか、それとも気配に出たのか、佳奈はあっさり私が拗ねた事を察知して抱き着いてきますが、思いっきり邪魔なので押しのけます。決して照れた訳じゃないですからね。


「で、どうなの? 何か感じる?」


「だから、魔女っ娘ステッキが壊れたから、全然判らない。さっきから定期的に浄化は掛けてるけど」


「さっき屈みこんでたけど、魔力は大丈夫なの?」


「うん、これくらいの浄化であれば、でも余裕はないかな。本音を言えば休みたい」


 私は、歩きながら浄化を掛けていく。すると、浄化が弾かれるような感じがした。


「あ、弾かれた?」


「どうしたの?」


「浄化がね、この先で何かに弾かれた気がする」


 視線の先には部活棟一階の最奥の扉が見える。その扉には、テーブルテニス部というプレートが掲げられていた。


「あそこだね」


「うん、えっと卓球部?」


 小春の言葉に頷く。最近では卓球って言わないのかな? でも、確かテーブルテニスは卓球だったはず。


「開いているかなあ?」


 佳奈がさっさと前に進んで、卓球部の部室の扉を開けようとした。


ガチャガチャガチャ


「駄目だね、閉まってる」


「まあ普通はそうだよね。鍵開けっ放しだと不用心だし。ただ、困ったね」


 再度浄化を飛ばしてみても、やっぱりこの先にある何かに阻まれる感じがする。


「卓球部の人探してくるしかないかな」


「まあ原因の場所が判っただけでも意味はあるよ。ひよりちゃんにステッキ直して貰ってから出直すでも良いし、小春も休みたいでしょ?」


 うん、確かに無理して今どうこうする必要は無いかも。という事で、外へと向かおうとするんだけど、だいたいこういう時には邪魔が入るんだよね。


「お前たちは何してるんだ? 運動部ではなかったと記憶しているが」


 部活棟の出口には、生徒会の面々が勢ぞろいしていました。


「そりゃそうか、これだけ騒ぎになれば出てこないはずないわよね。唯でさえ出しゃばりなんだし」


「佳奈、聞こえるって」


 佳奈の評価は間違ってはいないと思うけど、ほら、思いっきり顔を顰めてるよ。


「部活は生徒会の統括下にある。我々が出て不味い事でもあるのか?」


「貴方達、何をしでかしたの、場合によっては停学も覚悟しなさい」 


「部活に関係ない者が、部活棟へと立ち入る事自体、褒められたものではありませんからね」


 うん、醍醐先輩、真田先輩、阿部先輩が相変わらずグイグイ来ます。他の生徒会の先輩は影が本当に薄いですね。会計の三浦さんなんて、身長が小さいのもあって思いっきり隠れちゃってるし、2年生の生徒はどう見ても関わり合いになりたくなさそうです。


「勝手に決めつけないで頂きたいですね。私達も巻き込まれたのですが? ただ部活棟で凄い叫び声が聞こえたので、心配で立ち入っただけです。あくまでも人道的な行いだと思いますが?」


 うん、佳奈が相変わらず攻撃的です。阿部先輩とはどうみても相性が合わなさそうだからなあ。上からマウント取りに来る人には思いっきり反発する子だから。普段はあんなにおっとりしてるのになあ。


 佳奈が一歩前に出たので、私はその後ろでうんうん頷いているだけです。ただ、私達が部活棟に入っている間に、他の人達は半減してます。これは多分生徒会が来たからだろうね。だってさ、みんな本館の入口などからこっそり覗いているのが見える。


「凄い叫び声だと? 他に聞いたものはいるか?」


 醍醐先輩がまだ残っていた人達を見回して尋ねると、チラホラと手を上げる人がいる。


「ふむ、で? 君らは手ぶらみたいだが?」


「出所からして一階奥の部室かなとは思ったんですが、鍵が掛かってて入れませんでした。だから後は先生に連絡して任せようかなと思います」


 恐らく悪意とかが関わっていそうだから先生に何とか出来るなんて期待はしていないけど、私達が前面に出て何かするのも可笑しいし、もうそれでいいやって思い始めてる。好奇心が強い佳奈は、多分だけど自分で原因を突き止めたいって言いそうだけどね。


「ふむ、判った。あとは我々が対処しよう。木下、悪いが部活棟の鍵を借りて来てくれ」


 あ、もう一人の2年生書記の木下君が使いっぱしりをさせられるみたいです。ただ、私達はこれで失礼させてもらいましょう。鳳凰会なんかが此処で出張ってきたらそれこそ目も当てられないしね。


「私達は職員室へ行きますから、失礼します」


「失礼しま~~す」


 私と佳奈はそう言ってそそくさとこの場を離れます。後ろで、あ、とか待て、とか言ってますが、別に私達が生徒会に付き合う必要は無いですからね。聞こえない、聞こえな~~いです。


 その後、職員室へと顔を出して、丁度いた早川先生に事情を説明します。といっても、説明するのはみんなが眩暈がしたとか、立ち眩みがしたとかは思いっきりオブラートに包んで、部活棟の叫び声が卓球部の部室の方でした事と、生徒会が今その部活棟に入ろうとしている事くらい。


「判った、しかし悲鳴か、放ってはおけないな。小西先生、稲葉先生、お手数ですが一緒に来ていただけますか。あと部活棟のマスターキーもお願いします。あ、お前達はもう帰宅して良いぞ、気をつけてな」


 という事で、先生の言葉に甘えて私達は荷物の置いてある図書準備室へと戻ります。


「さて、とりあえず明日どうなっているかだね。小春の感じだと、普通の人では解決できるようには思えないんだけど」


「う~~~ん、でも、私でも厳しいと思うよ。あの時の魔法って、ステッキを経由してるから多分浄化なんだと思う。もっとも、普段の数倍の威力はあったと思うけど、それでも浄化できてないんだよ? こっからは専門家の領分かな」


「残念だなあ、こう魔女っ娘事件簿みたいに颯爽と小春が解決してって感じで行きたかったのに」


「何馬鹿な事言ってるのよ」


 馬鹿話をしながら、図書準備室の扉を開くと・・・・・・じっと此方を見つめる複数の視線が。


「か~~~な~~~、どういう事かな? あたし達なんでコスプレしてるのかな?」


「あ、えっと、記憶は?」


「ふん! 曖昧だけどね、幸い此れが有ったからね! これ見たらはっきりと思い出したわ!」


 そう言って突き出される携帯端末。うん、思いっきり私のコスプレが写っている。


「あ、そっか。あの時写真撮りまくってたもんね。そりゃばれるね」


「佳奈? 自分が厄介事の発生源って自覚している?」


 オドロオドロシイ声で、佳奈の頭を掴もうとしたんだけど、そこはサッと体を屈めて、コスプレ部の面々の後ろへと逃げ込んだ。こういう所は本当に素早い。


「でもさ、みんなの御蔭で目立たなかったんだよ? ファインプレーだと思わない?」


「そうね、他の人達が隠し撮りとかしていなかったらね」


 私がにっこりと笑うと、目を逸らしやがりましたよこのお嬢さん。一枚や二枚では済まないコスプレ写真が出回る可能性を考えると、家に引きこもり生活をしたくなるのは仕方がないと思わないですか?


「とにかく、今日はみんな解散しよ? 生徒会が出しゃばって来たから、変に残っていると巻き込まれると嫌でしょ?」


「あ、うん、小春が言うとおりだね。絶対に私達を探したりしそう。今日は解散しよう」


「むう、まあ生徒会が出張ってたら仕方が無いか」


「わたし阿部先輩とか、真田先輩とか嫌い、思いっきり私達馬鹿にしてるよね」


「まあアンタの成績じゃ仕方がないんじゃない?成績は下から数えた方が早いじゃん」


 またワイワイと雑談が始まりそうな所を、何とか宥めて早急に帰宅の準備をする。と言っても、私と佳奈は準備室の戸締りをするだけだけどね。


「鍵を職員室へ返してくるから、校門のところで待ってて。生徒会には見つからないようにね」


 駆け足で職員室へと向かう佳奈と別れ、私は一応周囲を気にしながら校門へと向かう。下駄箱が一番心配だったけど、そこを無事通過できたので一安心と思っていたら、校門の所に思わぬ人を発見した。


「え? ひより、何でいるの?」


 そう、校門の所に腕を組んで立ちふさがる様にして立っているのは、小さな事件も思いっきり大騒動にしちゃいそうな我が妹、ひよりだった。


おかしいです。お姉ちゃん編は確かに終わったのに、ひよりが登場しました。

まあ事件はまだ未解決ですけどね。

次回から、ひより視点に戻りますよ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] >>「え? ひより、何でいるの?」 いやいやお姉さまよ、むしろ「来たなら何で中に入って来てないの?」というべきだろうそこは。 そもそも、お姉ちゃんに何かあって動かないわけがないいぞと。 …
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