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39:お姉ちゃんは深淵を覗いてしまう?

誤字脱字報告ありがとうございます。

「小春さんがコスプレイヤーだったなんてびっくりだよ」


「ほんとほんと、でもさ、これで今度のコミケは勝ち組だよね!」


 何か周りでは良く判らない会話が行われている。ただ、私は極力周りの会話を除外して、周囲の悪意に意識を集中する。


「小春が現実逃避してるわ」


 3年生の教室へ向かうにつれて、やはり悪意は濃くなってきている。ここまで濃い悪意は、私がこの学院に入学して初めてだね。


「小春さんって綺麗系かと思ってたんですけど、可愛い系もいけたんですね。これは創作意欲がわきわきしますよ」


「文芸部も集客に苦労してるんだよ。固定ファンはいるんだけど、まずは足を止めて貰わないと」


「浄化」


 定期的に、悪意の浄化を行いながら進んで行くけど、これは結構洒落にならないかもしれない。

 ただ、どうやら3年生の教室が見えて来ても悪意の発生源は更に奥にあるみたい。


「運動部が軒並み休んでるって言ってたっけ」


 運動部の部活棟が発生源で、そこから流れ出た悪意に一日中晒されたため、運動部の3年生が一番影響を受けたのかもしれない。


「さっきからさ、気分が何か悪くなってきても小春さんからマイナスイオンが出てる気がする」


「うん、これが噂の癒し効果? 日溜まりの君の名前は伊達じゃないわあ」


 3年生の教室前で、更に浄化の魔法を使う。ただ、さっきから手にした魔女っ娘ステッキがキラキラくるくるしてるんだけど、これって佳奈達には見えて無いのね。


「どうせなら、私の姿ごと見えなくしてくれたらよかったのに・・・・・・」


 思わず廊下の天井を見上げる。決して涙が出そうになった訳じゃないよ。


「でもさ、さっきから気になってるんだけど、何か小春さんの着てる衣装が二重にぼやけて見える時がある」


「あ、それは私も思った。あとさ、時々なんか光ってるみたいな感じしない?」


「光り輝く美少女、マイナスイオン付きですか! まさに日溜まりの様だね」


 佳奈が変な事を言ってるような、あれってフォローしているつもりなんだろうか? ただ、何かもうどうでも良くなってきた、あと、妹よ、覚えていなさいね。


「何か、小春から瘴気が出てるような気配が」


「え? 悪堕ちですか? それはそれで創作意欲が」


 あ、駄目だ、目の前が滲んできたよ。


 それでも、定期的に浄化を掛けながらついに運動部の部活棟へと辿り着いた。


「うわぁ、天敵の巣だよ此処」


「運動部ってねぇ、あたしらの事思いっきり馬鹿にしてくるじゃん」


「だよね、だよね、どうせあたしらはオタクさ、それの何が悪いのよ!」


「それでさ、小春。ここどうするの? もしかして爆破しちゃうの?」


 あの、皆さんなんか運動部との確執がダークレベルまでいってませんか? 佳奈ってそんなキャラでしたっけ?


 思わず視線が後ろから着いて来る佳奈達へと移し・・・・・・私は呆然とした。


「え? な、なんでこんなに人がいるの?」


 佳奈達の後ろには、知ってる人、知らない人、それこそ総勢30人以上の人がいます。


「今更? そりゃ、こんな格好で練り歩けばこうなるよね?」


「うん、いい宣伝になったわ。みなさん、コスプレ部を宜しく! 新入部員大歓迎です!」


「いや、コスプレ部じゃなくて被服部なんだけど~、被服部をよろしくね~~」


 後ろのコスプレ集団は、人が集まっている事にまったく違和感を感じていない。ある意味、慣れているのだろう。ただ、それに対し小春の頭は真っ白になった。


「あう、あうあう、あう」


「うんうん、小春、深淵の世界へようこそ、なんてね」


 動揺する小春を見ながら、佳奈は腕を組み、うんうんと大きく頷きながら小春の肩を叩く。

 肝心要の運動部の部活棟へ立ち入る事も無く、騒ぎを聞きつけて次第に膨れ上がっていく群衆に、呆然としていた私は、佳奈に肩を叩かれた瞬間どこかでプチッっと何かが切れる音が聞こえたような気がした。


「か、佳奈の・・・・・・馬鹿~~~~!」


 その瞬間、私の体の中心から今まで感じたことの無いくらいの何かが、腕に持った魔女っ娘ステッキのピンクダイヤに増幅されて周囲をピンク色のの閃光で包み込んだような気がした。


「うわ、なにこれ」


「目が、目が見えない~~~!」


「ちょっと、なにこれ、聞いてないよ!」


 頭の中を真っ白にした私には、周囲の声はまったく聞こえていない。ただ、周囲にあった悪意が、そして本来向かうはずだった部活棟が、ピンク色の閃光に包まれる。その光に触れるたびに悪意は一溜りも無く消えていくのが見えた。


「え? なにこれ、あ、駄目だ、消えちゃう、ああああ」


 真横では佳奈の意味の解らない声が聞こえ、部活棟の奥の方で、絶叫と言っても良いくらいの、恐ろしい叫び声が聞こえた。


「あ、あ、あ、」


 体から吸い出されるかのように、魔力が減っていくのが判った。けれど、それを抑え込むことが出来ない。そんな時、手にした魔女っ娘ステッキからピシリという音が聞こえた。


「はえ? あっ」


 周囲を暴れまわっていた光が唐突に消え、ごっそりと魔力を失った小春は地面の上にしゃがみ込んでしまう。


「な、なんだったの」


 ぺたりとしゃがみ込んで周囲を見渡すと、そこら中に座り込んだ生徒達の姿が見えた。そして、自分の真横では・・・・・・


「ばぶ~~、かなは良い子だもん!」


 うん、何か見てはならない者が居た。


「なんでしょうか、親友が幼児退行してませんか? あ、もしかして、浄化されるほどに穢れていたっとか? え、でもお守り持ってたよね?」


「お姉ちゃん、かなは良い子だよ?」


 目に涙を浮かべて私の顔を覗き込む佳奈、思わず携帯を取り出して録画し始めた私は決して悪くないはず。うん、別に後で脅迫材料に使ってやろうなんて考えてない、ただ、可愛いは正義なんだよ!


「うんうん、かなちゃんは良い子だね、かわいいね。ほら、にっこり笑って」


 私の指示通りにニッコリ笑う佳奈、ああ、時とはなんと残酷なんでしょう。


「これ程までに穢れの無い笑顔を浮かべていた少女があそこまで邪悪になるなんて、いったい何があったんでしょう」


 思わず涙が零れそうになりながら、それでもかなちゃんの頭を撫でてあげていた手をガシリと掴まれます。


「ふ、うふふふ、まさか小春がこんな罠を仕掛けるなんて、ねえ、その携帯かして?」


「ちょっと! かなちゃんをどうしたの! 事と次第によっては佳奈と言えど容赦はしないわよ!」


「うるさ~~~い! 早くその携帯を渡しなさい! なんで、なんであんな事に!」


 どうやら、かなちゃんだった時の記憶はしっかりあるようだね。これは当分はネタに困らない。


「ふっふ~、渡してなる物ですか、これには儚くしてこの世を去らざる得なかった、掛け替えのないかなちゃんの記録がのこってるのよ! あんな可愛いかなちゃん、ああ、なぜ、なぜこんな悪魔に!」


 戯れる私達とは別に、それぞれ周囲に蹲っていた人達が漸く意識を取り戻した。ざわざわと騒めく生徒たちは、自分の周りを見回して首を傾げていた。


「あれ? なんでこんな所で?」


「さっきまで何をしてたっけ?」


「あら? 小春さん、いつ着替えたの?」


「ほんとだ、あれ? 小春さんがコスプレしてたように思ったのは、まぼろし? 勘違い? 願望?」


 被服部の面々の記憶も、幸いにして混乱して私のコスプレを記憶していても、その記憶に自信が持てない程に混乱しているみたいだ。そして、その混乱に拍車を掛けているのは、今の私の姿。そう、私は今、学校の制服姿に戻っていた。


「良かった、本当によかった、下手したら私、ここで体操服の姿や、レオタードの恰好を晒していたかと思うと。あああ、本当に自分を褒めてあげたい。私、偉いよ!」


「小春が壊れた。でもさ、何か良く判んないけど、そっと立ち去った方が良いよね?」


 確かにここまで騒動が大きくなってしまうと、私達も指導室へと呼ばれるかもしれない。


「そういえば、最後の最後に部活棟の奥ですごい叫び声が聞こえて来なかった?」


「あ、何か聞こえたかも、行ってみる? それと、あとで映像消してよね!」


 話を逸らしたつもりだけど、残念ながら佳奈はしつこく覚えているみたい。


「うん、判った、検討するね。でもさ、変身解けちゃって悪意見えないんだけど、意味あるのかな?」


 そう言いながらも、とりあえず部活棟へ二人で足を踏み入れたのでした。


「ほんとうに、頼むから消してね!」


「うんうん、かなちゃんは良い子だもんね」


「ふぎ~~~~!!!」


 あ、佳奈が壊れた。

やったよ!思いっきり脱線しかけたけど、方向はあってるよ!

次で何とかお姉ちゃん編は終わりそうだよ!

そして、佳奈ちゃんは何でこんな汚れキャラになってしまったのでしょうか?

謎ですねえ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >>うん、判った、検討するね。 小春さんも汚れちゃったんだね……。 思わず笑いがこぼれたよ。 [一言] お姉さんには悪いが。 たとえこの場をごまかすのに成功したとしても、コスプレ部からの…
[一言] コスプレをする(深淵をのぞく)時、コスプレ好き(深淵)もまたこちらをのぞいているのだ?
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