表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/135

29:調伏失敗しちゃいました

誤字脱字報告ありがとうございます。

 結界から脱出しようと暴れている蛇少女を見ながら、少し首を傾げます。


「何か言葉が判っているみたいですね。もしかしたら説得とか出来るのかも」


「シャ! シャ!」


「ふむ、それはそうじゃのう」


 頻りに頷いている蛇少女と、それを見て考え込んでいるお爺さん。

 まあ、私がやることは変わらないんですけどね。


「アイスなんたら!」


「シャ!」


「なんたら・・・じゃと?」


 適切な呪文が思い浮かばなかった為、イメージでごり押しします。

 

「結界の中を氷で満たす感じでなんとかなるでしょうか? あ、頭は出しておかないとですね」


「いや、ひよりちゃんは会話でとか言っておらんかったか?」


「お爺ちゃんは何を言ってるんですか? 私、力押ししか出来ませんよ?」


「やっぱり人選を間違ったかのう」


 お爺ちゃんがちょっとションボリしていますが、結果が出れば良いのです。それで私には1000万円ものお金が貰えるのですから。


 そんな事を思いながら蛇少女を見ていると、変な格好で首から下が氷に埋まっています。


「おかしいですね? なぜ依り代から出ないのでしょう? それに、別に寒くないからか震えていませんね」


カチカチカチカチ


「歯を打ち鳴らして何かをしようとしていますね。私あれ知ってます。確か魔除けか何かでしたよね?」


「あ~~~、たぶん寒くて歯を打ち鳴らしているんじゃないかのう」


 隈取で顔色が判らないのが不便です。ただ、どうもこのままでは憑き物を落とすことは厳しそうかな。


「駄目かな? でも、もう少し待ってみます? 中々判断が難しいですね」


「オンキリキャラハラ・・・・・・」


 何かお爺ちゃんが呪文を唱えています。お爺ちゃんが呪文を唱えている所を見るのは初めてです。

 ただ、次の一手が思いつかないので、これは困りました。


「蛇さんも鳴かなくなりましたし。効果はあるのでしょうけど、むぅ」


 そもそも、神霊ですか。悪意ではなく、それでいて魔力を持つ生き物。浄化では清められないという事は、やっぱり精霊みたいな物でしょうか。ただ、精霊の研究は是と言ってしていないのです。


「そもそも、精霊とは何でしたっけ?」


 かつての知識を総動員して考えます。自然界を司る物というのが一般的でしたよね。ただ、何ら実証されてはいませんが。


「カアーーー!」


 お爺ちゃんが何か指で変な形を作って、最後に大きな声と共に蛇少女へと突きつけました。


「あ、白目になった。でも、隈取は消えてない。でも、ついでに心臓の鼓動も止まったけど、大丈夫?」


「なんじゃと! 駄目じゃ、急いで蘇生せねば!」


「あ、やっぱり。うん、リカバリー」


 キュアでも行けるかなと思ったけど、何となく唇も紫色だし、顔色も悪そうだし、リカバリーを選択しました。まあ、それでも憑きものは落ちてませんが。


 その後、氷も消して蛇少女の体を確認します。


「脈は復活しました。呼吸も問題ないですし、服も乾かしましたから問題なしです。お爺ちゃん、止めを刺しちゃいましたね。危なかったですよ?」


「儂が悪いのかのう?」


 どこか納得のいかない様子ですが、やはりお爺ちゃんの魔法が止めですよね。まったく困ったものです。

 でも、私もお爺ちゃんも失敗です。これは困りました。


「一度部屋を閉じて、伊集院殿と話をするかのう。このままでは解決は難しそうじゃ」


 お爺ちゃんと連れ立って部屋を出ます。そして、お爺ちゃんがお札を扉に張り付けて、私達は伊集院さんが待っている応接室へと向かいました。


「い、いかがだったでしょう?」


「申し訳ないの、失敗じゃ。お嬢さんはまだ憑き物に取りつかれておる」


「あ、あああ」


 お爺さんの言葉に、奥さんが泣き出しました。伊集院さんはそんな奥さんを宥めていますが、私は仕方が無くソファーにちょこんと座っています。


「それでじゃの、今回分かった事で聞きたいことがあるのじゃが、よろしいかの?」


「は、はい。何でしょうか?」


 お爺さんは娘さんに憑いている物が、恐らくは神霊の類ではないかとの推察を説明した。そして、すぐに害が生じるような感じは無かった事。ただ、神霊をその身に宿す事による消耗など、あくまでも推測でありながらも懸念される問題点を説明した。


「それでじゃ、伊集院殿は蛇の神霊と聞いて何か思い当たる事などはないかのう?」


「神霊って珍しいの?」


 お爺さんの口調に、私は思わず口を挟んでしまう。


「うむ、まあこの儂でもまだ10例くらいしか見た事は無いの」


 10例が多いのか、少ないのか今一つ判断に苦しむけど、そうか、珍しいんだ。


「研究してみたいかも」


 つい本音が零れてしまった。ただ、伊集院さんには聞こえなかったようで、お爺さんは私の頭に手を乗せる。うん、自重しろって事ですね。まあ私だって空気を読みますよ。


「へ、蛇ですか・・・・・・そういえば」


 伊集院さんは、ちょっと席を外し、その後に何かの巻物を持ってきました。


「確かこれに白蛇様がとか書かれていたような」


 そう言って広げられた巻物には、何かミミズがのたくった様な文字が書かれています。


「うん、読めません」


 横から覗き込んでいた私に、お爺ちゃんは苦笑を浮かべながら何が書かれているのかを説明してくれます。


「儂も所々読めぬ所もあるが、どうやら白蛇様に世継ぎの病気を治してもらったようじゃの。その代わりに、その白蛇様を嫁に貰った。そんな事が書かれておる」


「え? 蛇と結婚なんか出来るの?」


 とんでもない内容に、思わず驚きの声が出る。この世界は何と変な世界なんだろうか。


「いやいや、白蛇と言うても神様じゃ。ほれ、美しい娘に変化したと書かれておる」


 お爺さんが指さしてくれた場所を見る。確かにそれっぽい事が書かれている・・・・・・ような気がするけど、変化したとて蛇は蛇では無いのだろうか? それで良いのかなあ?


 私が首を傾げているのを他所に、お爺さんは更に巻物に書かれている事を読み解いていく。


「ふむふむ、ほう、なるほど」


「そ、それでいかがでしょう? 何か解決のヒントなどありますでしょうか?」


 伊集院さんが身を乗り出すようにして、お爺ちゃんに尋ねる。


「うむ、どうやら伊集院家は白蛇様の子孫のようじゃな。であれば、祟っている訳では無いと思うのじゃが、ふむ、何が起きているのやら」


「もう蛇少女に直接聞いてみたら? 言葉は理解できているみたいだったし、聞いたら教えてくれるんじゃないかな?」


「おお、そうじゃのう。まずは試してみるかの」


 私とお爺ちゃんが頷きあっていると、伊集院さんが怪訝な表情でこちらに問いかけてきました。


「あの、言葉が通じるのであれば、まず尋ねてみるものではないのでしょうか?」


「む? いやいや、試してみねば悪しき物か、神霊かも判らぬでな。まずはどういった物が憑りついているのか調べねばの」


「うん、侮られたら危ないのって結構いっぱいいるよ? 特に呪いとかは真面目に怖いの」


「そ、そういうものですか」


 私とお爺ちゃんは大きく頷いた。


 間違ったことは言ってないもんね。


 という事で、再度お爺さんと蛇少女の部屋へと訪問します。

 お札をベリっと剥がして、部屋の扉を開けると真正面から蛇少女が飛び掛かって来ました。


「結界!」


ゴイン!


「キュウ」


 おお、新しい鳴き声です。シャーシャー以外にも鳴けるとは驚きです。


「何で顔面から突撃してくるのでしょうか? 女の子にとって顔はすっごく大事だと思うのですが」


「蛇じゃからのう」


「ただ、蛇と言えども別に顎が外れて口が大きく開くようには見えないのですが」


「文献から言えば、白蛇様は癒しの力があるとの事だしのう。あと良くあるのは金運かのう?」


「戦闘能力は今一つという事ですか、納得です」


 顔を抑えてゴロゴロしている姿は、とても神様などに見えないんですけどね。


時間が無くて短いです><


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ