26:騒動の顛末?
誤字脱字報告ありがとうございます。
「拉致未遂は洒落にならないと思うよ?」
「そうね、お母さんもビックリしたわ」
家に帰ってお母さんに今日あったことを報告しようとしたら、既にお母さんには詳細な情報が伝わっていたみたいです。
「もうすぐ小春が帰宅するから、そうしたらちょっと話しましょうね」
という事で、お姉ちゃんの帰宅待ちです。私は、その間に今後の事を考えてアイテム作りに邁進します。
「別に霊能力者が相手という訳ではないから、逆に加減が難しいよね。でも、お姉ちゃんの安全第一だし、多少の過剰防衛は仕方が無いかな」
この一年半、私とて進化しているのです。魔法はイメージという事で、ライトノベルを読みまくりました。でも、異世界から此方への転移や転生って少ないんですよね。帰って来たとかは有るんですが。
「召喚魔法とかが使えれば良いのになあ」
式神にまだ思いっきり未練を残している私ですが、似たようなヒントで作成チャレンジをしたヌイグルミの使い魔は、思いっきり失敗しました。いくら町内のお祭りバザーで1個100円で売られていたヌイグルミでも、中の綿が無残に飛び散った姿は心に来るものがありました。
「流石に、生きた動物を使役なんて出来ないし、何か良い方法はないかなあ」
前世において、種類は限られますが魔物を使役する魔法はあるのです。ただ、あれは魔物の持つ魔石と繋がりを作る魔法です。魔獣でない動物には効果が無いのです。
「魔獣がいても、この世界だと連れ歩く事は出来ないし、召喚が出来ればなあ」
言っても意味の無い事をぶつぶつと呟きながら、ネックレスに真ん丸ダイヤを取り付けていきます。
「うん、あとはどの魔法を付与しようかな」
銀のネックレスなので、魔法の通りは結構良いです。真ん丸ダイヤが使い捨てだけど、土台が出来ていれば再取り付けは容易です。
「ここは風系が良いかな。火系とか地系とは違って目に見えないし、それでいて威力はそこそこあるし」
この世界と言うか、ライトノベルにドップリ嵌まった私は、今や自称精霊術師! ここはやはりそれっぽい物を付与したい所です。
「ウインドアローとかだと単体になっちゃうかな? 数増やせばいける?」
10本くらいの風の矢が、それぞれ相手に追尾して攻撃する。うん、悪くないね。
云々と唸りながら、魔法をイメージしてみる。でも、魔法になる手ごたえが全くない。呪文の頭すら閃かない。
「あうぅ、ちょっと今の私では難しいかあ。本数の問題じゃないね、敵識別の所かな」
魔法はイメージと魔力、これが理に嵌まれば呪文が生まれる。この呪文を生み出す際には、一気に行く事もあるけど、大体は一区切り、一区切りと段階を踏むことが多い。
「本人の素養や素質の部分もあるけど、ただこの世界って本当に魔法を創造しにくいなあ」
世界が魔法を拒絶しているのかもしれないな。何となくの印象だけど、恐らく間違っていないように思う。
そうこうしている内に、お姉ちゃんが学校から帰って来ました。
「ひより、ごめんね巻き込んじゃって。大丈夫だった? 怪我とかしなかった?」
普段のお姉ちゃんからは考えられないほどに意気消沈しています。
「私はぜんぜん大丈夫だったよ。お姉ちゃんの方は大丈夫だったの?」
「うん、私は友達が変だって気がついてくれて、それですぐに引き返して来てくれたの」
「ほら、二人ともとりあえずソファーに座りなさい」
お母さんに促されて、リビングに座ります。
「今日あったことの要点を説明するわね。小春ちゃんも判っていない所もあると思うから、ちゃんと聞くのよ」
それから、お母さんが説明してくれた内容は、思いっきり何だかなぁっていう内容でした。
「えええ? それっておかしくない? 私てっきりお姉ちゃんに嫉妬した悪役令嬢が、配下の人を使ってお姉ちゃんを拉致しようとしたんだと思った」
「あら、それならひよりを誘拐する必要はないでしょ?」
「でも、お母さん、そんな事があるの?」
「あるんでしょうねぇ、困ったことね」
結局のところ、お姉ちゃんと私を拉致しようとしたのは、鳳凰学園での恋愛ゲーム的な何かは、まったく関係がなかったの。で、何があったかというと、原因はお姉ちゃんの魔法でした。
「お姉ちゃん、安易に治癒魔法なんか使っちゃだめだよ?」
「うん、ごめんなさい。でも、苦しんでたらほっとけなくって」
鳳凰学園で今年入学した中等部1年生の男の子、その男の子が今回の原因でした。
ただ、この男の子は、生まれつき心臓が弱かったそうです。で、その子が学校で蹲っていたのを見かけたお姉ちゃんが保健室まで連れて行ってあげた。ここまでは良かったんですが、専用の薬を飲んでも、まだ苦しそうだったので、お姉ちゃんは思わず手を出しちゃったというか、治してあげちゃったんですよね。
「でも、まさかその子の家が、新興宗教に嵌ってるなんて思わないじゃない」
そうなんですよね、一応、男の子に口止めはしたそうなんだけど、後日病院で検査をしたら治っているはずのない病気が治ってた。ご両親は、きっとなんたら教祖様が治してくださったと大騒ぎ、教祖様はえ? 何それ? となって男の子を尋問。
「本当に病気を治せるような霊能力者の子供がいるなら、新興宗教なら喉から手が出るくらい欲しいよね。なんとなく判る」
「そんなものなの?」
「そうねえ、神様の奇跡とか、まあ新しい信者獲得に使えそうね」
何となく判るような、でも犯罪を犯してまでする事でしょうか?
「でも、まさかひよりまで巻き込むなんて、ひどいよね」
「小春ちゃんとひよりちゃんが仲が良いことは知られているみたいね。だから、貴方達二人を攫えばより操り易いと思ったみたいよ。特にひよりちゃんはまだ幼いから騙せるとでも思ったみたいだし」
「むぅ、もしかすると私が騙しやすいと思われたからも要因ではあったのです?」
「どうかしら、でもそれは言っても仕方がないわね」
お母さんはそう言いますが、何となく納得がいきません。でも、確かにもう終わったことです。
それで結局はどうなったのか、それは何故か教えてもらえませんでした。というかお母さんも詳しくは判らないみたいです。ただ、もうあの人たちに悩ませられる事はないと言われたので、それで良しとしましょう。
「でも、小春ちゃんを助けてくれたお友達に、お礼を言いにいかないとよね。なんと言う子?」
「あ~~~、うん、どうかなあ?」
何でしょうか? お姉ちゃんの反応が突然変わりました。なんというか、今まで見たこともないような反応です。
「お姉ちゃん、もしかしてボーイフレンド? ついにお姉ちゃん目覚めちゃったの?」
「あら、お赤飯かしら?」
「はあ? な、何を言ってるの! そもそも何でお赤飯? 次はひよりの番よ!もうあんな恥ずかしいのは嫌!」
お姉ちゃんが何か爆発しました。うん、お姉ちゃんでお赤飯炊いたのは、もう3年位前でしたよね。最初、私は意味が分からなかったんだけど、お姉ちゃんは顔を真っ赤にしてお母さんに怒ってた。
「ひよりちゃんはねえ、何か愉しめそうにないわ、淡々としてそうで」
「あ、それは私もそう思う。ぜんぜん気にしなさそうというか、普通にお赤飯を食べれること喜びそう」
「心外ですね、私とて羞恥心はありますよ。でも、なんであれで恥ずかしがるのかは分かりませんが」
私の表情を見て、どうやら本当に分からないんだと気がついた二人は、大きな溜息をつきます。
「あの、主題がずれている気が私はするのです。お姉ちゃん話題をずらそうとしていませんか?」
「そ、そんなことないもん!」
駄目ですね、思いっきり話題を変えようとしてました。
「でも、お母さんは本当にお礼を言いにいきたいのよ。その助けてくれたのは何処の子?」
「う~~~、助けてくれたのは、伊集院里美さん、それと、そこのお家の護衛の人」
はて? お姉ちゃんの口からは初めてお聞きするお名前です。でも、お母さんは誰か判ったみたい?
「伊集院って、鳳凰学園の伊集院さんってあの伊集院さん?」
「お母さん、何か日本語変になってるよ?」
私の指摘も気にならないくらいお母さんは動揺しています。
「うん、多分その伊集院さん。で、でもね、大袈裟になると駄目だから、お礼とか、ご挨拶とかはいらないって言われたの。あ、あとね、学校であんまり伊集院さんと親しくしてるのは不味いのよ? それこそファンクラブとかが煩いの」
「ファンクラブ? うちのみたいな?」
「違う! ちゃんとした、まともなファンクラブ!」
そうですか、うん、判ったけど、うちのファンクラブってまともじゃないのね。一応お父さんから聞いた話だと、うちのにも一般会員もいるのよ? どういう人か、知りたくもないけどね。
明日は、残念ながら投稿ができません。
お姉ちゃんの学校での状況は、お姉ちゃんの今後の騒動発生率で分かります。
お姉ちゃんにとっては嬉しくないだろうですね。
ブックマーク、評価ポイントありがとうございます><
じわじわ増えてきて嬉しいです。
何気に、投稿日と話数が同じなので、どこかで挽回しないとかな?