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24:判らないからこそ不安は増すのです

誤字脱字報告ありがとうございます。

 久しぶりの家に入ると、家具が結構動かされているのに気が付きました。


「これは、警察の人がやったのかな?」


「どうなのかしら?」


「掃除が大変そうだね」


 とりあえずソファーだけでも動かして、みんなが座れるように位置を調整する。


「何とかみんな座れそうね」


「うん、あ、川瀬さん達も座ってね」


 そう言うと、私は食事の時に自分が座っている椅子を持って来て、そこに腰を下ろす。


「で? なにがどうなっているの?」


 塾に行ってて状況が判っていないお姉ちゃんが質問してくる。


「あのね、神主さんがマスコミさんに連絡してくれたの。それで、マスコミさん関係の対策会議」


「マスコミさんを入れて?」


 訝しそうに、お姉ちゃんは川瀬さん達を見る。


「まあシャチホコテレビに所属していますが、私達もこの世界には常識で測れない物もある。という事は身に沁みて知っておりますので。テレビ局って結構色々あるんですよね」


「なるほど」


「ひよりは判ってないよね?」


「うん、わかってない」


 とりあえず頷いておこうと思っただけで、テレビ局の事なんて良く判らない。そもそも、電気って何? てレベルだよ。なんで遠くの映像があんなに簡単に見られるのかがすっごい不思議。ぜひ前世の世界に伝えてあげたい技術だね。


「一応、出雲の榊氏からの依頼で来ていますが、依頼内容としては報道の規制と、ネット情報への対処ですね。今、ネットの掲示板上では様々な情報が、デマ3割、真実7割で出回っています」


 そう言って川瀬さんは、ネット掲示板という物を見せてくれる。


「うわあ、ひよりの名前だけじゃなくって、学校の名前なんかも出てるよ」


「そうなの? それって不味いの?」


「あまり良い事では無いわねえ。でも、そこまで問題なのかしら?」


 お母さんも首を傾げています。別に犯罪を犯した訳では無いし、何が問題なのかが判りません。


「そうですね、問題として把握していただくのに一番怖い可能性を考えるとですね、ひよりさんが一番可能性が高いですが、襲われます」


「え? 何で?」


「へ?」


「・・・・・・」


 お母さんは絶句しています。

 そうですよね、何で被害者の私が襲われるになるのでしょうか?


「今回、ネットに流れている映像に対し、その映像の真偽を含めて非常に話題になっています。そして、それを羨ましく思う者や、利用しようと思う者達が少なからず出てくると思います」


「そういった人が、何も悪くないひよりちゃんを襲うと?」


「ええ、実際にここの部分を見て貰えますか?」


 川瀬さんがネット掲示板で示した箇所、そこには ”なあ、試しに襲ってみたら良くない? そしたら映像の真偽も判るじゃん” こんな事が書かれていました。


「それ以外にもですね、こことか」


 ”襲撃映像取ったらバズるかな? それなら俺やるぜ?”


 そして、この言動を煽るような言葉が、いっぱい書かれています。勿論、非難する言葉の書き込みとかもあるんですが、何か逆にそれが煽りに更に勢いを与えている気がします。


「勿論、実際にこの者達が何かすると決まった訳ではありません。ただ、警戒しても、しすぎるという事もありません。ましてや、ひよりさんは小学3年生ですし、組し易しと捉える馬鹿が出て来てもおかしくはないです。そして厄介なのが、その者達は必ず映像を記録しているという事です。そうでなければ意味が無いですからね」


 川瀬さんの言葉に、私は首を傾げます。でも、お母さんとお姉ちゃんは違うみたいです。


「お母さん、それって結構やばいよね」


「そうねえ、撃退できたとしても、同じような事が3回も続くとしたら駄目ね」


「はい、一応ですが私達もネット監視を強化して、それっぽい発言が無いか注意していますが、何とも言えません」


 どうやら、今の状況を理解できてないのは私だけのようです。


「映像が残るんなら、撃退しちゃっても良くない? えっと、正当防衛だよね?」


 ここ最近のワイドショーで言っていた、身を守るための権利を告げます。でも、みんなの反応は今ひとつです。


「撃退は勿論しないと駄目だよ。だけど、魔法が認知される方も駄目なの。ほら、魔法少女も正体を知られちゃ駄目でしょ?」


 お姉ちゃんが説明してくれますが、それほど魔法と言うのは不味いのかと不思議に思います。


「えっと、そしたら手のひらを前に突き出して、何とか砲ってやればいいの?」


「あ。それも駄目だから、それ漫画とかだから許されるの!」


「そんな事も出来るのですね」


 お姉ちゃん全否定で、川瀬さんは何か驚きの表情で私を見ています。


「そうしたら、どうやって撃退すればいいの? 武術であればいいの? 武術出来ないけど」


 私が疑問に思って、みんなに尋ねる。けれど、みんなの答えは、逃げる、回避する、などの私の望むものではなかった。


「でも、襲われた時点で反撃しないで逃げるって無理じゃない?理想論は理想論で終わるよ?」


「何この子、まじで小学3年生?」


 川瀬さんが何か言ってますが、今は無視です。もっと建設的な話をしましょう。


「でもさ、それは兎も角として、私以上にお姉ちゃんの方が危ないよ? 良い悪いは別として、私は撃退出来るけど、お姉ちゃんは難しいもん」


「え? でもひよりのお守りがあるよ?」


 お姉ちゃんが首を傾げますが、大きな勘違いをしていますね。


「あれはそもそも一時的な物なのです。継続して攻撃されたら効果は消えますよ? だから防御以外の何らかの方法も必要だと思うのです」


「え? そういう物なの?」


「走って逃げる為の補助とかがあれば」


「そうねえ、行き止まりに追い込まれるとか定番よね」


 お姉ちゃんは驚いて、川瀬さんは提案? でも、お母さんはなんでしょう?


「そこで提案なのです! ぜひ、式神とか覚えたいので誰か紹介して欲しいのです!」


 身代わりの形代とかも欲しいですね。そもそも、紙で生き物を生み出す秘法ですよ、これを機にぜひとも研究したいです。私はそれこそ目を爛々と輝かせて、川瀬さんを見つめます。だって、色んな霊能力者と繋がりがある様な事を言ってましたよね。


「え? ちょっと待ってください。私? 私ですか?」


 戸惑う川瀬さんに対し、これでもかと私は首を大きく縦に振ります。


「陰陽師とか良いですよね。すっごい格好良いですし、何より興味があります」


 私の言葉と眼差しにでしょうか? 川瀬さんは何故か一歩後退りします。


「あ~その、私は確かに何人か霊能力者の知り合いはいる。ただ、そこに陰陽師はいないんだよな」


「え? でも、前にテレビとかでも特集とか組んでましたよ? それなら、何処に行けば会えるかとかでも良いですよ?」


「う~ん、それはテレビ局の管轄じゃないから、出雲の榊氏とかに会ったら聞いてくれ」


 何と残念な回答なのでしょう。あれ? でも、この家の警護をしてくれているのはお爺さんの関係者、即ち霊能力者ですよね?


「ちょっと、お外にいるお爺さんの関係者に聞いてみます」


 心持しょぼんとしながら外の気配を探りますが、うん、誰がお爺さんの関係者か判りません。魔力自体も一般の人との差が無いのです。


「駄目ですね、良く判らないので、神主さんに・・・・・・」


 そう告げて、先程までお母さんがお話していたタブレットを手にしますが、操作の仕方がぜんぜん判りません。


「神主さんを呼んで欲しいのですけど」


 そう言ってお母さんを見ますが、首を横に振ります。それで、川瀬さんに視線を向けますが、川瀬さんも首を横に振るのは何故でしょうか?


「あちらから繋がない限り、この端末では繋がらないんです。最低限の情報防御策で、私ごときでは何ともなりません」


「そうしたら、何にも対策が打てないではないですか!」


「式神から離れて考えてください!」


 川瀬さんが酷い事を言います。それだと全然やる気が出ないのです。魔法において、やる気はすっごい大事な要素なんですよ。


「ともかくですね、ひよりさんには外出時、我々テレビ局のジャンパーを身につけたスタッフが同行します。これで多少なりとも抑止にはなると思います」


「でも、お姉ちゃんは危険なんですよね?」


「それは何とも言えません。そもそも、本当に襲撃してくるかも判らないのですから」


「そうよね、だってさ、目立ちたいからって犯罪を犯す人がいると思えないよ」


「そうね、それで逮捕されるのですよね? そんな人いるかしら」


 ふむ、どうやら私の考えすぎみたいですね。でも、物事は最悪を考えて動く。これは前世で当たり前の事です。魔物はこちらの都合など考えませんし、どこに現れるかも私達には判らないのです。出ないだろう、出ないはずだと言って、準備を怠った者から死んでいくのです。


「判りました、何か此方で考えます」


 魔法は私の専売特許? 要は目立たずに相手を倒せれば良いのですよね。危害を加えようとする者達なら絶対に悪意を溢れさせているはず。その濃度は、あの強盗に近い物と考えれば何か出来そうです。


「ひより、無理しなくて良いからね。私も十分注意するから」


「うん、でも何か考える。後で後悔したくないから」


 お姉ちゃんに危害が加わる事に比べれば、映像がネットに流れる可能性なんかどうでも良い。本当にそう思う。


「あ、あと伊藤さんがお願いしている弁護士さんにも、この事は伝えておきます。ネットの内容次第で訴訟に持ち込む事も出来ます。これもネットで煽る者達への牽制になると思います」


 最後にそう告げると、川瀬さんとマスコミの人達は夕方になって我家から帰って行った。それと明日は特に出かける予定はないから、私は家にいる予定と聞いて、ほっとしていたのは納得がいかない。


 ただ、問題となっているお姉ちゃんは、塾までの行き帰りはお母さんが一緒に付いていく事となった。


「また、一人で留守番になっちゃうけど、十分に気を付けてね。お母さんも急いで戻ってくるからね」


「うん、明日は色々と作ってみるから大丈夫」


 そう言って私は笑顔を浮かべるけど、なぜかお母さんは複雑な表情を浮かべた。

一応、これでマスコミは終わりました。

次は予定通りちょっと時間が進みます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 襲うとか、言ってる奴らは、青少年育成条例違反+αでタイーホ又は起訴できる案件だねぇ
[一言] おいらの中で、三つ目でハゲのお兄さんが何か一度つぶやいたのですが、削除しました。失礼しました。 というわけで、仕切り直し。 さて。 そういえば、ケータイが普及する前とあとで最も影響を受けた…
[一言] 「でも、お姉ちゃんは危険なんですよね?」 「それは何とも言えません。そもそも、本当に襲撃してくるかも判らないのですから」 いい年をしたTV局の人なのでしょうか。「本当に襲撃してくるかも判ら…
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