14:魔法と魔法の違いですか?
誤字報告、ありがとうございます。m(_ _)m
8月ももう間もなく終わりを迎える今日、例の事件も我が家では漸く過去のものと・・・・・・成るはずもなく未だに何かと振り回されています。
まず、あの犯人はやっぱり殺人を犯していました。それも自分の両親という有り得ない展開、犯人の自宅から死体が見つかったそうですが、時間が経ちすぎて死因も判らないそうです。そのせいで未だにテレビのワイドショーでは今回の事件が連日流されています。
「う~~~、そろそろ落ち着いて欲しいのに」
お昼ご飯を食べながら、テレビ報道を見ています。でも、特に真新しい内容は無く、よくこれで毎日番組として成り立っているなあって思いますね。
「塾ではもう落ち着いたって小春は言ってたけどね」
「でも、事件より受験の方でピリピリし始めてるって言ってたよ。なんか虐めみたいなのも出始めたって、世知辛いね」
塾に来ている子達は、だいたい同じ中学を受験する。その為、塾の仲間はみんなライバルでもあるんだそうです。だから自分より成績の良い子が落ちれば自分が受かる可能性も上がる。そんな事を考える子もいるとかいないとか、それ以前に受験ストレスで精神的に不安定になる子も出てきているみたいだし。
「小春も周りの雰囲気に引き摺られ無いようにするのが大変って言ってたわ」
「うん、何か悩み相談とかしてくる子もいるって、お姉ちゃんの周囲って浄化効果で落ち着くもんね」
「そうねえ、お母さんも良く言われるわ。お守り効果ね」
日頃からお守りで周囲を浄化しているので、日常生活において発生するくらいの悪意はあっという間に浄化されちゃいます。この為、我が家の家族みんなが周囲の人から癒し系って呼ばれてるんですよね。
「ところで、ひよりが言ってた対策アイテムって何か出来たの?」
私はこの夏休みを利用して物理的な防御、撃退をメインとしたアイテム作りに邁進している。
「いくつかは作ったけど、絶対に周りに気が付かれちゃう。それでも、被害に遭うよりは良いかと思うから作ったけど、取り扱いを間違えると怖そうで渡せてないの」
「それって、どこかでテストはしたの?」
「テストはしてないよ、外に出かけても誰かにいつも見られているもん」
あの事件以降、ずっと見張られているんだよね。警察の人か、マスコミの人かは判らないけど、だから外では大人しくしてるしか方法は無いんだよね。
「それは怖いわね。それにしても一日中見張られているのも困ったものね」
私は誰がこの家を見張っているかは指向性のある悪意を辿る事ですぐに判る。ただ、判ったとしてもそれをどうにかする事は難しいし、見張りに気が付いている事を悟られるのも微妙? なぜなら同じ人が連続して見張りでいる事は無いみたいなんだよね。
「防犯ブザーは持たせてあるし、塾の送り迎えはしてるから滅多な事は無いと思うのだけど。逆に警察の人であれば防犯では心強いと思いましょう」
「うん、でもお母さん、あれ絶対金田の関係だよね」
私がそう言うとお母さんは苦笑を浮かべる。
「そうかなとは思うけれど、そうだと決まった訳では無いわ。お父さんも言ってたでしょ、フリーの記者とかも可能性はあるって」
「でも、組織だってるよ? あ、そうか、もしかしたら裏の超能力集団とかかも!」
あそこまで警察が気にするんだもの、そういう組織があっても可笑しくはない。
「そうねえ、今の所は無害っぽいから今は刺激しないようにしましょ」
「は~い」
お母さんは超能力集団なんていないと思っている感じだ。でもさ、私みたいな存在だっているんだし判らないよね。少し前までは忍者だっていたんだよ? その忍者が今は絶滅してるとはとても思えないし、火遁の術とか使うみたいだし、絶対にこの世界の魔術師か何かだと思う。
「対魔術用の対策もしないと、やらないと駄目な事が多いなあ。この陰陽師って人みたいに式神とか使えるとすごく便利なんだけどな」
ここ最近は、本屋でこちらの世界の魔術士や、陰陽師などの本を買う事が多い。前世の世界よりも魔法の種類があまりに豊富で勉強になる。魔術は発想力というのは、あながち間違いではないものね。
「紙にどうやって魔力を込めるんだろう? 文字なんだと思うんだけど、こっちの世界ってルーン文字とかもそうだけど、文字にやたらと拘るよね」
梵字しかり、先ほど言ったルーン文字しかり、あ、あと魔法陣とかもそうだよね。それによって魔法が発動される事みたいだけど、咄嗟に魔法陣なんて書いていられないよね。
あとは言霊やスペル、音を使うもの、踊りによるもの等もあって、本当に多種多様だ。その中において魔力という概念は意外に使われていない。魔力と言う概念が生まれたのは、ゲームなどの娯楽から派生している、これって凄い不思議な事なんだよね。
「勘でしかないけど、この世界の本来の魔法って自身の魔力は魔法起動時くらいでしか使わなかったんだろうな。それ以降は、周囲の魔力を使用したとすると辻褄が合うんだよね。あと若しかするとこの悪意とか」
ただ、悪意は集まると魔物化する。これは前世で幾度も検証されて証明されている。この世界においては人も動物も体内に魔導回路を持たない。だから魔物化しない?
「あ、そっか、この世界で言われている魔法って全て精霊術なんだ」
地、水、火、風などの属性は正に精霊術ではないだろうか? あと陰陽五行などもしかり、そう考えれば私が身につけた魔術との相違が理解できる。
「自然界の力を借りるかあ、考えた事も無かったなあ。でも、そんな事が可能なのかな?」
魔力とは別の力が自然界に溢れていなければ、この説は成り立たない。ただ、私はその力を感じた事が無い。溢れているのは馴染み深い悪意でしかない。
「あと、みんなが言う超能力もまた全然性質が違いそうだよね。あ、無属性って言うのかな。そうするとこれが魔力と捉えても良いのかな?」
本を読み返しながら、自分の知識と照らし合わせて考えていく。
「う~~ん、出来ればこの世界の魔法を実際に見てみたい」
普通では叶わない望みを抱きながら、それでも何か出来ないかと試行錯誤する。
「目に魔力を纏って・・・・・・あれ? そういえばお姉ちゃんは魔力が見えているんだよね?」
お姉ちゃんは、自分と違って悪意は見えない。それとは逆に、私が使う魔力を視認する事が出来る。併せて、お姉ちゃんの中には確かに魔導回路が出来ていた。
「でも、その魔導回路って本当に私の物と同じなんだろうか?」
魔導回路があるのに悪意が見えない。このようなケースは前世でも確かに存在した。だから自分はそういう物だと特に疑う事も無く受け入れていた。ただ、もしかするとお姉ちゃんの魔導回路は私が知っている物とは違うのではないだろうか?
「悪意を浄化する事は出来るし、私と同じようにビー玉を使う事も出来るよね。でもさ、あれって私の魔力を見て、それを真似してるのと、そういう物だって思ってイメージしてるから?」
そうすると、お姉ちゃんは何の力を使って浄化や治癒を行っているんだろう?
「自分の魔力? それとも悪意? それ以外の何か?」
お姉ちゃんは、受験の為に魔法の修業を殆どしていない。もしも一緒に修業していたら、もっと早くに何か違和感を感じていたかもしれない。
「そもそも、この世界で自分の魔力を育てるのってすごい難しいんだよね。それに減った魔力の回復も以前の10分の1くらいの速度だし」
これは、本格的にこの世界の魔法を研究しないと不味い気がしてきた。この世界の魔術師と敵対した場合、魔力量の関係で恐らく私は敗退すると思う。
「ただ、当面の対策は考えないとね。こっちの準備が整うまで攻撃してこないなんて有り得ないからね」
幸いにして真ん丸ダイヤがある。このダイヤに魔力を込め、自分の魔力不足を補うしかない。
「目くらまし、音響爆弾、やれる事はいっぱいあるよね。見分けがつくように色分けしておかないとかな」
一先ずは炭から真ん丸ダイヤを増産して考えましょう。
「あ、あとお姉ちゃんが帰ってきたら魔導回路をちゃんと見せてもらわないとだね」
家の裏のダンボールに入れてある炭を取りに私は部屋を出る。でも、目的が出来てだんだん楽しくなってきたね。今までがあまりに漠然としてて、どこか迷子のような気持だったもん。
いつもよりちょっと短めです。
若干、主人公は迷走中、果たしてこの世界に魔法や超能力なんてあるんでしょうか?
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