135:幸せになる為には、手段は選ばないのですよ!
誤字脱字報告ありがとうございます。
幸いにして、お爺ちゃん達が来てからは追加の問題は何も起きずに無事にお父さん達と合流しました。
ただ、そこで驚いたのは私達には一瞬の滞在だった黄泉の国も、こちらでは3日もの日にちが過ぎていたようです。
「3日で良かったわ。下手したら年単位で時間流れていたのかもしれないもの。危うく留年する所だったわね」
お姉ちゃんの顔が引き攣っていました。でも、心配するのはそこなのです? ちょっと違う気がしますよ?
「一応は記録に基づいていますから、年単位という事は無い予定でしたよ」
神主さんはそう言いますが、それでも出来れば事前に話をしていてほしかったです。
「本来は一か月くらいを予定していました。そこまで過ぎれば色々とこちらの準備も整う手筈でしたので」
私は相槌を打つ事すらなく、ただ部屋の隅でごろんと横になっています。
身形が汚れた状態なので残念ながらお布団に入れないのです。
「うぅ、早くお風呂にいこ?」
ただ横になっているだけで、眠りの世界へと旅立ってしまいそうです。今眠ったら絶対に途中で起きない自信がありますよ? お布団ドロドロにする自信がありますよ? という事で、早くお風呂に行きたいのです。
「そうね、お部屋を汚しちゃうわね」
「ここは掃除しておくから行ってらっしゃい」
お母さんも私の状態を見て、苦笑を浮かべて送り出してくれました。
ちなみに、お母さん達と合流した事で分かれる際に心配で渡してあったたくさんの真ん丸ダイヤさんの防御結界ネックレス、これを私達は身につけています。自力で防御するだけの魔力が無いので、これで多少は安心出来たのです。
「ひより、寝ないで、ほら、ちゃんとばんざいしなさい」
「うみゅう」
「佳奈、悪いけどそっちの袖をお願い」
「は~い、でも変身解いたら元に戻って安心したわ。あれ何だったのよ」
お姉ちゃん達が何か話をしていますが、頭にぜんぜん入って来ません。
その後、されるままにシャワーを浴びて、石鹸で洗われて、ただ危ないからお風呂に浸かるのは取りやめになりました。
「私達も危ないもの。3人で溺れ死にましたって洒落にならないわ」
「だよね」
「それにしても、ひよりも大きくなったわね。昔はもっと小さかったのに」
「ねぇ、今思ったんだけどさ、今ひよりちゃんを魔女っ娘させれば小さくなるのかな?」
「むにゃ、眠いのです」
何かお姉ちゃん達に言われている気がするんだけど、最早意識が遠くてよく把握が出来ませんよ。
どっかで何か危険信号が出ている気がするのですが、それすらどうでも良くなっています。
結局、ここで私の意識は夢の世界へと旅立ったのでした。
ぐるぎゅぎゅぎゅぎゅ
何か凄い音が私の傍で鳴り響きました。
意識がゆっくりと目覚めに向かっていくのを感じながら、それに合わせて凄い空腹感が襲ってきます。
「お腹がすきました」
まだヌクヌクお布団に包まって、そこから出たくない思いと、空腹とで頭の中で勢力争いが行われています。
「ひより、起きたの?」
お姉ちゃんの声が聞こえて来ます。
薄っすらと目を開けると、もう周囲は明るくなっていました。日差しや体感温度の感じから朝ではなく、お昼近い感じですか?
「まだ眠いのです。でも、お腹もすいたのです」
そう告げる私に、お姉ちゃんは笑いながら早く起きる様に促します。ちなみに、朝ご飯の時間はとっくに過ぎていて、食べそこなっている私の為にお握りを作ってくれてあるそうです。
「昨日の夕飯も食べて無いからお腹ぺこぺこでしょ?」
「さっきからお腹の中で何かが暴れているのです」
私の返事の何が面白ったのか、お姉ちゃんは笑いながらお握りを持って来てくれました。
「ほんとはお行儀が悪いけれど、まあいいわ。こっちが鮭で、こっちが昆布よ。ひよりは梅干しは苦手だったから昆布でお願いしておいたの」
作ってくれた人が間違わないようにと気を使ってくれたのか、頭の部分にちょこんと昆布さんが顔を出しています。なぜかお茶はペットボトルで渡されましたけど、お茶を飲んで口の中を潤して、私はモグモグと御握りを食べました。
「まだちょっと食べ足りていないのです」
「もう11時だから、あと少しでお昼よ。それまで我慢なさい。それより顔を洗いに行くわよ、洗面所判んないでしょ?」
お姉ちゃんに案内されて、洗面所とトイレへと連れてってもらいました。
ちいさなペットボトルだったのですが、ごくごく飲みきったらトイレに行きたくなったのです。
「どう? 回復した?」
「うん、しっかり寝れたのが大きいと思う」
感覚ではほぼ満タンと言って良い感じに魔力が回復しているのを感じました。
ただ、今回消耗したものが多いので、色々と作り直さないといけないですね。
「お父さん達は? どっか出かけているの?」
「う~ん、別館で大人たちは会議中みたい。何か知らない人もいっぱい来てて大騒ぎになっているって」
お姉ちゃんの言葉に私は首を傾げます。今更大騒ぎってあれ以上の大騒ぎはあるのでしょか?
佳奈お姉ちゃんは姉弟子さん達と何か打合せしているそうです。今回の事で色々と思う事があったみたいで、その部分を相談したいと言っていたそうです。
「う~ん、ある意味、誰も欠けずに生き残れたことで十分なきはしちゃうのです」
「そうね。でも、私も結構危なかったと思うわよ? 私自身も何か考えないといけないかなとは思うわ。回復が出来たとしても相手にダメージを与えられないって」
成程、お姉ちゃんもそんな風に思ったのですか。ただ、それは大きな間違いなんですよ。
「えっとね、今回の問題点は魔力切れなの。もし魔力が十分にあって、防御も回復もしっかり出来ていればもっと楽だったと思うよ? あと大きいのは相手が悪かったと言うのもあるけど、逆に黄泉の国の住人で助かった部分もあるから何とも言えないかな?」
「助かった部分?」
「うん、浄化が有効だった事。もし浄化が効かなかったらもっと危なかったよ」
「それなら、浄化の効かない相手への対処を考えないとよね?」
「それは別の人の担当だよ。回復職がそんなに色々やってたら、それこそ魔力が足りないもん」
「そうね。確かに魔力が足りなくなるわね」
お姉ちゃんも考え込みますが、本来はその部分を神主さん達が占めるはずだったのだと思います。
ただ、流石に神様が何柱も現れてしまっては対処できる限度がありますよね。
「もう少し真剣に色々と考えないと駄目ね。私もひより頼みな所もあったわ。ひよりが居れば大丈夫みたいなね。どうすれば魔力が伸ばせるかとか色々と教えてね」
「うん、私も色々と考える」
此処まで事が大きくなってきた以上、もう家族とのんびりと生活していくのは無理なのかなと思います。
たぶん私以上にお父さんやお母さんはそこら辺を考えていて、それでお母さんは転職したのだろうなと改めて思いました。
隠れている事が出来ないのなら、相手が手を出す事に躊躇するくらいにならないと。その為には家族だけでは難しいよね? それこそ、前世でも色々な人達が集団を作っていました。あれも生存戦略なのです。
「お爺ちゃん達と相談して、もう少し真剣に今後の事とか考える」
そんなつもりは無かったのですが、今まで何となくふわふわした気持ちで居たのかもしれないです。
魔物のいない世界、魔法が知られていない世界、戦争の無い国、そんな御伽噺のような世界に生まれて、温かい家族に囲まれて、わたしはきっと物語の主人公のような気持でいたのかもしれません。
「そうね。私も真剣に考えるわ。これからどう生きていくか、生き延びるために真剣に考えるわ」
この世界も決して優しいだけの世界じゃ無かった。ある意味、死が隣り合わせに感じられない世界において、人は考え方も、生き方も、あまりにも大きく違ったから。
「うん、でもね、お父さんも、お母さんも、お姉ちゃんも、みんなが笑って生きていければそれで満足なの。その為に頑張るのです!」
今日は私が漸くこの世界に根付いた、ある意味記念すべき第一歩なのです!
「みんなが幸せになる為には、手段何か選ばないのです!」
「え? ひより、あれで手段選んでいたの? 何それ怖い」
その後、お姉ちゃんとお話案件が発生したのでした。
何か丁度良い感じになっちゃったので、一旦ここで一区切りにさせていただきます。
ある意味、長期執筆していなかった為のリハビリ作品だったのですが、思いのほか長くなっちゃいましたw
小 春:「それにしても突然過ぎないかしら?」
ひより:「伏線回収どころか、伏線出して完結ってすごいね」
南 辺:「ほ、ほら、第二章とかで始まるかも?」
ひより:「章の区切り方判らなくて、変に設定弄っておかしくなるの怖がってやらなかった人が?」
小 春:「そうね、ルビの振り方も戸惑ってる人だものね」
南 辺:「ぎゃふん」
最後に、また新しいお話を書いています。
すでに6話ほど書いてありまして、明日から投稿しようと思っています。
宜しければ其方でもお付き合いいただければ・・・・・・
女の子がお馬さんに転生してという話なのですが、他の方達のお話を読んでいて書きたくなったので><
意外に競馬のお話って少なくて、読み切っちゃって、なら自分で書いてみようとw
いつもの感じで書き始めたのですが、よく考えたら・・・・・・競馬ほとんどまったく知らないですね(ぇ