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124:結界の中に避難しましたよ。

誤字脱字報告ありがとうございます。

 そんなカオスな状況の中に、更なる爆弾が投下されました。


「予想していた事だけど、マスコミに二人の情報がリークされたわ。リーク元は不明だけど、恐らく警察からだと思うわ」


 会議室で残っていた魔女のお姉さんが知らせてくれました。

 そして、追加で政府から私達に向けて連絡が入ったそうですが、お爺ちゃん達が思いっきり無視したために政府のお役人と、警察の偉い人がこっちへと出発したそうです。


「帝都から来るのよね? 今からだと今日中につくの?」


「飛行機で来るみたいなんで、夕方には着くみたいですよ」


 成程、飛行機と言う発想は無かったです。庶民育ちだからでしょうか? まあ空をあんな鉄の塊で飛ぶなんて狂気の所業だと思いますが。ともかく、心配は現実になって来たみたいですね。


「実験は失敗したし、どうしましょう」


「え? 失敗じゃなく成功じゃ無いの?」


「お姉さんはあんな風になりたいですか? 私はごめんなのです」


 私達の視線の先には、床に座り込んで黄昏ている佳奈妹ちゃんがいます。

 うん、魔力濃度的に見てまだしばらくは変身したまんまっぽいですね。ただ、これで佳奈お姉ちゃんはターゲットにされてもすり抜けれそうなのです。


「こうなると我が家がどうするかが問題になるわね」


「逃げても良い気はします。でも、恐らくテレビで全国に顔を知られちゃったので変装しないと駄目なのです」


 これは私とお姉ちゃんだけではなく、お母さん達もです。捕まれば思いっきり私達に対する人質にされますよね。


「はてさて、政府は何をとち狂ったのやら、私らを敵に回す気かねぇ」


「最近の者達は私らを甘く見ているさね。一度お灸をすえる良い機会さね」


 うん、何かお婆ちゃんも好戦的な雰囲気になってきました。

 でも意外なのです。


「国を敵に回すかもしれないのにお婆ちゃん達は何で私達に味方してくれるの? そもそも国に雇われているんだよね?」


 思わず問いかけずにはいられませんでした。

部屋にいるみんながそんな私を不思議そうに見ます。そして、少し考えた後に爆笑するので私は目が真ん丸になりました。


「ひよりちゃんは経験していないから仕方が無いかな。私らは政府に協力はしているけど部下だったり、支配下にあるわけじゃないわ。どちらかと言うと、常に政府と争ってきた、戦ってきたと言っても間違いじゃ無いわね」


 トパーズさんの言葉にお婆ちゃんも含めみんなが頷きます。


「だいたいさ、平安の時代にあったっていう陰陽寮じゃあるまいし、今は公に魔法だの、超能力だのを認めている国は一つも無いわ。なぜって、人は自分に理解出来ない事は疑うし、恐れるの。もし日ノ本中で魔法がある事を国民が知ればパニックになるでしょうね」


「その後に来るのは、どうやって魔法を使えるようになるのか、そして使えないと判ると嫉妬、妬み、様々な妨害、しまいには迫害や魔女狩り、過去の歴史を繰り返すでしょうね」


 恐らくこれは魔女さん達が経験して来た歴史なんだろうね。前世の世界では、魔法は日常に溶け込んでいたから。それでも勿論の事、妬みや僻み、嫉妬なんかはあったけど、そもそも神様の存在があったのと、魔物の脅威が身近にあったから。


「だから私達は世界中の仲間と協力して組織を作ったのさ。もっとも、上手く機能しているかは微妙さね」


「歴史が浅い国は、私らが味わってきた歴史を知らないのよね。政府の犬になってどうする気なのかしら」


 どうやらお米の国の術者は加盟していないみたいですね。そもそも、政府の犬と言うからには特殊諜報部員とかでしょうか? 何かそう言った肩書に釣られて良い様に使われる人とか居そうです。


「日ノ本に貴重な術者が大手を振って来るとは思わないけど、政府の馬鹿達がどういった態度に出るか」


「ただ、経済的な圧力とかかけてきたら国もより強硬な姿勢になるわよね。ましてや国民にとって私達二人が犠牲になれば良いなら平気で生贄にすると思うわ。マスコミでも何でも使って情報操作だってしてくるでしょう」


 お姉ちゃんが比較的冷静に状況を分析しているのに驚きです。

 ただ、そうすると安易に政府と敵対するのも問題なのでしょうか?


「・・・・・・やっぱり面倒なので鳳凰学院を焼け野原にして終わりにしませんか? どうせなら周りにいる警察官やマスコミも含めて焼き殺せば、今後は無暗に手を出してこないと思うのです」


「否定できないけど、その後の対応が大変よ? それこそ生存を掛けた戦いになるわよ?」


「ガス爆発とか、誤爆とか、何とかなる気がするのです」


「「「「「だからしないって!」」」」」


 周り中から否定されちゃいました。


「とにかく相手は何をしてくるか判らないのですよね? 対物理、対魔法の結界の中に家族みんなで早めに避難しておいた方が良いと思います」


 という事で、出雲大社の最奥で十重二十重の多重結界を展開しました。

 我が家と佳奈お姉ちゃんの家族がそこで籠城します。一応、認識阻害の結界も追加しておきますよ。見られたくないですからね。


 そして夕方、どうやら招かざる来客が訪問したようです。

 お爺ちゃん達がバタバタとしている様子が感じられますし、同行者にどうも術者が居るっぽいです。

 なんでそう思うかと言うと、さっきから頻繁に結界に何かの魔法が当たっては砕け、当たっては砕けを繰り返しているのです。


「う~ん、見習いレベルの何かがさっきから頻繁に飛んできてる」


 ハッキリ言って一重目の結界すら超えられないのですが、探索だとするとそれでも良いのかな? 何を目標に飛んできているのかは判りませんが、確実に私達がいる事は判っていると思います。


「ひよりの前に言っていた敵味方識別みたいなのはどう?」


「出雲大社の結界やら、魔力溜まりやらが色々あって良く判んない」


 流石に古い歴史の上にあるからなのか、幾重にも人の思いが重なっているからなのか、出雲大社の敷地内では上手く魔法は広がらないのです。この為、私の魔力探知の範囲は大幅に削られているのです。


「それにしても、こうも容易く位置特定されちゃうのは厄介ね。逃げても、隠れても見つけられるという事だわ」


 お姉ちゃんの表情が険しくなるのも判るのです。

 逃げ場を作ろうにも魔法で特定されるのであれば逃げようが無いです。


「やっぱり二人とも真魔女っ娘変身しか無いわね!」


 普段より幾分高い声でそう私達に迫ってくるのは佳奈妹ちゃんさのです。

 未だに魔力が減らないので、佳奈お姉ちゃんの変身は解けていないのです。


「佳奈に更に私達の魔法を馴染ませたら効果が持続するかしら?」


「う~ん、私とお姉ちゃんの魔力は異質だから、もしかすると今の姿で固定化されちゃうかも?」


「え!? ちょ、ちょっと、やめてよね! 虐めよくないよ!」


 慌てて自分の家族の所へと逃げていく佳奈お姉ちゃんだけど、おじさんとおばさんは小さくなった自分達の娘の姿に喜んでいるような気がするのは気のせいかな?

 特におじさんの表情は崩壊しているよね?


 それはともかくとして、まさかと思うのだけど今回の件にユーステリア様は絡んでないよね?

 面白そうだからと手を出していてもおかしくない気がするのです。


「ひより、ジルバを見てるけどどうしたの?」


「・・・・・・名前つけたんだね」


「え? 駄目だった? ほら、名前無いと不便よね?」


 神獣に名前を付ける怖さを判っていないお姉ちゃんはやっぱり天然さんなんだと思います。

 名付けって下手をすれば相手を怒らせて戦闘になるなんて思いもしないのですよね。


「うん、シルバーウルフが良いならいいんじゃないかな?」


 そう言って相変わらずお姉ちゃんの膝の上に居るシルバーウルフを見て、魔力の色とか見れないかと思うのだけど、私たち以上に強い魔力を持っているのは判っても色まではやっぱり判らないです。


「う~ん、魔力に色がついて見えるって変なの」


 負け惜しみじゃ無いのです。ただ、魔力を見る事の出来る私でも無理なのに、本当にどうやるのでしょう。ちょっと悔しいですね。


 ただ、このまま待っているのも能が無いので、この相手を利用して色々と試させて貰う事にしました。


「認識阻害は効かないのは判ったのですが、呪いと言うなら呪い返しとかだとどうなるのかしら?」


「試してみるのです」


 お姉ちゃん達が色々と案を出してくれるので、私がそれを実行してみるのです。


「変化が無いのです。もしかすると攻撃じゃ無いからなのです?」


「あ、こないだのひよりと一緒なのね」


 断言はできないのですが、何となく同じ理由っぽいでしょうか?


「呪いかぁ、でも魔力を混ぜていけるのだから、どうやって誤魔化せるかを考えれば良いのじゃないかな?」


 お父さんの思わぬ発言に、思わず目から鱗です。


「でも、結界で遮断してても駄目なんだよ? 魔力結界だって魔力遮断してると思うのだけど」


「それなら、魔力に浸かってみたらどうかしら?」


 今度はお母さんの思わぬ発想に、みんなが驚きの声を上げます。


「魔力に浸かるって発想は無かったです。でも、体に悪そうな気がするのです」


「そうなの?」


「どうなんでしょう?」


 そもそも、どれくらいの魔力濃度にしたら良いのかも判りませんし、体にどんな影響が出るのかも判りません。それ以前に、よく考えたら魔獣とかは魔力の濃い場所で魔石が体内に発生した動物という説がありました。


「魔物になっちゃいそうです?」


「それは嫌だわ」


「可愛いサキュバスとかどう?」


 何時の間にか佳奈お姉ちゃんが復帰しているのですが、サキュバスになってどうしろと言うのですか!


「佳奈お姉ちゃんなってみる?」


「・・・・・・ボンキュッボンになれる?」


 佳奈お姉ちゃんにとって重要なのはそこなのですか。

 周りから佳奈お姉ちゃんに注がれる視線がすっごく痛々しいですね。


「じょ、冗談にきまってるじゃない!」


 うん、結構本気だったよね?


「呪いと言うなら古来から身代わりという方法もあるのでは? 雛人形なども元は厄除けから来ていると言うしな」


 何かお父さんが別人の様です。ただ、探査を誤魔化す方法としては行けるのかもしれません。


「ここでは試しようがないかも? 身代わりの人形作っても別の場所に持って行かないとだよね?」


「そうね、でも効果があるのなら一つの案としては良いのかしら?」


「数を作ればそれだけ混乱させられるし、今度試してみましょう」


 それぞれに案は出るのですが、これで行けると言い切れる方法は残念ながら出て来ないのです。


「どうやらあちらの話は終わったようね」


 お姉ちゃんの視線の先を見ると、部屋の入口からグリーンさんが入って来ます。

 ただ、何となくその様子に違和感を感じました。


「お姉ちゃん待って、何か変だよ」


 部屋に入るとグリーンさんは周囲をキョロキョロと見回します。ただ、認識阻害の結界がある為に私達の事は見えていません。それでも、何かを探る様に周囲を見定めようとしていますが、そのグリーンさんから明らかに魔力の導線が見えるのです。


「会議室まで来て欲しいの。悪いけど結界を解いてください」


 私達がいる事を知っているので、結界の解除を頼むのは判るのですが、違和感は次第に強くなります。


「あれ、グリーンさんじゃないよ。魔力の導線があるし式かも」


「え? 本当?」


「真面目に? うわ、全然判らなかった」


 お姉ちゃん達の感想を聞きながら、その挙動に注視するんだけど、相手は多分だけど時間の制約があるのかな? 此方への呼びかけが次第に高圧的になっていきます。


「早く結界を解除して、急いでいるのよ! 賢徳僧正を待たせるなんて何を考えているの!」


「あ、本当に偽物だわ。お爺ちゃんの事を僧正だって、グリーンさんだったら言わないわよね」


 言霊というのは非常に厄介なものだそうで、相手の名前を呼ぶときには非常に注意しないといけないらしいです。その為なのでしょうか、今まで一貫して私達を含め名前を呼ばなかった相手が、お爺ちゃんの名前を出しました。ただ、呼び方が明らかにおかしいので、疑惑が確信になってしまいました。


ひより:「佳奈妹ちゃんの活躍はまだですか?」

小 春:「え? そんなのあるの?」

ひより:「はい、別に戦闘だけが活躍の場じゃないですよ?」

小 春:「・・・・・・嫌な予感がするけど、他にはどんな場があるの?」

ひより:「お色気?」

小 春:「今の外見は小学生よ?」

ひより:「それが何かなのです?」

小 春:「そんな場は無いわ! ・・・無いと良いわね、っていうか本当に無いわよね!」

南 辺:「それって押せ押せ理論ですか?」

小 春:「違うわよ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 見た目だけごまかし、恫喝で押し流すと……これもう、こっちと会話する気ないですな。 ならば、こちらも対話をもちかける必要ない。 まぁ、ちゃんと会話する気のあるヤツが出てくるまで、どんどん始末…
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