122:人探しの仕組みは呪い?
誤字脱字報告ありがとうございます。
一応の案としてお婆ちゃんから精霊界がどういう所なのかを聞きます。
ただ、聞けば聞くほどに、そこはちょっとどうなんだろうって気がするのは気のせいですか?
「まず時の流れが違って、あっちに行ってる時間の何倍もの時間が流れたり、逆に流れなかったりするのですか。それって戻ってきたら誰も知らない世界になりそうですね」
「そういう例も無くは無いの」
「修行を何年もしたのに実際には数日しか流れていなかったって事もあるみたいね」
「そうさね。あそこは時間の流れが歪さね」
「それって全然大丈夫じゃない気がするのです」
お姉ちゃんの素朴な疑問にみんなが答えてくれるのですが、それはもう突っ込み処満載です。
ただ、あちらで時間が流れれば私達はより成長しているでしょうし、逆にこちらの時が進んでいれば騒動も沈静化しているのではという事みたいです。
「それって帰って来れなくなったりはしないのですか?」
「・・・・・・帰って来た者からしか話は聞けてないわね」
「そもそも、時代を飛ばれとったら帰って来たかどうか何て判らないさね」
「すっごいダメダメな気がするわねぇ」
流石のお母さんですら顔を引き攣らせています。
家族が一緒ならと言っても、もしはぐれたらどうなるか判らないですもんね。気が付いたら親子の年齢が逆転していましたとか嫌すぎます。
「そもそも、何で妖精界って話になったのですか? 何処かに隠れるとかでは駄目なのでしょうか?」
ですよね。お母さんが言うように隠れれば良いだけですよね?
「恐らく、この世界におれば気が付かれるのじゃ。あちらにそう言った能力に特化した者がおるでの」
お爺ちゃんの表情が珍しく歪みます。多分ですが、過去にそのせいで何かあったのかな?
「う~んと、要は探索とか遠見とか、良く判んないけどその相手の能力を遮断すれば良いのよね? 結界で良くない?」
「自身の能力が届かぬ地すら察知するのさね。そこに人や物を投入して探りを入れてくるのさね」
「なるほど、でも敵対できないんだよね?」
「厳密には敵では無いからの。時にはこちらと協力する事もあるでの」
なるなるなのです。立場的に倒しておしまいとしてはいけない相手なんですね。まあ、迷惑ではあるけど、こちらの居場所を見つけるだけで敵対しているとはって、うん、思いっきり敵対してるんだよね。冷静に考えれば。
「妖精界は最終手段として、とりあえずは何とか出来ないか試してみるね。お試しはやってくる公安さんだね。という事で、佳奈お姉ちゃんの家族と、レッドさん達だけちょっとこっちに来て」
まずこの世界の探査魔法とかは判らないので、あちらの魔法探知とかを遮断する魔法を使います。
「認識阻害には幻影系もいるし、そうなるとエルフが使っていたと言われる系統がいいのかな?」
かつて研究した魔法を幾つか思い出しながら、認識阻害と錯覚系の魔法を構築していきます。
「空間魔法とかが有ればいいのになぁ」
こっちのライトノベルでよくある魔法を羨みながら、一つ一つ魔法陣を絡ませていきます。そうしないと反発しちゃいますからね。
「ひより、どう?」
「う~ん、結界の応用だけど、これで行けるかが判んない。とにかくまずはやってみるね」
そして、魔法を発動させると計算した通りに効果が重なり合う。これで外からは私達の事を認識する事が出来なくなっていると思う。
「どうなってるの? お爺ちゃん達が驚いているけど」
「う~んと、錯覚を起こさせて消えたように見えたと思う。あと、声も外に聞こえてないから普通に話しても平気だよ」
お姉ちゃんが小さな声で私に尋ねてきたのは、たぶん声を出す事で結界が消えちゃわないようにと思っての事だと思います。
「ひよりちゃん、これって何処までのって、あら? みなさん変な事をしているわね」
お母さんが不思議そうに見ている先では、結界の横に向かって手を伸ばして何も無い事を確認している魔女さん達。ただ、本人達はこの結界に向かって手を伸ばしているつもりでも、実際は横へと伸ばしているのです。
「これで探査が防げれば良いのだけど、聞いた話では米国の能力者はサイコメトリー亜種の能力を持ってて、実際に相手の私物さえ手に入ればそこから手繰って来る事もあるのかもしれないわ」
「あ、神主さんが式神を・・・・・・おお、まっすぐにこっち来ちゃった!」
そもそも、魔法を弾くと言うより錯覚させる方向の魔法なので、そのまんま私のもとに式神の小鳥さんはやって来ちゃいました。
「ひより嬢、聞こえますか?」
「小鳥から榊さんの声が聞こえるのは不思議な感じね」
「聞こえますけど、駄目ですね。まっすぐこっちに来ちゃいました」
小鳥さんを見ながら私が答えると、神主さんから意外な返答がありました。
「術による神力の減り方から近くにいる事は判るのですが、感覚的には式を見失ったような感じですね。何処にいるかが判りません。ただ、ひより嬢達が集まっているのは把握できます」
神主さんの声にどこか困惑した色合いが感じられます。多分ですが、すっごく違和感があるのかな? ただ、神主さんが言う神力の消費具合でだいたいの距離は把握されちゃいそうですし、ちょっとこの方法は厳しいのかな?
「魔法を遮断する結界を内側に設置すると駄目かしら?」
「そうですね、試していただけますか?」
「う~ん、やってみる」
神主さんからも頼まれましたので、お姉ちゃんが言う様に内側に対魔法用の結界を設置してみます。
ただ、これは真ん丸ダイヤさんを使用した簡易のタイプです。新しく魔法を同時起動するのは私でもちょっと厳しいのです。
「あ、小鳥さんが消えた」
魔力遮断によって姿を維持できなくなった小鳥が紙に戻っちゃいました。神主さんを見ると、少し首を傾げた様子ですが、再度小鳥を呼び出して放ちます。そして、小鳥は結界の手前で消滅しました。
「成功で失敗かしら?」
「う~んと、失敗だと思う。結局は真っすぐ私達の所に向かって来たから居場所は探知されてるって事だよね?」
認識阻害の結界を解除して、神主さん達へと感想を聞くことにします。
そもそも、魔力探知などは知識としてもっていますが、よく考えたら個人をどうやって特定して探知するのでしょうか? そこの所でズレがあるような気がします。
「ほう、確かにそこにおったのじゃの」
お爺さんは興味深げに此方を見ますし、お婆ちゃん達も同様です。
お爺ちゃんやお婆ちゃん達もどちらかと言うと私に近い様な気がしてましたから、個別探知は神主さんの感想待ち?
「大変興味深い結果でしたが、数を打てば恐らく居場所の特定は私でも可能ですね。何より式が迷いません」
神主さんの言葉に、みんながうんうんと頷いています。という事で、やっぱり失敗ですね。
「ただ、何処にいるかとなると惑わされますね、実に不思議な感覚でした。恐らく近づけば近づくだけ惑わされますが、遠くからであればある一定範囲に絞り込めると思います」
「駄目だね、もっと何か考えないと」
個人特定がどうやて行われているのか判り辛いですが、ここで前世でもよく似たようなパターンがあった事を思い出しました。
「・・・・・・あれ? これってもしかしたら呪いの一種とかなの?」
前世で色々とかつて有った魔法を調べていた時に、魔族と呼ばれた種族が残した魔法、その中に呪術と呼ばれる魔法が有った記憶があるのです。確か、特定の相手に対して呪いを飛ばすのですが、今更ですがこの世界の魔法にも似たようなものがあります。
「そっか、個人特定は呪いなんだ」
ただ、だからどうしたと言うところなのです。呪いだからと言って解決方法がすっと出てくるほど前世では研究しなかったのですよね。
「思いっきり性格に合わなかったのですよね」
呪いを覚えるくらいなら、強力な範囲攻撃で焼き払う方が性に合っていたのです。そのつけをこんな所で払わされるとは思いもしなかったのですが、そこで辛うじて思い出したのは、呪いは闇系の魔法で、光魔法や聖魔法に弱かったと記憶しています。
「現に浄化とかは此方でもすっごく有効だよね」
うんうん、と一人で納得していると、周りから会話が途絶えている事に気が付きました。
「ん?」
顔を上げて周りを見回すと、なぜか周りにいる人達の視線が私に注がれているのです。
「どうしたのですか?」
不思議に思ってみんなに尋ねると、神主さんが代表して答えてくれました。
「いえ、ひより嬢が何か思いついたようだと、それと個人特定は呪いなのですか?」
「んんん? あ、声に出てたのです?」
私の質問に、みんなが一斉に頷きました。ただ、この反応からすると、どうも呪いという自覚はなかったのかな?
「前にお婆ちゃんに教えて貰った占術とか、日ノ本の卜占とかも普通の魔法じゃないと思うの。だからもしかすると占い系統かもしれないけど、誰かを具体的に探すとか、飛ばすとかは占いじゃないと思ったのです。それで近いものを考えてたら呪いかなと思いました」
「なるほどの、研究の余地ありじゃの」
「さてさて、ただ占い系統は魔女の領分さね。そっちは私らで研究するしかないさね」
「星読みは私達の領分でもありますね」
お爺ちゃん達が何かやる気になっていますが、それ今やってても間に合わないのですよね。
みんなというか、責任者さん達が目的を見失っているような気がしますよ?
「あの、呪いって勝手なイメージなんですが、爪とか髪の毛とか、相手の一部を使用するイメージがあるのですが、今回の場合はどうなのですか?」
会話を聞いていたお姉ちゃんがみんなを見て尋ねてきますが、そこら辺はどうなのでしょうか?
「今回は多分だけど名前と写真というか映像かしら? 伊藤家の映像は探せばネット上で見つかるかもだし、それ以前に隠し撮りされてるかもしれないから」
「そっか、そしたら姿を変えればいいの?」
佳奈お姉ちゃんはそう言いながら私とお姉ちゃんを見ますが、コスプレしても駄目だと思いますよ?
「その人の持つ波長やオーラとかを映像から読み取るとかありそうだし、コスプレ程度では駄目じゃないかしら?」
「そっか、ちょっと残念? 魔女っ娘変身でもすれば良いのかと思ったよ」
がっくりと肩を落とす佳奈お姉ちゃんに対し、その言葉に反応したのはお婆ちゃん達でした。
「いや、佳奈、お手柄かもしれないよ! そっか、変身すればオーラとか変えれるかもしれない!」
「・・・・・・何か不吉な空気なのです」
お姉ちゃんも私の言葉にうんうんと大きく頷いていました。
何か多いっ切り脱線しまくってます?
ただ、ここに来て小春とひよりに魔女っ娘フラグが!
佳奈は思いっきり巻き込む気満々だろうし、逃げ場はあるのかな?