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121:神様って怖いんですよ?

誤字脱字報告ありがとうございます。

 ただ、なぜこの時にあえてシルバーウルフが送り込まれてきたのか、それを考えると今後の展開は少々厄介な事になるのかもしれない。


「お爺ちゃん、あのね、神獣であるシルバーウルフは強いの。神様の眷属だからすっごく強くて無敵なの! 余程に神格が高い存在じゃないと相手にならないの! そんな存在をユーステリア様が態々お姉ちゃんに送って来たという事は、この後結構ヤバヤバな出来事が待ってるんだと思うのです」


 マジなのですよ? ちょっとこの世界に楔を打ち込むくらいで送って来るような存在じゃ無いのです。よく考えたら、既に私がその楔になってますよね? ついでにお姉ちゃんは神職です。という事は、このシルバーウルフはユーステリア様の神官または巫女であるお姉ちゃんの為に送り込まれたのです。


「ほ、ほ、ほ、という事はじゃ、まだまだ山場は超えておらんと言う事かの?」


「何が山場なのかは判らないのです。ただ、この事件なのか、新たな事件なのか、とにかくお姉ちゃんが狙われているんだと思うのです」


「ふぇ? 私狙われてるの?!」


「うん、そうでないとお姉ちゃん宛てにシルバーウルフが来るわけ無いの。お姉ちゃんは防御と支援特化だからある意味狙いやすいと思うし」


 私がお姉ちゃんを見ると、いつものんびりしたお姉ちゃんですが、流石にちょっと顔を引き攣らせています。


「この出雲大社の防御を破るのは生半可では出来ないと思います。それでも危険なのですか?」


 トパーズさんが私を見つめてきますが、私の表情の変化を見逃さないようにしているのか、探るような視線ですね。


「判んないです。でも、事実神獣は此処に居ます。その事実は変わらないのです」


 あくまでも、事実に基づいた疑問であって、別に回答を持っている訳でも、未来を知っている訳でもないのです。そして、シルバーウルフはお姉ちゃんに撫でられて気持ちよさそうにしています。予想は間違っていませんよね? なんか裏読みしすぎたかもと逆に不安になります。


「実際はどうであれ備えておくには越したことはないさね。やる事はそれ程かわらないさね」


「そうじゃのう。はてさて、ぜひにもポーションとやらは頼みたいのう。あれは助かるでの」


 お爺ちゃんの言葉にお婆ちゃんは顔を顰めますが、実際の所ポーションで助かった人が大勢いるというのは確かなのです。もっとも、ここ出雲では材料がないのですけどね。


「出雲は賢徳、お前さん達に任せて儂らは奈古屋へ戻るさね。作ろうにも材料が無くては何も出来んさね」


「ふむ、しかしの。儂の所は女人がおらんの。榊の所は荒事担当が居らん、どうじゃ、うちの者達に材料を運ばせるがの」


 お爺ちゃん達が何やら今後の事を話し始めているのですが、そもそも終着点が見えない中で私達はいつまでこの出雲にいないといけないのでしょうか?


 そんな中、一人の職員が何か深刻そうな表情で会議室に入ってきます。そして、何かメモのようなものを神主さんへと手渡しました。

 そのメモを見た神主さんは、一瞬眉を顰めると、その紙をお爺ちゃんへと渡します。


「ふむ、ちとこれは厄介じゃのう」


 お爺ちゃんからお婆ちゃんへと渡されたメモは、その後トパーズさんの下でクシャクシャに丸められちゃいますが、トパーズさんの指示で会議室にあるテレビの電源が入れられました。


「です。現場ではすでに多くの警察官が学校の周辺を閉鎖しており・・・・・・」


 テレビ画面では良く見慣れた場所が映っています。というか、思いっきり鳳凰学院の映像ですね。ただ、その前には多くの警察官や機動隊員が所狭しと集まっていて、時折テレビに誰かの怒鳴りつけるような声が聞こえていました。


「え? 学校が占拠されていたの? でも、ここまで警察官がいるんだから結構前からよね? 何か聞いていました?」


 お姉ちゃんがお爺ちゃんへと尋ねるのですが、どうやらお爺ちゃん達の所には今さっきのメモが渡されるまで情報は入っていなかったようです。


「実際には3時間ほど前に通報があったそうです。おっとり刀で駆けつけた際に警察官2名が銃撃され重傷を負ってますが、幸いにも命の危険はとりあえず無いようです」


「3時間って、何悠長なことをしてるのよ!」


「幸いにして生徒は休校のために不在でしたが、教員が数名人質になっているみたいですね」


 出雲の職員さんの説明に対し佳奈お姉ちゃんが思わず声を荒げますが、ただ今の所確認できている範囲では人質にされた人に犠牲者は出ていないのだとの事ですが。


「問題はじゃ、相手の要求が小春ちゃんとひよりちゃんの引き渡しなんじゃ」


 流石にこれには警察も、慌てて箝口令を敷いたそうですけど。

 そうしないと、お姉ちゃんへの意味のないヘイトが増大しないとも限りません。私達が悪くなくても、もし犠牲者が出たらと考えると非常に厄介です。先日、この場で起きた襲撃も同じです。


「何かおかしいよこれ。本当に大陸系の連中だけなの? それにしてはしぶと過ぎる」


 ブルーさんの発言に、私達も同意です。これだけ警戒されていて、ましてや鳳凰学院は今も捜査が行われている場所です。そんな場所で立て籠もりなど、絶対に異常事態なのです。


「今回は、術者も数名確認されているようです。建物内の様子が一切判りません」


 神主さん達や、魔女さん達が使うような術が跳ね返されてしまうそうです。その為、内部にどれだけの人がいるのかも把握が出来ていないそうです。


「これも内通者がいるよね。宮内庁なのか、警察なのか、それ以外なのかは判んないけど」


「いるだろうね、ただ学園になぜ警察官が2名だけしか向かわなかったのですか? このテロと関連付ければ、そんな人数での行動などあり得ませんよ?」


「そこら辺は報告待ちですね。ただ、この件で公安から事情を聴きたいので人が寄こされるそうです」


 榊さんの発言に、私たち家族は思わず顔を見合わせました。


「何のためにかしら?」


 お母さんがすっごく素敵な笑顔で尋ねるのですが、それに返答が無いという事はそういう理由なのでしょうね。


「政府の誰かが絡んでいるさね。という事は、例の国も絡んでいると見た方が良さそうさね」


「小春嬢の治癒能力などは、それこそどの国も欲しいでしょうね。問題は、そこまでの情報がどこから流れたかですが、まあそういう事でしょう」


「大陸と連携しているとは思えないから、思いっきり便乗してきたか、大陸側が嵌められたかだね」


 みんなの話を聞いていて、漸くどこの国の事を言っているのかが理解出来ました。

 世界第一位の軍事大国であり経済大国のお米の国ですね。ただ、いまだに私はなぜその国が此処まで強固に動き出したのかが理解できませんが。


「世界中で色々な能力を持つ者はいるさね。ただの、現代医学で治せぬ病を治す事の出来る能力を持った者は、果たして何人いるのやら、つまりそういうことさね」


 それでも、まずは治してほしいと頼むことから始めるべきじゃないのでしょうか? 治すかどうかは別物ですが、いきなり拉致などといった力業に出る事に理解が出来ないのです。


「どこまで把握されているかは判らないにせよ、まだ年若い能力者、それも稀有な治癒者です。恐らくは日ノ本では保護できないなどの理由を作り、自国へと招待するなどが落としどころでしょうか?」


「日ノ本も舐められっぱなしさね。ここ最近は政治も含め失点続きさね」


 お婆ちゃんが溜息を吐きますが、まあ何かあったのでしょう。ただ、その事に私達が巻き込まれるとなると少々事情は変わります。そして、改めてシルバーウルフへと視線を向けました。


「一応、お伝えしておきますが、私達が崇めるユーステリア様は決して善神という訳ではありませんよ? どちらかと言うと荒ぶる神と言っても良いと思います。戦いの神様でもあります。下手すると、国が滅びますよ?」


 説明しておかないと大きな誤解を生みそうなのです。この日ノ本でも雷公でしたか? 雷を司る祟り神様がお見えですよね? 奇しくもユーステリア様は雷が甚くお好きです。それはもう、雨の様に降らします。それで魔の森が幾つも灰燼に帰したとも聞きました。


「ヤバいの? もしかすると」


「はい、そもそも、我慢とかがお嫌いな神様として有名です」


「それは・・・・・・」


 トパーズさんが思いっきり顔を引き攣らせています。


「ただ、今の所はお力を振るうことが出来るのは私やお姉ちゃん、あとはそのシルバーウルフを起点としてになると思うのです。でも、だからと言って安心できる神様じゃありませんよ?」


 私の言葉に会議室を沈黙が包み込みます。

 出雲の巫女さんなんかは思いっきり顔から血の気が引いています。やっぱり神様を身近で感じている人は、神様の理不尽さを良く理解されているのだと思います。


「不味いわね、恐らく公安と言うか、政府は小春ちゃんとひよりちゃんをメディアに露出させるつもりかもしれないわ。そのうえで日本に居られなくする。まあ良くある方法と言えば方法よね」


「超常の力を使えば実際かどうかはともかく、平穏な日常は送れなくなりますよね」


 皆さん次々と不穏なことを言い出しますが、そもそもとして出雲大社から私達が出なければ良いのではないでしょうか?


「空から爆弾を落として、学園事消滅させるとかどうなのでしょう? ほら、軍の誤爆とか良くありますよね?」


「無いわよ! この日ノ本でそんなの無いから!」


 むぅ、よくニュースでそういった報道を目にするのですが、誤爆と言えば許されるような気がしたのですが駄目ですか。


「時々ひよりちゃんって怖い事をするっと言うわね」


「ユーステリア様が乗り出すより被害は絶対に小さいですよ? あの方は伝承ではすっごく大雑把らしいですから」


「悪いけど、聞きたくなかったわその話」


 トパーズさんが頭を抱えちゃいました。

 もっとも、お爺ちゃん達もさっきから会議室の隅で何か話をしていますが、私には会話が聞こえないので何の相談をしているのかはわかりません。


 私が色々と打開策を告げて、魔女さん達が却下するという遊びを続けていると、漸くお爺ちゃん達の中で何かしらの解決策が生まれたようでこっちへと戻ってきました。

 まあ、私と魔女さん達の会話は、お爺ちゃん達のお話が纏まるまでのお遊びみたいなものですから。


「これが解決策になるかは不明なのですが、一つの避難策として伊藤家、辻本家の皆さんに妖精界へと避難していただくのはどうかと。幸いにこの地は他の世界へと門を作りやすい地です。そこで、魔女の方々にフェアリーサークルを作ってもらい、一時的に避難するという案が無難では無いかと」


「えっと、本気ですか?」


 私は、思わず神主さんを見返しちゃいました。だって、そんなことしたら絶対に私達が向かう先は妖精界なんかじゃないと思うんですよね。それこそ、120%確信出来ちゃいますよ。

人の考えが神様を上回るのはなかなか難しいと思うのです。

ましてや、退屈を持て余してて、おもちゃで遊んでる神様のおもちゃを奪うなんて。

なんて恐ろしい事を考えるのでしょうか?

無知とは恐ろしい物ですよね。

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