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116:ワンワンニャンヤン大騒ぎ

誤字脱字報告ありがとうございます。

 お婆ちゃんの質問にどう答えようか、全てを話すにはここには人が多すぎるかな。

 一応は関係者が殆どだけど、それでも私が良く知らない人もいる。それに、もし話をするとしたらお姉ちゃんやお父さんが一緒でないと駄目だと思うのです。


「う~ん、まだ内緒?」


 出来るだけ可愛く、年齢相応の所作を気にしながら、それでいてお婆ちゃんに視線で言えない理由、周囲に人が居る事を気付いてもらう。

 さすがお婆ちゃんで、私の視線の意味をすぐに理解してくれた。


「そうさね、まあ今はそれよりもあの動物達が優先さね。下手に人間に戻られても困るさね」


 お婆ちゃんはそう言うと、ゆっくりとした動作で会議室を後にしました。

 もっとも、私達も同様に後を追いかけたのですけどね。そして辿り着いた先は、こんな所があったんだと驚きの建物の地下に作られた独房? 牢屋などのイメージではなく、頑丈な金属の扉で作られた部屋です。


「う~んと、何か毒ガスの部屋みたいでいやな感じかも」


 私の第一印象はもう最悪な部屋ですが、実際は貴重なマジックアイテムなどを保管する為の部屋らしいです。もっとも、より貴重な物などは更に頑丈な金庫室に収められているそうです。


キャンキャン! ニャーーニャー、クルック・・・


「う~ん、でも、扉からは全然想像が出来ない鳴き声が聞こえます」


 扉自体も中々の重さの様で、レッドさんが結構力を込めて開けてくれました。

 すると、部屋は一つの大きな部屋では無く、鉄格子で仕切られた6つの小さな部屋に分けられていました。そして、その内の3つの部屋には犬や猫、狸やキツネ、あと鳩かな? そんな動物達がそれぞれ押し込まれているのが見えました。

 そして、それぞれの部屋ではお姉ちゃん達がせっせと部屋の中の掃除をしたり、動物達に餌をあげたりと大忙しの様です。


「うわ~~ん、ひより~~~~! よがった~~~~」


 部屋に入った途端、お姉ちゃんが思いっきり抱き着いてきました。

 どうも私が目を覚ましたことはお姉ちゃんまで連絡が行っていなかったようです。

 それもこれも、動物の世話が予想以上に大変で、交代制で行っているのに抜けたら誰かが代わりをしないといけないからという理由みたいですが。


「お姉ちゃんも無事でよかったのです。心配かけてごめんなさい」


 真ん丸ダイヤも持っていたし、それなりに成長もしていたので魔力が空っぽになるなんて思いもしていなかったのですが、それも結果論でしかありませんし。ましてや、あれで敵を殲滅できていなかったらと考えると、背筋が凍るような恐怖を感じます。


「とにかく、ひよりが無事でよかった」


 抱きしめられたまま、頭を撫でられています。その撫で方からも何となく本当に其処にいるのかを確かめられているような感じで、本当に心配を掛けてしまったんだなと反省ひとしおです。


「本当にごめんね。気絶するとは思わなかったのです」


「ううん、ひよりが無事で良かった」


 何度も無事であった事を口にするお姉ちゃん。本当に家族に心配かけるのは駄目ですね。


 そんな事を思いながら、そういえば家族と言えばもう一人目が覚めてから会えてない人がいたような・・・・・・そんな事を思いながら、少し顔をずらして視線を周囲に向けると、涙をボロボロ流しながら手をワキワキさせているお父さんが見えました。


 うん、見なかったことにしましょう。


 私は両手をお姉ちゃんの背中に回してガシッっと抱擁します。

 べ、別にお父さんがキモイと思ったり、何かキモイと思ったりしてませんよ!


「ちょっと! ひよりちゃんが無事だったのは私だって嬉しいけど、この動物達の世話! トイレ砂くらい綺麗にしておかないと悲惨さの度合いが違うんだから!」


 そんな姉妹の感動の抱擁に、思いっきり横槍を入れれるのはやっぱり佳奈お姉ちゃんしかいませんね。

 私達の横まで来て、スコップ片手に仁王立ちしています。


「えっと、お疲れ様?」


「そうよ! 思いっきりお疲れ様よ!」


 何でしょうか、佳奈お姉ちゃんからそことなく動物臭さが漂てきます。ただ、これは口に出したら駄目な奴ですね。


「ひよりちゃん、助かったけど、みんな救われたけど、これって何とかならないの? せめて職員の人だけでも元に戻して欲しいの。ほら、あのアライグマなんて最悪だよ!」


「佳奈お姉ちゃんの指さす先には、とても愛玩動物とは思えない凶暴さを滲ませている生き物がいます」


「いや、口に出てるわよ! というか、アライグマは愛玩動物じゃないく、思いっきり害獣指定されてるはずよ?」


 お姉ちゃんが漸く抱擁から解放してくれたので、飛び掛かって来たお父さんをあっさり回避して私は檻の中にいる動物達へと視線を向けました。


「おお、この種類の違いは何処から来ているのでしょうか? 実に興味深いのです」


 何となくな勝手な判別では、あの凶暴そうなアライグマは敵が変身したものだと思います。あと、イタチも居ますが、あれもきっと敵ですね! そうやって見ていくと、何となく判別できるような気がしませんか?


「あのアライグマとイタチはきっと敵です! あとは、あ、あの大きなネズミっぽいのも駄目です!」


「えっと、ひより? きっととか言ってるけど、その根拠が心配なのだけど」


 お姉ちゃんが横で何か言っていますが、私は部屋の隅で私を見ている生き物を発見し、大興奮なのです。


「おおお~~~、すごいです! チベットスナギツネなのです! 見てください、あの何か悟ったような、諦めたような眼差し、うわ~~~、初めて見ました。一度は実物を見て見たかったのです!」


 前に映像で見た時からの憧れの生き物です。

 それがこんな身近で見る事が出来るなんて、もう大興奮ですよ!


「うわ~~~、うわ~~~ぐぇ」

 

 思わず駆け寄ろうとした私の襟首をがっしりと握って、お姉ちゃんが私を引き留めます。

 思いっきり喉が絞まって変な声が洩れちゃいましたよ。


「ひより、珍しい動物に興奮するのは構わないけど、まずは目の前の現実を直視しなさい」


 改めてお姉ちゃんに言われ周囲を見回します。


「柴犬、マンチカン、アライグマ、秋田犬、ん~ん、何猿かな? 狸? 狐? お父さん、あ、フクロウもいる、凄いね!」


「・・・・・・何か混じってた気もするけどそれはとりあえず良いわ。問題なのはここに全部で29匹の動物がいるの! わかる? 29匹よ! とても手が回らないの」


 お姉ちゃんが今度は私の頭を両手で掴んで正面から私の目を覗き込みました。


「どうなの? 本当に何とかならない? そもそも、人だったものにご飯はドッグフードとかあげてるのよ! 変な物を与えて問題が出るか判らないから怖くてペットショップで買ってきたのよ!」


「うん、犬にチョコレートや玉ねぎは絶対にあげちゃ駄目だもんね」


 ペットによっては食べさせると病気になっちゃう食べ物って結構あるんです。それを知らずに良かれと思って与える飼い主とかいたりします。皆さんペットを飼う時には十二分に調べてくださいね!


「幸いにして躾が出来ているので猫砂やトイレシートで用を足すからまだ助かっているの。でもね、もう喧嘩とか、走り回ってお水の器を引っ繰り返したりとか大変なのよ!」


 奥の方に居たブルーさんも此方へとやって来て文句を言うのですが、あの場においては最善の魔法を選んだという自負はあるのです。


「攻撃魔法が駄目なら、攻撃魔法じゃない魔法で無力化すればいいじゃない戦法だったのです」


「どこのマリーアントワネット!」


 ブルーさんが何か叫んでますが、一応は弁明しておかないと駄目ですよね? ただ、みんなも怒っている訳では無くて慣れない動物の世話に追われて色々と限界に来ているのでしょう。


「もう一回聞くけど、戻せないのね?」


「魔法なので、効果が切れると戻ると・・・いいな? あ、でも敵は選り分けておかないと戻った時に危険だよね」


「え? それはそうだけど、見分けられて無いのよね?」


 お姉ちゃんが再度確認してきますが、動物になったからなのか、未だに悪意は欠片も見れません。


 先程から近くに座っている柴犬を持ち上げて見たり、クッションで寝ている猫を撫でてみたりしているのです。ただ、残念ながら変身前の情報が見えたりするわけじゃ無いのですよね。

 それでも、丁度手近にいた犬を持ち上げてみますが、そこで私が新たに判った事はこの犬は雄だという事くらいです。


「・・・変身前に着ていた服とかはどうなったのですか?」


 服を着たまま変身したのなら魔法が解除されれば服を着た状態で復帰すると思います。

 ただ、変身した後に服が取り残されていたとしたら、変身が解けたらすっぽんぽんなのです。

 流石に女性には厳しいのではないかな? もっとも動物になって性別まで変わっていたら問題ですが、流石に性別まで変わってないよね?


「服は動物になった時に部屋の中には見当たらなかったわ。恐らくは毛皮とかそんな物になっているのかしら?」


「雌はとりあえず分けて檻に入れて置いたらおいたらどう? 襲撃者に女性はいなかったわよね?」


「そうね、まずはそこからね。ただ、いつ変身が解けてもいいように注意した方がいいわね」


 お姉ちゃんの言葉で、まずはみんなで雌の動物を選り分けます。


「これって、動物の時の記憶が有ったらトラウマかなぁ」


 佳奈お姉ちゃんが持ち上げてお腹側を見て、雌を選り分けながらそう告げますが、これは致し方のない事なのです。


「・・・・・・誰かフクロウとか鳩の性別って判る?」


 うん、まずは判る所から行きましょう。 


「ところで、お婆ちゃん達はあのときいったい何があったのですか?」


 動物を選り分けている作業の中で、防衛の主力と成るはずのお婆ちゃん達がいきなり戦線離脱となった事を確認すると、思いっきり罠にはまって結界に閉じ込められてしまったそうです。


「その結界の基となったのが、この宮内庁支部の結界だっていうんじゃから笑えないさね」


 今ここに居ないトパーズさん達が何をしているのかと言うと、内通者や裏切った人などの特定の為に出雲大社の人達と飛び回っているみたいです。


「そもそも、ここの管轄は出雲大社じゃ無く宮内庁で、伊勢神宮系なのよね。だから支部における人事には出雲は関わってないし、この結界装置は思いっきり伊勢の仕様なの」


 グリーンさんが言うには、恐らく今回の内通者はその伊勢から送られた人だという事なんですが、それが誰なのか、なぜ伊勢が敵に与したのかがまったく判っていないみたいです。


「思いっきり油断してて、結界のシステムがおかしい事にも気が付いていなかった可能性が無い事も無いけど、それだって失態だしね。システムを弄れる立場に居る人間が一番怪しいのが普通かな?」


「もしくはナンバーツーとか? ドラマとかの定番ではあるわね」


 ただ、今回の事で出雲と伊勢の関係が更に悪化する事は容易に想像できるそうです。そもそも、私達は当初は出雲大社の中へ保護される予定だったそうで、それを宮内庁側のごり押しでこの支部に変わったそうですから、それを聞くと改めて何だかなぁと思っちゃいます。


「この後、出雲大社にある社殿に移動する事になるから準備してね」


「問題はこの動物達なんだけど、聖水ぶっかけたら元に戻ったりしないかな?」


 ブルーさんの言葉に、その場にいる人達が一斉に顔を見合わせました。

 そして、ブルーさんがそそくさと何処かへと出て行ったのは、たぶん聖水を貰いに行ったんだと思います。


 それにしても、何かお爺ちゃんや神主さん達と比べるとすっごく頼りにならないですよね。まあここの結界は私やお姉ちゃんが展開している訳ですし、そう考えると宮内庁の評価がどんどんと下がっていきます。ましてや内通者ですから、誰を信じていいのかすら怪しくなっちゃいます。


 そこがお母さんの仕事先と考えると真面目に頭が痛いですよ。これは今度お爺ちゃん達に会った時に相談した方が良いですね。

アライグマって漫画の印象で騙される人が多いのですよね。

それでも、飼い主がしっかりとお世話をしていれば・・・・・・

あと、鳩も平和の象徴と言われるんですけどねぇ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。これからも楽しみにしてます。
[一言] そうアライグマは結構たち悪いのよ。 以前野良アライグマが屋根に居た時、役場と警察に連絡したけど捕まえられなかった。 (捕獲は資格がないと違法) 逃がした違法飼い主に氏を!
[良い点] 姉妹の感動の再会に百合みを感じててぇてぇなぁ。 でもお父さんの分類は動物。みんな知ってるよね。 [一言] 宮内庁に内通者が居て信用できないなら、お母様が宮内庁のトップに立って乗っ取ればい…
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