113:女性が集まれば女子会なのです
誤字脱字報告ありがとうございます。
私達家族は食事を終えて自分達の部屋へと戻りました。
もっとも、佳奈お姉ちゃんの家族は佳奈お姉ちゃんの今後を含め、お婆ちゃん達とお話し合いをするみたいです。まあ、お母さんが化粧水にすっごく反応していたし、そもそも戦闘がメインの人達では無いはずなので、このまま佳奈お姉ちゃんの弟子入りが正式に認められると思います。
「家を離れたせいで何かを用意するにも材料が厳しいわね」
庭の薬草などが主な材料となるので、家から離れると一気に行える作業が限定されちゃうのです。
「魔力循環とか基礎的な事をすると良いよ。お姉ちゃん最近はさぼってたでしょ?」
「う、それを言われると辛いわ。でもね、学校の勉強も大事なのよ?」
高等部に入学すると、中々に成績争いが熾烈になって来たそうです。何と言っても少ない枠を確保して入学して来た外部進学組と上位を争っている為に勉強する時間が自ずと増えたのです。
「私はそこそこで良いもん。一流大学とか行っても、特に将来的に変わると思えないよ?」
「う~~~ん、それでも、肩書って社会に出ると必要になりそうよ?」
「普通の会社とかに入ったらでしょ? 私もお姉ちゃんも普通の就職は難しいと思うよ?」
そもそも治癒や結界の魔法を使える人材を国が放置するとは思えないですし、民間の普通の企業に就職しても、お母さん達の様に問題が出そうです。
「そうなんだけど、今まで頑張って来たし」
ある意味これも習慣なのでしょう。前にも聞いた事が有るのですが、上位20名から落ちるとこれで良いのか、このままで良いのかなどと精神的に不安になるそうです。
私ですか? ふふん、前世では成績など実績で黙らせてきましたが何か? もっとも、その実績も何方かと言えば思いっきり趣味に走っていたので、世の中に貢献したなんて欠片も言いませんが。
「しかし、今後の世の中は大変な事になりそうだね」
部屋で引き続きテレビを見ているお父さんは、今後の日ノ本の政治の在り方を心配します。
「日ノ本に住む人達にとってテロと言うのは遠い別の場所の出来事なんだ。今まではね」
お父さんの言葉にお母さんも頷いている事から、ある意味安全神話が壊れたという事かな?
前世においても魔物の脅威を感じられない者達は居た。特に国の首都に住む者達にその傾向はあった。そして、そんな人達が安全な場所など無いのだと知った時の混乱を思い出す。
「どうするのかな? 武力を強化するの?」
「いや、恐らく政権が崩壊して解散総選挙かな?」
「???」
う~んと、それの何処にテロに対する対処があるのでしょうか? 良く判りませんが、まあ関係無いから良いです。
「ひよりが考えるのを止めたわね」
お姉ちゃんがコロコロと笑っていますが、意味の無い事を悩むだけ時間の無駄なのです。
「まあ政治の話だからな、ひよりにはまだ早いだろう」
そう言ってお父さんも笑いますが、そんな時でもテレビでは事件がライブ映像で流れています。
「どうやら決着がついたようね。白旗が立てられているわ」
お母さんの声にテレビを見ると、今まで争っていたすべての拠点で一斉に白旗が振られています。
これはお互いに連絡を取り合っていたのと、何か別の所で事件が進んだと思って良いのかな?
家族全員で推移を見ていると、ドアをノックする音が聞こえて、トパーズさんが入って来ました。
「あ、テレビ見てたのね。今、生臭坊主から電話が入ったわ。無事に相手の術者を捕縛したそうよ。まあそれなりに人員を投下していて成果が出なかったら後が大変だったわ」
そう言って安堵の吐息をつくトパーズさん。その後、もう少し詳細な情報が入って来て、お爺さん達は負傷者は出したみたいですが、これまた死者は出なかったそうです。
「まあ捕縛出来た者はたったの3名、残り4名は死亡したさね」
後でお婆ちゃんにこっそりと尋ねると、そう教えてくれました。
結局の所、相手は空間を隔てた結界で身代わりの人形を使う事が出来ず、また降伏をしない為に捕縛した3名も瀕死の重傷らしいです。
「銃撃戦をしていた傭兵達も何らかの方法で所属側が負けた事を知ったのでしょうね。それで契約終了と判断して降伏したのだと思うわ」
もっとも、その傭兵達をどういった罪状で処罰するのか。これも恐らく長い時間掛かる事になると思われるそうです。
「この国の危機管理意識の無さは昔からねぇ」
「まあ、御蔭で私らが入国できたんだ。悪い事ばかりじゃなかったわ」
「当時は魔法防御が笊だったわね。政府指導者が魔法とか信じて無くって」
「ああ、あの人って結局呪殺されたんだっけ? このままだと国防に影響がって」
何故か私を含めた魔女さん達との座談会が会議室で行われていて、その中で先輩魔女さん達の一部からは不穏な発言もちょこちょこ飛び出しています。もっとも、それ以上に今後の事が私は気になるから居るのですが、昔話に花が咲いています。
「あ、お婆ちゃん」
席を外していたお婆ちゃんが会議室へと戻って来ました。その後ろには又もや出雲のおじさんがいます。そういえば、この人って挨拶しました? 名前の記憶が無いのですけど。
「ほれほれ、追加情報が来たさね。ちょっと静かにおし」
お婆ちゃんがお弟子さん達に注意します。
「賢徳達は引き続きあちらで逃走者の捜索に入るからこっちには来れないそうさね。あと、情報の訂正で、捕縛者はゼロ、死者が追加で3名さね」
ちょっと溜息を吐くお婆ちゃんですが、相手の術者で結局生き残れた人は居なくなったという事です。それ程に怪我が深刻だったのでしょう。
「今把握できている術者は残り19名でしたが、後に重傷を負っていた3名を発見、死亡を確認しております」
「それでもまだ最低16名は居るのね」
「途中で襲撃して来た5名くらいであれば脅威も少ないのでしょうけど、賢徳お爺さん達と争った者達は中々に手強かったそうです。ポーションが無ければ数名死者が出ていたという報告が来ています」
トパーズさんの報告では、此方に襲撃を掛けた者達はいわゆる見習いレベルだそうです。首を傾げていると、冒険者で言えばDランクと言われましたが、その例えでは全然判りませんよ!
「そもそも指揮をしている者達が特定できていないのが痛いわね。判っている隠れ家はすべて強襲したわけだし、潜伏先を再度特定するのも時間が掛かりそうね」
結局の所、まだ事件解決とはいかないみたいですね。ただ、この時にふと気になった事がありました。
「う~んと、上手く言えるかは判らないんだけど、そもそもの発端は鳳凰学院で謎のアイテムが売買された事ですよね? そこら辺は何か解決したのです? えっと、確か鳳凰学院で捕まった人が名前っぽいのを残していた気がするんだけど」
「「「・・・・・・」」」
私の発言に、会議室に居る人達から思いっきり視線が向けられました。
ハッキリ言って座ってなければ思わず尻込みしちゃうくらいの圧力を感じました。
「言われてみればそっちはどうなっているのかしら?」
「進展があったとか、聞いていないわね」
「中等部が浸食が多かったんだっけ?」
魔女さん達がいろいろ意見を口にする横で、トパーズさんは慌てて何処かへと電話を入れています。
あと、お婆ちゃんがお店に残っているお弟子さん達に何かを指示しています。ただ、この残った人達って筆頭が例の若返りの薬を研究している人で、他の人達も何方かと言えばマッドなあれな方々で役に立たないって言ってませんでした?
「何とも言えないわね、売買に関してのルートは今回潰したみたい。ただ、鳳凰学院で中心となっていた者の情報は得られて無いわ。所詮は売り場の一つと考えて供給を断つ事を優先したそうよ」
「まあ中学生なら其れも有りね。ただ、それが普通の中学生ならね」
「そこだよねぇ、問題は」
魔女さん達はワイワイ言いながらも次々と問題点、その対応策を話していく。でも、その様子はどう見ても女子会とかそう言った類の集まりにしか見えないのです。
「残った者達にあっちの状況を聞いたさね、あっちに最低3名は流れて来てるようさね」
興味のない事にはトコトン無頓着な人達からの聞き取りに余程疲れたのか、お婆ちゃんは脱力する様に椅子に座って冷めたお茶をごくごくと一息に飲み干します。
「良く3名流れて来たのに気が付きましたね。あの方達が外の事に気を配った事が驚きなのですが」
トパーズさんがお婆ちゃんの湯飲みに新しくお茶を注ぎながら、本当に驚きましたといった様子で尋ねます。
「馬鹿な連中が無人だと思って襲撃したさね」
「それは・・・何と無謀なというか、襲撃して来た能力者は良く無事でしたね」
「もう二度と人には戻れないそうさね。どうなったかは、まあ、奈古屋がもう一荒れしそうさね」
「まあ、早く帰ってのんびりしたいですねぇ」
「大学の出席日数が・・・・・・」
「単位がヤバいわぁ、留年確定?」
「中退して店に来れば?」
「それは嫌!」
もうどの発言が誰なのかすら判らないくらい魔女さん達はギャイギャイと大騒ぎをしています。
ただ、あちらに残った人達って非戦闘員じゃなかったのですか? 思いっきり不穏なのは気のせい?
小 春:「あれ? お姉ちゃんパワーアップ回はまだですか?」
ひより:「・・・・・・ドジっ子属性の?」
小 春:「失礼ね! 私ドジじゃ無いわ!」
ひより:「見解の相違を感じますぅ」