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109/135

109:逃げるを選択したけど回り込まれてしまいました

誤字脱字報告ありがとうございます。

 次々に発せられる爆発音。流石にこの状況で装甲車も進むわけにはいかないのか、バスの進路を塞ぐ感じで停車しました。というか、わざと塞いだのかな?


「左右の奇襲を注意だよ。よく馬車の進路を塞いで、そこから奇襲って山賊とかが良くやるパターンだよね」


「え? 山賊?!」


 何かお姉ちゃんが驚きの声を上げているけど、割と良くあるパターンですよね。

 本来なら防御できるなら強行突破するのが最適解なのですが、この世界ではそういう訓練はされていないみたいです。


「こっからが敵の主力かな? もしかしたら今までは陽動だったのかも?」


「それは無いさね。最大戦力をぶつけんといかんのに、態々分ける意味はないさね」


 確かに言われてみるとそうなのかもしれません。

 そうすると、この攻撃は何なのか、そこが問題ですか?


「あいも変わらず攻撃の主体は現代兵器さね。何か納得がいかないさね」


 お婆ちゃんが私の頭越しに前方を注視していますが、あの装甲車は魔法的な防御も施されている為、今の所は無傷です。そして、装甲車からドドドという重低音が響き渡りました。


「おおお、何か凄くお腹に響く音ですね」


「重機関銃の音さね。普通はあれで黙らせる事が出来るはずさね」


「その前の攻撃はロケットランチャーですか。普通ならこのバスやパトカーのみならず装甲車だって破壊されている所なのですが」


 運転手さんの顔面は脂汗? 先程からしきりにハンカチで顔を拭っています。

 ただ、魔法防御も基本的には回数制限があるので、撃たれ放題してると思いっきり破壊されちゃいますよ?


「あ、後ろが開いた」


 佳奈お姉ちゃんの言葉で視線を運転手さんから前へと戻すと、装甲車の後部が開いて迷彩服を着た兵隊さんが銃を手に飛び出してきました。


「・・・・・・あれって警察官?」


 お姉ちゃんが首を傾げるのも良く判ります。どう見てもどこぞの軍隊ですよね? 迷彩模様の服を着た警察官なんて見た事が無いですし、武器も思いっきり殺傷目的の武器ですよね。


「あんな連中が乗ってたの? 乗ってるなら警察の特殊部隊かと思ったのに、あれそもそも日ノ本人じゃ無くない?」


 ヘルメットと顔面に施されたメイクで判り辛いですが、佳奈お姉ちゃんが言う様にちょっと日ノ本人っぽくないですね。


「うん、足が長いね」


「うん、日ノ本人は足が短いからって違うし!」


 お婆ちゃんの冷たい視線を浴びながらも、佳奈お姉ちゃんと馬鹿な話をしていると装甲車と兵隊さんが前方へと進んで行きます。もっとも、今の段階で敵からの攻撃は終了しています。


「う~ん、左右から接近してくる敵は居ない?」


「居ないわね。何か変よね、さっきの攻撃に何の意味があったのかしら?」


「というか、あの装甲車の銃撃で生きてる敵っているの!?」


 相変わらずこの状況で雑談しているのは私とお姉ちゃん、佳奈お姉ちゃんの3人です。

 ただ、佳奈お姉ちゃんはどちらかと言うと冗談を言っていないと心が持たないからといった様子です。


「お姉ちゃん、タフですね?」


「そうね、今ひとつ現実味が無いのよね」


 成程、実際に目の前で誰かが死ぬ所を見たわけでは無いですし、そんな物でしょうか?

 ただ、何となく此の侭では済まなさそうな気配が濃厚です。


「運転手さん、あの兵隊さん達に装甲車に戻る様に言ってください。このバスが先頭になって一気に突破します!」


「え? あ、え? このバスがですか?」


「はい、嫌な予感がしますので、急いでください」


 私の指示で、運転手さんが慌てて窓を開けて顔を出そうとするので慌てて引っ込めます。


「危ないですよ? スピーカーは無いのです?」


「え? あ、はい。このバスは観光用なのでスピーカーはカラオケ用しかありません」


 運転手さんの言葉に思わず右人差し指を頬に当てて考えます。

 すると、トパーズさんが運転手さんに思いもかけない指示を出しました。


「そもそも、このバスが進めばついて来るわよ。ほら、右側なら通れるでしょ? あそこを抜けて突っ走って」


 トパーズさんが指さす場所は、斜めに停車した装甲車に塞がれた道路において辛うじてこのバスが通れそうなスペースを確保しています。


「し、しかし、先程の攻撃がバスに来たら」


 思いっきり怖気づいている運転手さんだけど、これはある意味仕方が無いです。

 佳奈お姉ちゃんのお父さんなんか、とっくに気絶してお休み中ですよ?


「このメンバーでバスにダメージが出るわけないでしょ? それよりも此処に長く停車して前方の道路に変な細工される方が厄介よ」


「あ、そうか、道路破壊されたりしたら本当に身動き取れなくなるね」


「そうさね、それが狙いかね?」


 不自然な攻撃はそのまんま時間稼ぎの可能性が高いのです。ましてや、先程の攻撃だって木人兵の可能性が高い気がします。


「わ、判りました。い、逝きます!」


「ん?」


 何か運転手さんの言葉の字面が違った気もしますが、とにかくバスはゆっくりと装甲車の横を通り抜ける為に動き始めます。


「ば、バス! 何を勝手に!」


 覆面パトカーの竹内さんが此方を見て、慌ててマイクで私達を止めようとします。

 それに対して私達は笑顔で手を振ってあげましょう。


「竹内さん、またね~~~」


「ひよりちゃん、それはちょっと違うような」


 グリーンさんが顔を手で覆っていますが、私がなんと返事をしても、まあ結果は変わらないのですよ。


「通り抜けたら可能な限り最大速度で!」


「わ、わかりました!」


 トパーズさんの指示でバスは動きますが、道の所々が爆発や爆風で荒れているのでバスは左右にグラグラと揺れます。


「これ、長く続くと酔いそう」


「そうね」


「もう酔った・・・うぅぅ」


 ルビーさん達は相変わらずですね。場数は踏んでいるという事でしょうか? この状況でも思いっきり冷静です。まあブルーさんは相変わらずの残念さですが。


「これから速度を上げます! 再度シートベルトの確認をお願いします」


 運転手さんの声でバスは加速していきます。

 前方にいた車はとっくにいなくなっているし、後方から車はやって来ません。その為、バスは恐らく行われているだろう罠の設置を突破する為に速度を上げていきました。


「この先で何が行われてるのかな」


「さて、今の状況が意表をつけたかどうかさね。予定を崩せていれば良いがの」


 お婆ちゃんのみならず、みんなの視線が前方へと注がれます。


「あるとしたらそれ程遠くは無いわよね。何が仕掛けられているかしら?」


「左右も注意してね! もう装甲車の方では戦闘が終わったのは向こうも理解していると思うから」


「うぅぅ、胃にダメージ来たわぁ」


 レッドさん達も周囲を警戒している中、わたしも前面にある結界に注意を払う。

 前面の結界さえ突破されなければ何とかなると思うのだけど、道が無くなればそれはまた別の話。

 その為、トパーズさんは道の上に置かれている障害物などが無いか注意を払っている。


「何か嫌な気配が前方右側でします。多分ですが何らかの術が仕掛けられています」


 今回、まず異常を察知したのは神主さんの所の人、さすがはこの手の専門家です。

 言われた方向へと注意を向けると、確かに何かの異常が感じられます。


「攻撃する?」


「いえ、守りを固めて突破しましょう」


 私の言葉にトパーズさんは守りを固めての強行突破を選んだみたいです。


「何か嫌な予感がするのよね。触らぬ神に祟りなしよ」


 バスが危険予測地点へと到達間際、前方に突然今までと比較にならない大きさの何かが現れた。

 この時、バスは既に時速100キロを超え、回避する距離は無いに等しい。

 また、事前に前方に落とし穴的な何かが現れない限りはそのまま突破する様に命令されていた運転手は、ハンドルを固定したままその障害物に衝突する事となった。


ドス!


 予想した衝突の衝撃が来ないのみならず、あまりに衝突音が小さかった為に運転手はバックミラーで後方を見る。すると、道路の中央に何か大きなものが倒れていたのが見えた。


「よし、まずは一つ目だね。このまま突破するよ」


「今のって何でした? イノシシ? 熊?」


 お姉ちゃんは後方へと視線を向けますが、あまりに短時間の接触の為ぶつかった物が何だったのか把握出来なかったみたいです。


「う~んと、大きさはクマっぽい何か? 恐らく生き物じゃないとは思う」


 断言はできないですが、目の前に突然に湧き出るクマなんかいてたまるもんですか。

 ただ、そんな状況も後回しに現実はどんどんと進行していきますというか、車は速度を上げたまま進んでいます。


「次は何が出てくるかしら」


「これで無事に脱出出来ましたが希望です」


 私の願いとは裏腹に、道路のはるか前方に人影が立っているのが判りました。


「うわ、思い切り道を塞いでる」


 佳奈お姉ちゃんが顔を顰めます。

 でも、よくドラマとかでこういう時の対処法とか出てますよね。


「このまま加速してください! 相手は必ず避けます。だから今は停車せず突っ切って!」


 トパーズさんの叫び声がバスの中に響き渡りますが、運転手さんは警察官である為か、人を撥ねる可能性が高い状況では流石にブレーキを踏みました。


「あああ、もう! 敵なら跳ね飛ばせば良いでしょうが!」


 そう叫ぶ声に私も激しく同意ですが、それは命の遣り取りをした事の有る人しか不可能な事だと思います。そして、前面に並んだ人達は、これまでとは明らかに違う雰囲気を漂わせていました。

ひより:「一応、ここからが山場?」

小 春:「ふ~~~ん、何かあっさり倒されて終わりそうね」

ひより:「ギターケース抱えて、それが機関銃になってたり、ミサイルが出るの!」

小 春:「ごめん、何の話か判らないわ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 重機関銃の音を知る婆さんは戦場帰りですか!?いやきっと魔法少女も色々あるんだな。
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