103:昔懐かしお人形?
誤字脱字報告ありがとうございます。
今、警察署は蜂の巣をつっついたみたいに大騒ぎになっています。
なぜかというと、例の倒れた男子の所持品から、まさかまさかの拳銃さんがひょっこりとおいでになったのです。わたしは良く判らないのですが、リボルバーで弾は6発装填の所に5発入っていたそうです。
「まあ、暴発しても大丈夫なようにしてたんでしょう」
「そういう物なんですか?」
「そういう物なんです」
完全に他人事のように私達は竹内さんと会議室でお茶を飲んでいます。
まあ実際は竹内さん関連の事件だと思うのですが、初動で何かできる訳でもないので有賀さんに丸投げしていました。
「どうせこの後忙しくなるんです。今ぐらい息抜きさせてください」
うん、竹内さんの背中が煤けているような気がしました。
「結局の所、さっきのって木村さんを狙ってきたの? それとも私達を狙ってきたの?」
呪いで何ともならないので、物理で来ましたは良くあるパターンだと思うのです。ただ、あまりにも雑ですよね。恐らくですが、警察署の誰かが会話をした段階でまともな状態じゃないのはバレると思うのです。
「この騒ぎの間に隙をついて、なんて考えられない? よく小説とかであるじゃない」
「一応警察署と留置所に結界を張ってるから何かあったら判ると思うよ? 殺意があればそれこそ反応すると思う」
何かしらの方法で殺意や悪意を誤魔化せたとしても、魔法的な何かである限り結界に反応はすると思うのですよね。そう考えると、この攻撃は意味が判らないのです。
「判らない事は判らないとして、そういえば木村さんが最後に言いかけたのってハシモトかな? ハシモまでしか判らなかったけど、普通はハシモトよね?」
判らない事を悩んでいても仕方が無いとして、お姉ちゃんが先程木村さんが言いかけた名前を口にしました。
「う~ん、断言できないけど、可能性は高い? ハシモチとか、ハシモア、う~ん、名前っぽいのは無いよね」
三人でハシモの先の言葉を色々と考えてみるけど、ハシモト以上に合う名前は思いつかないですね。
「鳳凰学院にいるハシモトの苗字の人、何人いるのよ。そもそも、学院の生徒とは限らないし、特定できるの?」
お姉ちゃんが頭を抱えているけど、確かに鳳凰学院の生徒とは限らないんだよね。
「そういえば、うちのクラスにも橋本君がいるよ。ちょっと胡散臭い子」
「え? それって大丈夫なの?」
「うん、今の所は悪意は見えないから、でも何かすっごく胡散臭い」
私の言葉にお姉ちゃんはちょっと困った顔をする。
「ちなみに、ひよりと仲の良い胡散臭くない男の子っている?」
「う~~ん、いないかな?」
私の返事にお姉ちゃんと佳奈お姉ちゃんは顔を見合わせてすっごくワザとらしく溜息を吐きます。
「なにそれ! すっごい失礼だよ! そういう二人はいるの!?」
「え・・・・・・」
「そ、そうね、えっと・・・・・・」
「二人だっていないんだよね! 花の女子高生なんだよ? 私より酷いと思う!」
「花の女子高生って、いつの時代の言い回なのよ」
「花は花でもラフレシアとか?」
「ちょっと! でもさ、まえにアマリリスを見て想像してたのと違って吃驚したわ」
「私は桜も実はあんまり好きじゃ無いんだよね。毛虫のイメージが強くって」
思いっきり脱線して言い合い? をしていると、漸くレッドさんとグリーンさんがバタバタとやってきました。
「なんか大変な事になってるみたいね」
「警察署内もピリピリしてるのね。大丈夫?」
二人が入って来て、どうも私達の言い合いを、警察署内の騒動関係と勘違いしたみたいです。
何を言い争っていたのか知られるのもバツが悪いので、私達は大人しく黙りました。もっとも、ずっと一緒の部屋で黙って壁になっていた竹内さんは全部聞いていたのですけどね。
「あ、わざわざありがとうございます。今、いったい誰が狙われているのか判らなくて、佳奈の護衛をしてもらえるとすっごく安心できます」
「え? 私も狙われてるの?」
佳奈お姉ちゃんは携帯を盗まれたのに、困った事に狙われている自覚が無いようです。
「携帯の次は佳奈お姉ちゃん自身が誘拐される可能性だってあるよ? 最悪は木村さんコースだよ?」
「え? うそ! ヤバいじゃん私!」
うん、ヤバいのです。ただ、今ひとつ緊張感はないのですが。それでも、今回は拳銃まで出て来たのですから、物理的な方法で誘拐されてもおかしくありません。
「今回の事件では、拳銃まで持ち出しています。油断は出来ないと思います」
今の今まで壁と化していた竹内さんが、ここで漸く人間に戻ったようです。
「え? 拳銃まで出て来たの? 私達でも危険よ。変身してる時なら防げても、変身前にヘッドショットでもされたら死ねるわね!」
「そこは力説する所なの? まあ、間違ってはいないけど」
レッドさんの発言に、ちょっと呆れた様子のグリーンさん。ただ、それでも表情に緊張した様子が感じられます。
「とりあえず署のパトカーで送らせて貰う事は出来るが目立つぞ?」
そこにやって来た有賀さんがそう言ってくれるのですが、パトカーで家に帰ったらまたご近所で話題になってしまいます。すでに幾度もパトカーが来てますから、普通は滅多に来ないですもんね。
「それと、さっき宮内庁のメンバーが来たぞ。あの女子高生の保護をするそうだ」
「ちょっと待て、私は何も聞いてないぞ!」
竹内さんの表情が崩れました。
何せこの県において警察での超常的な事件窓口は竹内さんなのです。これは前にお爺ちゃんが言っていたので間違いはありません。そのお陰で出世したそうですから。その竹内さんに連絡せずに勝手に宮内庁の人が動くのはルール違反です。
「おい有賀、急いでそいつらの所に案内しろ! この状況でこっちに無断で現れる奴らなど怪しい通り越してヤバいぞ!」
「な! おい、留置場に向かわせちまったぞ!」
私達は私達で顔を見合わせた後に、慌てて飛び出す竹内さん達を追いかける様に走り出します。
「間に合うかしら? 私達の結界も銃弾は防げないわ」
「そもそも警察署の周りに張った結界反応しなかったよ? その人達いつ来たの!」
お姉ちゃんと私が走りながら叫びますが、勿論答え何か判りません。ただ、このままだと木村さんが口封じされる可能性が一気に高くなりました。
「ああもう、私達その女子高生を知らないから、知ってれば守りの魔法とか飛ばせるのに!」
「そうね、でもあの刑事さん達、足が速いわね」
レッドさんとグリーンさんは事情が今一つ判っていないようですが、私達を追い抜いて竹内さん達を猛追します。ただ、レッドさんの言葉で私は物は試しと警察署内で思いっきり浄化魔法を発動します。
「届くといいなの、浄化魔法!」
普段は此処まで込めることの無いほどの魔力を込めて浄化魔法を発動しました。
ただ、残念な事に何か核となる物を浄化したような手応えは感じられませんので、その宮内庁から来たとかいう人達には届いていないのかもしれません。
私達が階段を駆け下りていくと、前の方で何か騒ぎが起きているのが判りました。
「そもそも移動許可証を見せて貰わなければ被疑者に会わせることは出来ません。これは規則です!」
「我々は警察組織ではない! さっさと被疑者に会わせなさい」
その騒ぎの中心には制服の警察官が顔を真っ赤にしている様子が見て取れます。そして、その騒動の中に竹内さん達が入っていくのが見えました。
「ちょっと待って貰おうか。こっちの竹内警部は何も聞いていないと言うぞ!」
「我々は特殊案件にて動いている。警察が余計な口出しは控えて貰おうか」
有賀さんが更に割って入るのですが、それに対して宮内庁から来たという人達は更に高圧的に出ている?
「おい、あんた達の所属をもう一度確認させてもらおうか。未だかつて特殊案件であんた達を見た覚えが無いのだがな。ああ、俺はその警察の特殊案件対策課の者だ、お宅らの身元確認をさせてもらおう」
なんと! 何時の間にか特殊案件対策課なんて物が出来ていたようです。名前の響きがすっごく格好が良いですね。ただ、私に言わせれば対応が成っていません。敵と思しき相手に不用意に近づきすぎです。
「お姉ちゃん達、出来れば変身しておいて。あの人達思いっきり変だよ? 多分だけど人間じゃない」
前に一度似たような相手と戦った事があります。
「人間じゃないってどういう事?」
レッドさんとグリーンさんは流石と言いますか、私と同じ判断をしたのか私がお願いする前に変身する所でした。ただ、その点お姉ちゃんは変身より疑問を優先しちゃうところが問題ですね。
「物理結界発動!」
ポケットの中から取り出した、最新のプレート式の魔道具を取り出して急いで展開させます。
その対象は思いっきり怪しい宮内庁から来たとかいう人達で、結界本来の閉じ込めるタイプです。
「チッ! 突破する!」
宮内庁云々な人達は、ポケットから拳銃を取り出して無造作に目の前で行く手を塞いでいる警察官へ発砲します。
ガン! ガン! ガン!
「な! 下がれ!」
有賀さんが咄嗟に警察官に指示しますが、予想もしない銃撃を受けた事で腰を抜かしたのか座り込んじゃいました。
「馬鹿野郎が! 貴様らやっぱり偽者か! 痛ぇ!」
警察署内だった為か、有賀さんは拳銃を所持していないみたいで相手に掴みかかりましたが思いっきり物理障壁にぶつかって突き指しています。
「有賀! お嬢さんたちの結界だ、慌てるな!」
流石にこういう場面にも慣れているのか竹内さんは冷静です。
ただ、結界の中で撃たれた銃弾は跳ね返って撃った本人に返っているのですが、その銃弾を浴びた人は木の破片になり消えます。
「やっぱり、あれは木人兵って言いました?」
かつて同系列の人と戦った記憶が蘇って来ました。
すみません。29日は更新お休みさせていただきます。
通常は土日更新休みなのですが、29日の文章を書いている余裕が無くて間に合わないのです。
宜しくお願い致します。




