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24:秘密がばれちゃう!?



 長い夏休みをローゼスタは満喫していた。

 魔法薬クラブの良いところは、なんといっても授業の先取りができるところだ。生活快適クラブは生活に根付いた研究ができるし、その研究も自分で決められる。ローゼスタには天国みたいだ。

 両方とも実用的なのがいかにもローゼスタらしい。ここで実力をつけておけば就職には困らない、家族にも楽をさせてあげられる。ローゼスタはうきうきで薬草を乾燥させ、擂り潰した。この薬草はある程度水分を残しておかないと薬効が半減するため、魔法の調整が難しいのだ。


「……よし」


 擂り潰した薬草から粘りが出てきたところで先に作っておいた水薬の中に入れ、よくかき混ぜる。全体に馴染んだところで魔法をかければ完成だ。


「すみません、こちらにローゼはいますか?」


 魔法薬クラブの部室は日光による変化を防ぐため地下にある。授業でも使われる部屋なので本校舎内だ。


「ジェダイト、どうしたの?」

「私とローゼ宛てに、リンダから手紙よ」


 ハーツビートの使い魔が届けに来たのだという。魔法薬学室には窓がないためローゼスタの元に行けず、困っていたので翡翠が代理で受け取ったのだ。


「ありがとう。ちょっと待ってて」


 会話の最中にも混ぜる手は止めていない。何回混ぜたら効果的か数えていたのだが、ちらりと見せられた封筒にどうでもよくなった。

 翡翠は作成中なのを見てうなずくと、大人しく下がって待った。


 かき混ぜた渦が消えないうちに素早くガラス棒を抜き、魔法を唱える。渦が残っているうちというのがこの薬の胆だ。

 ビーカーが光り輝き、ぽんっと音を立てて煙を噴いた。どう見ても草の汁でしかなかった液体が薄いレモンイエローに変化している。


「よしっ、成功だわ!」


 ローゼスタの快哉に翡翠が薬を覗き込んできた。


「おめでとう。何の薬?」

「髪質を思い通りに変える薬よ。これがあれば頑固なストレートヘアのあなたも憧れのゆるふわパーマに!」


 ローゼスタの髪はブループラチナのストレートだ。色合いからはわかりにくいが、パーマをかけてもすぐに戻ってしまう頑固な髪質だった。ローゼスタの性格とそっくりである。


「パーマに憧れてたの?」


 髪質や髪形を変える魔法薬は一般に販売されている。効果が長持ちする飲み薬と、一部分だけ、あるいは一日だけのヘアオイル薬と両方あった。


「リンダを見てればそりゃあね。天然であれだもの、羨ましくなるわよ」

「……リンダ、毎朝大変そうよ。巻き毛が絡みついて櫛が通らない時もあるわ」


 寝起きのリンダを知っている翡翠は一概に賛成しがたかった。爆発したみたいに酷い髪は何度見ても驚く。櫛が通らずに力任せに梳かそうとして切れることもあった。ムキになってやるものだから、見かねた翡翠が代わったこともある。


「う、良し悪しなのね。これけっこう強力だから、リンダに分けてあげようかしら?」


 言いながらローゼスタは薬を瓶に入れ替え、器材を洗浄した。翡翠も片づけを手伝った。


「うーん? でもリンダの巻き毛も相当頑固よね。それは飲み薬?」

「これはね、必要な量だけシャンプーに垂らすの。リンスでもコンディショナーでもいいけど、匂いがいかにも草! だから、シャンプーで流してリンスで整えたほうが良いと思うわ」


 寮に戻る道すがら匂いを嗅がせてもらうと、ローゼスタの言う通り青臭い草の匂いがした。それも煮詰めたやつだ。


「草の香りがする少女……」

「確実にモテないわね」


 せめてそこは花にしてもらいたい。花にも色々あるが、草よりはましだ。


 リンダと翡翠が使っている部屋に着いてから、ローゼスタに手紙を渡した。

 魔法薬学室で渡さなかったのは、他にも生徒がいたからだ。綺麗な模様が入った封筒に、ハーツビートの紋で蝋封された手紙など、見つかったら騒ぎになるに決まっている。また誰かに嫉妬されたローゼスタがいじめられるのは避けたかった。


「お茶会の招待状だわ! 覚えていてくれたのね!」


 リンダからの手紙は時候の挨拶からはじまって、プルートとトリトの婚約にまつわる社交界の愚痴と、味噌と醤油について書かれていた。夏休み前に約束した茶会の招待状が同封されている。

 見知らぬ大人たちに囲まれた社交はよっぽどしんどかったらしい。友人との茶会を楽しみにしている旨が文面から伝わってきた。


「森でっていうのがリンダらしいわね」


 しょうがないなあ、と言いたげなローゼスタに、翡翠は説明することにした。


「ローゼのためよ。森でピクニック形式なら、そこまで畏まることないもの。ドレスじゃなくても良いでしょうし」

「え?」

「ドレスにも色々あるのよ。朝用、昼用、夜用。外出着に散策ドレス。シーンに合わせたドレスの用意できる? 公式なお茶会じゃなくて森で、というのは気づかいなの。ハーツビート家のお茶会に招かれたってだけで箔がつくわ。招かれたことのない貴族が嫉妬して、ローゼだけじゃなくてご家族になにかされる可能性だってあるのよ。浮かれる気持ちはわかるけど、社交を舐めないほうが良いわ」


 正直、リンダはそこまで考えたわけではないだろうな、と翡翠は思っている。公爵家の女主人、フライヤの指示だろう。だからこそ、ローゼスタに教えるのは翡翠の役目だ。


 この便箋と封筒だって、リンダが家族宛てに使っているのと同じものだ。夏休みに学校に残っている友人へ、という形式をとっている。そこに招待状を同封したのはローゼスタのためだ。最低限迷惑がかからないように配慮してくれていた。


「……考えたことなかったわ」


 社交の愚痴は聞いても、周囲への気配りまでは察せなかった。これはローゼスタの考えが足りないわけではなく、生活習慣になかったからだろう。住む世界が違うことを今さらながらに思い知り、招待状を持つ手が震えた。


「まあ、相手への気遣いを見せるのはスマートとは言えないものね。だからね、ローゼ。ハーツビートのお茶会に招かれた、なんて自慢はしないほうがいいわ。ご家族には学校の友達とお茶会の真似事をした、とでも説明しなさい」

「そうするわ。教えてくれてありがとう。私に貴族のコネができたなんて知られたら、それを利用しようと父さんや母さんに近づく人がいるかもしれないものね」


 さすがにローゼスタは理解が早い。リンダに他意はなくても、ローゼスタを介してハーツビートと親しくなりたいと企む者はいくらでもいるだろう。平民は立場が弱く、権力を振りかざされると抵抗できなくなる。


「そういうことよ。私もリンダも、ローゼとローゼを育てたご家族なら信頼できるけど、その友人まで判断できないもの」


 ローゼを育てた、と言った翡翠にローゼスタは頬を赤くした。ここまで熱い友情を抱いてくれたことが堪らなく嬉しい。


「……ありがと」


 念の為、一度家に帰って家族には釘を刺しておこう。ハーツビートの姫と友達になったことはすでに手紙に書いてしまった。貴族もいる学校でローゼスタがやっていけるのか心配していた家族なら言いふらしたりしないと思うが、リンダの気遣いを無駄にはできない。


 そうしてやってきた茶会当日、ローゼスタと翡翠は制服でハーツビートに移動した。学校から転移の魔法陣を使うので、ドレスでは他の生徒に見られていらぬ詮索をされてしまう。悩んだ結果、無難に制服となったのだ。


「ローゼ!!」


 ハーツビート家に着いた途端リンダが突進してきた。予想外の出来事に正面から受け止めることになったローゼスタの口から変な声が漏れた。


「ぐふぅっ」

「ローゼ、会いたかった!」

「リンダ、リンダ、ローゼがやばい」

「へ?」


 リンダのそれは気心の知れた男同士のスキンシップだ。傍目にはリンダが一方的に抱きついているが、リンダは反撃待ちである。がっぷり四つ。


「あ、ゴメン。つい」

「つい、で人にタックルするんじゃないわよ!」


 ローゼスタはついいつものノリで言ってしまってから、ここがリンダの家、つまり貴族様のお屋敷であることを思い出してハッとした。せっかく翡翠に挨拶を教わったのに台無しだ。


「まあまあ。元気なお嬢さんだこと」


 嬉しそうにフライヤが言った。リンダの友人が来ると朝からそわそわしていたのである。


「あっ。はじめまして、ローゼスタ・ラインシャフトと申します。ルーナ様とジェダイト様にはいつもお世話になっております」


 スカートをつまみ、片足を少し斜め後ろに下げて膝を曲げる。背筋は伸ばし、目線は相手の口元に固定。やってみればわかるがカーテシーは意外と難しい。バランスが悪いと背中が丸まってうつくしくないし、脚力がないと膝から崩れそうになるのだ。

 しかしピタッと決まれば非常に可愛らしい。フライヤは満足そうにうなずいた。


「リンダの祖母のフライヤです。今日はようこそ来てくれました」


 いくらフライヤでも平民の少女相手に公爵夫人の顔は見せない。あくまでもリンダの祖母として挨拶した。


「制服なんだね。私の普段着貸してあげる!」

「え!?」


 公爵令嬢の普段着がどういうものかわからず、ローゼスタはうろたえた。翡翠は別の意味でうろたえた。


「フライヤ様、今日の茶会は森ですよね。まさかアレですか?」

「まさか。制服で来ることは予想していました。ちゃんとワンピースを用意してありますよ」


 リンダの森用普段着とは、ずばりつなぎである。リンダ用は上着の裾を長くしてベルトで留め、スカートのようになっているが、下はズボンにブーツだ。ノヴァと森へ行く時はそれでもいいが、ローゼスタの茶会ドリームを壊しかねない。フライヤに笑って否定され、翡翠はほっとした。


「それじゃ、ローゼスタちゃんをお連れして。ジェダイト、あなたも着替えてらっしゃい」

「はい。ローゼ、また後でね」


 リンダのドレスルームに案内されたローゼスタは別世界にくらくらした。廊下は学校よりも広くて長いし、服を収納するためだけの部屋があるのも驚きだ。こんなお屋敷で暮らしていて、よくまあリンダも翡翠も寮の相部屋で我慢できるものである。


「リンダ、あなたって実はすごいのね」

「なにが?」

「この部屋、寮の談話室より広いんじゃない? よく寮生活に馴染めたわね」

「別に、寝られればどこでもいいし」


 どこでもいいというより、リンダはどこででも寝られる。たしかに寮の部屋は狭いが、むしろそのほうが落ち着くくらいだった。


「それよりローゼ、この服はどう?」

「エプロンドレス! 本当に着ていいの?」

「いーのいーの。こんなにいっぱいあったって、どうせちょっとしか着られないんだし」


 リンダは気にもしないが、貴族の中には一度袖を通した服を二度と着ない令嬢もいる。他人に着せるなどもってのほかだろう。

 トルソーに着せられたピンク色のエプロンドレスにローゼスタはためらった。どう見ても新品だ。


「夏休みに作ってもすぐに学校でしょ。次に帰って来た時には入らなくなってるよ」

「ええ~? リンダ、ちっとも成長してないじゃない」

「そんなことないよ? そのうちポーカリオン先生みたいなナイスバディになるんだから!」


 学校と変わらないリンダの口調にローゼスタはつられてしまった。ハッとして口を押さえる。

 メイドもローゼスタに気づいたが、緩やかに微笑んだ。ほっと力を抜く。どうやら澄まし顔だったのは、笑いを堪えていたかららしい。


 こうした場合、メイドは主人と友人の会話に口を挟まない。求められない限りは黙っているものである。たとえ友人が平民であっても無礼だと怒ることはないのだ。ましてやリンダ付きのメイドである。リンダの友人というだけで凄い、とローゼスタは思われていた。よくついていけるなと感心されていることを、ローゼスタは知らない。


 着替えを手伝ってもらうという、ローゼスタにはお姫様気分を味わった後、森へと続く庭に向かうと翡翠がすでに着替えて待っていた。こちらもエプロンドレス、髪はポニーテールにしてまとめている。


「ジェダイト! ごめんね、待った?」

「いや。ファッションショーでもしてると思ってた。早かったね」

「時間は有限なのよ! 森でのお茶会後はぜひ採取に行きたいわね!」

「それでこそローゼだわ」


 揺るぎない探求精神である。


 三人はそれぞれリンダは藍色のエプロンドレス、翡翠は黒のエプロンドレス、ローゼスタがピンクのエプロンドレスを着ていた。


「ジェダイトは黒なのね。メイド服みたい」

「メイド服は憧れでしょ」


 とは言っても翡翠は自分が着たかったわけではないのだが。男心をくすぐるアイテムであることに変わりはない。そうよね、とローゼスタも同意した。こちらは純粋な憧れだ。


「それじゃ、しゅっぱーつ!」


 リンダが箒で浮きながら号令をかけた。目的地にはすでにメイドがセッティングして待っているはずだ。

 森とはいえそこまで深くは行かない予定だ。森の奥には危険な野生動物が生息している。熊やオオカミと出くわしたら大変だ。


「それじゃあ世界樹の森には行けないのね」

「正確には、行けるかどうかわからない、ね。どこから世界樹の森なのか、ハーツビートのご当主でもわからないらしいし。ただ、すごく魔力が濃くなるから、入ったのはわかるらしいわ」

「ジェダイトは行ったことないの?」

「残念ながら。リンダが言うには森から来てくれるって話」

「不思議な森なのね……」


 ローゼスタは残念だったが、森に認められた人間しか辿り着けないのは納得した。誰にでも行けるような森では不心得な人間に荒らされてしまうだろう。

 少し開けた日当たりのいい場所にメイドたちが待っていた。敷物に食料が入ったバスケット。飲み物のボトルと、木でできたカップが並べてある。

 ふわりとリンダが降りてきた。


「お疲れ様、準備ありがとう」

「ようこそお嬢様、お待ちしておりました。ジェダイト様、ローゼスタ様もどうぞこちらに。お疲れでございましょう」


 ささっと動いたメイドによってあっという間に手を洗浄され、敷物の上に座らされた。

 新入生歓迎会の時にリンダが言っていた、自分で魔法を使う間もないというのはこれか、と実感し、至れり尽くせりのもてなしにローゼスタはもう何度目かわからない驚きに唖然とするばかりだった。これが、貴族……!


「なにから食べる? 美味しいものいっぱい作ってもらったんだ」


 リンダは実に嬉しそうだ。誰に気兼ねしなくていい茶会なんてはじめてである。

 カトラリーを使わずに食べられる軽食と菓子類。皿とカップは木製という、ちょっとしたキャンプ気分にうきうきだ。


「お茶会というよりピクニックね」

「そうだ、アレない? ケーキ乗せるやつ」


 お茶会といえば皿がツリーになったケーキスタンドだ。振り返ったリンダに、万事用意の良いメイドはもちろん持ってきているとにっこりし、バスケットから取り出すとサンドイッチや菓子を綺麗に並べた。


「すごいわ、お姫様のお茶会みたい! ありがとうございます!」


 ローゼスタははじめてみる本物に目を輝かせた。

 なぜあらかじめセットしておかなかったかだが、リンダのせいである。ケーキスタンドは銀製だ。うっかり傷でも付けられたら困るし、なによりあまり茶会に良い思い出のないリンダの気分を損なうのでは、と配慮したのだ。傷がついても魔法で直せる。

 だが、そんな心配はいらなかったようだ。リンダは自分よりも友人を優先できるようになっている。リンダの成長に、メイドたちは心の中でローゼスタに感謝を捧げた。

 三人は思い思いに手を伸ばして食べながら、夏休み前半の出来事を報告しあった。


「で、そのリヴァイってトリト姉様のお兄さん、怒って行っちゃったの。ちっちゃいよね」


 リンダの社交の愚痴はただの笑い話になっている。ローゼスタは腹を抱えてげらげら笑い、翡翠も口元を押さえた。食べている最中に危険すぎた。


「リンダに慣れてない上に善意でそんなこと言われたら怒るのも無理はないわね」

「大人げなーい。そんなんだから小物なんだよ」


 かの有名妖怪アニメにでてきたキャラに似ている。旨い話にひっかかっては主人公に助けを求める、十二支のやつ。あの男はなんだかんだ愛されていたけど、リヴァイはどうだろう。猫に引っ掻かれる程度で済めばいいが。


「そっちはどうだった?」

「あ、そうそう。これ作ったのよ、お土産」


 ローゼスタはポケットに入れておいた薬瓶を取り出した。お土産らしくリボンで飾ってある。


「へえ、髪質を変える薬か。便利そうね、ありがとう。あ、そういえばローゼの髪形変わってる?」

「もう、今さら気づいたの!?」


 ローゼスタはこの日のためにゆるふわパーマにしてきたのだ。いつ気づいてくれるかと思っていたが、土産を出すまでわからないとは。遅すぎだろう。


「あ、いや、ごめん!」


 リンダは咄嗟に謝った。嫁も美容院に行ったのに気づかないでいると怒ったものだ。怒りを鎮めるにはひたすら褒めるしかない。


「えーと、よく似合ってるよ。ふわふわで」

「見たまんまだね」

「リンダに期待した私がバカだったわ」


 翡翠が冷静にツッコミをいれる。朝一でローゼスタに自慢されていた翡翠はきちんと褒め称えていた。髪形だけでなく、魔法薬の効果にも気づいて褒めるのができる男というものだ。


「お嬢様!」


 邪魔にならないところで控えていたメイドから悲鳴が上がり、必死の形相で走ってきた。何事かと立ち上がった三人をメイドたちが背に庇う。


「ユニコーンです! お嬢様、お二人を連れてお屋敷へ急いでください!!」


 メイドたちが結界を張るより早くユニコーンが跳躍してきた。魔力をぶつけて邪魔なメイドを弾き飛ばす。

 ブルルッと鼻息も荒く蹄で土を掻くユニコーンの額には、魔力を帯びて光る立派な角が生えている。血のように赤い瞳は獲物を見定めるかのように爛々と輝いていた。

 ユニコーンはリンダ、翡翠、ローゼスタと順番に見つめると首を振り、いななきをあげた。


 ここで視点を変えてみよう。


 リンダは絶世の美少女だが中身は元ヤン、翡翠は実は男だし、ローゼスタは正真正銘少女だが顔は可愛げのあるパグだ。

 この中で生粋の女であるローゼスタは、ユニコーンが何と言ったのか本能的に理解した。そして、ユニコーンが好むのは清らかな乙女であることを知っていた。


『なんでえ、ハズレばっかかよ!』


 普段は気にしないようにしていても、顔の美醜はローゼスタのコンプレックスだった。リンダと翡翠に挟まれているのだから尚更だ。

 二人がローゼスタの顔について何も言わず、また引き立て役にしようなんて微塵も考えていないから気にしないでいられるのだ。


「誰がハズレだこの馬野郎!!」


 一瞬で沸騰したローゼスタは全力で魔法を放った。魔法生物を殺してはまずいので結界を球体にしてそれをぶつける。結界は攻撃魔法じゃないからセーフ、死んでも事故。ローゼスタもだいぶリンダに染まってきた。


 なにより許せないのはリンダと翡翠までハズレ扱いされたことだ。この二人がブス判定なら自分はゴブリンかオーガである。許せたものではなかった。


 ローゼスタに反撃されたユニコーンは弾き飛ばされた勢いのまま木にぶつかって止まった。怒りに燃える赤い瞳がローゼスタを映している。白い体躯から、まるで高温の炎のように魔力が揺らめいていた。




ユニコーンって、好みがうるさそうですよね。私が知ってるユニコーンは顔が良くて浮気を許してくれてトイレにもいかずセクハラも笑って許す美少女、という無茶ぶりかましたあげく赤ちゃんの膝で眠りについてました。

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― 新着の感想 ―
[一言] リンダの目標はナイスバディですか。益々中身とのギャップが凄くなりそうですね。 ゴーストを掃除する漫画のですか。 ユニコーンがただの害獣って解釈にびっくりしたなあ。
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