EX1 ギルドマスターの腹黒計画?
~ギルドマスター side~
今日も今日とて慣れない事務作業をして、小山のような書類の束を減らす事にする。
そんなとき下が騒がしくなった。たまにあることだからほっといたが、騒ぎがどんどん大きくなる。
「おい、何事だ?」
部屋の前を通ったギルド職員に聞いてみる。
「なんでもウォーベアが退治されて持ち込まれたそうです」
話を聞いた職員も下に見に行くそうだ。
ウォーベアはあまりこちらには持ち込まれないが、たまには冒険者ギルドには持ち込まれる。だから何をそんなに騒ぐのか分からないが、少し様子を見に行くか。
そう思い見に行く途中でさらに騒ぎが大きくなる。
それに叫ぶ奴らも増えた。
耳を済ますとアサシンベアとかなんとか聞こえる。
もしやアサシンベアによって犠牲者が出たのか!?
少し焦りながら騒ぎの場所へ行く。
「どうした! なんの騒ぎだ!」
情報を知るために少し怒鳴りながら解体所へ入っていく。
「ギルドマスター! アサシンベアが討伐されました!」
職員の声にホントかよと思いながら熊を見てみると…
「ホントにアサシンベアじゃねぇか…」
アサシンベア、こいつはかなり厄介な魔物だ。
ウォーベアが進化したとも言われており、戦闘力よりも隠密力が高く、下手すりゃAランク冒険者パーティーも壊滅するときがある。
そんな魔物を誰が倒したんだ?
「あそこにいる狩人が倒したそうで、しかも南方面から出てきたみたいです」
なに!? 南側からだと? これは詳しい話を聞かないとな。
「おまえがこれを殺ったのか? ならちょいとおれの部屋に来てくれや」
少し焦ってるせいかぶっきらぼうに言ってしまったが、大人しく着いてくるので安心した。
そして部屋に戻り今度は意図的に威圧しながら再度聞く。
「おまえがあの熊を殺ったのか?」
そう聞くと、そうだと返ってきた。
ほう、おれの威圧を受けてすぐに返事を返すとは、こりゃ嘘じゃなさそうだな。
「そうか…アサシンベアが南側から出たと聞いたがホントか?」
すると本当だという返事が返ってきた。
マジか…こりゃあれが原因かもしれんな。
少し前に若い中堅冒険者が東の森に挑戦して返り討ちに合い、逃げに逃げて南側に行ってしまったと冒険者ギルドから報告が来た。
その時に狩人ギルド内にも、強力な魔物が南側に移動したかもしれないと注意喚起をした。
その後からか、今までなかったような不自然な獣の死骸があったと数件報告が上がってきた。
それでなんの魔物か分からないが、東の森から移動したのは確定だろうと発表して、注意喚起をさらに促した。
だがまあこいつが倒したアサシンベアが原因だろうなと、直感が働く。
さらに、アサシンベアを倒したこの男にもある種の直感が働く。
「アサシンベアは簡単に倒せる魔物じゃねぇが、よく倒せたな?」
どうやって倒したか、こいつの腕がどのくらいか聞いたが対した反応は返ってこなかった。
まあ倒し方は見りゃ分かる。
首を一刀両断だ。それもあり得ないほどの綺麗な切り口だ。
こんな化け物みたいな芸当が出来る奴は、この狩人ギルドにはいない。
冒険者ギルドにも2~3人くらいしかいないだろう。
それに聞いてみるとソロだとか。
どれ程の技量があるんだと背筋が震えた。
さらにいうとこの男は剣らしい物を持っていない。
一体どこに持ってやがる? アイテムボックス持ちなのか?
腰につけてる袋は違うだろうな。あんな形のは見たことないからな。
アイテムボックス持ちとなりゃ、ますます怖くなってきやがる。
ここまでの男じゃなければ脅してでも、このギルドに縛り付けたかもしれない。
だがこの男は敵にも味方にもしない方がいいと直感が働いた。
友好的にし、あとは監視しといて何かの際に依頼を出すことにしようと決めた。
「とりあえずアサシンベアを討伐したものと犠牲者が出る前に倒してくれた礼も兼ねて、素材も合わせて金貨10枚を支払おう」
狩人が犠牲にならずに済んだことから、少し上乗せした金額を提示してやる。
だが目の前の男の顔は変わらず、それで良いと言う。
大したものだ。金貨10枚程度では動揺しないのか。
ますます敵にしてはいけない相手だな。
金を受け取るように促すと部屋から退出していった。
「ふぅ…何者なんだあいつは? おい、あいつは誰だ?」
近くにいた職員に奴の事を調べさせた。
するとなんと今日登録したとの事。
顔が驚愕に染まるが更にあり得ないことを伝えられる。
「バカな!?」
なんと奴のステータスはそこらの一般人並だと言う。
それこそあり得ないだろう!
「あり得ない! ならなんであいつはアサシンベアなんて凶悪な魔物を倒せたんだ!?」
つい怒鳴ってしまい職員がビビりまくる顔を見て、少し冷静になった。
この職員に罪はない。それにステータスを調べたやつも、まさか虚偽なんかしないだろう。
う~む… これは色々調べさせるか。そしてこのギルドの役に立つように便箋でも図ってやるか。
それくらいはしないと他に行かれたら、あれほどの人材は中々居ないからな。
そう思い色々と考えを巡らせながら、今日1日を過ごす事になる。
だが明日にも王都を出ていき、それらが無駄になることは、まだこの時は知らなかった。