威風堂々とそびえ立つ山が二つ……。
鐘の音が聞こえる。
今は、丁度六時……。
俺とサクヤは、大きなリュックを背負い、つるはしを片手に持つ。
「ジャショウ。鉱石も取るんですか?」
「ん?一応な……」
「だったら、アヤの実も取るんよ!」
「そうね。お婆ちゃん達が喜ぶわ♪」
商店街から貰ったリクエスト。
今回どれだけ、こなす事が出来るだろうか?
大八車も借りる事にしよ……。
ビックボアは、下処理だけすれば良いと言っていたし……。
目標は、二体。
ビックボアは、番いで行動するらしい。
一回見つければ、問題ない。
猪同様、夜行性かと聞けば、そうでも無いらしい。
早朝、活発に行動する様だ。
瘴気と、世界樹の霊気の境界線……。
塩の実を探そう。
先ずは、サシャに会って……。
「二人とも乗ったか?」
大八車に乗った二人を、確認する。
冒険者の足で、一時間……。
俺の足なら……。
門前に立っていたアリスに、挨拶をする。
そこから、急発進!
風の様に駆け、森へと一直線にひた走った。
「姉やん!姉や~ん!」
湖の前……。
サクヤの声が木霊する。
前と同じ光景……。
ただ、違う事が在るとすれば、動物達が居ると言う事だ。
俺達が来たことにも怯える事なく、水辺で横たわっている。
これも、錬気をコントロールで来る様になったお蔭か……。
しかし、無抵抗の動物を狩る気にはなれない……。
俺も、水辺で、腰を下ろす。
しばらくすると水面に、気泡が立ち昇る。
金色の髪……。
「サクヤちゃん!」
サシャが、文字通り、飛び出してきた。
「来たんよ♪」
「あらあら♪」
二人は、抱擁を交わし、談笑し始める。
「そんでなあ……。洋服を買ったんよ♪」
サクヤが、水辺で、くるりと回る。
サシャは、愛おしそうにそれを見詰めている。
やっぱ此処は、落ち着く……。
「それで、今日は何をしに?」
サシャが、笑いかける。
やっぱ……。ドキッとしてしまう。
「あ、ああ。ビックボアを狩ろうと思ってな」
「ジャショウさん。素敵ですよ?」
「え!?あ、ははは……。どおも」
一瞬何の事かと思ったが、服をほめてくれたらしい……。
俺は、恥ずかしさのあまり、頬を染める。
「ビックボア……。ここには近づけないんですけど……。この子達が……」
サシャはそう言うと、動物達の方に目を向ける。
よく見ると、傷ついた動物達……。
「最近、この近くの境界線を根城にしている子が……」
サシャの、悲しそうな瞳……。
不意に、一匹の牡鹿が、立ち上がる。
立派な体躯……。
真っ白な毛並み……。
しかしその片目は、傷つき、大きな跡を残している。
俺の方を向いている。
じっと見つめた瞳からは、
「ついて来いと、言っているのか?」
俺も、ゆっくりと立ち上がる。
「シャル姉とサクヤは、木の実を集めていてくれ!」
俺の言葉に、二人は振り向く。
俺は今、躍動する鼓動に突き動かされている。
この鹿の指し示す先には……。
「一緒じゃないん?」
「まあ、適材適者だ。早く帰ってやらないと、キリカが大変だろう?」
「そうなんよ!」
「そうね。手分けするのも、いい案ですね」
二人は頷き、俺は、牡鹿の後を追う。
風のように走る姿……。
躍動する筋肉……。
何かコイツ……。リョウカより神獣みたいだな……。
そう言えば今回、リョウカに会ってはいない。
どうでも良いが……。
索敵と気配察知を同時に行う。
ああ、こうして見ると、森の脈動が感じられる。
疾走する俺の周りに、動物達が居る。
駆け抜ける……。
牡鹿の足が止まる。
ああ、分かる……。
大きな気配……。
敵意持った気配……。
そいつらが居たんだ……。
牡鹿を見据え、威風堂々とそびえ立つ山が二つ……。




