二人の起こす、小さな奇跡
「良い買い物が出来たな?」
「いっぱい買ったんよ♪」
「ザグメさん達、優しかったですね♪」
俺達は、買った服を身に纏い、仲良く歩いている。
二人は、外套も身に纏い、俺とお揃いだからと、脱ごうとしない。
俺は苦笑交じりで、二人の手を引く。
周りの人達も、そんな俺達を、微笑ましそうに見ている。
何か照れ臭い……。
その後も順調に、依頼をこなしている。
頼まれた手紙も届け、いろんな人達と親交を深めた。
靴屋さんに行って、革のブーツをお揃いで買い。オマケまでしてもらった。
武器屋に行っては、ナイフを買って、一本マケテもらい、お茶までご馳走してもらったりした。
その都度、談笑して、お礼を言って……。
それで今、果物屋さんに居る。
「こりゃまた、可愛いお客さんで……」
気さくなお爺さんが、俺達を迎えてくれる。
「お使いかい?」
「冒険者のお仕事なんよ♪」
サクヤが、手紙を渡す。
これで、手紙は最後……。
ギルドの方の仕事も終わったし、後は帰るだけだ。
「そうか、そうか。何々……?」
「あんた!どうしたんだい?」
奥から声が聞こえる。
「婆さんや。小さな冒険者さんが、来てくれた」
「ほうかほうか!よっと……。痛たたた」
「婆さん。寝てなきゃならんよ」
腰を押さえ、老婆が顔を出す。
「どこの冒険者さんだい?」
「キリカちゃんの処じゃ」
「ほうか、ほうか!」
這いつくばって、こっちに来る。
「お婆ちゃん、どっか痛いん?」
見かねたサクヤが、老婆の背中を摩る。
それに習って、シャルも、老婆の背中を撫でてやる。
「ほんに、めんこい冒険者じゃ!ありがとなあ……」
「婆さんは今、腰と膝を悪くしていてのう」
「爺さん、良いんだよ!そんな事より、アヤの実があっただろう?」
「そうじゃ、そうじゃ!」
そう言って、熟したアヤの実を、俺達に手渡してくれた。
「良いんですか?」
「良い良い!歩き回って疲れたじゃろう?それ食って、休みなされ」
本当、良い人ばかりだ……。
サクヤが、アヤの実を見て、黙り込んでいる。
「お嬢ちゃん。アヤの実は嫌いだったかい?」
お爺さんの問いかけに、サクヤは首を横に振る。
「ここに来て、色んな人から、いっぱい貰ったんよ!お爺ちゃん達のアヤの実も嬉しいんよ!」
「ほうか、ほうか」
サクヤは、真剣な顔で、老婆を見る。
「いっぱい貰たから、いっぱい返したいんよ」
サクヤは、俺とシャルの顔を見る。
サクヤは……。
ずっと一人だった……。
俺から、アヤの実を貰った時も……。
「お婆ちゃん。うつ伏せに寝て欲しいんよ!」
「うつ伏せにかい?」
何のことか分からず、首を傾げる老婆。
しかし、シャルは、何かに気付いたのか、サクヤを見て頷く。
「お婆ちゃん。膝はどちらが悪いんですか?」
「右足がねえ……」
うつ伏せに寝た老婆に、二人は手を当てる。
青白い、暖かな光……。
老婆の、腰と膝を照らす。
「おお……。気持ちがええのう……」
「お前さん方……」
「大丈夫です。癒しの魔法です」
心配する爺さんに、俺は優しく答える。
光は、強く、優しく……。
数分が過ぎる……。
光が治まり、シャルとサクヤが、顔を見合わせた。
「お婆ちゃん!ゆっくり立つんよ!」
「慌てないで、ゆっくりね」
二人に促され、老婆がゆっくりと立ち上がる。
「おお、おお!歩ける!歩けるよ、爺さん!」
「おお!婆さん!前より元気に!」
「痛く無いんじゃ!腰も、膝も!それどころか、肩までも!」
老人二人は、抱き合って喜んでいる。
本当、二人は良い子の育った!
俺は、二人の頭を撫で、二人は、照れ臭そうに笑う。
「でも、あまり無茶しちゃいかんよ?」
「炎症を沈めて、筋肉をほぐしたんです。まだ、完璧じゃ無いですから……」
「女神様じゃあ……」
「ありがたや、ありがたや……」
ちょっ!?
拝まないで!!
周りの人が見てるって!
俺達は、老人達をなだめ、落ち着かせる。
「魔法なんよ♪」
「魔法……。こんな効き目のある魔法なんてなあ……。婆さん」
「ええ、本当に……。上流階級の者しか、受けられんて……」
「ここに来るまで、色んな人が、お婆さんの事、心配していましたよ?」
「みんな、良くしてくれたんよ♪お婆ちゃん達も、アヤの実くれたんよ♪」
「みんなに恩返しが、少しでも出来たのなら……」
「お前さん方……」
今度は、泣き出した!?
「婆さんや……」
「ええ、爺さん。キリカちゃんは、ほんに、良い冒険者に出会えたのう……」
お婆さんに抱きしめられたサクヤは、照れ臭そうに笑い、顔を埋めていた。




