ガルガト呉服店②
「着たんだが……」
俺は、試着室を後にし、着心地を確かめる。
動きやすい!
ジャストフィットだ!
ゆったりとした着心地……。
「ジャショウ!かっこいいんよ!」
「本当。良く似合っているわ♪」
二人から、お褒めの言葉を頂き、至極恐縮です……。
俺も、かなり、嬉しい……。
しかし、黒一色で統治された姿は、何か中二心をくすぐられる。
「どうじゃ?着心地は……」
ガルガトが、にやりと笑う。
「ああ、ぴったりだ!」
「そうだろう。体に合わせて、伸縮する魔法がかけられている。その一着が有れば、服屋いらずだ!がはは!」
「服屋いらずって……」
「他に感想は無いか?」
他にって……。
あれ、夏場なのに熱くない!?
俺は、ガルガトの方を見る。
「気付いたか!耐熱耐寒の魔法がかけられているんじゃ!灼熱の砂漠も、極寒の氷の大地でも活動できる!その上、耐久性も上げてあるんじゃ!」
何それ、コワイ……。
「ね、値段って……」
「非売品じゃ!」
俺は、慌てて服を脱ごうとする。
「もう、それは、お主の物じゃ!伸縮の魔法が、お前に合わせるようになっておる」
「で、でも……」
「ふん!近頃の冒険者は、なっておらん!だから、誰にも売る気は無かったんだが……」
「お義父さん。ジャショウちゃんの事、気に入ったのよねぇ」
「ふ、ふん!少しは、まともだと思ただけじゃわい!」
照れた様に、横を向くガルガト。
俺は嬉しくなって、ガルガトの手を取る。
「俺、もっと毛皮を獲って来てやる!」
「今度は、肉ごと持ってこい!血抜きだけやっておけば、後は儂がやる!まだまだ、毛皮を剥ぐには、未熟じゃ!」
憎まれ口をたたいているが、照れ臭そうに笑っている。
そんな俺達を、ザグメはコロコロと笑いながら、見詰めていた。
「子供が居ると、こんな感じなんですかねえ。お義父さん」
「忙しない、子供じゃ!」
「まあまあ♪」
「そんな事より、あの外套、まだ二つあるじゃろう?」
「はいはい♪シャルちゃんとサクヤちゃんの分ですね♪」
「アタイらも、ジャショウとお揃い?」
「私達にまで……」
「良いんじゃ!まあ、女子に黒とは、どうかと思うがな……」
「ジャショウとお揃い♪」
「嬉しいです♪」
「ふ、ふん!まあ、他の服も見ていけ。冒険用だけじゃなくって、街を歩く物もな。女子なんだから、可愛い服も必要じゃろう?」
この爺さん……。
ツンデレだ!
耳まで、真っ赤にして……。
「私、娘が居たらこうやって一緒に、服選びがしたかったんですよ♪」
ザグメさんが笑う。
母親か……。
俺達にとって、縁遠き者だな……。
でも、何か良い……。
三人の、笑い声を聞いて、目を細める。
「爺さん……。母親って言うのは、あんな感じなのかな?」
「何じゃ?親が恋しくなったか?」
「いや……。俺達に、親と呼べる人は居なかったから……」
「ふん……。何時でも、遊びに来い!あいつらも喜ぶ……」
「うん……」
ガルガトの手が、俺の頭に乗る。
悪く無いな……。こう言うの……。
俺は、ガルガトの顔を横目で見ながら、小さく笑った。




