表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
89/1794

おっさん達のお使い

「しっかし、あそこには、嫌な冒険者がいなかったか?」

 おっさん達にもみくちゃにされた後、談笑していた俺達に、おっさんが聞く。

「?ああ、あの馬鹿三人?」

 俺は小首を傾げた後、昨日の事を思い出し、手を叩く。

「馬鹿三人……。確かに違いねえ!」

 おっさん達は、爆笑する。

「で、その馬鹿三人は……?」

「ジャショウが、ぶっ飛ばしたんよ♪」

「はい♪つけを払わして、追い出しました。全部じゃないですけど……」

「ぶっ飛ばした……」

 おっさん達は、目を見開いて、俺を見る。

 俺は、頬を掻き、苦笑する。

「てへ♪やっちゃった♪」

 静寂……。

 次の瞬間、爆笑が起こる。

「やっちゃったっておめえ!」

「あんなんでも、中堅だろう?」

「てことはもう、居座っていないって事か?」

「がははは。これほど、スカッとする事はねえ!」

「子供に、やられたか!あの馬鹿ども!」

 笑い、口々にあの三人を罵る。

 は~。周りからも、うけが悪かったのか、あいつら……。

 駄目駄目だな……。

 仕事はしない。

 街の人からも、嫌われている……。

 せめてもの救いは、キリカの評判を落としていないと言う事か……。

「てことは、久しぶりに、キリカちゃんの飯が食える!?」

「おお!」

「でも、戻って来るんじゃ……」

「?夜は、俺もいるぞ?」

「ぷっ!また来たら、追い出すってか!?」

「そいつは、見ものだ!」

「「がははは」」

 男達に背を叩かれる。

 悪い気はしない……。

 シャルとサクヤは、自分の事の様に喜んでいる。

 俺は照れながら、また頬を掻く。

 うん……。

 悪い気はしない……。

「坊主達!お使いを頼まれてくれねえか?」

 おっさんが、紙を手渡す。

 俺は首を傾げ、紙を見る。

「さっきのお代の代わりって訳じゃ何だがな。家は商店街にある、服屋なんだが……」

 少しばつの悪そうな、おっさん。

 けど、肉屋じゃ無いのか?

「服屋?」

「ああ、獣を狩って、肉は俺が売る。毛皮は加工して、商店街で売るって言う算段さ」

 なるほど、獣の解体もしていると。

 俺は頷く。

 それと同時に、

「なあ、毛皮って売れるか?」

 俺は、背中に背負っていた毛皮を取り出す。

 勿論、魔獣のは無い。

 魔獣の毛皮は、ギルドの金庫に預けてある。

 あんなの、持ち歩いてたら、問題になってしまうし……。

「どれ?」

 一同の注目が、毛皮に向く。

 ビックボアの毛皮……。

 二体分あるんだが、しっかりなめしてある。

「ぼ、坊主……。本当に、狩ったんだな。しかも……」

「デカいな……」

「すげえな、これ……」

「おいおい!」

 歓声が漏れる。

「売れるかだって……?しっかりなめしもしてあって、こっちから頼みたいぐらいだ!」

 おっさんは、俺から、さっき渡した紙をひったくると、何やら書きだした。

 ああ、手紙だったんだ。

 その間も、周りの者達は、ビックボアの毛皮を手に取り、唸っている。

 傷が殆んど無いとか、サイズがデカいとか、どうやって倒したのかとか……。

 その都度、シャルがジェスチャーを入れて、解説している。

 なんだか、恥ずかしい……。

「そう言えば、今日キリカちゃんが持ってきた、オーガの角って……」

 一人の男が、声を上げる。

 さっき、ポーションをくれた人だ。

「ああ、三十一本?」

「そうそう!」

「アタイ達が、倒したんよ♪」

「はい。なるべく、角に傷をつけないようにしたんですけど……」

 サクヤとシャルが、答える。

 サクヤは、胸を張って……。

 シャルは、どこか、気恥ずかしそうに。

「ああ!ありゃあ、最高の素材だ!」

「オーガって……」

「三十一本!?」

 周りが、また、どよめきだつ。

 いかん、収拾がつかない……。

 けれど、そんな時、おっさんが帰って来た。

「おう。待たせたな!これを見せれば、家の奴が、買い取ってくれるはずだ!」

「どうも」

 俺は、深くお辞儀をする。

「がはは。強いうえに、謙遜的な奴だな!」

「わざわざ、俺達の為に……」

「おっと!それだけじゃないさ。今日は、キリカちゃんの手料理を食べに行くって言う、言付けさ!」

「おっ!?大将ずりいな~。それなら俺も!」

「ああ!俺も!」

 次々に、手紙が渡されてくる。

 手紙の表には、簡単な地図や、店の名前が書かれており、分かりやすい。

「みんな、商店街の仲間さ!家の連中には、お前達の事が書いてある!」

「ああ、これからも宜しくな!」

 よろしく頼むって……。

 こちらこそ……。

 俺は嬉しさのあまり、もう一度、深々と頭を下げる。

 それに習って、シャルとサクヤも頭を下げる。

 手紙のあて先は、ほとんど、今回の依頼で行くところだ。

 探し回る必要が無い。

 俺は、手紙は懐にしまい、サクヤの手を引く。

 サクヤは、何度も振り向きながら、おっさん達に手を振っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ