おっさん達のお使い
「しっかし、あそこには、嫌な冒険者がいなかったか?」
おっさん達にもみくちゃにされた後、談笑していた俺達に、おっさんが聞く。
「?ああ、あの馬鹿三人?」
俺は小首を傾げた後、昨日の事を思い出し、手を叩く。
「馬鹿三人……。確かに違いねえ!」
おっさん達は、爆笑する。
「で、その馬鹿三人は……?」
「ジャショウが、ぶっ飛ばしたんよ♪」
「はい♪つけを払わして、追い出しました。全部じゃないですけど……」
「ぶっ飛ばした……」
おっさん達は、目を見開いて、俺を見る。
俺は、頬を掻き、苦笑する。
「てへ♪やっちゃった♪」
静寂……。
次の瞬間、爆笑が起こる。
「やっちゃったっておめえ!」
「あんなんでも、中堅だろう?」
「てことはもう、居座っていないって事か?」
「がははは。これほど、スカッとする事はねえ!」
「子供に、やられたか!あの馬鹿ども!」
笑い、口々にあの三人を罵る。
は~。周りからも、うけが悪かったのか、あいつら……。
駄目駄目だな……。
仕事はしない。
街の人からも、嫌われている……。
せめてもの救いは、キリカの評判を落としていないと言う事か……。
「てことは、久しぶりに、キリカちゃんの飯が食える!?」
「おお!」
「でも、戻って来るんじゃ……」
「?夜は、俺もいるぞ?」
「ぷっ!また来たら、追い出すってか!?」
「そいつは、見ものだ!」
「「がははは」」
男達に背を叩かれる。
悪い気はしない……。
シャルとサクヤは、自分の事の様に喜んでいる。
俺は照れながら、また頬を掻く。
うん……。
悪い気はしない……。
「坊主達!お使いを頼まれてくれねえか?」
おっさんが、紙を手渡す。
俺は首を傾げ、紙を見る。
「さっきのお代の代わりって訳じゃ何だがな。家は商店街にある、服屋なんだが……」
少しばつの悪そうな、おっさん。
けど、肉屋じゃ無いのか?
「服屋?」
「ああ、獣を狩って、肉は俺が売る。毛皮は加工して、商店街で売るって言う算段さ」
なるほど、獣の解体もしていると。
俺は頷く。
それと同時に、
「なあ、毛皮って売れるか?」
俺は、背中に背負っていた毛皮を取り出す。
勿論、魔獣のは無い。
魔獣の毛皮は、ギルドの金庫に預けてある。
あんなの、持ち歩いてたら、問題になってしまうし……。
「どれ?」
一同の注目が、毛皮に向く。
ビックボアの毛皮……。
二体分あるんだが、しっかりなめしてある。
「ぼ、坊主……。本当に、狩ったんだな。しかも……」
「デカいな……」
「すげえな、これ……」
「おいおい!」
歓声が漏れる。
「売れるかだって……?しっかりなめしもしてあって、こっちから頼みたいぐらいだ!」
おっさんは、俺から、さっき渡した紙をひったくると、何やら書きだした。
ああ、手紙だったんだ。
その間も、周りの者達は、ビックボアの毛皮を手に取り、唸っている。
傷が殆んど無いとか、サイズがデカいとか、どうやって倒したのかとか……。
その都度、シャルがジェスチャーを入れて、解説している。
なんだか、恥ずかしい……。
「そう言えば、今日キリカちゃんが持ってきた、オーガの角って……」
一人の男が、声を上げる。
さっき、ポーションをくれた人だ。
「ああ、三十一本?」
「そうそう!」
「アタイ達が、倒したんよ♪」
「はい。なるべく、角に傷をつけないようにしたんですけど……」
サクヤとシャルが、答える。
サクヤは、胸を張って……。
シャルは、どこか、気恥ずかしそうに。
「ああ!ありゃあ、最高の素材だ!」
「オーガって……」
「三十一本!?」
周りが、また、どよめきだつ。
いかん、収拾がつかない……。
けれど、そんな時、おっさんが帰って来た。
「おう。待たせたな!これを見せれば、家の奴が、買い取ってくれるはずだ!」
「どうも」
俺は、深くお辞儀をする。
「がはは。強いうえに、謙遜的な奴だな!」
「わざわざ、俺達の為に……」
「おっと!それだけじゃないさ。今日は、キリカちゃんの手料理を食べに行くって言う、言付けさ!」
「おっ!?大将ずりいな~。それなら俺も!」
「ああ!俺も!」
次々に、手紙が渡されてくる。
手紙の表には、簡単な地図や、店の名前が書かれており、分かりやすい。
「みんな、商店街の仲間さ!家の連中には、お前達の事が書いてある!」
「ああ、これからも宜しくな!」
よろしく頼むって……。
こちらこそ……。
俺は嬉しさのあまり、もう一度、深々と頭を下げる。
それに習って、シャルとサクヤも頭を下げる。
手紙のあて先は、ほとんど、今回の依頼で行くところだ。
探し回る必要が無い。
俺は、手紙は懐にしまい、サクヤの手を引く。
サクヤは、何度も振り向きながら、おっさん達に手を振っていた。




