表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
スターリーの街角で
82/1794

狐とタヌキの化かし合い

 さてと、無事城門もくぐり、スターリーの街に来たわけだが……。

 夕暮れ時だと言うのに、凄い賑わいだ。

「人が沢山居るんよ!」

 サクヤと俺は、まるでお上りさんの様に、辺りを見回してばかりで、圧倒されてしまう。

 人に、エルフに、獣人に……。

 兎に角、人、人、人!

 ヘンテコなアイテムを売る露店。

 香ばしい匂いをまき散らす露店。

 見るもの全てが、初めての物ばかり……。

 俺ははぐれない様、サクラに手を握る。

 さて、まずは……。

 アリスが言うには、住民登録が必要らしい。

 てっきり、冒険者ギルドに入ればいいのだと思っていたが、住民登録とは、別らしい。

 久々に、異世界転生のススメが役に立つかと思えば、また空振り……。

 やっぱ、役に立たん!

 まあ、その住民登録も、役所が締まっているから、明日以降になるのだが……。

「もうすぐ、私の登録したギルドが見えます」

 シャルが、俺の肩に乗り、ナビゲートをする。

 そう、今俺達は、ギルド・子羊の嘶き亭に行くところだ。

 むかつく冒険者を殴るた……。おっと、ゲフンゲフン!

 そこのギルドマスターが、シャルの事を心配してるとの事だからだ。

 ギルドマスターは、良い人らしい……。

 シャルも、ギルドマスターの事は、良く話してくれる。

 歳は、一七歳。女。スリーサイズは……。

 兎に角、少々引っ込み思案の性格らしいが、とても優しい人らしい。

 しかし、ギルドに近づくにつれ、シャルの顔がうかなくなる……。

「シャル姉……?」

「えっ!?ううん。大丈夫!」

 シャルは、必死に笑顔を作り、前に行こうとする。

 そんなシャルを、サクヤは、優しく抱きしめた。

「大丈夫なんよ♪」

「う……ん」

 俺は、二人の頭を撫で、ギルドの扉を開く。

 一瞬の静寂……。

 酒を煽った三人の男が、値踏みをする様に、こちらを窺っている。

 俺は、そんな男達を無視し、カウンターに進む。

「シャルちゃん!」

 カウンター越しに、女性の声が聞こえてくる。

 紫がかった髪。

 若干、気弱そうな瞳を潤ませ、少女が飛び出してくる。

「無事だったのね……。御免なさい!私が弱いばっかりに……」

「キリカさん……」

 シャルの目が潤む。

「はっ!口先だけの弱小フェアリーが!ようやく俺のモノになる気になったか?」

 下種な笑い声……。

 俺は、闘気を立ち上らせる。

「何だ?その小汚えガキは?妖魔が倒せなくって、ガキのお守か?」

「年はいかねえが、結構可愛いですぜ?兄貴」

 ハイ終了……。

 俺は満面の笑みで近づく。

「何だ?酌でもしてくれるってのかよ?」

 下種な笑み……。

 次の瞬間、

ドゴッ!

 俺は、男の頭を抑え込み、テーブルに叩き付ける。

 テーブルは、真っ二つに割れ、男は鮮血と共に、失神した。

 ここだって、飲食物を扱ってんだからさあ……。

 ゴミの掃除は、しないとね♪

「て、てめぇ!!」

 いきり立とうとする馬鹿二人……。

 俺は、鋭い眼光で睨み、威圧する。

ピロリ~ン

 威圧LV7―8

 腰を抜かす男……。

 失禁しているのか?

 俺は冷笑を浮かべ、背を向ける。

「ちっ!他で飲みなおすぞ!」

 リーダー格の男が、震えた声を隠す様に、怒鳴り声で叫ぶ。

 それに習って、もう一人の男が、失神した男を担ぎ、ギルドを出ようとする。

「あ、あのう……。お勘定……」

 少女こと、ギルドマスターが、震えた声で、申し訳なさそうに手を差し出す。

「ああ?兄貴に金を払わそうと……」

 次の瞬間、俺の拳が、脇腹を貫く。

 今度は、失神させない。

 悶え苦しむ男を他所に、リーダー格の男の前に仁王立つ。

「はっ!」

 男は、金貨を投げ捨て、睨み返してくる。

「拾えよ、クソガキ……」

 まったくもって、救いようの無いクズだ。

 剣を抜こうとする男を、足払いする。

 短気は損気……。

 俺が言えた事かって?

 良いんだよ俺は……。

 地面に倒れた男の頭を踏み潰す。

ミシッ!

「拾えよ……。クズ。それに、足りないだろう?金貨一枚じゃあ」

 半ば、泡を吹きかける男は、俺の足の下から逃れようと、もがくが……。

 俺は、許さない……。

 君が泣くまで、殴るのを止めない!

 なんちゃって……。

「出せよ?お・か・ね♪」

 男は、俺の意図が分かったのか、懐にしまった財布を必死に差し出す。

「あ、あのう……」

 ギルドマスターは、青白い顔で、おろおろとしている……。

「はい♪マスターお勘定」

「は、はい……」

「どうせこいつら、今までも払っていないんだろう?この際だから、全部清算して♪」

「あ、えっと……。それじゃあ、少し足りません……」

 あっ!この子、結構、チャッカリしてるな。

 一応、未払い分の金額、残しているんだ。

「じゃあ、今回は、有り金全部で良いんじゃない?」

 俺は、笑顔でそう答え、汚物を外に投げ捨てる。

 もっと、嬲ってやりたいんだがな……。

 後ろを振り向くと、シャルとサクヤがガッツポーズをしている……。

 まあ、逆恨みで、この子達に危害が及ばない様に注意しないとな……。

 殺してしまえば楽なのに……。

 俺は、黒い笑みを浮かべ、ギルドマスターの処へ行く。

 まあ、ギルドマスターには……。

「爺さん……。人が悪いな」

 俺は、奥のテーブルに腰かけている老人に、声をかける。

「何がかな?」

 とぼけた声で、答える老人……。

 けど、さっき、男達の視線がギルドマスターに向いた一瞬……。

「あんたは、一瞬殺気を放った……」

「ほう……」

 この爺さん出来る……。

 物腰は柔らかい。

 けど、一部の隙が無い……。

「そう言うお主は、荒事が好きなのかい?」

 柔和な笑みを湛えている……。

 けれど何だ?この、言い様の無い高揚感は?

 あの、銀狼と対峙した時の様な……。

 俺は、高鳴る鼓動を沈め、笑みを返す。

「いんや。面倒ごとは御免だ」

「ふぉふぉふぉ……。儂も同じじゃよ」

「の割に、ギルマスの事、甲斐甲斐しく見守ってるじゃないか」

「まあ、娘みたいな者じゃからな」

「孫の間違いじゃないの?」

「ふぉふぉふぉ……」

「借金取りぐらい、手伝ってやれよ……」

「それは、ギルマスの力量じゃよ。キリカちゃんがやらんといけない事じゃ」

 爺のウインク……。

 全然、可愛くねえ……。

 狐とタヌキの化かし合い……。

 傍から見れば、そう見えたかもしれない。

 シャルとサクヤは首を傾げ、ギルマスことキリカは、オロオロするばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ