戦歴……。
「これは……」
薄目で、モニターを見、唸るマルス。
「オーガにトロル……。それに……」
アリスは、モニターの最後を指さす。
「シャルさんが所属するギルドは……」
「子羊の嘶き亭です」
「そうですか……。あそこは、冒険者が三人しかおりません。森の奥に行くのも、規制が有る訳では無いですね……。しかし」
「はい……。魔獣ギルバード……」
二人が、俺を見る。
魔獣?
俺は首を傾げ、はたと気付く。
「あ~。もしかしてこれ?」
背中に背負った、毛皮……。
二人は、凝視する。
「困りましたね……」
「はい……」
何か、やばい奴を狩ったのか?
俺は、冷や汗をたらし、乾いた笑いを零す。
「あ~。狩っちゃまずかった?」
「いえ、実は、国が討伐隊を結成していまして……」
「しかも、二個師団ですよ!二個師団!」
アリスさん……。顔が近い。
「えっと……」
口ごもるマルス。
「お名前は……?」
そう言えば、名乗ってもいなかった……。
「ジャショウ……」
俺は、頬を掻きつつ、ぼそっと呟く。
名乗りもしないで、何やってんだ俺……。
我ながら、強引だった……。
シャルとサクヤが、心配そうに俺の方を見ている。
……。
逃げるか?
「ジャショウ君!」
俺の考えている事が分かったのか、アリスが、行く手を阻む。
「あ~。アリスさん……?」
「ジャショウさん、逃げても解決しませんよ?」
マルスさんまで……。
「すでに、ギルドカードに記録されていますから……。どこに行っても一緒です」
「そうですよ、ジャショウ君!」
「で、俺達どうなるの?」
「この事は、国王の耳に、入れなくてはなりません……」
「転生者って言う事は……?」
「その事は……。せめて、国王だけには……」
「やっぱり……」
「しかし、ここの処、上も、きな臭くなっていますから……」
「そうですね!ジャショウ君達が、利用されない様にしないと!」
「ええ。幸い私は、国王と直接、面会する機会がありますから……」
「そうなんですよ!兵長、その功労が認められて、謁見させて頂くんですよね♪」
「はい。全ては、皆さまの勤労有っての事です」
「またまた、謙遜を~」
は~。マルスって、結構すごいんだな。
けど、きな臭いって……。
利用されるってどういう事……?
「宰相は?」
「幸い、外交で、隣国に行っています!」
「そうですか……」
「ちょっと待て!利用されるって?その宰相と関係あるのか?」
二人は顔を見合わせ、深いため息をつく。
「ジャショウさんは、心配しなくて大丈夫です。うまく立ち回りますよ」
「そっ!家の兵長に任せれば、万事OKってね♪」
「アリスさん……」
「す、すいません!」
「兎に角。万事お任せください。ジャショウさんは、私の恩人でもありますから、うまく立ち回らせてもらいます」
「あ、ああ、よろしく頼む」
ピロリ~ン
〈マルスと絆が結ばれました〉
おっと、ここに来て、絆が……。
と言う事は、やっぱり、マルスは信じられる……か。
前を向くと、マルスが不思議そうな顔をしている。
「これは……?」
ああ、そりゃあ、急に、能力が上がったら、驚くわな……。
「それも、俺の固有スキルで……」
ぼそりと呟く……。
隠してる訳じゃ無い……。
訳じゃ無いんだが……。
「ジャショウさんは、色々とある様ですね」
「どうしたんですか?兵長」
「いえ。何も……」
マルスは、理解したとばかりに、ウインクして見せる。
話の分かる人で、本当に良かった……。
俺は、苦笑交じりに頭を下げる。
まあ、良い……。
後は、どうとなれ……だ。




