人の心
「あなたは……。あなたは、何者なのですか?」
蒼い瞳……。
空の様に蒼い……。
マルスが、真っ直ぐな瞳で、俺を見詰めている。
「へ、兵長!」
「落ち着きなさい……」
驚き、目を見開くアリス……。
その瞳からも、涙が零れている。
俺は、気恥ずかしくなり、頭を掻きむしる。
「こ、この事は、黙っていてくれ……」
騒ぎになったら、たまったものじゃない。
自分でやっておいて、今更ながら、事の重大さに気付いた……。
いかん……。感情に流された……。
自分でも、訳が分かっていない……。
この人を見た時、助けたいと思った……。
やっぱり俺は、阿呆なのかな……?
心に、嘘が付けない。
「勿論、誰にも言いません。目が治ったことも、伏せておくつもりです」
マルスが、優しく微笑む。
男なのに、ちょっと、ドキッとした……。
「けど、それじゃあ……」
「昇る太陽を……。優しい夕暮れを見る事が出来るんです。十分ですよ」
諭す様に、優しく笑う。
「それで、あなたは……」
真っ直ぐな瞳……。
この人には、嘘がつけない……。
自分が自分に、嘘をつけない様に。
「俺は……。俺は、あんたたちの言うキャロリアの森に、気付いた時には居たんだ……」
「キャロリアの森に?」
「ああ、その前の記憶は……。断片的にしか無い……」
「その黒髪、黒い瞳……。そして、その錬気の高さ……。あなたは、転生者ですか?」
「転生者!?」
驚くアリスを横に、俺は静かに頷く。
「過去の記憶は……?」
「鬼子と呼ばれてた……。嫌われ、捨てられ……。でも、俺を拾ってくれた人がいた。俺を愛してくれた人がいた……。けど」
「けど……?」
「分からない……。守るために拳を握り、鬼子である事を、誇りに思っていた……」
「そうですか……」
「今は……。今は、シャル姉やサクヤに会って、守ると決めたんだ!」
何を話せば良い?
ただ、この人には知ってもらいたい……。
唇を噛みしめ、項垂れる。
そんな俺の頭を、マルスは優しく撫で、
「十分ですよ……。守ってあげてください。それだけで、十分です」
笑いかけてくれるマルスに、俺は自然と笑みが零れた。
「アリスさん!この事は、他言無用で!」
「は、はっ!」
「さて、通行検査を受けて下さい」
今度はマルスが、俺の手を引く。
俺は頷き、立ち上がる。
この人は、俺を恐れてはいない……。
何の躊躇も無く、俺の手を取った……。
不思議と、この人の心が見える……。
そんな気がした。
「あ、あの……」
アリスが、恐る恐る、マルスに声をかける。
「どうしましたか?この子の事なら……」
「い、いえ!その、シャルちゃんの戦歴なんですが……」
口ごもるアリスに促され、戦勝装置の前へと向かった。




