為らば闘え!命の限り!!
今現在、入城検査を受ける為に列に並でいる処だ……。
ずいぶん時間が立った……。
傾き始めていた日は、地平線に半分その顔を沈め、夕闇が迫っている。
しかし、もう後三人。
シャルとサクヤは、楽しそうに談笑している。
俺も相槌を打ちながら、二人の話に耳を傾ける。
それだけでも、時間が過ぎるのが早く感じられた。
しかし、腹が減った……。
別に俺が、腹ペコキャラな訳では無い。
そもそも、昼も食べていないし……。
でも、久々に、人の作る料理が食べられるのか……。
感慨深い。
「次の方、前に」
凛とした声が響き渡る。
如何やら、俺達の番が来たようだ……。
しかし、さっきから目線が気になる。
ちらちらと、俺の方を見る目線。
何だと言うんだ……?
「次の方!」
俺は、サクヤの手を曳き、前に出る。
「君達、お父さんやお母さんは?」
門兵が、俺達に目線を合わせる。
金髪の髪をたなびかせ……。
女性?
相変わらず、この世界の人間は、美人が多い……。
俺は、少し緊張しながら、口を開こうとする。
「アリス~。ただいま~」
横から、シャルが飛び出し、元気よく挨拶する。
知り合いか?
俺とサクヤは首を傾げ、シャルを見る。
「シャルちゃん!?無事だったのね!」
「ええ。妖魔も倒してきました♪」
シャルは、誇らしげに、右手を掲げる。
ギルドカードが光、横にあった機械に感応する。
あれが噂の、ギルドカード感知器か?
ギルドカードに反応し、俺達の戦歴が映し出されている様だ。
アリスと言う門兵は、その画面を食い入るように見て、固まっていらっしゃる……。
「シャ、シャルちゃん……?」
「えへへ……。どうですか?」
「い、色々と言いたい事が在るけど、その前に……」
アリスが、俺の方へ近づいて来る……。
な、何だ!?
やばい!?ドキドキする。
俺は硬直し、アリスを見上げ……。
め、目線があった!?
引き攣った笑い……。
「な、何?」
「何じゃありません!女の子がそんな恰好をして!」
アリスのマントが、俺を覆う。
お、女の子!?
シャルとサクヤが、爆笑している!?
くっ!実に心外だ!
「お、俺は、男だ!」
口を尖らせ、抗議する。
場合が場合なら、訴状モノだ!
アリスは、目を丸くし、固まっている。
えっ!?何?マジで間違えたの?
俺は項垂れ、ズボンに手を伸ばす……。
「それは、ダメ~~~~!!」
シャルが、血相を変えて、俺の手を抑える。
「放してくれ!シャル姉!」
「ジャショウ!何する気なん?」
続いて、サクヤが俺を止める。
「お、男の威厳と言うのをだな……」
俺。必死過ぎ……。
何か、泣けてくる。
じゃあ何?
今まで、俺に向けられていた視線って……。
「わ、分かりました!男の子なんですよね!分かりましたから……。それでも、上は羽織ってください!」
アリスも血相を変えて、俺を止めてくる。
俺は、少し半泣きになって、その手を止めた……。
「ジャショウは、男の子ですよね♪サシャさんを、鼻に下伸ばして見ていましたし……」
「ジャショウは男なんよ♪姉やんの事、エッチな目で見てたんよ」
シャルとサクヤ……。
フォローになって無いし……。
てか、目が笑って無い……。
「どうしました?」
駐屯所の中から、声がする。
優しい、暖かな声……。
うん。でも、男の人だ。
何と言うか……。男は久々だ。
変な意味じゃ無いぞ?
「へ、兵長!」
「マルスさん!」
歳は、二十代中盤と言った処か……。
白銀の髪は、肩まで伸び、耳が、少し尖っている?
えっと、確か……。
そう、エルフ!エルフと言うやつか!
整った中世的な顔に、両目が……。
両目が潰されている?
俺は、失礼だと思いながらも、魅入ってしまう。
「その、少年がどうかしましたか?」
「「「!?」」」
俺を、男だと認識してくれた!?
俺は嬉しさのあまり、その男の手を握る。
「お、俺、男だよな!」
「え、ええ……。それがどうかしましたか?」
「い、いえ兵長……。何でもありません!」
「あんた、その目。どうかしたのか?」
「こ、こら!」
「ははは……。良いんですよ。私は、ハーフエルフでしてね……。ハーフエルフと言うのは、エルフにとって忌嫌子……。私は目を潰され、集落から追い出された者なんです……」
ハーフエルフ……。
しかし、この世界は、何て陰険なのだろう。
いや。俺もそうだったのか……。
記憶が過る……。
鬼子……。
気が付いた時には、その男の目を撫でていた。
「治さないのか?」
「ははは……。魔術でも、錬気でも、失った瞳を再生するには、莫大な力が必要なんですよ……」
「!?じゃ、じゃあ……。治せるって言ったら、治してもらいたいんだな?」
「そうですね……。また、空を見たいですね」
「き、君!」
俺は、有無も言わさず、マルスの手を引っ張る。
制止するアリスを無視し、駐屯所に入ると、マルスを椅子に座らせた。
陽の錬気……。
何で、見ず知らずの人間にこんな事をするのか……?
分からねえ……。
ただ、この人に会った時、この人は、俺の内側を見てくれた……。そんな気がする。
それに、この人は俺達と一緒だ……。
おわれる者の痛みを知っている……。
だから……。
「どうしたんですか?」
「あんたは、俺の内側を見た!」
「……。ええ、あなたは、強く、優しい人です」
「俺は、鬼子と疎まれ、親に捨てられた!けど、俺を実の子の様に思ってくれる人がいた!多分……」
「多分……。ですか?」
「気が付いたら、森に居たんだ」
「嘘は言ってませんね」
「ああ。サクヤに会った。シャル姉に会った。みんな、苦しんでた。戦っていた!」
「ええ。シャルさんは、他人の様に思えません」
「あんたは……。あんたは、何と戦っている?」
俺は、マルスの顔を見る。
彼は、笑っていた。
優しく。優しく……。
「私は、逃げていたんですよ……。けれど、この街は、私を包んでくれました」
「だったら、戦え!俺は、あんたの味方だ!自分で何を言ってるか分からないけど、でもっ!」
「私の目は、治るのでしょうか?」
「治す!」
俺は、マルスの目を覆った手の錬気を高める。
まだだ!まだ、足りない!
錬気を高める……。
もっと、もっと!
光が、マルスを包み込む。
……。
やがて、光は収まり、静寂した時間が流れ出す。
「目……。開けてみてくれないか?」
ゆっくりと開かれる瞼……。
マルスの目からは、一筋の涙が頬を伝い、流れ落ちた……。




