あれが、スターリー!
国とは何か……。
人は狩猟文化から、農耕文化に変わった時、土地を持つと言う概念が生まれた。
より肥沃な地……。
より広大な土地を……。
獣に向けていた刃は、人に向き、抗争が生まれる。
流した血で大地は染まり、その手を汚してゆく……。
命を育む事を知る事と同時に、命を奪う意味が変わった瞬間だ……。
「ジャショウ、サクラちゃん、見えました」
今俺達は、森を抜け、高原に立っていた。
日は傾き、赤みを帯びている。
今日は久々に、布団で寝られると思うと、気分が高揚する。
夏の夜を、湖の周りで雑魚寝するのも、涼しくて良いのだが、やはり人間、屋根のある生活に憧れる。
それにしても、デカい街だ……。
城壁が地平線に沿って伸びており、遠目でも見える石造りの城は圧巻だ。
シャルの話では、スターリーの街とは、如何やら王都らしい。
城に城壁、それだけでも圧巻なのに、城壁の中には、コロシアムがあり、水道、下水設備が整い、数多くの店や、工業区があるらしい。
更に、城壁の周りには、無数のテントが張られ、人々の息吹が感じられる。
何かと聞けば、あれらは難民キャンプで、税金の払えない人たちの集団だと言う。
言うなれば、スラム街の様なものらしい。
城内の人間は、一定水準の生活が保障されている。
国は潤い、民には安寧が約束された国。
門は開かれ、義務を果たせる者には、寛容で、此処からは見えないが、今なお、城壁は広げられ。故に、人手を必要とし、仕事も豊富。
ならば何故、難民キャンプがあるか……。
それは、城門での適性検査が、しっかりしているからだと言う。
まず、入場料金として、金貨三枚……。
ゴブリンを倒せば、あっと言う間だと言うが、実際問題、ゴブリンと人間の能力値は、拮抗している。
命がけの戦いだ……。
俺達の様に、ゴブリンの集落を襲うなど、もってのほか……。
それでも、金貨三枚ぐらいと思うが、あそこに居るのは、様々な事情で家を追われた者が多く、着のみ着のまま……。と言う人が多いらしい。
次に、厳密に行われる前科チェック。
他の転生者の話にも出て来る様な、魔法器具を使った、誤魔化しのきかないモノ……。
まあ、ステータスとかは見れないらしいが。
ここ、五年間の内に、何らかの罪を犯していないか?そう言ったものが見れるらしい。
どうやった仕組みなのか……?
シャルに聞いてみたが、
「直接、魂とシンクロするモノ……」
と、何とも、要領の得ない回答が返って来た。
まあ、魔法だからと、自分に言い聞かせ、納得する。
と、まあ、色々説明したが、そんな感じで、あのスラム街も、治安が悪いかと言えば、城門の中に入るため、前科の有る者は、模範囚の様に大人しく。また、お金の無いものは、稼ぐために、日夜、勤労に励んでいる様だ。
俺達は、と言うと……。
お金は、OK。犯罪は……。
ナビ子曰く、俺は転生した処からカウントされるらしいので、問題無し。
サクヤも、獣人になってからなので、一切問題無いと言う。
まあ、そうじゃなくても、問題は無いのだが……。
あとは、税金の事か……。
それについては、門兵から説明があるらしいのだが、納税義務は、一七歳かららしい。
少し前までは、一五歳からだったらしいが、国が潤い、国民の識字率を上げる為、三年間の学業が義務付けられたらしい……。
それで、八歳から一七歳の間で、三年間、学校と言う処に通うための期間にしたそうだ……。
正直面倒くさい……。
学業と冒険稼業の両立……。
それで知ったのだが、シャルは一三歳。
俺と、一つしか違わないらしい。
学校と言う処は、基本無料らしいが、一日の半分が削られる。結構なロスだ。
まあ、そう言った事は、後で考えよう。
取り合えず、入城を果し、今日の寝床を確保する。
国民としての義務を果たすのは、落ち着いてからだ……。
初めて見る街に、興奮しているサクヤ。
シャルの話を聞きながら、街を散策する事を約束している。
まあ、この子達が居れば、俺は、何も言う事は無いさ……。




