狩猟者の眼光
あれから、どれ位が経ったのだろう?
狩りは順調で、立派に冒険者を殺っている。
戦いの最中、シャルとサクヤが魔法を使わず、飛び出した時は驚いた。
二人は、両サイドから、オーガの首を小さな剣と爪で切り裂き、倒して見せた。
返り血を浴びた二人は、妖艶に映り、正直ビビってしまった……。
この二人、段々大胆になっていく……。
俺が、驚き、声をかけると、
―慢心してませんよ?―
って、マジ、コワイ……。
で、正直言うと、最早、オーガもトロルも、相手にならない。
さっき言った様に二人も、既に魔法も使わずに、倒してしまう始末だ……。
『こんな相手に、魔力が勿体無いんよ♪』
さいですか……。
もう少し、森の奥に進もう。
さっきから、瘴気の濃度が高くなっている様な気がする。
これはもしや、瘴気の巣が近いのでは?
辺りを見ると、瘴気にやられた木々が、異様な姿に変貌している。
獣の姿は無い……。
しかし、その木々には、一際大きな爪痕が残されている……。
別の何かが居る……!
俺はその別の何かに、異常な興奮を覚え、全身鳥肌が立ち、武者震いがしていた。
『ジャショウ。寒いん?』
俺の震えを感じて、サクヤが首を傾げる。
「いや……。この瘴気、感じないか?」
『怖いん?』
「いや、逆だ……。俺が、本気になれるかもって……」
俺は、口角を緩め、獣の様に、全身の感覚を研ぎ澄ます。
ああ……。これだ!
狩るか狩られるか……。
俺は、全身全霊で闘いたい!
「ジャショウの本気……?」
シャルが、不安そうな顔をする。
俺は我に返り、優しく撫でてやる。
「大丈夫……。二人は守る!」
『アタイも、戦うんよ!』
「私も!」
俺は目を細め、優しく笑う。
次の瞬間、心臓を鷲掴みにされる様な感覚に襲われた。
一瞬の出来事……。
鋭い眼差し……。
狩猟者の眼光……。
イニシアティブを取られた!?
俺の全身の毛が、総毛立つ!
俺は、一瞬で構えをとり、二人を庇う。
悠然と映し出されるシルエット……。
遥か前方に見える、絶壁の上に立つ獣……。
狼……?
太陽に映し出されたその姿は、白銀の毛に覆われた一匹の狼……。
距離は、800m強!
しかし、ここからでもその姿は窺える。
引き裂けんばかりに広げた口角からは、凶悪な牙をむき出しにしていた。
デカい……。
その体躯は、10mは超えているか……。
狂気に彩られた、その眼光……。
どこまで俺に、こんな、エクスタシーを感じさせてくれるんだ……。
この瞬間……。
この一瞬……。
俺は、奴の様に口角を広げ、凶悪な笑みを浮かべていた……。




