ギルドカードって、なんですのん?
「それでは、第二回獲得金発表会を始めます」
一度戦いが終われば、戦利品のチェックは怠らない。
これ、大切だよね♪
ま、まあ、第一回は、随分と先延ばしにしてしまったが……。
幸い、周りに敵や他の生命の気配は無い。
二人も、気を張り巡らしているし、良い修行になるだろう。
しかし、俺の言葉に、二人が目を輝かせている……。
それもそうであろう、今回は、二人だけで、この戦闘を勝利に収めたんだから。
『今回は、先延ばしにしないん?』
「私達の、勝利の証……。ちょっと、ドキドキします♪」
「二人共、気配察知は怠らないようにな」
「「うん♪」」
手際良く袋を開けて行く。
四十個あった袋は、あっと言う間に開かれ、硬貨が山積みになる。
一、二、三……。
硬貨の数は、百十六枚……。
内訳は……。
金貨 二十六枚
銀貨 三十五枚
小銀貨 四十二枚
銅貨 十三枚
計 二十九万九千五百三十エル
前のと合わせて……。
計 七十一万八千六十エル
うん……。
小金持ちだ……。
しかしゴブリン、小銅貨は持たない主義なのか?
思った以上に、金貨と銀貨の比重が大きい。
ここら一帯のゴブリンを狩れば、結構遊んで暮らせるんじゃないか?
まあ、金が目当てなんじゃ無いんだがな。
しかし、ゴブリンがこれだけ硬貨を持っていると言う事は、それだけ、人間が襲われていると言う事か……。
後味悪く思っていたが、これも善行か……。
けど、何故だ?
これだけ稼げるのであれば、ゴブリンなど、駆逐されるはずなのに……。
そんなに、冒険者の質が悪いのか?
俺は頭を捻り、周りの惨状を確認する。
この程度の事が、出来ない?
「ジャショウ。どうしたんですか?」
シャルが、俺の視界に飛び込んでくる。
急な事に、少し驚き、後ずさる。
「気を抜いたらダメですよ?ここも、戦場なんですから」
これは、一本取られた。
慢心していたのは、俺の方か……。
考え込んでしまうのは、俺の悪い癖だ。
どんな状況でも対応できる。
そんな思いが、気の緩みを生む。
完全な慢心だ。
「すまん。ただ、これだけ稼げるのに、スターリーの冒険者は、何をやっているのかってな」
俺は、恥ずかしさのあまり、赤面しながら、目を逸らす。
そんな俺を、シャルは可笑しそうに笑い、頬を軽く突く。
「慢心はダメ。でしょ?」
「ああ……」
「ジャショウの疑問……。簡単な事です。それより、稼げるものがあるからですよ」
「ゴブリンよりも?」
「この森の奥には、オーガやトロルが住んでいるんです」
「鬼と巨人……」
「そう。二つは、個体か番で活動し、ゴブリンの集落を潰すよりも、倒しやすいんです」
「へえ。でも、そんなに金を持っているのか?」
俺の疑問に、シャルは首を横に振る。
まあ、妖魔がみんな、金を持っていると言う事は考えにくいか……。
ナビ子も、ゴブリンの特性って、言ってたし。
「オーガ討伐は、一体につき、五万エル。トロルは七万エル。それに加えて、オーガの角とトロルの肝は、錬金術の素材になるの。だから、十万エルで売る事が出来るの」
「一体狩る事で、十五万エル以上と……」
「そう。だから、ゴブリンの集落を落とすのは、森の奥に進むための試験で利用されているよ」
「なるほどな……。まあ、ゴブリンの耳を集めるのも面倒くさいし、そっちの方が楽かもな……」
「?どうして、ゴブリンの耳を集めるんですか?」
今度は、シャルが不思議そうに小首を傾げる。
「何故って、討伐部位だから?」
「?」
「えっと、シャルは知らない?」
「妖魔を討伐したら、ギルドカードに表示されるようになってますよ?」
「ギルドカード?」
「はい。ギルドカード」
「っえ!?何?ステータスとは別に、そんなものがあるの?」
「ええ。各ギルドに入ると、作成してもらえます」
「俺達、そんなの持って無いけど……」
「まだ、街にも行ってませんから」
「っえ!?じゃあ、今倒したのも、シャルの分だけ?」
「いえ。絆を結んだ時、何だか勝手に、パーティー登録がされましたから」
淡々と答えてくれるシャルに対し、俺の頭が追い付かない……。
ギルドカード?
パーティー登録?
何それ、聞いてない……。
『ナビ子!』
『はいはい。な~に~?』
『ギルドカードって?』
『っえ!?ちょっと待って……』
沈黙が広がる。
サクヤは、小首を傾げ、俺は困惑する。
『ああ。ここ百年の間に出来た、システムね』
『なにそれ、聞いてない……』
『だって、私も知らなかったもん』
『な~び~こ~。至高神だろ!』
『至高神だからよ!転生者の管理が忙しくって、一々、そんな所見ていないわよ!』
『じゃあ、この耳は……?』
『でも、ジャショウちゃん。ギルド入って無いから、丁度良いんじゃない?』
『そうかもしれない……』
『でしょう?』
「あ、あの。討伐部位制度なんて、私、聞いたこと無いですよ?」
『……』
『ま、まあ、一応、持っておいて損は無いと思うわ』
全然、フォローになって無い……。
これじゃあ俺、変質者やん!
敵の耳斬り落として、首に下げて、これじゃあ俺、変質者やん!!
「シャ、シャル姉は、そのカード、持って無いように見えるけど……」
OK落ち着け!気持ちを切り替えよう。
先ずは、そのギルドカードと言うモノを確認しよう。
シャルが持てるほどの大きさなのか?
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、シャルは優しく微笑む。
「本当に、転生者なんですね。ギルドカードは、ほんの数十年前は、その名の通り、カードだったんですけど、今は、手の甲に紋章を宿したモノなんです」
そう言うと、シャルは、自らの甲を掲げ、錬気を集中させる。
すると、手の甲に、十字と円の紋様が浮かび上がる。
おお!キングオブ・〇―ト……。
「ね♪これを、専用の装置にかざすと、戦歴やパーティー情報が表示されるんです♪」
「すげえ!」
「それだけじゃ無いんですよ。パーティー登録した者同士、経験値も共有されるんです♪」
「っえ!?じゃあ、極端な話、戦闘しなくても……」
「ええ。貰える経験値は下がりますが、能力が上がります」
何それ、凄い……。
「まあ、そんな事を許してくれる、仲間が居ればですけど……」
「初心者が、ベテラン冒険者と共にすれば」
「ええ。なので、多くの冒険者は最初、ベテラン冒険者の荷物持ちから始めます」
「おお!」
「まあ、大きくて、組織だった冒険者ギルドの場合ですけど……」
ふっと、寂しそうに笑うシャル……。
俺は、満面の笑みで、シャルの頭を撫でてやる。
「俺が、まとめてぶっ飛ばしてやる♪」
『アタイも。倒すんよ♪』
シャルは顔を上げ、大きく頷く。
「そうですね……。私も負けません!」
雲一つない空。
三人の笑い声が木霊した。




