シャルからの贈り物
笑いあう声……。
喜びあう笑顔……。
月夜は優しく照らし、静かに包む。
一日の終わりに、何を思う……。
苦しみは洗い流し、喜びはこの胸に……。
また、明日を迎える。
大切な人と共に……。
『なあ、ナビ子。俺が絆を結んだ奴ってみんな、不老不死になるのか?』
今現在、朝食の準備真っただ中、俺はふと気になり、ナビ子に疑問を投げかかる。
実際問題、俺が絆を結ぶだけで不老不死になられては、生態系が崩れてしまう。
またそれとは逆に、折角、何時までも一緒に居られると思ったサクヤ達が、不老不死で無くなれば、俺は、孤独の中で生きなくてはならない。そんなのは御免だ。
『ん~~。絆のスキルに、そう言う付加は無いようよ。けど、私の加護と重なると、不老不死になるみたい』
『ん……。そうか……』
『どして?』
『いや。不老不死なんて、そうホイホイと生まれたら、世界のバランスに影響するだろ?それに、くだらない人間に目を付けられたくないしさ……』
『ん~~~。何もしなくても能力が上がるだけでも、十分脅威だと思うけど……。ジャショウちゃんの能力値、異常だし……』
『まあ、絆なんて、そんなに結べるものでもないか……。リョウカは例外だが、本来は、よっぽど信頼しないと発動しないみたいだし』
『そう?リョウカの事、何だかんだ言って、結構気に入ってるみたいじゃない♪』
『何を見たらそう思う……』
俺は、苦笑交じりにリョウカを見る。
まあ、背中は預けられるか……。
「ジャショウさ~ん。魚が焼けましたよ♪」
シャルの呼び声に、我に返る。
リョウカに、背中を預ける?
俺は、何を言っているんだ?
ええ~い。リョウカは例外だ!例外!
俺は、首を横に振り、その場で立ち上がる。
腹が減ってるから、変な事を考えるんだ。飯にしよう。飯だ!
「ああ、今行く」
「?」
シャルは、小首を傾げ、こちらを見ている。
俺は静かに笑い、ゆっくりと歩きだす。
そう言えば、昨日のビックボアに肉……。
小人魚達と、美味しく頂きました。あれだけ有ったんだがな……。
小人魚の食欲と、数には、脱帽だ。
まあ、俺も結構食べれたし、良しとしよう。
それに、あいつら、喜んでたしな……。
笑いあいながら食べる飯って、最高だよな。
俺は、昨夜の事を思い出し、ほくそ笑む。
『ジャショウ。どうしたん?』
「いや、みんなで食べる飯って、うまいなと思ってさ……」
『そうなんよ♪』
俺の肩へと飛び乗るサクヤを、優しく撫で、今日の宴へと足を運ぶ。
何にせよ、サクヤやシャルとは、ずっと一緒だ。守り抜いて見せる。ずっと、この笑顔を見続けるために……。
「ジャショウさん、サクヤちゃん、私決めました!」
食事の最中、突如としてシャルが声を上げる。
俺とサクヤは、不思議そうにシャルを見詰める。
「決めたって何を?」
俺とサクヤは小首を傾げ、シャルを見る。
何時になく真剣な面持ちで、シャルは、俺とサクヤを交互に見る。
えっと……。何か決める事とかあったか?
「ジャショウさんとサクヤちゃんは、姓をお持ちですか?」
「お、俺は男だが?」
「そうね。サクヤちゃんは、女の子で……。って、違います!苗字です!苗字」
おお。ノリ突っ込み……。
てか、顔近いって……。
俺は、首を横に振り、サクヤは小首を傾げる。
『苗字って、何なん?』
ああ、そこからか……。
俺は、サクヤを優しく抱きかかえ、不思議そうに小首を傾げるサクヤを、優しく撫でる。
「苗字ってのはな、家の名前の事。家族の名前みたいなものだよ」
『家族の名前?』
「っそ。家族の名前。俺達は、家族ですよって、表すための名前って処かな」
『アタイ、苗字無いんよ……』
俺の顔を見上げ、寂しそうに呟くサクヤ。
「大丈夫。無くったて、俺達は家族だろ?」
サクヤは目を細め、嬉しそうに笑う。
く~~~~~。この顔で、ご飯三杯いける!
ああ、白米食べたい!
「だからです!私達は家族なんです!」
俺とサクヤが、二人だけの世界に入っている中に入る様に、シャルが興奮気味に、声を上げる。
そんな事しなくったって、シャルも混ぜてやるって。
俺は、突き出したシャルの頭を優しく撫でる。
う~ん。今日も絶好調で、二人とも可愛い!
「っあ。えへへ……。って、違います!そうだけど、そうじゃありません!」
「うん。シャル、落ち着こうか」
「そ、そうね。ちょっと落ち着いて……」
その場で、深呼吸をするシャル。
シャルが落ち着くまで、俺は白湯をすすり、朝に日差しに身を任せる。やっぱ、お茶が欲しい……。
「落ち着いた?」
「は、はい!」
「それで、何を決めたの?」
「その、二人に、私の姓をあげたいと思います!」
「シャルの苗字?」
「そ、その……。嫌ですか?」
不安そうに、見詰めるシャル。
サクヤは、不思議そうに、俺とシャルを、交互に見やる。
「いんや。嫌じゃないぞ?俺にもサクヤにも、苗字無いしな。でも、良いのか?会って間もないのに……」
「何でですか?だって私達、家族なんですよね?」
「「家族だ(なんよ)」」
俺とサクヤは、笑顔で答える。
別に、そんな不安そうな顔で、見詰めなくったっていいのに。
「シャルが、そう思ってくれるなら、俺達は、家族だよ。まあ、思ってくれ無くったて、俺は、シャルを家族だと思い続けるけどな」
『シャル姉は、アタイのお姉ちゃんなんよ♪』
「ジャショウさん、サクヤっちゃん……」
「な、泣くなよ……」
「はい……」
両手で顔を拭うシャルを、心配そうにサクヤが抱きしめる。
シャルも、本当に今まで、苦労してきたのだろうな……。
仲間と言う言葉に喜び、家族と言う言葉に涙する。
いっぱい苦労したから、この子も、サクヤの様に人に優しく、自分に不安を覚えている……。
「それで、俺達も、シャルの苗字を名乗って良いの?」
俺は、優しく撫で、シャルに笑顔を向ける。
「は、い……。ジャショウさんと、サクヤちゃんに、シルフィールの性を授けます。ひっぐ……。ふええええええん」
感極まって、涙するシャル。
「ああ、今日から俺は、ジャショウ・シルフィール!」
『アタイは、サクヤ・シルフィールなんよ♪』
「はい……。はい」
彼女にとって、精一杯の告白。
受け入れられなかったどうしようと、不安があったのだろう。
だけど、俺達は家族だ。
こうして、同じ姓を名乗る事が出来る。
俺は愛おしく二人を撫で、何度も、自分の姓名を唱え続けた。




