絆の意味
他愛無い会話……。
さりげない一言……。
言葉には意味があり、自分の、相手の心情を現して思いを伝えて行く……。
意味なんて必要ない。
理由なんて必要ない。
ただ、君と語り合いたいだけなんだ……。
「なあ、もう機嫌を直してくれよ……」
サクヤとシャルは、絶賛ご立腹モードだ。
俺は、苦笑交じりに、二人の頭を撫でながら、ご機嫌取りをしている処だ……。
仕方が無いじゃないか。あんな美人さんに言い寄られれば、誰だって陥落してしまう。
それに、サシャは特別だ……。
会って間もないが、彼女の直向きさ、優しさを知ってしまった。
嫌いになれるはずが無い。
そんな彼女に、信頼を寄せられれば……。
「ジャショウさんは、女の子に弱すぎます!」
『そうなん!ジャショウは、アタイらの事を何だと思っているん?』
「何って……。大切な家族?」
俺は、恥ずかしげも無く、胸を張って言う。
これだけは譲れない。
俺は、愛おしく二人を抱きしめる。
シャルとサクヤは耳まで赤くし、俯いてしまった。
可愛い奴らだ。
「ジャ、ジャショウさんは、卑怯です」
『ずるっ子なん……』
口ごもる二人……。
可愛い……。
「別に、絆って言ったって、色々あるんだぞ?サクヤやシャル達との様な家族としての絆。友との友情。敵だって、好敵手に会えば、時として、絆が生まれるんだ」
「あら、愛し合った者の間にだって生まれますよ?き・ず・な♪」
「……」
サシャさん、今ここでそれを言う?
折角まとまりかけていたのに……。
ほら、サクヤとシャルが、首を180度曲げて……。
180度!?
二人の目から光が……。
あ、あれか!
これが俗にいう、ヤンデレ?
怖い。怖い……!
「ジャ~ショ~ウさん……」
『ジャ~ショ~ウ~!』
「お、落ち着けって、二人とも」
ふ、二人の手の中に、風の球が……。
あ、あれか!?
螺〇丸!?
い、いやちょっと、俺にそれを近づけないで……。
って、いや~~~~~~!!
「シャ、シャル……。魔法使える様になったんだな……」
「えっ!?私、魔法が……」
無意識ですか……。
って。俺の事を心配しないで、サクヤとシャル、何抱き合って喜びあってんの……。
まあ、俺も嬉しいんだが……。
「ジャショウさん!私魔法が使えました!」
「うん……。身をもって知った……」
『ジャショウ!何寝っ転がってん?シャル魔法使えたんよ!』
「うん、知ってる……。今倒れてるの、その魔法の所為だから……」
嬉しいのは分かる……。分かるが、もうちょっと俺を気遣って!
喜ぶ二人は、代わる代わる俺の袖を引き、喜びを表現している。
ま、まあ、二人がこんなに喜んでいるんだ。水を差すのは止そう……。
あれだ……。可愛いは正義。
やっぱ俺、女の子には、相当弱いわ……。
「シャル……。おめでとう」
這いつくばって、親指立てて、かっこつけても締まらねえ……。
無様だ……。
ふと横を見ると、リョウカが声を殺して笑っている……。
屈辱だ……。
とにかく、立ち上がろう……。
何気に、初めて負ったダメージか……。
初の負傷が、仲間からって……。
むせる……。
『シャル姉、アタイの知ってる魔法、教えてあげるんよ♪』
「シャル姉?」
不意に、サクヤから零れた言葉。シャルを姉と呼んだことを新鮮に思い、聞き返す。
『ジャショウは、言ったんよ♪俺達は家族なんだって。だからシャル姉は、お姉ちゃんなんよ♪』
無邪気に笑うサクヤを、シャルが愛おしそうに抱きしめる。
「うん。お姉ちゃん……。お姉ちゃんだよ!」
『シャル姉……。くすぐったいんよ』
「なあ、サクヤ。俺は?俺は?」
『?ジャショウは、ジャショウなんよ♪』
「っえ!?お兄ちゃんとか無いの?」
『無いんよ?』
ようやく立ち上がった俺は、再び膝から崩れ落ちる。
なんでなん?
俺も、お兄ちゃん♪って、呼ばれたい!
なんでなん?
やっぱ、むせる……。
可愛い妹に、お兄ちゃんって呼ばれる……。
それって、男の浪漫やん……!
何でなん?
『ジャショウは、ジャショウって、名前で呼びたいんよ♪』
悪戯っぽく笑うサクヤ……。
……。萌える。
って、二人共どこ行くの?
魔法の練習?
お願い!余韻に浸らせて!
サクヤちゃん、今可愛かったから!
抱擁しよう!
あれ?無視ですか!
二人共きゃぴきゃぴと……。
っえ!?
きゃぴきゃぴって、死語?
そんなの良いから!
二人共、カムバ~ック!
「くくく……。良いようにあしらわれておるな、お主」
「なんだ駄馬か……。お前とは、絆は結ばないぞ」
気が付けば、横にはリョウカが立っていた。
笑いをかみ殺し、にやけた目つきでこちらを窺っている。
なんともいやらしい奴……。
ピロリ~ン
〈リョウカとの絆が結ばれました〉
は?今何と?
軽快なメッセージ音……。
ありえん……。
なんでこんな奴と……。
俺は、顔を引きつらせ、リョウカを見る。
リョウカも、顔を引きつらせている。
うん……。
ありえない。ありえないが……。
「何故じゃ!何故我と、絆を結ぶんじゃ!」
「そんなの、こっちが聞きたいわ!」
まったくなんだと言うんだ?
この絆と言うスキル、意思とは関係なく発動するのか?
それにしたって、リョウカと絆などと……。
「ジャショウさん。好敵手だって、絆が生まれるものなんですよ?」
サシャの笑顔……。
いや。さっきそう言ったが……。
リョウカは、好敵手にも満たないぞ?
認められない……。
認められないぞ、そんな事!
『坊やだからさ♪』
っえ?何?
その、某赤い人が言ったようなセリフ。
ナビ子、何ドヤ顔してるの?
全然うまくないから!
『ジャショウちゃん。なんだかんだ言って、リョウカとは一番つるんでるから……』
いや。つるんでいるって……。
シャルを助けただけだよね?
しかも役に立っていない……。
『認めちゃいなさいよ。好きとか嫌いとかじゃなくて、腐れ縁?』
うが~~~~~~。
認められるかそんなもの!
涙で、何も見えねえ……。
萌えないゴミが、引き取り拒否とか、どんな罰ゲームだよ。ホント……。




