表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翔雲流  作者: NOISE
森に潜むおかしな面々
62/1794

ハニートラップ

 いつか見た空……。

 今日見る空……。

 空は不変で、それでいて空色は変わる。

 今日見た空の下、誓う思い。

 共に歩んで行こうと誓った思い。

 願わくばこの空の様に、不変に輝き続けていたいと思う……。



「ジャショウさん!私とも絆を結びましょう」

 食い寄ってくるサシャ。

 今さっき、絆を結んだサクヤ達を前に、サシャは触発された様だ。

 しかし、なんでまた、人間と絆を結びたいのだろうか……?

 力の為か……?

 それとも……。

「サシャは、力が欲しいの?」

「そ、それもありますが……。ジャショウさんが信頼できるからです!」

 真っ直ぐな瞳……。

 嘘は言って無い様だ。

「ここは今まで、私たちで守ってきました。でも……」

 うつむくサシャをじっと見つめる。

 一人、必死に戦ってきたのだろう。

 この地を守るため……。

 妹達を守るために……。

 力になってやりたい。そう思う自分がいる。

 しかし、絆の条件は、心の交わり。

 打算や欲望で築く上辺だけの誓いは、絆を結ぶにはあまりに不完全で、脆弱すぎる。

 言葉だけでは、騙せない事もある。

「しかし……」

「分かっています。上辺だけの感情で、その絆と言うのを結べないと言う事は……」

 サシャの細い指が、俺の頬に触れる。

 一瞬の事に、ドキッとし、頬を赤らめてしまう。

 反則だろう……。そう言うの。

 俺、知ってる……。これって、ハニートラップって言うんだ。

 横を見なくとも分かる……。

 サクヤとシャルが、ジト目でこっちを見ている……。

 うん……。

 最近、俺へのヘイトが、集まっている様な気がする……。

 いかん。変な汗が出て来た。

「ジャショウさん。私の母と父は、二人で私達を生み出してくれました……」

「ふ、二人だけで?」

「ええ。人間にとって、精霊との交わりは、人のそれよりも、官能的なモノなんです」

「へ、へえ……」

「人であった父は純粋な方で、この森を抜ける事の出来る人でした。けど……」

「け、けど?」

「母に誘惑からは、抜け出せなかった様です」

 近づいて来る顔。

 やばい!

 精霊、怖い!

「ま、……!」

「「ちょっとスト~ップ!!」」

 後ずさる俺の間に、割り込む影。

 シャルとサクヤ……。

 両手を広げ、サシャの往く手を阻む。

「だ、ダメですよ。サシャさん!」

『そうなんよ!ジャショウは、まだ子供なんよ!』

「た、確かに、ジャショウさんは、まだお若いですけど……」

 口ごもるサシャ……。

 恨めしそうに俺を見詰め、人差し指を口に当てる。

 い、いろっぺ~~~。

 あ、あかん。理性が……。

「ジャショウさんも、そんな顔をしない!」

 シャルが怒った!

 それに合わせて、サクヤがポカポカ叩く。

「痛い。痛いって!」

 俺は、参ったと言わんばかりに、土下座をする。

 俺、何も悪く無くね?

 こんなハニートラップ、卑怯だ……。

「ジャショウさん……。私は、あなたの事を信頼していますよ?」

 ごくり……。

 ははは……。

 参ったな、こりゃ……。

「お、俺も信頼してる……よ?」

ピロ~ン!

〈新たな絆が結ばれました〉

 脳内に、アナウンスが……。

 って、ええ~~~~!

 こんなんで、絆結ばれちゃうの?

 何か、雰囲気とか無くね?

 やっぱ、ハニートラップに引っかかった様な気がする……。

 けど、俺は、サシャの事を信頼している。これは間違いない。サシャも……。

 うん。

 難しく、考えるのは止めよう。

 サシャも俺も、互いに信頼しあっていると言う事だ!

 良かった、良かった!

「ジャ、ジャショウさん。急に体が軽く!」

「うん。絆が、結ばれたみたいだね」

 体の感覚を確かめるサシャ……。

 俺は、苦笑交じりに応えてやる。

 ……。

 はっ!?

 何か殺気が……。

 ぎこちなく、横を向く……。

 至近距離に、シャルとサクヤの顔が……。

 ジト目に、口が三角になってらっしゃる。

「は、はは……。二人ともどうした?そんな顔して……」

「「この、スケベ~~~!」」

 二人の怒号……。

 俺は、二人にもみくちゃにされながらも、黙って耐える事しか出来なかった……。

 何たろぅ、この不条理……。

 納得出来ね~~~~ぇ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ